リスティア王国王都エルハザート。  
その王城の前庭にある《月の女神》(セリカ)の神殿。最深部――『禊の間』。  
聖なる月神の殿堂の中でも最も神聖なるその場所は、地下深くにあるにもかかわらず常に清浄な空気で満たされ  
ていた。  
正方に区切られた地下の殿堂を照らし出すのは、壁際に整然と並べられた蝋燭の灯。  
室内だというのに水の流れる音が聞こえてくるのは、この部屋が特殊な構造の人工泉になっているせいだった。  
部屋の床は大理石の石畳で、中央に大きく深皿状のくり貫きが施されている。  
床のほとんどの面積を占めるそのくり抜きには、常に人の腰ほどの高さの清澄な水がなみなみと張られていて、  
巨大なその泉の中央では、咆哮する獅子の石像が地下からの伏流水を汲み上げ、足元の泉に絶え間なくゆるや  
かな水の放物線を放っていた。  
それは人工の神泉。人の手によって模された神の聖域だ。  
 
静謐な神の気配に包まれたその場所で、今、一人の祭祀が瞑想し、静かにその身を清めていた。  
ゆらめく蝋燭の明かりのもとで、部屋の入り口に背を向けて、獅子の石像と向かい合うようにして。  
透明な水のなかで穏やかに瞳を閉じていた。  
俯きがちに軽く顎を引き、きれいに背をのばしている。  
すっきりと形の良い頤(おとがい)。抜けるように白い華奢な背中。  
その肩先に落ちかかる、明るい金髪。  
泉のなか、瞑想する祭祀は女で、それも、まだ少女と呼べる年頃の娘だった。  
少女は全裸で、水面からは水中に座した彼女の明るい金髪と、白い肩先だけがのぞいていた。  
季節はすでに秋。  
北方山脈のさらに北に位置する王都アルハザートの気候は寒冷で、外出にはすでに分厚い防寒着が必要なほど  
だ。たとえ地下からの湧水であっても外からの冷気は確実に染み込んで、今の水温はけして水浴には適さない。  
――それなのに。  
凍えるように冷たい冷水のなかで禊を続ける少女に、苦痛の色はみられなかった。  
冷たい水のなか、ゆるやかに両手をひろげて。  
獅子の像と向き合うようにして、いつまでも禊を続けている。   
室内には、獅子の口から零れる湧水が水面を打つ静かな音だけが響いていた。  
水面に生まれた水の波紋に、瞑想する少女の長い金髪がたゆたう。  
少女がこの部屋で禊を始めて、どれほどの刻が過ぎたろう。  
いつまでも、永劫に続くかとさえ思われたその瞑想は、外部からの変化で不意に終わりを告げた。  
部屋の外でに突然、コツコツと石の階段を下る足音が響いたかと思うと、『禊の間』の扉がゆっくりと開いた  
のだ。  
 
約三日ぶりに開かれた扉から現れたのは、王城の侍女の衣服に身を包んだ、少女より三、四ほど年かさの娘だっ  
た。  
侍女の娘は、部屋の入り口から泉に向けて桟橋のように延びた石の通路の、その先端まで歩み出ると、瞑想す  
る少女に向かって恭しく語りかけた。  
「時間でございます、ノイエ様。……儀式の準備を」  
「――はい」  
侍女の声に、鈴を振るような心地よい声が応じた。  
はっきりとした、きれいな発音。  
ノイエと呼ばれた少女は、永く続いた瞑想をあっさりと切り上げると、侍女の呼びかけに応じて静かに立ち上  
がった。  
丸三日間不動の姿勢で禊を続けていたとはとても思えない、滑らかな動きだった。  
少女の背中が、侍女の娘に向かってゆっくりと振り返る。  
回転するその純白の背中に合わせて、長い金髪がふわりと宙を舞い、少女の濡れた素肌にぴたりと絡みついた。  
金糸の髪だけを身にまとった、その眩いほど白い裸身を、透明な水滴がいくつもの筋を残して伝い落ちる。  
(わあ……)  
侍女の娘は無意識のうちにため息を漏らしていた。   
まるで清水に花が咲いたような。  
禊を済ませたばかりの、水に濡れた少女の裸身は、同性である侍女の娘の目にも眩く、神々しいものに映った。  
ぼんやりとした蝋燭の灯りのなか、水面に立つ少女の姿は、まるで一幅の見事な宗教画のようだ。  
『神泉の雪百合』  
侍女の娘――アンナは瞬時に題名までも思い浮かべる。  
その視線は無意識のうちに、少女の全身を熱っぽくさ迷っていた。  
しっとりと濡れた柔らかそうな金色の髪。ほっそりと華奢な首すじ。透けるように白い鎖骨。  
柔らかなラインを描く丸い肩のふくらみ。脂肪の少ない、のびやかな手足の先端から、お腹の中心、愛らしい  
おへその窪みに至るまで。  
どこを探しても染みひとつ見当たらない、月光を溶かし込んだように輝く雪色の肌――。  
(噂には聞いていたけれど。ほんとうに、きれいな娘……)  
まるで月神の写し身のような立ち姿。  
紛うことのない美少女の裸身にアンナはうっとりと魅入った。  
目の前の少女――ノイエは今、王都で最も評判の美少女だった。  
愛らしい少女が大好きで、暇さえあれば街に出て美少女を捜し歩くという、奇特な趣味を持つ侍女のアンナだっ  
たが――目の前の少女は、今までアンナが見つけた中でも断トツの一番だった。  
しかも、全裸。  
(ああ……幸せ)  
アンナは自らの幸運を、心の中でじっくりとかみ締めた。  
(なかなかすごい倍率だったけれど。わたしって昔から、くじ運だけは強いのよね。神様、ありがとう!)  
王城に仕える侍女たちの中には、彼女と同様の趣味を持った者が意外なほど多い。  
当然、今回のノイエの付き人役は希望者が殺到していたのだが――、アンナはその激戦を(といっても、ただの  
くじ引きだが)見事に勝ち抜いたのだった。  
外見はあくまでも忠実な侍女を装いつつ――アンナは内心で、この幸運な役得に狂喜していた。  
一方の少女は、この桟橋の上で慎ましやかに控える城付き侍女の、落ち着いた表情の奥に隠された熱い視線には  
まったく気づいていない様子で――ゆっくりと水を分けて娘の待つ入り口へと歩みを進めていた。  
その眩い裸身を隠そうともせずに。  
それは短い時間だったが、アンナにとっては至福の時間だった。  
 
