「ある冒険者の夜7」(END)  
 
私はうっすらと光る壁に寄り添い、右手で大きく膨らんだお腹をなでる。  
左手は私の側で横になって寝ている、セスナの頭を優しくなでていた。  
時折うなじの辺りをなでてやると、気持ちよさそうに喉をならす。  
猫みたいな仕草を見て、側にいたミアは微笑んだ。  
セスナが受精してから、私、ミアと順番に受精させられ、  
今までいた部屋の反対側に、私達は移動することになった。  
サレラさんは出産のために連れて行かれ、そして他の女性達と同様に  
通路の奥へと運ばれていった。  
ここに連れてこられてから、どれだけの時間がたったのか・・・  
もう数える事もやめてしまい、今はただゆっくりと時間をすごすだけだった。  
 
ズキンッ!  
 
「くううっ」  
突然ズンッと痺れる様な痛みが私を襲い、私はお腹を押さえた。  
「はっ・・はっ・・・」  
私は痛みでうずくまり、体を小刻みに痙攣させる。  
私の悲鳴で眠っていたセスナは目を覚まし、起き上がると  
心配そうに私を見つめた。  
「先輩・・・」  
そう、生まれるのだ。  
症状は陣痛のそれだった。  
 
「だいじょうぶ・・」  
私は気丈に振る舞い、2人に笑顔を見せる。  
そして私は2人に順番に唇を重ね合わせた。  
暗い部屋の中に化け物がやってくると、苦しむ私を抱え上げ、部屋を出る。  
「先輩・・・」  
「アイミス・・」  
残された2人は、ただ呆然と私が運ばれていくのを見ているしかなかった。  
化け物の腕の中で、私は少しでも痛みを和らげようと、荒い息を吐く。  
私の腹部を襲う痛みは、徐々に徐々に強くなっていった。  
私はだんだん意識が朦朧としてくるなかで、強くなっていく痛みに耐え続ける。  
(いたい・・いたいいぃ)  
「たすけ・・てぇ・・いたいぃ・・」  
弱弱しく首を振り、涙ながらに化け物に救いを求める。  
化け物はそんな私を気にもとめず、ある部屋へと入っていった。  
私が連れてこられたのは、一面の壁が光ゴケに覆われた部屋だった。  
私はその中央に鎮座する台に横に寝かされる。  
寝かされた私の側にでっぷりとした化け物が3体近寄ってきた。  
そしてそれぞれの触手で私の手足を強く拘束し、一本の触手が私の口の中に潜り込んだ。  
「うぐぅ・・・うぐう」  
ますます強くなる痛みに、私は口の中の触手を強くかみ締める。  
そして化け物達は、私の股間を覗き込むと、なにかの液体を塗り始めた。  
丁寧に丁寧に奥まで液体を塗りこんでいく。  
 
「ぐうぅっ、うぶうっ」  
ズンッズンッと痛みの感覚が徐々に短くなり、ついにその瞬間がきた。  
 
メリッ  
 
という音と共に出産が始まった。  
「うぐぁっぁぁぁあぁ!あがぁあっぁあっぁぁぁぁぁあぁぁあ!」  
お腹の中を内側から割り広げられ、その強烈な痛みに私は絶叫した。  
口にはまった触手の隙間から、悲痛な叫びが放たれる。  
(痛い!痛い!いだいぃぃぃ!)  
顔を振り乱し、全身を暴れさせて、この痛みが早く終わるように祈り続ける。  
 
ズルッ  
 
私の股間で何かが這い出るような音がした。  
「あがぁぁぁぁぁぁああぁあぁあ!」  
胎内でナニかが動くたびに、痛みはさらに激しさを増していく。  
 
ズルルルルッ  
 
その次の瞬間、一気に胎内にいた物が外に流れ出した。  
「ふぅぎぃぃぃぃぃっ!」  
強烈な痛みが私の意識を襲い、私は白目をむいて体を仰け反らせる。  
心臓が早鐘のように脈打ち、全身をガクガクと痙攣させて、私は意識を手放した。  
 
 
私はゆさゆさとした揺れで意識を取り戻した。  
顔を上げて見ると、化け物が私を抱えて歩いているようだ。  
私は自分の下半身に目をやる。  
大きく膨らんでいたお腹がへこんでいた。  
(私・・・生んじゃったんだ・・・)  
つらい現実が私を襲い、たまらない屈辱感に両手で目を覆い、  
「うっ」「うっ」としゃくりあげる。  
「先輩!」「アイミス!」  
2人の声が聞こえた。顔を向けると2人がいる部屋が見えた。  
私は涙をぬぐった。  
今までの女達と同じように化け物はそのまま牢の前を素通りしていく。  
「だいじょうぶだよ・・・がんばろう」  
牢にすがりつき、心配そうにみつめる2人に私は笑顔でそう言った。  
2人は涙を流して、牢から顔を出し、私の名前を呼びつづけていた  
私は声を出さないように肩を震わせて泣いた。  
ふと周りが明るくなり、私は顔をあげた。  
その部屋は出産の時にいた部屋と同じように、壁一面を光ゴケで覆われている。  
しかしその広さは比べ物にならないほど広かった。  
部屋の中にはいくつもの巨大な花と花のつぼみがあった。  
 
「ひぃ・・・」  
私はそのつぼみを見て、悲鳴をあげた。  
閉じたつぼみの先からは女の首が出ていたのだ  
見回すとつぼみになった花には必ず女の首がひょこっと出ていた。  
(あれはサレラ・・)  
つぼみのひとつにサレラを発見した。サレラは目を閉じ眠っているようだ  
化け物は戸惑う私を、開いた花の上に立たせた。  
 
