「きれい・・・」少女は鏡に映った自分の姿に思わずため息を漏らした。  
豪奢な部屋である。子供部屋ながら大理石でしつらえてある。良家の令嬢であることは  
一目瞭然だ。「喜んで頂けて光栄ですわ、お嬢様」少女の髪をとかしている女が言った。  
薄く紅をさした唇が微笑む。切れ長の目をした美女である。色白だが凛とした風貌だ。  
女の名はエレザ。髪結い師、現在でいうとヘアスタイリストである。  
 
エレザはそのまま人差し指と中指で少女の髪をやわらかくかきあげた。  
そしてしごきあげるように鬢(びん)を作ってゆく。  
その指つかいに、次第に少女の顔が紅潮してゆく。吐息が熱くなる。  
あたかも蝶のような鬢を形作ると、今度は椿油で固めてゆく。  
最後に象牙の櫛をさし、終わりだ。「お疲れ様でございました、お嬢様。」  
 
「ねぇ、エレザ・・・」少女は目を潤ませ囁く。「今日はあれをしてくれないの?」  
「いけませんわ、髪が乱れますわよ」端切れで丁寧に道具をぬぐいながらエレザは返す。  
「この前はしてくれたでしょ・・・あたし・・・火照っちゃった」  
エレザは顔を挙げると妖艶な笑みを浮かべた。「しょうがないお嬢様ですこと。」  
 
「ああ・・ああ・・んん・・」  
広いベッドの上で二人の裸体が絡み合っていた。  
少女の裸体はぬめっていた。ふくらみかけの乳房もはじめ細身の体全体が光沢を  
帯びている。さきほどの椿油を今度は体に塗りたくったのである。  
全身をさするように愛撫していたエレザの手がこんどは、胸にのびる。  
「あっ・・ああ・・いや・・」とがった乳首をもてあそばれ、少女は身悶えた。  
エレザは微笑むと、少女の下腹部に顔を接近させる。  
陰毛は薄く、割れ目は色は薄桃色である。  
ねじれのない綺麗な男を知らない秘め所だ。しかしそこは愛液でとろけている。  
「ああ・・だめ・・あああ」エレザの舌技に少女はあえいだ。  
じゅるじゅると唾液と愛液の混じる卑猥な音が響き渡る。  
 
「お嬢様、そろそろ参りますよ・・・」  
エレザは少女の右足を持ち上げた。  
そして自分の股をそこに組み込むように接近させた。  
この体位で、お互いのクリトリスをこすりあわせるのである。  
「貝合わせ」、「めしべ合せ」などいう技法だ。いわばレズビアンにとっての挿入行為なのである。  
「あああ・・あん・・あっ、あああん」少女は懸命に腰を振る。整えたばかりの髪がくずれかかっている。  
エレザもそれにあわせ貪欲に腰を動かした。大きな張りのある胸が揺れる。  
少女とは異なり成熟した裸体だ。肋骨が透けるほど細身であるが、腰や胸の肉付きはよい。  
絡めた太ももは若鹿のようにすらりとのびている。  
少女の明るいブロンドとは対照的な黒髪がシーツの上に流れている。  
「エレザ・・ああ・・・あたし・もう・・ああっ・・あああああ」  
 
「・・・お嬢様・・・ご気分はいかがですか」  
エレザは桜紙で少女の汗をぬぐいながら乱れた髪を直しにかかる。  
「・・・最高だったわ・・・もうだめ・・・エレザなしでは私生きていけない。」  
その言葉にエレザは妖艶な笑みを浮かべる。そして余韻にまどろんでいる少女にささやく。  
「ねぇ、お嬢様・・・できればもっとゆっくりご奉仕したいですわ・・。」  
エレザは少女の耳朶をなめた。  
「あっ・・・わ、私もよ・・・。それならば・・  
三日後の夜がいいわ。お父様は遠のりに、お母様は宵越しの瞑想でいないの。  
その日なら・・・ああ・・気持ちいい」  
エレザはなめるのをやめ、少女の瞳を覗き込む。  
「分かりましたわ。人払いをして、裏戸の鍵をあけて置いてくださいまし。」  
「分かったわ・・・エレザ」  
そうしてどちらからともなく、唇を重ねる。  
そしてまた、舌を絡める唾液の音が淫らに響いた・・・・。  
 
3日後の深夜の都。夜のしじまを縫って、家々の屋根を駆け抜ける影があった。  
黒い装束に身を包み、大きな箱を2つ、肩に抱えている。  
音もなく駆け抜ける様はまるで黒猫である。  
「ちょろいもんね、箱入り娘なんて。このエレザ様にかかればイチコロよ」  
その影、エレザは得意げにつぶやいた。髪結い師として金持ちの女性に近付き、  
レズ関係になり、隙をみて、まんまと財宝を盗み取る・・・・これがエレザの稼業なのだ。  
むろん相手女性は被害者だが、それ以外には誰も傷つけない。  
その女性すらも悦楽に溺れ次の逢瀬を信じ心をとろかす始末。  
ゆえに仕事の成功率は極めて高い。  
裏稼業の世界では「姫殺しのエレザ」という渡世名(ふたつな)で評判の女盗賊である。  
 