(眼福、眼福……)  
彼女は限られた時間のうちで、とっくりとその絶景を楽しむ。  
人の目は動くものを捕えるようにできているので、少女が歩くと、自然と視線は少女の小ぶりな胸のふくらみに  
注がれていった。  
アンナの見ている前で、歩みに合わせてふるふると揺れる少女の小さな胸のふくらみは、まだまだ青く、完熟に  
はほど遠い様子だ。  
もちろんそれは乳房に限った話ではない。少女のほっそりとした肢体は、優美で可憐。この上なく愛らしいが、  
性的にはまだ未成熟なのだ。  
完璧なまでに美しく、同時に幼い。  
そのアンバランスな魅力が、かえってアンナの目を楽しませた。  
それは、女としての性の魅力とは違うのかもしれない。  
純白の毛皮も真新しい、無垢な瞳をした美味しそうな白ウサギ。  
少女の魅力は、強者に捕食される運命にある小動物のそれだった。  
アンナの喉が、無意識のうちにごくりと音を立てる。  
(くう、なんてかわいらしい……。ほんとうに、食べてしまいたいぐらい。それは、まあ、たしかに? 全体的  
にちょっとばかりお肉が足りないかもしれないけれど。この娘のおっぱい、羨ましいぐらい、すごくきれいな  
お椀形……。これは、あと二、三年もしたら確実に、世の男どもを誘引してやまない見事なお乳に育つわ……。  
それに、この、地の肌に透けるぐらい淡い乳輪と、その上にちょこんとのった乳首のかわいらしいこと……!  
ああ、神よ。願わくばこの可憐な桜色の粒が、忌まわしい男どものむくつけき魔手から永遠に無事でいられま  
すように……!)   
無表情のなかにもじっとりと熱のこもったアンナの視線が、少女の裸身を舐めるように辿ってゆく。  
熱く湿った彼女の視線は、最終的に少女の最も秘めやかな部分――下腹の翳りにまで及んだが、残念なことに  
少女の腰から下は水の中に潜ってしまっていて、ぼんやりとした蝋燭の灯りのもとでは詳しく窺い知ることが  
できなかった。  
(……ふふ。でも、隠したってムダよ? だって、わたしは貴女の世話役なのだもの。陸に上げて隅々までじっ  
くりと見てあげる。さあ、かわい娘ちゃん、わたしにそのすべてを曝けだしなさいな……)  
そんな、このうえなく危険な内心。  
それをおくびにもださない落ち着いた様子で、アンナは目の前までやってきた少女に告げた。  
「どうぞ、この手にお掴まりください」  
「ありがとう」  
外見はどこまでも忠実な侍女を装うアンナに、少女はにっこり笑みを向けた  
その愛らしい笑顔が。涼やかな声が、アンナの心をますますざわつかせるとも知らずに。  
溢れる興奮を思わず抑えかねて、アンナは自らの掌の上に置かれた少女の細い指先を、きゅっと強く握り締め  
てしまった。  
少女の指先は、長い間水のなかにあったにもかかわらず、不思議とふやけてはいなかった。  
だが、その指先は、触れたアンナが驚くほどに、ひんやりと冷えていた。  
その手の冷たさでアンナは、目の前の少女が今の今まで、丸三日以上も凍えるような冷水のなかで禊を続けて  
いたことを思い出していた。  
(こ、こんなに冷えきっちゃって。……かわいそうに。お姉さんがいま、暖めてあげるからね)  
煩悩はひとまず忘れて、アンナは大急ぎで少女を水のなかから引き上げてやった。  
桟橋の上でかすかに震える少女のはだかの肩に、用意していた清潔な綿布を素早く掛けてやる。  
そのまま、背後から抱きかかえるようにして、綿布で少女を優しく包みこんだ。  
そして耳元で、囁くように告げる。  
「こんなに冷えてしまって。さぞ、お辛かったことでございましょう。……お風邪を召しませんよう、失礼し  
てからだを拭き清めさせていただきます」  
「――え? あ、いえ、それは自分でできますから――」  
断ろうとする少女に有無を言わせず、アンナは手早く綿布を動かしていった。  
 
