※注意※  
このSSには以下の要素が含まれます。  
アレルギーをお持ちの方は誤って読み進めないよう注意してください。  
 
内容物:排便(遺伝子組み換えでない)  
 
 
 
 なんの声だろ?  
 あたしは貸出カードに小浜穂乃香(こはまほのか)と記名し終えると、さっきから気になっていた声に改めて耳を傾けた。放課後の図書室の中には、誰の姿も見当たらないのに。  
 かすれかすれの苦しそうな、呻き声みたいなものが聞こえてくる。  
「は……あ……ん……くっ……」  
 女子の声だ。  
 
 誰かが苛められてるとか?  
 やだなあ。4月にこの高校に入学してから数ヶ月経った今日、初めて図書室に来たっていうのに、いきなりトラブルに遭遇しちゃうなんて。でも無視するわけにもいかないし。  
 夕日に赤く焼かれた本棚の隙間を、足音を立てないよう慎重に進んでいく。  
 そうして音源を辿ると、正面に図書室の一番奥、小部屋に通じるドアが現れた。ドアの上のプレートには『雑誌・新聞閲覧室』って書いてある。  
 あたしは部屋の前まで来たところで気付いた。これ、苛めじゃない。  
「んふ、んあぁ……そこよ……そのまま……」  
 ちょっと鼻にかかった媚びるような女の子の声音。  
 苦しそうっていうより、なんていうか、その、気持ち良さそうっていうか。  
 中からはひとり分の声しかしないけど、やっぱりこれって、もしかして……。  
 
 喘ぎ声。うん、喘ぎ声だ。そうとしか言いようがない。  
 人がたまに勉強しようと思って図書室へ本を借りに来たら、これだ。真面目に勉強するための場所でエッチな声を出してる人が居る。どんな変態なの、まったく!  
 よーし、変態の顔を確かめてやる。  
 あたしはドアノブに手を掛けて、ゆっくりと捻る。女子の声のリズムに合わせて動いて、音で気付かれないようにしながら薄く隙間を作った。これで中からの声を遮る物はない。  
「そう、動いて……あふっ! んぅ、そう……そうよ、あっ……!」  
 なんか聞いてるだけであたしが赤面しちゃいそう。ていうか、もうしてるかも。  
 言葉の内容からするとあとひとりくらいは居るのかな?  
 目でも確認できるようにドアと壁の隙間を大きくしていく。  
 あたし、覗きみたいなことしてるかも。でも、こんなところで変なことをしてる方が悪いんだよね。もし相手に見つかったって恥をかくのは向こうだもんね、うん。  
 
 広げた隙間からゆっくり部屋の中を見回してみる。机と椅子の奥には雑誌の収められた棚が並んでいて、そしてその棚と棚のあいだから誰かの脚が伸びているのが見えた。  
 誰かは床に寝転がって両脚を広げているみたい。あたしの位置からだと顔は棚に隠れてるけど、両脚の付け根、股間は隠れてない。  
 うわ、この人、下着を穿いてないよ。めくれ返ったスカートの中の大事な場所を守る茂みが、全然隠せてない。他人のあそこをこんな風に見るなんて初めてかも……。  
 でも、それ以上にあたしの注意を惹きつけたのはその下、お尻の穴の辺りだ。  
 お尻の穴、なんだよね? その誰かは仰向けになって両脚を立てているせいで、トイレのための窄まりも見えちゃってる、はずだ。なのにその窄まりがあるはずの場所からは細長い円錐形の尻尾が生えてる。ヘビかトカゲの尻尾に似ているけど……。  
 
