「正時、勝負しよっ」  
「勝負?なんで?」  
部活終わりの夕暮れ、他の部員が片づけをしているなか、俺の幼馴染の早川希(はやかわ のぞむ)がそう話しかけてくる。  
「私が勝ったら私が言うゲームをするの」  
「俺が勝ったら?」  
「ゲームしないでちゃっちゃと帰れる」  
「最初から帰る選択肢は?」  
「なし」  
自分に都合のいい条件を言ってにへらっと笑う。ただでさえタッパがない希が、こういう子供っぽい笑いをすると、本当に小学生にしか見えなくなる。  
「なんか失礼なこと考えてるでしょ」  
「い、いや、別に」  
こいつはエスパーか?  
「で、種目は何よ」  
とりあえず話題を逸らす。  
「100m走。ただし私に5歩のハンデ」  
「ハンデ、それだけでいいのか?」  
自慢じゃないが俺は予選落ちとはいえ、一応今年の国体に出た。当然内の部活内ではダントツに速い。  
対して希は県大会でなんとか入賞。当然国体には出ていない。さらにつけたすならば、男と女だ。タイム差を考えるまでもなく、5mぽっちのハンデじゃ勝負にならない。せめてその倍は必要だろう。  
「いいよ〜。ただし負けた後に、やっぱなし、は絶対駄目だよ」  
おいおい、勝つつもりかよ。  
思わず鼻で笑いそうになる。  
「いいだろう」  
「おーい」  
俺と希がトラックにつく。希はそばを通りかかった女子部員にスターターとジャッジを頼んでいる。  
了解したのか女子部員の一人が走ってゴールのところに行く。  
「部長と副部長、準備はいいですか〜?」  
遠くからジャッジの子が声を張り上げる。  
「おう」  
「いいよ」  
俺たちも大声で返す。  
そして希がこちらを向き、小悪魔のように、にやりと笑う。  
仕方ない。本気出すか。  
「よーい」  
俺と望がぐっと体を落とし、クラウチングスタートのポーズを作る。  
「どんっ」  
声を合図に、地面を蹴り飛ばす。低く飛ぶように3歩走り、一気に体を持ち上げる。腕を振り、足が接地した次の瞬間には蹴りだす。  
周りの景色が色の線となって後方に流れ、前を走る小さな背中がぐんぐんと迫る。  
だからハンデが小さいって言ったんだよ。俺はそう心の中で笑い、勝ちを確信する。  
俺が勝利を確信し、希に並び、抜かそうとした瞬間、再度希の背中が視界に入る。  
あれ、なんで?  
 
「副部長の勝ちっ」  
引き離されたことに気づいて、もう一回追いつこうとした時には後の祭り。俺は見事に敗北した。  
「キャー、先輩凄いです。部長に勝っちゃうなんて」  
「なんでですか?なんで勝てるんですか」  
希の周りに女子部員が集まり、キャーキャーと囃し立てる。  
「作戦勝ちだね。簡単に言えば、正時は油断してて、当然勝つと思ってた。だから私が最初少し力を抜いてるのにも気づかず、並んだときには、もう力を抜いたんだよ。  
で、そこで本気を出した私に少し置いてかれたと。でしょ?」  
わざわざ説明し、勝利宣言のように俺の確認を求め、俺に向かってVサインをする。  
憎たらしいまでに勝者だなこの野郎。  
「ああ、完敗だバーロー」  
俺はそう答えて、トラックに寝転がった。  
 