少女の雪肌の上を半ば以上強引に触れ回り、よく乾いた布地で水滴をとっていく。  
少女は最初のうちこそ黙ってアンナに身をまかせていたが、やがて、なぜか少し鼻息の荒くなってきた侍女の  
娘が、彼女の真正面に勢いよく回りこんでひざ立ちになり、無防備な彼女の脚の付け根に息がかかるほど顔を  
密着させて、彼女の秘めやかな草むらを食い入るように見つめながら作業するようになると、ついに我慢しき  
れなくなって言った。  
「あ、あの……、恥ずかしいので、あまり見ないでください」  
言葉通り、うっすらと頬を染めて、小さく身をよじらせながら言う。  
(あ……)  
少女に脚の付け根を手で覆い隠されてしまって、ようやくアンナが我に返った。  
(いけない、いけない)  
自分では、真面目に職務を果たしていたつもりだったのだが――。  
いつのまにか、少女の輝くような純白のふとももと、その付け根に愛らしく茂った淡い金色の叢、さらにはそ  
のしたに隠された繊細な女の器官の美しさの虜になってしまっていたのだ。  
「し、失礼いたしました――」  
慌てて取り繕って少女を見上げると、少女のはだかの上半身を挟んで、目と目が合った。  
(はう……)  
アンナの心臓が、とくん、と大きく脈を打つ。  
彼女を見つめてくるのは、少し困ったような、羞恥によってわずかに潤んだ碧い瞳。  
見つめられると吸い込まれてしまいそうな、雪解けの湖水のように澄みきったその瞳に魅せられて、アンナは  
再び、思考を停止させてしまった。  
――今思えば、少女の裸にばかり注意を払っていたのも、この瞳に心を乱されないための無意識の行動だった  
のかもしれない。  
無垢な少女の大きな瞳には、傾城の魅力を備えた一握りの女だけが持つ、人の心を捕えて離さない魔力が確実  
に備わっていた。  
その瞳にじっと覗き込まれて、アンナは自らの理性が一気に蕩かされてゆくのを感じた。  
(ああ……、いけない、いけないわ……。このままだとわたし、取り返しのつかないことをしてしまいそう……)  
目の前の少女はただ美しいだけの小娘ではないのだ。  
今夜執り行われる国を挙げての大祭事。その祭事を取りまとめる主祭祀なのである。いわばVIP中のVIPだ。  
手を出してしまえば、一族郎党無事では済まない。  
アンナの理性は少女の瞳を直視し続ける危険をひっきりなしに訴えているのだが――、一度合ってしまった視  
線は、まるで強力な磁界に捕らわれてしまったかのようで、制御不能の状態である。  
(そんな……、でも、これ以上は……。今でさえ、こんなに長く。不自然だわ。ああ……、でも……でも……)  
目の前に、心蕩けるほどに優しげな瞳。  
いくら自制しようとしても、陶然と魅入ってしまう禁断の果実。  
「あの……?」  
なんだか様子のおかしい侍女の娘を気遣って、少女がアンナの前にかがみこんだ。  
「お加減が悪いのですか?」  
気を落ち着ける暇もなく、息を飲むほど美しい少女にどアップで迫られて、  
(……か、神様! 大盤振る舞いのしすぎです! それとも、これは神罰なの!?)  
アンナは内心で混乱した悲鳴をあげた。  
彼女があうあうと意味もなく口を開閉させると、ノイエはさらに心配そうに顔を近づけて、真っ赤になってしまっ  
たアンナの顔を覗き込んだ。  
「熱があるのですか?」  
吐息がかかるほどの距離に、心配そうな少女の顔。  
彼女を心配してわずかにひそめられた眉。  
作り物のように小さく愛らしい鼻と唇。  
柔らかそうな頬。  
湖水のように澄んだ、印象的な瞳。  
その瞳に、至近距離で見つめられて。  
目の前で、少女の薄い唇が、うっすらと開いている。  
(ああ……、もう、ダメ)  
アンナは、自らの理性が崩壊する音を聞いたような気がした。  
 
 
気がつくと、アンナは少女の裸身を思い切り抱きしめていた。  
少女の身分も、自分の役目も、脳裏からすっかり消え失せていた。  
突然のことに、「あっ」と小さく声をあげた少女の桜花のように可憐な唇に、アンナは自らの唇を被せていった。  
「んぅ……ッ?」  
驚き、硬直する少女に構わずに、アンナは全体重を預けて、少女の体を再び水の中に押し倒した。  
ふたりで、もつれ合うように水のなかに倒れこむ。  
水面が盛大な水飛沫をたてた。  
「……ぷ……は。……はぁっ。……な、なにをする……のですか」  
「貴女がいけないのです、ノイエ様。貴女が……」  
唇を離し、うわ言のように呟いて、アンナは、少女の首筋にキスの雨を降らせた。  
突然の狼藉に戸惑う少女には構わず、アンナは少女の白い肌に何度も口をつける。  
「……ぁッ」  
無防備な胸のふくらみを慣れた手つきでするりと撫で擦ると、少女のはだかの肩がぴくりと震えた。  
「すごい……、手に吸い付くみたい。こんな手触り、はじめて……。それに……ほんとうに、シミひとつないの…  
…? ……きれい」  
夢見るような少女の肌の感触に、うっとりとアンナがつぶやく。  
「……この穢れのない肌も、愛らしい乳房も、いつかは汚らわしい男の手と舌で……。そんなの我慢できない。そ  
んな目に合うぐらいなら……いっそ、この私が」  
――奪ってさしあげます。  
熱に浮かされたように少女の耳元で呟くと、アンナはいきなり、少女の淡い胸のふくらみの先端、敏感な桜色の尖  
りに、荒々しく口をつけた。  
「きゃああ……ッ!」  
敏感な尖りを熱い舌に絡め取られて、少女が初心な悲鳴をあげた。  
その悲鳴を再び、アンナの唇が塞いでしまう。  
「は……っ、ん、んうっ……、」  
水のなかで、窒息してしまいそうなディープ・キスに喘ぐ少女。  
怯えるその口腔のなかを、アンナの舌が蛇のようにうねり、執拗に蹂躙していく。  
差し込み、吸い付き、舐め、絡め取る。  
巧みな動きで、無垢な聖地を思うがままに蹂躙してゆく。  
くちゃ……ぴちゃ……ぬちゅ……  
「う……! んうっ、んうううっ!」  
 絡み合う舌が立てる浅ましい濡音に、これ以上ないほど羞恥を掻き立てられて、少女はようやく抵抗することを  
思いついたかのように、じたばたともがきはじめた。  
だが、その程度の抵抗で暴走した侍女の束縛から逃れることはできない。  
抵抗する少女の様子に、アンナの獣欲はますますかきたてられる。  
少女の抵抗が手を焼くほどに強まると、アンナは全身を撫で回していた両手の動きを一時的に中断させ、暴れる少  
女のからだを拘束することに集中した。  
背中に回した両手で少女の体をしっかりと固定して、アンナは少女の逃亡を許さない。  
水に落ちて大量の水を含んだ侍女の衣装はずっしりと重く、アンナの動きは大きく制限されてしまっている。  
だが、この年頃における四歳の年齢差は、ふたりの体格に如実に現れている。少女よりも頭一つ分以上も背が高く、  
体格に勝るアンナは、暴れる少女を難なく組み伏せ、身動きを奪うのだった。  
完全に抵抗を封じた少女の身体を、アンナは舌だけでじっくりと味わっていく。まるで猫科の獣が、捕えた獲物を  
生かしたまま食んでいくように。  
濡れた服で組み敷いた少女の裸の乳房を押しつぶし、身動きのできない少女の唇にアンナはじっくりと舌の愛撫を  
加えてゆく。  
「ん……、ふ……、んく……、んう……ぅ」  
冷たい、透明な水に腰まで浸かりながら。震える少女の唇をたっぷりと吸いあげる。  
アンナの舌が熱っぽく、執拗に少女に絡みついていく。  
それは、気を失うほどに長い、長い接吻だった。  
 
