戦場の一角、円を描くように立った多くの兵士の中心で一組の男女の騎士が剣を交わしていた。  
男の騎士は帝国、女騎士は王国の紋章をそれぞれ鎧につけていた。  
 
つい三年程前までは友好的な関係を結んでいた平原の王国と山岳の帝国は、二年前に急死した先王に変わって即位した先王の弟の統治になってから急速に関係が悪化、半年後には王国側からの宣戦布告が出された。  
そして今―――  
 
「せいっ!!」  
男の騎士の鋭い一閃。  
30分近く続く戦いの疲れから動きの鈍った女騎士はそれを捌けず、振りぬかれた剣は彼女の首を空へと放り上げた。まるで、男の想いをも一緒に投げ捨てるかのように。  
 
二人の騎士は四年前に出会い、深く愛し合った。婚約も交わしており、戦争さえなければ幸せな家庭を築いている筈だった。  
しかし神は非情にも二人を戦場で出会わせた。  
それぞれに部隊を率いる身分であったが、無用の流血の回避、そして許されぬ恋の清算の為に一騎打ちを取り決めた。  
 
配下の兵が女騎士の部隊を捕虜として捕らえる最中、男は涙を流して恋人の首を抱いていた。  
その姿はDIOの首を抱えるジョナサンのようで―――  
「ね。ねえ…鎧が痛いよぅ…」  
 
「うおわっ!?」  
突然腕の中から聞こえた声に、思わず首を取り落とす男。  
「みぎゃっ!!」  
顔面から大地へダイブして可愛い悲鳴をあげる生首。その声に周りにいた数名兵士達も反応する。  
特に王国兵は死んだ筈の指揮官の声なので困惑した。  
続いてガシャガシャという鎧の音。首のない女騎士の体が動きだす。  
今度はほぼ全ての兵士が気付き、パニックが起こる。  
騎士が咄嗟に彼女の首を拾いあげると  
「バカ、痛いじゃない!!恋人の首を落とすなんて最低!!」  
元気に文句を言ってくる。  
結局、男はひたすら困惑するだけであった。  
 
 
兵士達を落ち着かせ、二人地面に座り話を聞く。  
曰く、『愛の力で復活したのよ!!』との事。なんだそれってツッコむと『うるさいうるさいうるさい!!あんたの意見は許可しないィィィィィ!!』  
作者がシャナとジョジョが好きな事が追加で分かった。  
首は繋がってないものの、やはり彼女は素敵だ。部下が見ているがこの喜びを伝える為に口付けを――  
 
冷やっこい。触れた唇が冷たい事に底知れぬ恐怖を感じる。まるでケツの穴にツララを略  
それに気付きもせず、自分の頭を弄びながら「……暖かい」とか言いつつ赤面―――もしてない!!  
 
「おい、ありのまま今起こった事を話すぜ…お前の体、冷たいし、血の気もない…」  
最初の真面目なふいんき(何故かry)がギャグに流れている。  
「ん…じゃあ、やっぱり私死んでるんだ。なら尚更良いや」  
あっさりとした答え。  
「だって、私は王様に『死ぬまで』忠誠を誓ったのよ?これでずっと貴方の所にいられるわ。  
それとも、貴方の愛は私が死んでるってだけで壊れちゃう物なの?」  
嬉しい事言ってくれるじゃないの。  
「いや、そんな事はない。ただ――そうだな、問題になりそうなのはHする時に風邪引くんじゃって事が心配だな」  
冗談めかして言う。まあ、さっきから地の文が冗談めいてるが。  
「アハハ、それじゃ今すぐ風邪引く?」  
「それは御免被るな、ハハ…」  
明るい会話に、男の部下の一人が報告に来た。  
「隊長、捕虜を収容する準備が整いましたが……この女…」  
ボコ。失礼な部下を拳骨で窘める。  
「失礼、このレディはどうするんですか?」  
まあ、確かに。生ける死者への対処なんて前例がない。  
「私が娶る。異論は?」  
「異論は部下一同何もないですが、案じる事は。敵国の者を娶って良いのですか?それにゾンビは」  
ゴツッ。先よりも強く殴る。  
「失礼、生ける死者は邪神の使いとされています。立場的にもマズいのでは?我々は祝福しますが…」  
尤もな意見を言い、冷静に対策を考えてもらおうとする。  
「フハハハ、私達の恋路には障害が多い…その方が燃える!!」  
「そうよ、私達の愛は死をも超えたの!!」  
バカップル臭い発言にこんな風(→orz)になる部下。  
自分にBeC∞Lと言い聞かせる。  
「冷静になってください、彼女を娶るのは結構ですが、それを叶える手段を考えないと正義気取りの厨クサい宗教人に処刑されますよ?」  
「うーん…生きてるふりして捕虜になるのじゃ駄目かしら?」  
「その首をどうにかできれば。それに女性の捕虜の扱いは酷いですから、愚かな兵士にズコバコされたり…ああ、それで体温にも気付かれて処刑ですね」  
「私の領地の屋敷に連れていくのは?」  
「彼女だけ行かせたら戦場から抜ける前に見つかってその場で敵として処刑。隊長が連れてくのも敵前逃亡で処刑」  
 
