家族。  
食卓を囲み、何気ない会話を交わし、笑い合う。  
そんな、何でもないささやかだが、幸せな日常。  
この家にもそんな日常があった。  
斉木和馬(さいきかずま)この家の長男。  
母の名は美弥子(みやこ)  
長女、貴子(たかこ)次女、恵美(えみ)の、4人家族。  
父親は、和馬が7歳の頃に事故で死亡している。  
   
その事故というのは、和馬と2人でドライブに出掛けたときに起こった。  
和馬自身は、頭を強く打っただけで、比較的軽傷だった。  
   
その事故の影響か、和馬には特異な力が宿った。  
人を操る、という力が……  
厳密に言うと、相手の精神を支配して、命令に従わせる、という力。  
使い方は、相手の目の前で念じながら指を鳴らす、それだけである。  
この能力や使い方は、病室のベットで目覚めたとき、何故かすぐに頭に浮かんだ。  
頭の痛みと、父の最後の言葉と共に……  
 
壊れた車の中で、頭から血を流した父が、苦しげな声で和馬に言った。  
「…か……かず、ま……だ、だいじょう…ぶ、か?  
と、とうさんは…もう、だめだ、  
かあさんや…たかこ、えみを……たのんだ……ぞ」  
そこで和馬の意識は途絶え、再び意識を取り戻したのは、  
病室のベットの上だった。  
   
あの日から10年の月日が流れた。  
和馬は父の言葉を胸に、生きてきた。  
働ける年になったらすぐにバイトを始めた、  
高校も母が、どうしても、と言うので、通っている。  
   
和馬は自分の力を、自分のために使ったことはなかった。  
父の死と引き替えに手に入れた力…  
とてもそんな気になれなかったのだ。  
   
今まで、悪い奴らに絡まれた人を助けたり、喧嘩を止めたり、  
時には自殺をしようとした人に使ったこともあった。  
自分ではなく誰かの為に、それがこの力の使い道だと思っていた……  
 
 
ある夜、和馬は喉の乾きを覚え、夜中に起き出した。  
一階の母の寝室を通りかかったときだった。  
苦しそうな、呻くような声が、耳に入ってきた。  
不審に思い、寝室のドアを少し開け、中を覗く。  
「ん……はあ、あ…ん、ふう、ん……あう」  
和馬は凍り付いた、母が寝室で、  
自慰にふけっていたのだ。  
ベットの上で四つん這いになり、濡れている秘部に指を這わせ、  
熱い吐息を漏らしている。  
そこには、いつもの、清楚で優しく、美しい母の姿は、なかった。  
ただ1人の女が、自らの高ぶりを鎮めるために、  
淫らに腰を動かし、快楽を求める、  
1匹の、牝の姿しかなかった。  
まるで、魅入られたかのように、  
只々、その姿をドアの隙間から凝視していた。  
   
美弥子の腰は、指の動きに合わせて妖しく蠢いていた。  
溢れ出る愛液は、白く、美しい太股をつたい、シーツに染みを作る。  
疼く体を、自らを慰める夜はこれで何度目になるか、  
本人にも分からなかった。  
 
自らの快楽に急かされるように、指を動かし、  
快感を求めて、腰をくねらせ、喘ぐ。  
更なる快楽を得るためか、ベットに着いていた手で、  
自らの豊満な乳房を揉みしだく。  
ベットに接しているのは膝と頭だけになり、  
尻を、大きく突き出した体勢になる。  
こんな姿を子供達に見られたら……  
ふと、そんなことが頭をよぎる。  
が、そんな考えも、今の美弥子にとっては、  
行為を加速させる一因となるだけであった。  
熱く濡れた秘部からは、湿った淫猥な音が鳴り、  
口からは、淫らな声が発せられる。  
大きな声が出そうになったのか、美弥子はシーツを噛んで声を抑える。  
しかし、それでも口とシーツの間からは嗚咽が漏れる。  
静かな寝室には只、その湿った音と、嗚咽が響いている。  
秘部を慰めていた指で、大きく充血した肉芽に触れる。  
「んん!」  
ビクッと体を震わせ、より大きな呻き声をあげる。  
 