シュルッ  
 
花はアイミスを包むように閉じ合わさり、他の女達と同じように首だけが出る状態になった。  
化け物は、花がちゃんと閉じ合わさったのをみると、部屋を立ち去っていった。  
「ちょっ・・・ちょっと」  
私は部屋に取り残されてしまった。  
動く事もできず、ただ周りを見回すことしかできない。  
 
ニュルッ  
 
と足元で何かが絡みつくのがわかった。  
「ひっ・・なに!」  
その何かはにゅるにゅるとふくらはぎ、太腿と徐々に上へ上へと絡み付いていく。  
「んっ・・・いや・・」  
なにかは腰、上半身へと私の体をがっちりと固定していった。。  
「んんんんっ!いたいっ・・」」  
体を這い回ってたうちの一本が秘唇を割り開き、中に進入してくる。  
出産のために傷ついた股間で、鈍い痛みが襲い私は悲鳴をあげた。  
なにかは、そのまま子宮口付近までゆっくり到達すると、  
 
ドクッドクッ  
 
と熱い粘液を吐き出してきた。  
(あ・・・あついいぃ!)  
粘液が傷口にしみ、私は苦痛と不快感で身悶えする。  
胎内で何度も何度も粘液を吐き出され、あふれ出た粘液がふとももを伝い、足元にたまっていった。  
 
ヌププッ・・  
 
「あぅぅうぅ・・・」  
アヌスの方にもなにかが進入し、最奥にまで到達した。  
(また犯されてしまうの?・・・)  
私は不安感でいっぱいになり、まわりを見渡すが部屋は静寂につつまれ、動くものはなに一つない。  
「あ・・・あれ・・な・・・に・・・」  
徐々に下半身の方から甘い花の匂いが漂ってきた。  
(なに?・・・・ね・・眠い・・・あ・・・)  
花の匂いは私の意識をもうろうとさせ、私はまぶたを閉じて深い眠りについた・・・。  
 
 
「おいっ!大丈夫か!?」  
ペチペチと頬を叩かれ、その刺激で目を覚ました。  
私は目を開けると、目の前には鎧を着込んだ戦士の姿が見えた。  
(ここは・・・・!)  
私はなんとか体を起こし、周りを見る。  
私が最後に意識を失った花の部屋だった。  
私が寝かされた花のまわりを鎧を着た男達が忙しそうに走り回っている。  
「おおっ!無事か!これが何本に見える?」  
戦士は私の目の前に4本の指をかざした。  
「・・・4本」  
「意識はちゃんとしてるか・・よかった」  
目の前の戦士は他の戦士に毛布を借り、私にそっとかけてくれた。  
徐々に私の意識ははっきりと正常な思考を取り戻す。  
「あ・・あいつらは・・・」  
目の前の戦士に聞いた。  
「あぁ。あいつらは全滅させた、かなりこちらも被害がでたが一匹残らず倒した。安心したまえ」  
そう戦士は笑顔を見せて、言った  
それを聞いて私は「ふうぅ」と息をついた。  
「先輩〜〜〜」  
声のした方向を見ると、毛布を羽織ったセスナが駆け寄ってくるのが見えた。  
セスナは私に抱きつき、涙を流して喜ぶ。  
私の頬に、何度も何度も自分の頬を擦りつけてきた。  
「アイミス・・・」  
私の横にミアが近寄り、セスナと同様に抱きついてくる。  
ミアは控えめに、しかししっかりと私を抱きしめてくれた。  
(私達助かったんだ・・・)  
張り詰めていた糸が切れてしまったのか、私の目から涙がこぼれてきた。  
 
「あんた達も耐えられたようだね・・」  
その声の方向に目を向けると、戦士に肩を借りて立つサレラがいた。  
サレラは化け物の子をまた孕まされたのであろう。  
大きくなったお腹を押さえ、青い顔で苦笑いを浮かべる。  
「サレラ様。ご無事で!」  
部屋にいた戦士を指揮していた男がサレラに向かって敬礼する。  
「無事に見えるのか!このタコ!」  
サレラは男をどなりつけると、3人の側で腰を降ろす。  
「あなたは・・?」  
そうミアは尋ねた。  
「この国の将兵なんだ。国王に最近この辺りで起こっていた女性失踪事件を調査に来てた。  
 化け物が原因だとは突き止めたものの、調査隊の人数ではどうしようもなくてね。  
 こいつらのねぐらは伝令で伝える事が出来たはずだから、いつかは助けに来る。  
 そう思ってた。」  
「教えてくれてもよかったのに」  
セスナは頬を膨らませてすねた様な表情を浮かべる。  
「”はず”って言ったろ。ちゃんと伝わったかどうか確認がもてなかったのさ。  
 あんたたちが連れてこられた時、私も届いてないんじゃないかと不安になってたしね・・」  
サレラがギロッと戦士達をにらむと、男達は青くなった。  
サレラは側にいた戦士に肩を借りて立ち上がると、私達を見た。  
「あんた達はどうする?とりあえず首都の魔法院で体調を調べた方がいいと思うが?」  
私達は顔を見合わせた。  
「ちゃんと経費はこっちもちでいいさ。お互いひどい目にあったんだ」  
サレラは軽くウィンクをする。  
「ではお世話になります」  
私はそう頭を下げた。  
 
そして私達は数ヶ月ぶりの朝を迎えた。  
 
END  
 

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