 その尻尾はうねうね揺れて生きてるみたいだけど、人間に尻尾が生えるわけがないよね。  
 でも、じゃあそうすると、あれはお尻の穴になにか生き物が入ってるってこと?  
「奥ぅ……もっと奥にぃ、くふっ!」  
 声は、嫌がってるようには聞こえない。  
 つまりこの人は好きでお尻にヘビかなにかを入れて、それを楽しんでるんだ。  
 せいぜいひとりエッチをしてるくらいだと思ってたのに、本当に本当の変態じゃない!  
 あたしは急に怖くなって後退りをした。  
 関わり合いにならない内に帰らなきゃ。そう思ったのに。  
 背中が本棚に当たって、一冊の本が落ちる音が図書室中に響いた。  
 
 残響が漂ったのも一瞬。  
 すぐに図書室の中から音は消えて、静かな耳鳴りしか聞こえなくなった。  
 変態の声も聞こえなくなってる。コクリ、と自分が唾を飲む音が耳鳴りをかき消す。  
 立ち尽くして動くに動けないあたしの前で、内側からドアが開かれた。  
「見た?」  
「み……」この人、知ってる。「……見ました」  
 あたしはもう一度、コクリと喉を動かした。  
 
 変態の正体は2年生の女子だった。1年生のあたしでも知ってる有名人だ。  
 敦賀璃奈(つるがりな)先輩。  
 彼女はスレンダーな長身に、黒のロングヘアーを垂らしている。ボリュームのあるその黒髪はお尻まで伸びていて、背中を覆いつくすくらいなのに変なクセもない。  
 胸は大きくて形も良さそう。腰もお尻も長い脚も、非の打ち所がない。  
 それになにより顔が綺麗過ぎる。優しい大人のお姉さんって感じの雰囲気なのに表情や仕草は子供っぽい、と男子が話していたのを聞いたことがある。いまあたしを見下ろしている彼女は少し困ったような表情だけど、綺麗さは噂以上だ。  
 良過ぎるスタイルと長過ぎる黒髪と綺麗過ぎる顔。どれも不自然なんだけど、悪い不自然さじゃない。多分、彼女の周りに額縁があれば自然な雰囲気になると思う。  
 
 だけど、学校中の男子どころか一部の女子まで憧れの眼差しを向けるこの敦賀先輩が、さっきまでお尻になにかを入れて変な声を出していた、変態の正体なんだ。  
「人払いのおまじないはしたのに……熱中し過ぎて緩んじゃったのかしら」  
 小首を傾げて口に手を当てる先輩の仕草は、なるほど、子供っぽかった。  
 呟きの意味はよくわからなかったけど。  
「なんであんなこと、こんなところで……」  
 いますぐ逃げ出して関わり合いにならなければいいのに、なぜか脚を動かす気になれない。あたしはつい、先輩の顔を見上げてしまってた。  
 変態の敦賀先輩は、なんでもない質問をされたみたいにくすっと笑う。  
「気持ちいいのよ? 家でするよりも、学校みたいな場所でした方が」  
「お尻にあんなことをするのが、ですか? あんな……」  
 先輩は開き直ってるの? それとも、あたしがなにか勘違いをしているだけ?  
 慌てもしない先輩の様子に口篭っていると、足元でなにかが動いた。  
 
「ひゃあっ!?」  
 ヘビだ。縞模様のヘビ!  
 驚いて尻餅をついたあたしの横を、腕くらいの長さをしたシマヘビがにょろにょろ身体をくねらせて通っていった。本棚の陰に消えたそのヘビが這ったあとには粘液状の跡が残される。ヘビがこんな粘液を出したっけ? なにかに濡れてたってこと?  
 転んでいるあたしの前で中腰になった敦賀先輩が、微笑んで手を差し伸べてくる。  
「ふふ、あなたもお尻にヘビさん挿れてみない?」  
「挿れっ……!?」やっぱり、やっぱり勘違いじゃなかった!「触らないで、変態!」  
 力一杯、彼女の手を払い落とす。叩いたあたしの手もじんと痺れた。  
「いったぁい。そんなに怒らなくてもいいでしょう?」  
「へ、変態のクセに! 最低! 寄らないでよ!」  
 学校で、お尻に、ヘビを使ってなんて、理解できない。気持ち悪い。  
 