固くしこった乳首を、指で強く摘みあげる。  
「んぅ!」  
痛みが走るが、その痛みも、快楽へと変わり、より強く乳首を引っ張る。  
やがて、胸を触っていた手を股間に持っていく。  
秘裂に2本指を入れ、膣を掻き回し、  
もう一方の手で、肉芽をイジる。  
淫らに腰を動かし、体全体で快楽を貪る。  
指の動きは次第に激しさを増し、美弥子を絶頂へと導く。  
「んっ、んんーーー!!」  
体をくの字に折り曲げ、絶頂を迎えた。  
痙攣している体を、ベットの上に横たえ、荒く息をする。  
3人も子供を産んだとは思えない、その均整のとれた美しい体には、汗が滲み、  
顔に張りついた髪が、より一層、妖艶さを漂わせていた。  
絶頂の余韻に浸りながら、愛液でべったりと濡れた指を見た。  
―こんなこと、もうやめなくちゃ……  
そう思いながら、静かに、瞼を閉じた。  
 
行為を見終えた和馬は、自室へと戻った。  
喉の乾きは収まるどころか、更に増しているが、  
それを鎮める為に、再び下に行く勇気はなかった。  
先程見た母の姿が、頭から離れなかった。  
まるで、頭からそれを振り払うかのように布団を、被り目を閉じる。  
   
程なく朝がくる、結局、頭の中の母の痴態が離れず、一睡もできなかった。  
―今日のバイト、大丈夫かな……  
そんなことを考えていた。  
   
「おはよう……」  
元気のない声で、家族に挨拶する。  
「お兄ちゃん遅い!」  
「早く食べないと、遅刻するわよ」  
妹の恵美と、姉の貴子が、挨拶代わりに和馬に声をかける。  
いつも通りの朝だ、和馬の態度以外は。  
無言で椅子に座り、朝食を食べ始める。  
その姿を少し怪訝そうに見つめる姉と妹。  
「はい、和馬、お弁当」  
母の声で、昨夜の情景がよみがえる。  
「ん、うん……」  
まともに、母の顔を見ることができず、手だけで弁当を受け取る。  
その様子に3人は顔を見合わせた。  
 
あの夜から、和馬は母の姿を思い浮かべながら、自慰を繰り返していた。  
何度、あの夜の光景を頭から振り払おうとしたか……  
しかし、和馬の脳裏には、母の姿が、  
自らを慰める姿が、妖艶なあの姿が、焼き付いて離れなかった。  
射精して高ぶりを鎮めては、自己嫌悪に陥る。  
それをずっと繰り返していた。  
―自分の、母親だぞ……  
そう自分に言い聞かせるが、行為が止まることはなかった。  
   
和馬の母は美人だった。  
息子である彼自身も、そう思うほどに。  
友人たち曰く。  
「羨ましい!」  
とのこと。  
   
和馬が母親を女として見たことがない、  
といえば嘘になるだろう。  
ほんの一瞬、ドキッとする程度だが、その度に。  
―母親にときめくなよ……  
と、自戒する。  
しかし、今回のは今までのそれとは違った。  
頭の中は、母、美弥子のことでいっぱいだった。  
実の母のことで…  
再び自慰を開始する、自責の念に、駆られながら……  
 
日曜日、洗濯当番の和馬は、洗濯機に衣類を投げ込んでいた。  
普段通りに、いつものように……  
が、母の下着を手に取った時、動きが止まる。  
それを見つめ続け、何を思ったか、鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。  
つんとした匂いが鼻の奥に広がり、  
和馬を興奮へと導く。  
美しい母親の、妖艶な姿を思い浮かべながら。  
股間のモノは、固く勃起して、ズボンを押し上げている。  
手が、そこに伸びようとした時、視界に、鏡が入る。  
鏡に自分の姿が写る、母親の下着を鼻に押し当て、  
犬のように匂いを嗅ぐ姿が……  
   