「ぷ……、……はぁ。……ぁぁ」  
長い口づけからようやく開放された時には、少女は酸欠のためにくったりと脱力して、抵抗する力をすっかり無く  
していた。  
抵抗する力を無くした獲物に、冷酷な侍女はさらに容赦なく愛撫を加えてゆく。  
くちゅ……くちゅ……ぬる……ぅ  
「お……お願い……。も……、やめ……てぇ」  
力なく訴える少女を無視して、アンナの舌が今度は少女の雪肌のうえを遊びはじめる。  
透明な唾液の跡を残して、アンナの舌がゆっくりと少女の首筋を下っていき、少女の背中に回したアンナの両手が、  
うっすらとあばらの浮いた少女のわき腹をくすぐるように動きはじめる。  
「いや……、いやぁ……!」  
くなくなと首を振る少女の無防備なふたつの乳房にキスの雨を降らせ、南下を続けたアンナの舌が少女のおへそに  
達する。  
震えるその窪みに唾液の池ができるころには、少女の肌を妖しく蠢いていたアンナの指先がついに、少女の下腹の  
最も恥ずべき合わせ目に触れた。途端に、少女は大きく戸惑いの声をあげる。  
「あっ……! だ、だめです。そんなところを触れては……!」  
その言葉に、アンナはぴたりと動きをとめる。  
「『そんなところ』? ……意外です。ノイエ様、ここが何をする場所なのか、ご存知なのですか……?」  
「え……? そ、それは……」  
――ご不浄の、と言ったところでもごもごと口ごもり、真っ赤になってしまった少女の顔を、アンナは嬉しそうに  
覗きこんだ。  
「ふふ……やっぱり、ご存知ない。では、今からわたしが、たっぷりと教えてさしあげます。女の子の『ここ』は、  
用を足す以外にも、いろいろと使い道があるのですよ」  
「そんな……知りたくない。嫌です。もう……やめて……」  
「ご遠慮なさらずに」  
くに、くに、くに……  
アンナの指先が、少女の下腹のふっくらとした柔肉の合わせ目を優しくこね回しはじめる。  
未だ自らの指の進入も知らない、ぴったりと閉じ合わさった処女地の扉を、ゆっくりとくつろげてゆく。  
「……ぁ……、冷た……い!」  
少女の腰は冷たい水の中なので、入り口を開かれると胎内に冷水が浸入してしまう。   
ひんやりとしたその感触に、少女の裸身が震えた。  
「大丈夫。ノイエ様のなか、こんなにも温かいもの……」  
「あ……! だ、だめです! 指を入れては。……いやぁ……っ!」  
「ふふ、かわいい……。でも、『だめ』ではないでしょう? ノイエ様のここ、こんなに喜んでいるもの……。ほら、  
みてください。こんなにひくひく動いて、いやらしい……」  
「ああッ……。……ダメっ!」  
「……なんでも『ダメ』なのね。それじゃあつまらないわ」  
アンナはサディストの本性を徐々に顕にして、怯える少女の柔肉の合わせ目を弄び、嬲りはじめていた。その指先が、  
皮膜に覆われた少女の最も敏感な部位を探り出し、強く抓りあげる。  
 