 それに変態行為を見られたのに、取り乱しも恥ずかしがりもしない彼女が怖い。  
 この人、普通じゃない。  
「へーえ、そうなの。私って最低の変態なのねえ」  
 すう、と先輩の目が細められた。それだけでさっきまでの子供っぽさが消えたみたい。  
 四つん這いになって、鼻先がくっつきそうなくらい顔を近付けてきた。  
「私ね、魔女なの」耳元で囁かれる。「あなたにヘビさんはもったいないから、もう挿れてあげないわ。だけど、あなたも最低の変態にしてあげる。私よりも最低の変態に。私でも気持ち悪くなるほどの、最低の変態以下にしてあげる」  
 催眠術でも掛けるみたいに繰り返してくる。  
 あたしは思い切り罵倒して逃げようとするのに、なんでか口も身体も動かない。  
「そのための、魔女のおまじないをしてあげるわ」  
 先輩の手があたしのお尻に伸びてくる。  
 尻餅をついたまま脚を広げてるあたしはスカートも乱れてて、無防備だった。  
 ショーツの上から、つん、とお尻の穴を突付かれた。  
「ひ……!」突付かれた場所から嫌悪感が爆発して「触るなっ、変態!」  
 あたしは衝動的に先輩の腕を蹴上げると、勢いよく立ち上がって出口へ向かう。さっきまで動けなかったのが信じられないくらいすばやく動くことができた。  
「同じ時間にここへ来れば、私は毎日待ってるわよ」  
 馴れ馴れしい変態の言葉を背に、あたしはやっと図書室を逃げ出せた。  
 
 いま思い出すとあれは夢だったような気もしてくる。  
 お風呂から上がったあたしは身体を拭きながら、夕方の学校でのことを思い出していた。  
 美人と評判の敦賀先輩が図書室でお尻にヘビを入れていたなんて。しかも自分のことを魔女だなんて言っていた。信じられない。だけど、やっぱり夢じゃないんだろうなあ。  
 美人過ぎると頭がおかしくなるのかな?  
 まったくもう、せっかくスタイルが良くて綺麗なのにあんな変態だなんてもったいない。  
 あたしは洗面所の鏡に映っている裸の自分を眺めてみる。  
 
 まず目につくのは背の低さ。一応伸びてはいるはずなのに、クラスでも一番小さい。  
 胸も小さい。ギリギリでAカップ。AAカップじゃないという意味で……。  
 腰だって細いしお尻だってそれなりだと思うんだけど、なんていうか子供っぽい。  
 顔は自分じゃ判断し難いけど、美少女とは言われる。童顔だね、とも言われる。  
 長めのショートにしてる髪が地毛で赤みがかってるのだけはちょっとした自慢だ。だけどクセは強くてところどころ跳ねてるのはコンプレックス。頭のてっぺんからは強烈なクセっ毛が、三日月型に立っちゃってる。まだ髪も生乾きなのにしつこいなあ、コイツ。  
 
 気が強そうな可愛い小学生、なんて表現されたことがある。可愛い、の部分はいいとして、他の部分は気に入らない。でも悔しいけど確かにあたしは小さくて童顔で胸もないし、それに、まだ、あそこのとこに生えてなかったりもする……。  
 勉強以外は真っ当に生きてるあたしがこんなで、変態の敦賀先輩はスタイル良しの美人さんだなんて、世の中間違ってるよう。  
 
 あたしは虚しいため息をつきながら、どうせ子供っぽいブラとショーツを着けて、どうせ子供っぽいパジャマを着た。その途端、お腹の奥でなにかが動くような気配。  
「あう……」来たかな?  
 最近ちょっと便秘気味だったんだけど、この感じだとそろそろお通じがありそう。お風呂から出た直後にってなんだか嫌なタイミングだけど仕方ない。  
 髪を乾かすよりも先に、あたしはトイレへ駆け込んだ。  
 