 
 
最終的に小煩い部下の鎧(規格品)を剥ぎ取り、それを彼女に着せて騙す事にした。  
細部(主に胸部)に違和感があるそうだが、大体のサイズが一緒で助かった。  
こうして二人は戦争の終結まで過ごした。  
 
 
 
帝国軍の凱旋も終わった。  
馬車に揺られてようやく二人は男の領地の城に帰った。いや、女は帰ったんじゃないけど。  
女は現在、首都で仕立てたきらびやかなドレスを着ている。傍から見て彼女の格好に不自然な点はピンと張ったヴェールくらいしか見受けられない。よーするに、首がとれないよう押さえ付けてるわけだ。  
「これで、思いっ切り風邪が引けるね」  
「かなり昔のジョークを持ち出してきたな。どんだけ前の話だ?」  
特に設定はない。そんなこんなで城に着く。  
不在の間も城を管理していた執事メイドの類に妻を紹介して周る。色々と隠しつつ。  
そんなこんなで夜になる。  
 
 
さてさて、女の体はかなりご都合主義で一般人との違いが呼吸してない事と体温がない事、そして首が取れてる事しか無いのである。  
食事は口からして、排泄は体がするのはなんとも奇妙な話であるが気にしてはいけない。  
 
 
戦場ではとても時間がとれず、二人は今宵初めて体を重ねる。  
ベッドの上で口付けを交わす二人。  
その間手持ちぶさたな女の体は放って置かれてるのがなんともシュールであるが、熱烈なベーゼは二人を昂ぶらせていく。  
長く唇を重ねていたが、ようやく男が口を離す。  
「ぷは、はあ…窒息するかと思った…」  
「クス、貴方はまだまだ呼吸しなきゃいけないものね。どう、イッペンシンデミル?」  
「いや、それは流石に…」  
殺しあったなんて嘘のように仲がいい。  
彼女の頭を枕に置き、体を抱きよせる。柔らかくヒンヤリした死体…いや、肢体が心地よい。そっと、優しく胸を愛撫する。  
「んっ…いいよ……」  
離れた場所から声がする。その可愛い鳴き声をもっと聞きたいとばかりに愛撫を続ける。  
すぐに声が甘いものになり、女の下半身からは蜜が溢れだした。  
 
「指、挿れるね」  
男の言葉に頷く……ようなアクション。首がないから頷けない。  
ツプと沈み込む指を、膣壁がキツく締め付ける。  
「ああ…冷たい…」  
「あっ、あっ!!あなたぁ、熱いよぅ!!」  
体に、片や冷気を、片や熱気を感じる。溢れる蜜がその量を増す。  
更に行為はエスカレートする。  
「ちょ、バカバカ、どこ見てんのよ!?」  
女の脚を大きく開き、その股間、更に秘部までを指で開いて凝視。恥ずかしいにも程があるってものだ。  
そんな事を意に介さずに  
「綺麗だ―――うん、本当に綺麗。お前にも見せてやるよ」  
言って、彼女の頭を彼女自身の股間へと運ぶ。  
「や、やだぁ…もう…あなたのせいで、私、こんないやらしく…」  
満更でもない様子。  
十分に濡れている事を確認し、本番への移行を問う。  
彼女は顔を真っ赤にして……いるような、恥ずかしげな顔で一言、良いよと呟いた。  
 
「じゃあ、挿入れるね」  
「優しくしてよね」  
男は自らの分身をあてがうと、一気に挿し貫いた。  
彼女の体はそれをすんなり受け入れ、ズッ、ズッとピストン運動が繰り返される。  
肉棒が奥に届く度、嬌声が上がる。  
「うあっ、んあぁっ!!いい、いいのぉ!!中にいっぱい感じるのぉ!!」  
昂ぶり続ける二人。それと共に腰の動きも加速していく。  
そして――――  
「来る、来るよぉ!!何か来ちゃう!!来る、くる、くりゅぅぅぅぅぅ!!」  
「私も…もう、限…界……だ………」  
びゅっ、びゅるるるるるるるるるるる!!  
二人は同時に果てた。  
 
 
 
 
「今、分かった事がある」  
「何?」  
二人は裸でベッドの上、他愛のないおしゃべりをしている。  
「自分の体がカッカして、案外平気だ」  
いつぞやの冗談への回答。  
「ああ、そうなんだ……へーちょ」  
返事をして―――くしゃみ。呼吸しないのに何故かくしゃみはする。  
「あ、あれー、どしたのかなへくしょっ!!」  
「おい、まさかこの展開は……」  
 
そう、結局そのまさかで―――風邪に苦しむアンデットなどという世にも珍しいものを見る事になった。  
 
了  
 

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