「……ひ……ッ! ……ぅ!」  
生まれて初めての衝撃に、少女は両目を見開いて、体を弓なりに反らせて硬直させた。  
「聞き分けのない娘には、おしおき」  
「や……、……痛い。……酷いこと、しないで……」  
「痛い? 嘘をおっしゃいな。貴女のいやらしいおま○こ、クリトリスを摘まれてとっても喜んでいるわ。気持ちよかっ  
たのでしょう?」  
興奮したアンナは、女性器の直接的な卑語すら恥しげもなく口にだした。  
その指先は少女の秘肉を大胆に割り開き、温かい処女地に侵入を果たしている。  
アンナの言葉に嘘はなかった。  
二本の指が第一関節まで差し入れられた、少女の狭隘な胎内は、差し入れられた指先をきゅうきゅうと締め付けながら、  
温かな体液を吐き出し始めていたのだ。  
少女がアンナの指技に快楽を感じているのは明らかだった。  
「それとも貴女、痛くされるのが大好きなヘンタイさんなのかしら?」  
「そ、そんなこと……! ……あうっ!」  
反論しようとする少女の女核を、娘の指先が再びキュウ、と締め上げた。  
「う……ぁ」  
「……いい子にしていなさい。そうすれば、うんと優しくしてあげるから」  
「そんな……」  
少女の泣き顔に、さらに嗜虐心を掻き立てられたアンナは、少女の腰を一気に水面の高さで持ち上げた。  
「きゃぁあ……!」  
相手の顔に性器を差し出すような、あまりに恥辱的な姿勢を取らされて、少女の口から悲鳴が零れる。  
「さっきは手で隠されちゃったけど……。ふふ、今度こそたーっぷり観てあげる」  
アンナは宣言の通り、持ち上げた少女の白い太ももを大きく割り開き、自らの顔をその隙間に入り込ませた。  
露わになった少女の神聖な花園を、至近距離からじっくりと鑑賞する。  
「ほー、ほー。こんな風になってるんだ。ふっくらしてて……とっても柔らかそう。可愛らしいおま○こね。それに、  
内側は……とってもきれいなピンク色。匂いはどんなかな?」  
そう言って、アンナはフンフンとわざとらしく鼻を鳴らした。  
「ぁ……、ぁ……あ……!」  
あまりの羞恥に、少女はもはや弱々しく頭を左右に振ることしかできない。  
抵抗しようにも、高々と腰を持ち上げられて、背後にまわした両手で水中に没するのを防ぐしかないこの姿勢では、  
身をよじることすらままならないのだ。  
「ふふ……、とっても恥ずかしいのね。貴女のここ、ひくひく動いてる。可愛い……」  
く……ちゅ  
「ひ……っ、あぁっ!?」  
見るだけで済むはずもなかった。  
アンナはなんの躊躇いもなく、少女の秘めやかな下腹の丘に口をつけた。  
まるで恋人の唇にキスをするように。  
暴れる少女の腰をかかえて、アンナは少女の秘唇に自らの唇をぴたりと重ねた。  
秘唇に舌を差し入れ、巧みな動きで熱く潤いはじめた少女の初々しい胎内を翻弄していく。  
 
「うぁ……! ぁ……、……は……! うぁ、……うあぁっ!」  
練達の巧みな舌技に翻弄されて、体重を支える少女の手ががくがくと震える。  
水中に半ば沈んだ白い細身の裸身が、アンナの愛撫に合わせてビクン、ビクン、と若鮎のように跳ねる。  
ちゅ…… ちゅ…… じゅる…… ず……、ずず……  
「ひ……は……ぁ! 吸ったら……。だ……めぇぇッ」  
イヤイヤと首を振ったノイエが大きく暴れる。  
アンナは秘唇に口をつけたまま、少女の目を見据えてまるで脅迫するように、少女の最も敏感な女の核にぴたりと  
歯を当てた。  
「……ぁ」  
敏感すぎるほど敏感な場所に硬い凶器を押し当てられて、少女は一切の身動きを封じられてしまう。  
「反抗はなしと言ったはずよ。……これから、少しでも抵抗してごらんなさい――」  
アンナの歯が、すでに身をすくませ、降伏の態を示していた少女に突き立てられた。  
カリッ  
それは、十分に加減された軽いものだったが、効果は劇的だった  
「ひはぁああああッ!?」  
今までにない大きな声を上げて、少女は全身を弓なりに反らした。  
同時に、熱い舌に深々と侵入された少女の胎内の、狭隘な処女地の奥の源泉から、大量の暖かい体液が溢れ出る。  
口の中に溢れてきたそれらをすべて飲み干して、唇に零れたものを手で拭ってから、アンナは意地悪くいった。  
「……あら。貴女、ほんとうに苛められるのが好きなヘンタイさんなのね。痛くされるの、好きなんだ?」  
「そ、そんなこと……」  
アンナの歯が、再び不穏な動きを見せる。  
「……ッ!? ご、ごめんなさい、謝りますから……っ! だから……もう……、……痛くしないで……」  
「……いい娘ね。それでいいのよ……。そうしたら、痛くしないから。優しく、気持ちよくしてあげる。……だか  
ら、さあ、力を抜いて……」  
「あ……」  
く……ちゅ……  
アンナの唇が、再び少女の下腹に重ねられた。熱い舌が少女の胎内で蠢き、再び室内に、耳を塞ぎたくなるよう  
な淫靡な濡音が響きはじめる。  
くちゅ……ぬちゅ……ちゅる……、ちゅぷ……  
舐められ、くじられ、吸いつかれて。  
たっぷりと唾液を流し込まれる。  
それでも、少女はもう、抵抗できなかった。  
華奢な体を震わせて、大人しくアンナの愛撫を受け入れてゆく。  
それに気を良くしたアンナの舌と指が、ますます大胆になってゆく。  
愛液に塗れた唇が少女の下腹を離れ、今度は上の唇を貪る。舌で舌を絡めとり、快楽に固さを増した少女の乳房の  
先端を、指先で摘みあげる。  
空いた手が再び少女の秘唇に潜入し、膣の内側から指の腹で少女の女核をくすぐりはじめると、少女の胎内がさら  
なる熱い液体で満たされていった。  
「……ぅ。……く……! ……くぅう……ッ」  
「ふふ、可愛い声ね。でも、我慢はダメよ。……さあ、もっと力を抜いて」  
イヤイヤをするように首を振る少女の真っ赤に染まった耳たぶを食み、アンナはさらに愛撫を重ねてゆく。  
少女の胎内で、少女の肌で、アンナの指がどこまでも妖しく蠢めきまわる。  
どこまでも少女を追い詰めていく。  
「気持ちいいしょう? ほら……、ほら……!」  
「あ……っ! ……まっ、待って……。待ってください。なにか……ヘン。なにかが……」  
「変じゃないのよ。それはとっても自然なことなの。だから、そのまま……」  
くりゅっ!  
「イッちゃいなさいな!」  
「ひぁあああああッ!?」  
無抵抗の少女の女核が、アンナの指によって再度、強く押しつぶされた。  
「……ひ、ど……い、もう、やらないって」  
敏感すぎる媚肉をくじられて、少女は瞳に涙を浮かべて言った。  
そんな少女ににっこりと微笑みかけ、アンナは少女の女核を捉えた指先を、さらに勢いよくうねらせていった。  
 