慌てて下着を洗濯機に放り込み、壁にもたれ掛かる。  
「…お、おれ……なに、やって………」  
額に手を当て、震えながら、その場にへたりこむ。  
   
和馬の中で、何かが狂い始めていた………  
 
 
自分を抑えながら、悶々と過ごしていたある夜。  
和馬は母と2人だけで、夜を過ごすことになった……  
貴子は泊まり掛けの仕事で、恵美は部活の合宿で、  
それぞれ家にいない。  
2人きり、今までなら何でもなかっただろう。  
だが、今は……違った………  
   
夕食前に母の手伝い、日課なのでやめるわけにもいかなかった。  
「ねぇ……和馬……」  
「え!?な、何?母さん」  
突然、名を呼ばれた為、動揺する。  
「何か悩み事があるんじゃない?」  
「な、無いよ……そんなの」  
動揺を隠そうと、努めて冷静に答えようとするが、  
隠し切れてはいない。  
「本当に?」  
「うん……」  
うつむいてる和馬に優しい口調で聞く。  
美弥子が和馬の、悩んでいることを知ったら、どう思うか……  
和馬は黙ったまま、うつむいている。  
辛いことがあっても、決して口には出さない子である、  
ということを、美弥子はよく分かっていた。  
 
美弥子はそっと、和馬を肩に手を乗せる。  
「辛いこととかあったら、いつでも言って、親子じゃない」  
―だから、言えない……  
「……大丈夫、大丈夫だよ」  
精一杯の笑顔で答える。  
   
間が保たないのか椅子に座る。  
「そ、それより、腹減っちゃったな……ハハハ」  
何かを隠していることはすぐに分かる、母親であるが故。  
それでも、笑顔でいる息子が愛おしく思えた。  
突然、美弥子が和馬を後ろから優しく包み込んだ。  
「え?……あ、か、母さん?」  
「心配なの……だから、あまり無理はしないでね、  
貴方にまで何かあったら……」  
抱きしめる腕に力がこもる。  
甘い香りが漂う、和馬の思考が停止する。  
背中に胸が押し当てられる。  
体を離し、振り返る息子に微笑みかける。  
「本当に無理はしないでね、  
貴子も、恵美も、心配してるから……」  
母の優しい笑顔が和馬の中の何かを駆り立てた。  
最早、我慢ができなくなっていた。  
   
父の言葉が……遠のいていく………  
 
炊事場へ戻ろうとする母を呼び止める。  
「母さん……」  
「ん?何?」  
息子に呼ばれ、振り返る美弥子の目の前に、手を突き出す。  
「……?」  
状況がわからず、きょとんとしている美弥子につぶやく。  
「……ごめん」  
そういって指を鳴らした……  
   
美弥子の体からは力が抜け、棒立ちになる。  
「…服を脱いで」  
「……はい」  
命令通りに服を脱ぎだした。  
エプロンを外し、上着を脱ぎ、スカートを外し、下着を脱ぐ。  
一糸纏わぬ、美しい裸身が露わになる。  
色白の肌に、豊かな胸、くびれた腰に、程良い大きさの尻、そして、その下にある、足。  
息を呑むほどに、という言葉がピッタリと当てはまる体に、  
均整のとれた美しい顔立ちと相まって文字通りの、  
"美くしい人"を創り出している。  
   