 ショーツとズボンを膝まで下ろすと、裸になったお尻を便座に乗せる。  
 お腹の奥がぐるぐる鳴ってて、内臓に泡立つみたいな刺激が伝わってくる。便意は急に強くなってきていた。お風呂で温まったせいかな? そういえば、敦賀先輩にお尻のとこを触られたんだっけ。変なことも言ってたけど……。  
『あなたも最低の変態にしてあげる』  
 ――ひくんっ。  
「ひうっ!?」  
 お尻が勝手に脈打った。お尻の、穴が。  
 うう、気のせいだよね。いまからトイレをするんだから、出そうだから変な感じがしただけで。先輩は『魔女のおまじない』とか言ってたけど、そんなの本当にあるわけないし。  
 
 だけどなんだか、変にそこへ注意が向いちゃうような、刺激が気になっちゃうような。  
 お腹の中を下り落ちてくる大きな塊の感触を、あたし、追い掛けちゃってる。しばらく使われなくて閉じ切ってた腸を広げながら、汚いモノが出口まで集まってくるのがわかる。  
 汚いモノはあたしがまだお尻の穴を――肛門を、きゅっと締めたままだから外に出られなくて、直腸に溜まっていく。ああ、あたしの中の直腸が、風船みたいに膨らんでるぅ。  
 これをいっぺんに出したら……『気持ちいいのよ?』  
「やだっ!」  
 敦賀先輩の声が聞こえた気がして、あたしは耳を押さえた。  
 あたし、いまなにを考えていたの? トイレで出すのはいつも誰でもしてる普通のこと。なのに変なことを考えちゃうなんて、あたしは変態じゃないのに!  
 便秘だったんだから、確かにお腹の中のを出しちゃうのはスッキリして気持ちいいかもしれない。でも、それも普通のこと。きっと誰だってそうだもん。  
 きっと誰だって、そうだよ、便秘で溜まってた汚いモノを――ウンチを、お尻の穴からたくさん出しちゃうのは、スッキリして気持ちいいはずだもん。  
 
 だからあたしは変態じゃないし、敦賀先輩の言葉も関係ない。これは普通のことなの。  
 お腹の下の方にぐっと力を込める。  
 腸が引き絞られて汚いモノが出口の方に寄せられた。閉じ切ってる窄まりを内側からこじ開けようとして、泥の塊が突き押してくる。  
 苦しくてもどかしい排泄欲のせいで想像してしまう。必死に口を閉ざすあたしの肛門が中からの圧迫に押されて、はしたなく盛り上がっているところを。見えないけどきっと想像通りになってる。  
 あたしは変態じゃない。ちょっといつもよりお尻の穴を意識してしまっているだけ。  
 
 圧迫感が限界になったところで括約筋をくつろげた。  
 途端に窄まりが強引に広げられて、ぬるりとした感触に撫でられる。ぶぱって粘っこくて汚い音が聞こえた気がした。あたしの腸から肛門を通ってウンチが溢れ出してるんだ。  
「あは……あ、あ、あぁ……」  
 いつの間にか口が半開きになって掠れた声を出しちゃってた。  
 でも、仕方ないよ。便秘で硬くなってたウンチは肛門の輪がちょっとも締まるのも許してくれなくて、ゴツゴツした形そのままに開かされちゃう。それなのに表面がぬるぬるしてるおかげか引っ掛からないで滑り出ていく。ぬるぬるは、あたしの腸液なのかな……。  
 うう、背中がゾクゾクする。こんなにトイレが気持ちいいなんて。  
「あっあっあっ」  
 声を出すともっとゾクゾクするみたい。  
「で、出るよぉ……ぅうん」  
 最初の塊がぼとって落ちても、そこが閉じる前に新しい塊が顔を覗かせる。あんまり太いせいで引き攣った括約筋に痛みが走るのに、それもなんだか嫌じゃない。  
 