くりゅ、くりゅ! ……ぐににっ……!  
「……ッ! あッ……!? ひィッ! ……や、やぁ……ッ、……うやぁああああ……ッ!!?」  
少女の口から盛大な悲鳴が弾ける。   
アンナはビクビクと痙攣する少女の愛液に濡れそぼった小さなクリトリスを上下左右に存分にこね回した。  
「や……! ぁ……あっ、……うぁ! ぅぁあああっ!」  
組み敷かれた少女の裸身が今までになく激しく暴れる。少女の脚が水中でばたつき、飛沫が飛び散る。  
「ほら、ほら、ほら……! 気持ちいいでしょう。飛んじゃいそう? それとも、墜ちてしまいそうかしら?」  
「やっ、は、はなして……っ。おねがっ……い、わたし、死んで……!」  
「――あはっ。大丈夫! 死んだりなんかしないわ。……誰が死なせるものですか」  
アンナは笑いながら暴れる少女の唇に手を被せた。  
本当なら唇で塞ぎたいところだったが、これほど抵抗が激しいと、噛まれてしまうかもしれない。  
「んむぅ……ッ」  
呼吸を奪われ、少女の体が急速に力を失っていく。  
少女の力が完全に失われる直前、アンナは塞いでいた口を解放して、その唇にちょんと気付けの接吻を与えた。  
酸欠で呆然となった少女の瞳に、微かに正気が戻る。  
だが、意識は戻っても、体に力が戻るわけではない。少女はもう、動けなかった。  
「あ……、いや……」  
「うふふふ。さあ、これで最後。トドメを刺してあげる。――しっかり見ててあげるから、思いっきりイっちゃ  
いなさいな」  
ひと時も休むことのないアンナの指が、少女の膣口でトドメとばかりに、激しく振動しはじめる。  
くちゃ! ちゅぷ! くちゃ! にゅぱ!  
「あ……! くは……ッ、くぅううぅ……ッ!?」  
清楚な膣口が、信じられいほど浅ましい濡れ音を奏でている。  
激しく注送を繰り返すアンナの手の振動が、少女の全身を大きく前後に揺さぶる。  
アンナは、今や手のひら全体を使って少女の女核をすり潰し、さらに、中指の先を少女の胎内に埋め込んで、  
膣の裏表から女核を同時に強く擦りあげていた。  
「………ぁ! うぁ……! はぁ……ッ! くはあああぁ……!!」  
小さな口をいっぱいに開けて、少女は胎内で暴れ狂う快楽を、なんとか体外に零そうとする。  
だが、そんなことでどうにかなるほど、与えられた愛撫は生優しいものではなかった。  
ぐちゃ……! くちゃ……! ちゅぷ……! ずぷ……! にゅぷぷ……!  
激しく前後するアンナの指先が、どこまでも、どこまでも少女を追い込んでゆく。  
差し込まれた指先が、少女の胎内に限界まで埋め込まれると、少女の体が水の中で優美なアーチを描いた。  
 