和馬は……禁忌を冒そうとしていた……  
 
ゆっくりと手を伸ばし、胸に触れる。  
「ん、ふう……」  
母の口から吐息が漏れる。  
掌で胸を揉みしだく、  
手に吸いつくような柔らかい感触を感じつつ、口を近づける。  
乳首を口に含み吸い上げる。  
まるで赤子のように……  
「んん……ふあ……あん」  
次第に大きくなる声を聞き、口を離す。  
今度は下の方に手を伸ばす。  
茂みをかき分け、秘部を探る。  
「濡れてる?……」  
わずかに湿り気をおびている秘裂を指でなぞる。  
だんだんと愛液が溢れ、指を濡らす。  
「あう…んん、くふぅ」  
秘裂に指を潜り込ませ、中で動かす。  
美弥子の口から矯声が漏れる、その声がさらに和馬を駆り立てた。  
指を2本に増やし、出し入れする。  
口から上がる矯声が更に大きくなる。  
美弥子の足がガクガクと震える、それを見て和馬は指を抜いた。  
「母さん……俺のも…」  
イスに座り、すでに硬くなった陰茎を取り出した。  
 
「…ハァハァ……はい」  
イスの前にひざまずき、硬くなった陰茎に舌を這わせる。  
根本から先端に掛けてゆっくりと這わせ、先を舐める。  
口で咥えこみ、強く吸いながら頭を前後に動かす。  
唾液を絡ませながら奥まで含み、口を離し手でしごきながら、  
根本を舐め、睾丸を口に含み、愛撫する。  
そこから更に肛門の方に舌を移動して、愛撫する。  
「う、あ…」  
たまらず和馬の口から声が上がる。  
舌を離し、陰茎を口に含み、手と一緒にしごく、先ほどより激しく……  
「母さん、おれ、もう……飲んで」  
腰を浮かして美弥子の口内に射精する。  
「んん!んぅ!……んぐ、んぐ、んふぅ」  
熱い精液を飲み干し、恍惚とした表情を浮かべる。  
   
精神を支配するとはいえ、肉体の反応まで掌握する事はできない。  
湧き上ってくる情欲もまた、同じである。  
 
その表情を見ていると、  
一度果てたはずの陰茎が再度、硬くなってくる。  
「テーブルに手をついて、お尻を突き出して」  
「……はい」  
立ち上がりテーブルに手をついて、腰を突き出す。  
背後に廻り、臀部を眺め、手で左右の尻肉を掴み、揉む。  
「はぁ、んう……」  
美弥子の口から、再び熱い吐息が漏れる。  
我慢できなくなったのか、濡れそぼった美弥子の秘所に  
自らの分身をあてがい、一気に突き入れた。  
「ひああぁぁーーー!!」  
大きな矯声が上がる。  
叫び声と言ってもいいだろう。  
「う、ああ」  
絡みつくような熱い快感に、和馬はたまらず呻き声を出す。  
   
湿った摩擦音と、口からでる喘ぎ声が、淫らな音を奏でている。  
「うあ、はうん、くう、あう」  
腰の動きを速める、ただ快楽を求めるためだけに……  
   
肉がぶつかる音、愛液の湿った摩擦音。  
和馬と美弥子、母子の喘ぎ声。  
それが、部屋を満たしていく。  
 
美弥子の愛液は、太股をつたい、床にまで達している。  
和馬は背後から、美弥子の豊かな胸を揉む、  
形のいい胸が、和馬の手によって潰されていく。  
固くしこった乳首を、人差し指で転がす。  
「ハァハァ…母さん……もっと、もっと感じて……」  
母親を犯している、その後ろめたさや、罪悪感も、  
背徳という快楽の前では、行為を加速させていくものでしかなかった。  
   
「ふあ!あう!くうぅん、あん」  
美弥子の膣内は、和馬の分身を締め上げ、快楽を与える。  
「うっ、く」  
思わず射精してしまいそうになり、陰茎を引き抜く。  
美弥子は支えを失って、その場にへたりこみ息を荒くする。  
   
「母さん、今度は、仰向けに寝そべって」  
「……ん、はぁ…はい」  
そのまま体を床に横たえる。  
横になっても、形の崩れない美しい乳房と、白い肌に浮き出た玉のような汗、  
和馬を見つめる美しく、妖艶な顔。  
いずれも、年齢を想わせないものだった。  
 