ふと、エレザは足を止めた。  
前方の屋根に影が写ったのだ。反射的に飛びのき身構える。  
「だ、誰?」エレザは腰からダガーを抜いた。  
「エレザ・・姫殺しのエレザだな。待っていたぞ。」  
そこには長身痩躯(そうく)の男がいた。彫りの深い顔立ちで、切れ長の目には暗い光を  
宿している。髪は長く、うなじのあたりでくくっていた。  
黒いローブのようないでたちで、右手には長い杖を持っている。  
その杖の先端には翼を広げた鷹の装飾が施されていた。  
 
「私の名はオリフィス。お前と同じ裏稼業のものだ・・・・・。  
 安心しろ。お前の盗んだものもにも、おまえ自身にも危害を加えるつもりはない。  
ただひとつ聞きたいことがある。」  
「・・・う、うるさい。そこをどけ」エレザはダガーを腰だめにして突撃した。  
オリフィスは体を開きかわす。「うっ」両者の体がすれ違った瞬間、エレザはうめき声を  
あげた。そのままくたくたと倒れる。オリフィスの杖が腹部を打ったのだ。  
手からこぼれたダガーが、からころと屋根を転がり落ちる。  
それが草むらに落ちたときには、すでに屋根の上には誰もいなかった。  
 
「んん・・・ここは・・」エレザはゆっくり目を開いた。  
ランプのほのかな明かりが見える。  
「気がついたか?」「お、お前は!!」エレザは声の主に掴みかかろうとする。  
しかし体が動かない。両手・両足を蔓のように縛られているのだ。  
それでも上体を飛びはねるようにして起こす。乳房が大きく揺れた。  
 
「安心しろ。ただ聞きたいことがあるだけだ。」  
その男、オリフィスはランプの側から立ち上がった。相変わらず杖を携えている。  
「ふん、な、なにさ。こんなかっこにさせといて。あたいはなにも吐かないからね。」  
エレザは気丈にもオリフィスを睨み付ける。  
「先日、お前は北の山にあるセバスチャン家で一仕事したはずだ。  
あそこの未亡人と関係をもって、いつも通り宝を盗み出した。  
そのなかに金色の聖母像はあったか?」オリフィスはエレザの瞳を覗き込む。  
その双眸には、暗さとともになんともいえない深さをたたえていた。  
「さ、さあね。そんなこたぁおぼえてないよ・・・あ、あんた、ちょっと!」  
エレザの声がうわずる。オリフィスが杖に手をかけ、それを引き抜いたのだ。  
一閃の光が走る。その杖は仕込み杖になっていたのである。  
(斬られる!!)  
エレザは思わず目をつぶった。  
・・・・・「うん・・・・あっ!!」  
 
次の瞬間、その下半身の装束は真っ二つに切り裂かれていた。  
しかし肌には傷ひとつついていない。「見、見るな!!」エレザは叫んだ。  
腰をくねらせ、股を閉じようとする。  
肉付きのよい尻と引き締まった太ももが前面に押し出された。  
 
「安心しろ、話易くしてやるだけだ・・・」オリフィスはエレザの前に片膝をついた。  
「よせ、やめろ、この色気ちがい!・・・やめろ・・・あああ・・・んん」  
オリフィスの指はエレザの尻をなで、そのまま奥に滑り込んだ。  
窄んだ肛門をやわらかく触れた後、秘め処に向かう。  
「エレザ、どうだ?盗んだなら、もう裏買いに流したか、まだ隠してあるのか?」  
オリフィスは低く、芯のある声でささやきかける。  
エレザの顔は紅潮し、吐息は熱くなっていた。  
「うんん・・・・裏買いに・・・裏買いのクロウに・・・あっ・・・ああ」  
オリフィスはエレザの肉ビラに指を這わせた。  
すでにそこは湿り気を帯びている。  
「いつのことだ?」すでに肥大しているクリトリスを指の腹で刺激した。  
「おととい・・おとといです・・・あん・・・」  
「分かった・・。それで十分だ。よく話してくれたな。褒美だ・・。」  
 
オリフィスはそのまま膣口に指をねじこませた。  
すでに愛液に満ちたそこは、やわやわとオリフィスの指を締め付ける。  
そしてゆっくりと指を動かし始める。締め付けは強い。  
「ああっ・・・んっ・・あああ」エレザは喘いだ。  
もはや股を開き、させるがままにしている。  
オリフィスはさらに指の律動を強める。すかさず、肛門にも片手の指を向けた。  
「そこは・・ああああ・・だめ・・・・」  
快感の波に襲われたエレザの声はか細い。  
 
「だめ・・・だめ・・・ああああっ・・・!!」エレザの目の前が光に包まれた。  
エレザの体がピクンと跳ね上がる。イったのだ。  
全身の体重が消えたかのような開放感に包まれる。  
そのけだるさの中に、人が去っていく足音と杖が床を打つ音が聞こえた。  
 
30分後。エレザは目をさました。オリフィスの姿はもうない。  
ただ静けさの中、ランプが煌々と照っているだけだ。  
手、足の束縛は外してあった。盗んだ宝も手付かずで残されている。  
晒され、もてあそばれた下半身には厚い毛布がかけられている。  
精液を放った後もなく、あの後なんの行為もしていない様だ。  
「オリフィス・・あの野郎・・・」  
エレザは悔しそうにつぶやく。完全にもてあそばれたのだ。  
憎らしさの反面、なぜか心に甘い感傷がうずいている。  
それを振り払いエレザは叫んだ。  
「必ず、この借りは返すからね!」  
 
 

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