その勢いで、背後で自重を支えていた少女の細腕がついに崩れ、上半身が水中に没する。  
水の中に沈んでしまった少女を、それでもアンナは逃さなかった。  
上半身で唯一水面に残った少女のふたつの胸のふくらみの、その先端をアンナの唇が音を立てて吸いあげる。  
限界まで割り開いた少女の股間で、剥き出しの膣口に進入させる指の数を一気に倍に増やす。  
さらに、もう一方の手も少女の下腹に潜り込ませて、少女の敏感な女核を激しく擦り捏ねた。   
「………―――ッッ!!」  
快楽と呼ぶにはあまりに強すぎる衝撃が、水中に沈んだ少女の全身に駆けめぐり、水の中で、少女は無言で  
絶叫した。  
大きく見開かれた少女の瞳が、受けた衝撃の大きさを如実に表していた。  
ビクン! ビクン! ビクン!  
大きく三回、華奢な全身を振るわせて、少女はついに絶頂を迎えた。  
少女の絶頂に合わせて膣口から大量に溢れた愛液が、泉の中に、ゆっくりと拡散していく。  
余震のような最後の痙攣を終えると、少女は秘唇にアンナの指を受け入れたたまま、全身を脱力させていっ  
た。  
その様子を最後までしっかりと見届けて。力尽きた少女をしばしうっとりと見つめたあとで、アンナはゆっ  
くりと、少女を水中から助け起こしてやった。  
少女の胎内に残していた指を抜きとり、ぺろりと舐める。  
それから、アンナは、ぐったりとなった少女の顔を悪戯っぽく覗きこんだ。  
「気持ちよかったでしょ? 気に入ってもらえたかしら」  
「………ぁ……ぅ」  
「答える元気は残ってないか。……でも、まあ、きっとすごく気持ちよかったのよね? おしっこ漏らしちゃ  
うぐらいだもの」  
「……ぁ」   
絶頂の瞬間、少女の膣口から溢れる愛液に、金色の体液が混ざるのを、アンナは目聡く確認していた。  
死にたくなるほど恥ずかしい事実を指摘されて、少女は雪の肌を肩まで朱に染めて俯いてしまった。  
「はじめてなのに、失禁するほど気持ちよかったんだ。……いやらしい娘ね」  
「………うっ」  
囁きかけるアンナに、少女は返す言葉もない。  
微かに嗚咽を漏らし始めた少女に、アンナは優しく口をつけた。  
「ふふ、いいのよ……。いやらしくてもいいの。どれだけ乱れちゃっても許してあげる。これからは、わたし  
が毎晩たっぷりと可愛がって、貴女を今よりももっとスケベで、いやらしい娘にしてあげるわ……」  
言いながら、アンナは水に濡れた自らの侍女服のスカートをゆっくりとまくりあげた。  
少女の目の前で自らの下着を取り払うと、アンナは続けた。  
「でも、まだ夜は、終わりじゃないのよ……?」  
アンナのそこは、少女のものに負けず劣らず、しっとりと濡れて、熱く潤んでいた。  
「さあ、ノイエ。わたしのここに誓いの接吻をなさい、それが誓いの証。貴女これから、わたしの物になるの。  
……ずっと、ずっと、いつまでも。……気が遠くなるぐらい、可愛がってあげるわ」  
囁きながら、アンナは自らの下腹をゆっくりと少女の顔に被せていった。  
自失した少女は、迫ってくるアンナの秘部を避けようともしなかった。  
「……んっぅ」  
アンナの濡れた秘唇が、神々しいほどに整った少女の顔に触れる。少女の鼻先がアンナの敏感な箇所に触れる  
と、アンナは思わずと息を漏らした。  
「あは……っ。ゾクゾクする。もう、最高……っ! こんなきれいな顔に跨れるなんて!」  
言いながら、アンナは少女を見下ろした。  
「……さあ、舌を使いなさい、ノイエ。さっきわたしがしてあげたように」  
冷然と命令を下す。  
その命令に少女もまた従順に従った。  
「ん……う」  
「ふふ……、そう、そうよ……。そうやって、丁寧に舐めるの……。ああ……気持いいわ……」  
物慣れない、ぎこちない少女の舌使いが、逆に興奮をより一層掻き立ててくれる。  
 
そこでふと、アンナは自分がある衝動を我慢していることを思い出した。  
「……わたしったら、いいこと思いついちゃった。ねえ、ノイエ――」  
アンナはねっとりと、自らの股間に埋もれた少女に視線を注いだ。  
「――さっきは、わたしの指におしっこひっかけてかけてくれたわよね? そのお返しに、今度はわたしがお  
しっこかけてあげる。ここの水、とっても冷たいんですもの。冷えちゃって。……それに貴女ったら、ちょ  
うどいいところにいるんだもの」  
熱に浮かされたように囁くアンナだが、その言葉の内容をわかっているのかいないのか、少女はただじっと  
虚ろな瞳でアンナの股間に顔を埋めていた。   
「どう? 覚悟はいいかしら?」  
言葉は疑問系だったが、アンナが少女の返事を待っていないことは明らかだった。  
早口に、次々と要望をぶつけていく。   
「さあ、口を開けて……。ただかけるだけじゃつまらないわ。零さずにぜんぶ飲み干すの。零したりしたら、  
後が酷いんだから」  
少女の女核に脅迫の爪をあてがって告げる。  
だが、その脅迫は無用のものだっただろう。  
少女はすでに、その可憐な唇を開いて、その時を待っていた。  
従順なその様子に、アンナはにっこりと満足の笑みを浮かべる。  
「いい娘ね。それじゃあ……、ほんとうにいくわよ……」  
言い終えると、アンナはふるふると体を震わせ、言葉通り少女の口腔に、温かな黄金色の体液を放っていっ  
た。  
シャァァァァ……。  
神聖な泉に、はしたない放尿の音が響く。  
少女の白い喉が鳴って、その胎内に、小水がゆっくりと収められてゆく。  
少女の顔に陶然と跨がり、自らの小水が収められてゆく少女のお腹を愛おしそうに撫でながら、アンナは  
たっぷりと二分以上もかけて、貯まっていた小水を残さず少女の口に注ぎ込んでいった。  
その行為の余韻を十分に味わってから言う。  
「……あは。ほんとうに飲んじゃった。これで貴女、もう戻れない。……いいわ。これからはほんとうに、  
わたしがあなたのご主人さまになってあげる。責任を持って飼ってあげるわ。だから、さあ。もっとわた  
しに尽くしなさい、――ノイエ」  
「は……い」  
アンナの濡れた陰毛の下でそう囁くと、少女は小水に濡れた可憐な舌を、ゆっくりとアンナの秘唇に這わ  
せていった――。  
 