 2つ目の塊は半分くらいお尻からぶら下がった時点で重力に引っ張られて、出口を一気に擦りながら抜け落ちていった。  
「ひふあっ!」  
 あたしは思わず便器の上で背を仰け反らせた。  
 お尻の穴が熱い。まるで摩擦されたせいで小さな火が灯っちゃったみたいに。  
 この火をもっと大きく強くしてみたい。  
 
 両手を胸の前で握り締めて、おヘソの辺りに力を込める。  
「ん、んーぅ……!」  
 ミチミチって肛門が軋んでる。今度のはさっきまでのより大きくて硬そう。  
 見えなくてもわかる。感じる。  
 ぽっかり開いたあたしの穴から、固まりきった土の柱がじりじり伸び出てきてるんだ。まるで杭が抜けていくみたいに。まるでヘビが這い出ていくみたいに。  
『お尻にヘビさん挿れてみない?』  
「ち、違うもん」  
 記憶の中で微笑む先輩に、あたしはつい声に出して呟いちゃってた。  
 違うもん、あたしと先輩は。お尻からウンチを出すなんて誰でもすることなんだから。先輩みたいにお尻にヘビを挿れるのは変態しかしないんだから。あたしは変態じゃない。  
 
 お尻の穴が痛い。  
 でも限界まで開いた肛門の内側をウンチに擦られるのは気持ちいい。痒いところを掻いたときみたいにじわっと暖かくなって、それがだんだん熱い心地良さに変わる。  
「ふあ、はあああぁぁぁ……」  
 お腹にもう圧迫感がないから、いまあたしの穴が咥えてるこれが、きっと最後のウンチ。  
 ゆっくりゆっくり出していく。  
 ウンチの杭はあたしから徐々に抜けていって、そして。  
「くあ……ん」  
 ぼとりって、落ちちゃった。  
 
 気付いたら、狭いトイレの中には芳香剤でもごまかせないあたしの匂いが充満していた。  
 あたしのお腹の中に溜まっていたウンチの臭い匂い。あたしの肛門を熱くしてくれた太くて硬いモノの匂い。不快なはずなのにドキドキする。これって普通のこと、なのかな?  
 あそこに違和感を覚えて指先でそっと触ってみると、濡れていた。  
 あたしの毛がない子供なあそこ。その割れ目のところにキラキラ光る粘液が染み出てる。  
 あたしは普通に誰でもするウンチをしただけで、変態なんかじゃない。  
 ……でも、本当に?  
 
 ――ひくん、ひくん。  
 裸になった途端、期待するみたいにお尻の穴が勝手にパクパク収縮した。  
 トイレから出たあたしはまた服を脱いでお風呂場に戻ってきてる。  
 別に変なことじゃない。排泄を終わらせたあとにお尻をペーパーで拭っていたらまたそこが熱くなって、どうしても気になるから洗い直すついでに冷ましに来ただけ。  
 
 あたしはシャワーから降るお湯の中に立って、そっと右手をお尻に回す。  
 ウチのトイレがウォシュレットじゃないから悪いんだ。だからお尻を洗おうと思ったらこうやってお風呂場まで来て、穴を――肛門を、指で揉んで汚れを落とさないといけない。  
「ううっ、なんか気持ち悪い……」  
 誰かに見られてるわけでもないのに。気恥ずかしくて言い訳みたいに呟いてみた。  
 あたし、ウソつきだ。  
 だって太いモノを出したばっかりで外側にぷっくり膨れてる肛門を、人差し指のお腹でぷにぷに触ってみるのは気持ちいいんだもん。気持ちいいって感じる自分が気持ち悪いとは思うんだけど、それもなんだか気持ちよくて、いい気持ち。  
 頭の中がグルグル回ってる。  
 