「足を……開いて……」  
Mの字に開かれた足の間にある陰部に、釘付けになる。  
「……ごめん」  
今更何を……とも思いながら、再び母の膣内に侵入する。  
「んあ!あうっん、くあ、はう!」  
耳にその声を聞きながら、動きを速める。  
足を肩に掛け、より深く、強く、突き入れる。  
「うああ!ああぁぁーー!ひあぁ!」  
甲高い喘ぎ声があがる。  
強く陰茎を締め付ける。  
吸いつくような感触に、和馬は昇りつめ始めていた。  
   
揺れる大きな胸を、苦悶に歪む表情、それらを見て、和馬は興奮の極地に達した。  
「かあさ!あ、あ……」  
我慢の限界を迎え、声を出しながら、陰茎を引き抜き、射精する。  
勢いよく飛び出した精液は、美弥子の下腹部から胸、顔にかけて、飛び散っていく。  
「あっ!イッ、あああぁぁーーー!!」  
熱い刺激が体に更なる快感を与えたのか、  
美弥子もまた、背を反らせて、絶頂を迎えた。  
胎内に射精しなかったのは、僅かな理性による、反射的なものだった。  
 
白濁液に汚れ、痙攣している体を投げだし、胸が大きく上下し、  
精液の付いた、上気した顔で、天井を見つめている。  
その姿はとても淫猥で、見る者によっては、  
更なる情欲を掻き立てられる様な姿である。  
見る者によっては……  
「あ…あ……俺は……なんて…ことを………」  
頭を抱え、その場にうずくまる。  
自責、後悔、様々な念が頭の中をぐるぐると回る。  
   
   
しばらくそのままで母の姿を見つめていると。  
「………拭かなきゃ」  
そう呟くと、急かされるように母の体をティッシュで拭き始めた。  
「ごめん……母さん…ごめんなさい」  
体に付いた精液を拭きながら、何度も何度も  
懺悔するかのように、繰り返した、目に涙を溜ながら……  
体を拭き終え、服を着せ、イスに座らせる。  
大きく深呼吸をした後、顔の前で指を2回鳴らす。  
これが精神支配が解く合図だ。  
支配していた間と、その前後の記憶は消える、  
それだけで、少し罪悪感が和らいだ。  
 
 
「ん……んん、…あら?私?」  
「大丈夫、母さん?寝てたよ?」  
笑顔を作り、母の顔を覗き込む。  
「ごめんなさい、私ったら……」  
申し訳なさそうな顔で和馬を見る。  
「疲れてるんだよ、きっと……休んだら?」  
思わず視線をそらせ、和馬は優しく言う。  
「ふぅ、私も歳かしら?…フフ」  
微笑みを和馬に向ける。  
―本当に疲れているのは、きっとこの子の方なのに  
自由な時間なんて少しもなくて、遊びたい盛りでしょうに…それにしても…寝てたからかしら?なんだか体が……  
   
美弥子には分からなかった、自分の身に何が起こったのかを……  
「でも、ありがとう、和馬は優しいわね」  
と、優しい笑みを和馬に向ける。  
「…お、俺は……全然、優しくなんてないよ」  
優しい笑顔が、胸に突き刺さった。  
 
「?それより、お腹空いたわね……って、やだ!もうこんな時間!」  
慌てて炊事場に向かう母の後ろ姿を見ながら、  
今夜のことを忘れる決意をする。  
   
―何も無かったんだ、何も…  
俺さえ黙ってれば、忘れればいいんだ……忘れれば………  
   
そうすれば、母の笑顔が曇ることはない。  
あの優しい笑顔を、自分に向けてくれる。  
それだけが今の和馬の支えだった。  
禁忌を、越えてはならない一線を  
越えてしまった自分を支える、唯一つの……  
   
目線の先には、母が慌ただしく夕食の支度をしている。  
   
「俺も手伝うよ」  
母の元へと歩き出す、ゆっくりと、微笑みながら……  
   
   
……今までの様に戻れるのか……  
それは、本人にも分からなかった……  
   
   
   
        終  
 

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