「・・・お父さん」
「大丈夫だ、おまえは嫁入り前だ
この国の法律で処女は処刑できないことに
なっている、だから安心しなさい」
城の使用人の少女、うっかり国王お気に入りの
花瓶を割ってしまい、死刑の判決を受けた
今日は家族と最後の面会を行っていた
しかし親子はこれが最後とは思っていなかった
上述の法があり、これまでもそれが理由で放免された
若い娘は大勢いたからだ
きっと今回も執行寸前、大司教様の御託があり
刑の執行は中止されるはず
あくる朝、まだ空も明けきらぬうち
本日執行される者が牢から連れ出された
手に枷をつけられた少女が、引っ立てられていく
しかし行き先は広場ではないようだ
「ここは、どこですか?・・・」
少女がか細い声で尋ねる
「拷問部屋さ 拷問するわけじゃないがな」
がっちりとした男が答える
「俺が今日の執行係だ
ただ、問題がある 処女だと執行出来ないものでな
今からそれを吟味する」
少女は枷を外され、囚人服も脱がされた
拷問台の上に乗り、脚を広げるよう命じられる
少女は大人しく従った
***********************
日もだいぶ高くなり、広場に見物人が集まっていた
その中に、少女の父親もいた
我が娘が引っ立てられてくる、何か様子がおかしい・・
髪はくちゃくちゃに乱れ、脱力したように視線が無く、
蟹股で脚を引きずるような歩き方をしていた
「ど・・・ どうしたんだ・・ あの子に何が・・」
高らかに刑の執行を宣言する大司教、少女は膝まづかされ
巨大な鎌が振り上げられた
「な・・ な!・・ なな! なぜだ?! どうなってるんだ!!
どういうわけなんだ!!!」
父親は人ごみを掻き分け、駆け寄ろうとする
大鎌は鈍い風音を立てて振り下ろされた
処刑人が少女の首を高らかに見物衆に向けて示す
その顔はそうなる前に既に生気を失っているかのようであった
「ええい! 下がらんか!」
衛兵に止められる父親
「ばかな! ばかな! こんなはずは!・・・」
衛兵が耳元で囁いた
「おまえさん、大司教宛に幾らかでも包んだかね?
それも無しに、あんな法を鵜呑みにしてたのなら
馬鹿正直にもほどがあるよ」
**************************
早朝の拷問部屋
蝋燭の明かりがぼんやりと、重なり合って蠢く、
裸の男女を浮かび上がらせる
幼い弟妹達を養うためにスリをはたらいていた少女が
死刑執行人の”吟味”を受けていた
ニキビだらけの少女は、重い鎌を振るう太い毛むくじゃらの腕に抱かれ
ほっそりとした生白い体の奥底まで、しっかりと吟味されていた
ず・・ ず・・ ずぅ・・・
「うっ! ぐ! はぅ・・・」
獰猛な腰が未熟な腰を打刻する水音と、涙混じりの吐息が
重なって響き続けた
だらりと手足を大の字に広げ、生気を失った顔の少女
無惨に散った花弁の奥から溢れ出たものが、拷問台の上に濁った
液たまりを作っている
そのわきで執行人が書類に記述を行っていた
”執行上における法的問題なし”
(終わり)