 
あのあとひとしきり部員どもに囃され、俺たちは部室に戻ってきた。  
希は俺に勝ったからか超ご機嫌で、ニコニコと笑っている。全く、何を企んでいるのか。  
「で、何するんだ」  
椅子に腰掛け、ゲームとやらの内容を聞く。  
「私と正時が3回じゃんけんするの」  
「じゃんけん?」  
「うん。じゃんけん。で勝った回数だけ相手に何でも命令していいの」  
「何でも?」  
「うん、何でも」  
無邪気な顔でうなずく希。  
俺は思わず唾を飲む。そりゃほら、ありきたりなエロ本じゃないけど、俺だって健康な17歳男子。当然“なんでも”とか言われたらそっちに思考が行くわけで。  
「ただし。何個か制限つきね。一つ、達成するのに、長期間かかる命令はなし。一年とか二年とかね。二つ、私たちにはどうしようもない金額になっちゃう命令はなし。  
三つ、血が流れるようなことはなし。誰かを怪我させろ、とかね。四つ、相手の命令を制限するようなのもなし。ルールに違反したら罰として、相手に絶対的な命令をする権利ね。制限なしの」  
「それだけ?」  
「これだけ。それ以外なら、正時が考えてるようなえっちぃのもなんでもあり」  
希はなんとも形容し難い笑みを浮かべる。妖艶な笑み、とでも言うのだろうか。俺は思わず少し気圧される。  
その隙を見取ったのか、希が声を上げる。  
「いくよ。じゃんけんポンッ」  
唐突に始まったこのゲーム。俺がなんとか出したのはチョキ。  
希はパー。  
「勝った」  
「負けたー」  
希は悔しそうに天を仰ぎ見る。  
 
「よし、もう一回。いい?」  
「おう」  
「じゃんけんポン」  
俺はグー。  
希は再びパー。  
「勝ったっ」  
希が小さくガッツポーズをする。  
「負けた」  
思わず自分の拳を見つめる。一体何を命令されるのだろうか。  
「よし、三回目いくよ」  
「ちょちょっと待て」  
「えー」  
素晴らしいスピードで進んでいくゲームを止める。そして俺は、不満げな顔をする希をおいて深呼吸する。落ち着かなくては。  
それにしてもなんで希はこんなに自然体なんだ。もうすこし、気合とかいれないのだろうか。それこそ……貞操とか掛かっているかもしれないのに。  
「いいぞ」  
「よーし、じゃんけんポンッ」  
希はチョキ。俺はグー。  
「あー、負けちゃった」  
少し残念そうな顔をして、自分の手を見たあと、俺に視線を変えて、下から見上げてくる。  
「で、ご命令は?エッチなのでも、えっちぃのでも、スケベなのでもいいよ」  
ゲームが終わって早々ににやにやと笑ってそう宣う。こいつは、誘っているだろうか?  
どうする、意地張って普通のこと命令するか。  
少し考えてその案を消去する。17年一緒にいるのにそんな見栄張っても仕方ない。今更だ。素直になろう。  
「服脱げ」  
「わかった」  
直球な俺の命令に素直にうなずいて服を脱ぐ。  
脱ぐといっても部活後だから、短パンとTシャツだけだ。  
「脱いだよ」  
水色のスポーツブラと、パンツが露わになる。そこに現れた希の身体は俺が知っている、子供の体ではなかった。日焼けした首筋と腕周り。そことは対照的なコントラストが映える胸元とお腹。  
うっすらと膨らんだ胸から、余分な肉のついてない腰周り。そこから丸くふくらんだ柔らかそうなお尻。そしてカモシカのように鍛えられた足。それは半ば芸術品みたいで、でも凄く色っぽくて、俺は釘付けになっていた。  
「どうする?下着も取る?」  
「ああ」  
希が下着も脱ぐ。  
ブラジャーの下から現れた胸は小さくて、でもしっかりと膨らんでいて、他の場所よりもひときわ白くて、まさに透け通りそうだった。そしてその真ん中について小さな桜色のそれに、思わずむしゃぶりつきたくなる。  
そしてゆっくりと下に視線を移す。するとそこはしっかりと割れ目が見えていた。そこを覆い隠すべきものが存在していないのだ。  
「お、おまえ、それ」  
「気にしてるんだから言うな」  
赤くした顔で言う。これはあれだろうか、俗に言うパイパンという奴だろうか。  
生まれこのかた一緒にいた奴の新たな発見に俺はアブノーマルな驚きと興奮を得る。  
正直なこと言うとこのまま押し倒したかった。もう俺のものは充分に膨らんでいたし、興奮させられていた。だがその空気を感じ取ったのだろう。希は俺の命令の時間は終わりだと言わんばかりに動きだす。  
「次は私の番ね」  
 