 盛り上がってるその縁を軽く摘んでみると、柔らかい弾力があるのがわかった。  
 まるで唇みたい。あたしいま、お尻の穴が唇になってるんだ。  
 ふにふに、ふにふに。摘む感触と摘まれる感覚。  
 だけど何回か押さえるように揉んでいたらすぐに唇は引っ込んでしまって、あたしの肛門は元通り、すり鉢状の窄まりに戻った。  
 円を描く動きでなぞると、中心から放射状の皺が伸びているのが感じられる。  
「あ、んんっ、くすぐったいよぉ」  
 声に出すと胸の奥もくすぐったくなってきちゃう。  
 
 でもどうしたの、穂乃香――あたしはこんなに甘えた声を出せるような奴だったっけ?  
「あたしは……」  
 急に得体の知れない恐怖感が湧き上がってきた。  
 あたしはなにをしているんだろ? これ以上やると引き返せなくなるんじゃないかな?  
「ううん」  
 あたしはひとりで首を左右に振った。  
 トイレで汚れたお尻を綺麗に洗おうとしているだけ。それのなにがおかしいの? あたしは変態じゃない。本当に、変態じゃない。それにいまさら我慢なんてできない。  
 
 窄まりに人差し指の先を当てて、押し込む。  
 ――つぷ。  
「んくっ。入って……」きた。  
 あたしのお尻にあたしの指が、外から中へ入ってきてる。ぬるぬるの腸液のおかげで滑らかに入ることができて、ウンチよりも細いおかげで痛みもなく受け入れることができた。  
 括約筋がひくつくけど、指を締め付けるだけで閉じられない。意識してきゅっきゅって力を入れたり弱めたりすると咥えてるモノの存在感が増して、そこが切ない感じに疼く。  
 さっきは中から出したけど、今度は外から入れてる。出すためだけの場所に、挿れてる。  
「挿れて、洗わないと……」  
 そうだ、お尻の穴を洗うためにあたしはこんなことをしているんだ。気持ち良くなるためなんかじゃない。洗っている途中で気持ち良くなるのは、仕方ないけど……。  
 
 手首に力を込めると、少しずつ指はあたしの奥に入ってくる。  
 第二間接まで挿れたところで指先の方には締め付けられる感覚がなくなった。肛門を、潜り抜けたんだ。指が直腸まで届いちゃったんだ。  
「も、もっと……」そうだよ、もっと挿れないと。「奥、まで……ぐうっ!」  
 どん、と穴を中心にしてお尻が殴られた。殴っちゃった。  
 腕にまで力を込めたのが悪かったみたいで、あたしの指は一気にあたしを下から貫いて、拳の部分は勢いよくお尻の丘にぶつかった。  
 自分のせいだけど突然の衝撃に目が眩んで、あたしは崩れ落ちるように両膝と左手を床につく。右手は背中からお尻へ回したままで。  
「う、あ……つうぅ」  
 さっきまで指より太いモノを咥えていたって言っても、さすがにこんな挿れ方は辛かった。根元まで指を受け入れた肛門から、重低音みたいな鈍痛が響いてる。  
 痛い、苦しい。でも、やめたくない。  
 だってお尻の穴はまだ汚れているし、さっきまでよりずっと熱くなってるんだもん。  
 
 しばらくあたしはそのまま、お尻に人差し指を突き刺して四つん這いになったまま、身動きしないで痛みが引くのを待った。  
 外側から急激に広げられた括約筋がじんじんしてる。切れてはいないと思うけど……。  
 指先に感じるあたしの中は柔らかくぬめった触り心地がしてる。温かいゼリーに指を突き刺したら同じような感じがしそう。当たり前だけど自分の直腸粘膜なんて触るのは初めてだ。これは内臓なんだ。自分の内臓を触ってるんだ、あたしは。  
 
 無闇に興奮してきて、衝動的になにかめちゃくちゃなことをしたくなってきた。それを抑えるために、床のタイルを見つめながら深い呼吸を繰り返す。  
「はぁ、はぁ、はぁ、ぷぱっ」  
 髪から顔へと伝ってきたシャワーのお湯が吐く息に弾かれて、唇から飛び散った。「ぷぱっぷぱっ」て何回も何回も、はしたない音を立てて。  
 あたしいま、惨めな格好になっているんだろうな。  
 裸で四つん這いになってシャワーに打たれてる姿は、雨の中で立ちすくむ犬に似ているかもしれない。肛門で指を咥える犬が居れば、だけど。  
 はしたない犬の吐息と、激しい雨音だけが耳を打つ。  
 