「あの……もしもし?」  
ふと気がつくと、ひんやりと冷たい手がアンナの額に触れていた。  
アンナはそこで、ふと我に返った。  
目の前には、未だ心配そうに彼女を見つめる少女の顔。  
そして、いつのまにか、桟橋に横になっている自分。  
(は……、あれ? ゆ……幻覚? わたしは今、一体何を……)  
――しているのだったか。  
解答はすぐに得られた。  
彼女はいつのまにか、少女に見蕩れて、のぼせて倒れてしまっていたのだ。  
(な、なんてこと……!)  
アンナの顔から、血の気が引いてゆく。  
それから彼女は、いまだに酷く心配そうに自分を見ている少女の視線に気がついた。  
「あ……、その……、と、とにかく、……ご心配なく!」  
裏返った声で叫ぶように告げると、跳ねるように立ち上がった。  
平気であることをアピールして無意味に体を動かす。  
大きく深呼吸して、無理やりに気を落ち着ける。  
何度か深呼吸を繰り返した後、アンナはようやく気を落ち着けて、ふと下を見た。すると、彼女のそばで  
跪いていた少女があっけに取られたように、アンナを見上げていた。  
目の前で急に倒れたかと思ったら、今度は急に立ち上がって、元気に動き、深呼吸を始めたのである。  
さぞびっくりしたことだろう。  
小さな口をぽかんと開けて彼女を見上げるその表情は、14歳という少女の年相応にあどけなかった。  
その表情にほっと心が和む。  
――と同時に、  
(わたしったら、本当に、いったい何を……)  
先ほど脳裏に描いた妄想を思い出して、アンナは身震いをした。  
――こんな、いたいけな少女に欲情してしまうとは。  
それでなくとも、今は戦時なのだ。  
早ければ明日の夜にも敵国の大軍が王都を包囲しようかという非常事態なのである。  
そして、先の戦でほとんど壊滅に近い損害を被った月の女神の教団において、ノイエは、ただ一人残され  
た高位の神術使い(ルキアナート)なのである。  
今の教団に、迫り来るトラキアの魔術師団に対抗できるほどの力ある神術を扱える者は、先の戦に参戦を  
許されなかったノイエを除いていない。  
今夜の儀式で、ノイエは王都全体を覆う巨大な神術の防御結界を発動させる。  
それは、王国の命運がかかると言っても少しも過言ではない重要な儀式だ。  
その大儀式を執り行うために、ノイエは今まで丸三日間も禊を続け、そして今夜、決行の時を迎えようと  
している。  
――それを、こともあろうに、侍女の自分が。  
――彼女をサポートする立場にいるはずの者が。  
仕える対象に欲情し、心を乱してしまうとは。  
大事な儀式の前なのに。いたずらに心配をかけ、混乱させてしまうとは。  
さらには。  
運よく妄想の内に止まり、未遂に終わったものの。  
もし、万が一、あの穢れた妄想を、実行に移してしまっていたとしたら――  
慙愧の念に捕らわれ、アンナは泣きたくなってきた。  
それでも、目の前の少女にこれ以上無駄な心配をかけるわけにはいかない。  
震えながら、なんとか涙をこらえる。  
 
目の前で赤くなったり青くなったりと、なにかと忙しい、そんな彼女を、ノイエは不思議そうにみていた。  
それから、すぐに得心したように頷いて、言った。  
「わたしがまだ子どもだから、不安なのですね?」  
王国にとって今夜の儀式は真に重要なものだ。  
その主祭祀が自分のように頼りない小娘だから、不安で動揺しているのだろう、と少女は考えたのだ。  
「――え?」  
すぐには意味が理解できず、問い返してから、アンナははっとなった。  
「そ、そんなわけでは――!」  
だが、少女は構わず続けた。  
「気持ちは、わかります。わたしが貴女の立場でも、きっと不安に思うでしょうから。――でも、大丈夫。  
わたしはきっと、うまくやります。  
皆が言うように、わたしの技術はまだまだ未熟ですけれど。それでも、この儀式だけは、必ず成功させて  
みせます。だから、安心して見ていてください」  
そういって、少女はにっこりと微笑んだ。  
気負いのない笑みだった。  
凍りついていたアンナの心が、その笑みにじわりと蕩ける。  
少女の推理はまったくの見当違いだったが、だからといって、アンナがこの時まで、少女が執り行う儀式  
の成功を信じて疑っていなかったかというと、そんなことはなかったのだ。  
むしろ、少女の言う通りだった。  
先の戦での歴史的大敗。  
その逆境を挽回する為に、今回、王国神殿騎士団長バフマン・オードの指揮で行われる、今回の防衛戦。  
その要である今夜の儀式は、《聖王国》の長い神術の歴史の中でも例のない、大規模な儀式になると言わ  
れていた。  
それを、以前からその才を認める声は聞かれていたものの、まだ年若い14の少女が執り行うことに対し  
て、王国の重臣たちの中にも反対意見が多かったという。  
結局のところ、ノイエがこの儀式の主祭祀を任されたのは、他に人がいない、という一点の理由からきて  
いるのだ。  
この部屋に入ってからは、少女に美貌に見惚れてしまって、そんなことはすっかり忘れてしまっていたが、  
少女に指摘されたように、アンナもまた、王都に住む他の人々と同様、今回の儀式の成功に大きな不安を  
持つ者の一人だったのだ。  
だが――、それも、少女の笑顔をみたらきれいに消えてしまった。  
欲情も、後悔も、何もかも一緒に。  
少女につられて、アンナもまた、心からの笑みを浮かべた。  
信頼の言葉が、自然と口をついてでる。  
「信じておりますとも。そして……、無力ながら応援しております。だから、どうか、頑張ってください  
ませ、ノイエ様」  
「まかせてください」  
きっぱりとアンナに答えて、少女が細い腕に力こぶを作ってみせる。  
そのポーズがあまりに似合わなくて、アンナは思わず吹き出してしまった。  
 
その華奢な身体に、王国の期待と不安を一身に背負って。  
想像もつかないほどの重圧を感じているはずなのに――。  
目に涙を浮かべて、くすくすと笑いながら。  
アンナは、こんな状況でも人を気遣う余裕を忘れない少女を、心から敬愛した。  
そんなアンナをみて、ノイエは気を取り直したように言った。  
「さあ、それでは着付けの手伝いをお願いしますね。急がないと遅れてしまいそう」  
少女に言われて、アンナは自分の役目を思い出し、大慌てで着付けの準備をはじめた。  
王国の命運を決する儀式が、今、始まろうとしている。  
 

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