「あ、ああ」  
希は裸のまま椅子に腰掛ける。そしてあろうことか大きく足を広げた。あの、インリンとかがやっているM字開脚みたいな格好をする。  
「な、舐めてイかせて」  
そして、希は赤い顔と、少しかすれた声でそう言った。  
「い、いいのか?」  
思わず聞き返してしまう。  
「命令だって言ってるでしょ」  
恥ずかしいのか視線をあらぬ方向にそむけ、真っ赤になった頬と耳を俺に見せつける。  
「わかった」  
希の足の間に膝を突き、顔をそこの前に持ってくる。  
ほんのり漂う汗の匂いにぴっちりと閉じたそこ。  
「な、舐めるぞ」  
「うん」  
舌を伸ばし、そっと割れ目なぞる。  
「ひうっ」  
「大丈夫か?」  
「大丈夫だから……続けて」  
「分かった」  
最初はつるっとした肌の感触を味わいつつ、割れ目全体を撫でるように舐める。汗の、しょっぱい味がする。  
「んっ……」  
 
次に割れ目の中に舌をゆっくりと潜らせていく。塩の味に何か別の味。血を薄くしたような鉄の味が混じる。そしてそのまま、恐らく入り口であろうそこを、丁寧に、傷つけないように舐める。  
「ふんっ…ん……」  
希が鼻に掛かった声を上げ始めるのと同時に、奥からどろっとした液体が出て来始める。  
これが愛液……だろうか。  
俺は舐めやすくなったのをいいことに更に一心不乱に嘗め回す。  
「ふあっ」  
割れ目の周りにある柔らかいものを舐め、唇ではさむ  
「うむっん」  
舌を尖らせ、割れ目の中央にある、穴の中へとゆっくりと沈める。  
「ひあ……うあっ」  
舌を戻し、さっきから気になっていた、割れ目の上のほうにある突起に舌を這わす。  
皮にくるまれた、生まれたての男の子のおちんちんみたいな小さなそれ。これがクリトリスだろうか。  
とにかく皮の上から舐める。  
「ふあああっ……や…そこはっ」  
希の声音が変わる。思った通りの反応に嬉しくなって。そこだけを攻め続ける。舌で舐め、突く。  
「や…うやぁっ……ふなっ」  
 
次第にそれは膨らんでき、先端から中身を覗かせる。俺は単純な興味心でそれを剥いてみた。  
「やぁっ……だめぇ……それっ、つよすぎぃ」  
途端に希の反応が変わる。さっきよりも一際激しくなる。  
「ひゃあぁっ…ふう……はああぁっ」  
一舐めするごとに腰が動き、足がぴくぴくと震え始める。イきそうなのだろうか。  
ならイかせよう。トドメとして、歯があたらないように、唇で挟む。  
「ふあっ、やああああああっ」  
甲高い声とともに、腰が跳ね上がり、割れ目からさっきより一層粘度を増した愛液が滲み出てきた。  
はあ、ふう。  
息を荒げている希が落ち着くまで待つ。  
 
 
「二つ目は?」  
一頻り呼吸を落ち着かせた希が言ってきたのはそれだった。  
さっきの命令についてなにも言わないということは、イったということでいいのだろう。  
……女の子ってあんな派手にイくんだ。新たな事実を学習しつつ俺は二つ目の命令を口にする。  
「抱かせろ?」  
「なんでそこまで直球なのに疑問系なのよ」  
ジト目で見られる。  
「いや、いまさら他の事言えるほど余裕はないわけで、でもあまりに直球すぎてあれだしさ」  
希の視線が俺の股間に向かう。当然そこはもう隠しようがないほど膨らんでいるわけで、希は大きくため息をつく。  
「馬鹿。でどういう格好するの?」  
「うーん」  
周りを見回す。椅子は二脚しかないし、床に寝かせるのはさすがに気が引ける。  
「そこのロッカーに手ついて」  
「こう?」  
ロッカーに手をつき、こっちにお尻をつきだす。  
どういう格好を要求されているのかしっかり分かっているらしい。女子も結構そういう会話しているもんなあ。  
俺も後ろにたち、短パンとトランクスを下ろす。  
俺のそれは何もしていないのに、完全な戦闘体勢で先走りまででていた。  
「うわ、大きい。それ、痛くないの?」  
見ていたらしい希に質問される。  
「少し痛い。いくぞ」  
「うん」  
希の柔らかいお尻に手を置き、先端を割れ目にあわせる。  
クチュと音がし、希の体を息子で感じる。  
「力抜いたほうが楽だと思うぞ」  
「分かってる」  
希が二三回深呼吸をし、体から力が抜けたのを見計らって、一息に突き入れた。  
みちみちと何かを押しのける感触とともに、希が声にならない悲鳴を上げる。  
でもここでとめるより一気に進んだほうが楽なはずだ。俺は躊躇せずにそのまま突き進める。  
 