 上半身を支えている左腕が疲れてきて、あたしは肩を床に着けた。そうするとお尻を高く掲げるようなうつ伏せの姿勢になる。犬でもしない格好だよね。  
 痛みはだいぶ治まってた。ゆっくり、右手を引いてみる。  
「んひいい」ぬるぬる抜けてく。「いいぃぃぃぃぃぅ」  
 腸液が増えてるみたいだった。全身がお湯で濡れてるからよくはわからないけど、少なくとも突き刺してた人差し指は腸液塗れになっているし、他の指にも垂れてきてるみたい。  
 おかげで指は抵抗なく出ていっちゃった。先端が浅く埋まるだけの状態まで戻ると、お尻の穴はきゅんっと口を締めて完全に指を追い出しちゃう。擦れて、閉じる。  
「あぅんっ!」  
 いまのが一番気持ち良かったかも。  
 でも、まだ足りない。  
 
 もう1回、今度はわざとお尻に殴り刺した。  
「いぎうっ!」  
 ずんって内臓がこじ開けられる衝撃が、お腹の奥から頭へ上ってくる。痛みがないわけじゃないけど、腸液のぬめりのおかげでほとんど気にならない程度になってた。  
 熱が引かない内に次は勢い良く抜き出す。ぐぽんって。  
「ひあああああっ、あ、熱い……の?」  
 擦り出ていくときにわざと肛門を締めてみたら、指の関節の位置とか形をはっきり感じることができた。火がついたみたいに一気に熱くなる。  
 
 頭の中も燃えてるみたい。自分の手が止められない。声も止められない。  
「は、入って、出て……るぅ。あたしのお尻、お尻が熱いよぉ……凄いよおぉ」  
 お尻に人差し指を奥まで突き刺して、すぐに抜き取る。壊れた機械になっちゃった手が、自動的にあたしの内臓をつっつき続ける。シャワーの水流がタイルを叩く音の裏に聞こえる、腸液が泡立つ粘っこい音。あたしのお尻の穴がぐちゅぐちゅ鳴ってるんだ。  
 刺して、抜いて。  
 刺さって、抜けて。  
「うぐっ、くひぃうっ。すごっ、いぃ……! これすごっ、いひぃ!」  
 目が霞んでるのか湯気が篭もってるのかわからないけど、視界が白くなってきてる。  
 お尻から突かれる影響が口まで届いてるみたいに突き出しちゃってる舌。床に当たってタイルを舐めてるけど、そんなの気にする余裕ない。脚がガクガクする。全身が熱い。  
 炎が肛門から、腸から全身に燃え広がる。  
 最後に指を受け入れた瞬間、爆発した。  
「あ、おひり……あはああっ! あぁぁぁ、あ……おしっこ、まれぇ……」  
 緩んだ尿道から水流が漏れ出ていくのを感じながら、頭が真っ白になっていく。  
 こんなに気持ち良くなったことなんて、あそこを弄っててもなかったのに……。  
 
 あたしはタイルの上で仰向いてシャワーのお湯を顔中で受け止めながら、余韻に包まれるままになった。お尻の穴はひくひく何度も痙攣して、そのたびに腰が小さく跳ねちゃう。  
 お風呂場の中は、まだちょっとおしっこ臭い。  
「どうしよう、あたし……」  
 ここまでやっちゃったんだもん。もう言い訳なんてできないよね。  
 あの人のせいだ。絶対に許さない、敦賀先輩。  
 認めたくないし、悔しいし、自分で自分が気持ち悪くて堪らない。だけど気付いた。  
 あたし、変態だ。  
 

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