そして、先端がブニっとした感触に包まれる。力を入れるのをやめて、止まる。  
「希、大丈夫?」  
「う、うん。凄く、痛いけど、多分、」  
「わ、わかった。すこし待つから」  
希が落ち着くまで少し待つ。というのは言い訳で、本当はこのまま動いたら、すぐに出てしまいそうだからだ。ただ入れているだけなのに、希のそこはギュッ、ギュッと一定の間隔で締め付けてきて、それだけで俺はかなりの快感を得ていた。  
 
「い、いいよ動いて。あんまり、乱暴にしないでね」  
「わかった」  
少しだけ前後させる。俺のものは希の一番奥深くまで入っているので、自然と、子宮口らしきものをつんつんと突くことになる。  
「んっ…んうっ……」  
グニグニとしたそれに先端を包まれるだけで出してしまいそうになる。  
それをこらえて、何度も何度も前後させる。  
「ふあ…まさときぃ……なんかへんな、かんじっ」  
「変にっ、なっちゃえよ」  
少しずつ前後運動の距離を長くする。  
「やあ…なんか…へんなのくる……ふああっ」  
「ごめ、乱暴にするっ」  
我慢できなくなって、希の肩をつかみ俺の体のほうに引き寄せる。  
そのまま大きく、早く腰を振る。  
「や…つよいっ……はああああっ」  
希も切羽詰った声を上げる。  
「のぞむっ、出すぞ」  
 
最後に限界まで引き抜き、思いっきり差し込む。  
「ひゃあっ、ああああぁああぁぁっ」  
希の絶頂と同時に一気に締め付けてきた刺激に抗うことなく、俺は希のもっとも深いところで射精した。  
「やあ、でてるぅ」  
 
 
 
俺たちは繋がったまま床に倒れこむ。  
「しちゃったね」  
目の前の希の小さくて白い背中を見つめつつ答える。  
「ああ」  
「ねぇルール覚えてる?」  
「ルールって命令の?」  
「そう。それの三つ目」  
「三つ目?」  
希が語っていたルールとやらを思い出す。  
 
『ただし。何個か制限つきね。一つ、達成するのに、長期間かかる命令はなし。一年とか二年とかね。二つ、私たちにはどうしようもないような金額になる命令はなし。  
三つ、血が流れるようなことはなし。誰かを怪我させろ、とかね。四つ、相手の命令を制限するようなのはなし。違反したら相手に絶対的な命令をする権利ね。制限なしの』  
 
三つ目っていうと、血が云々か。  
ん?血?  
 
俺と、希の接合点に視線を向ける。  
そこには一筋の赤い筋。  
ハハハ、そうですよね。当然処女ですよね。  
……やっちまった。  
一体何を要求されるんだろうか。  
思わず色々な想像をしておびえかけたところに、希が俺のものをぬいて、こっちに振り向く。  
「それじゃ命令ね」  
そういって、深呼吸する。  
「これからも、一生私のそばに居てください」  
俺は理解するのに、一瞬の時を要して、すぐにこう返した。  
「喜んで。俺が死ぬまでな」  
希が笑う。それは大輪の花が咲いたようで、俺は見とれてしまう。  
そして俺たちは唇を合わせた。  
これが俺たちのファーストキスだった。  
 

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