「ねえ、兄さん」  
ベッドの上で三点倒立を極めんとしていた俺に、幼いながらも凛とした声をかけられた。  
「どうした妹さん。いま俺は非常に頭がくらくらしているのだが」  
柔らかいベッドの上とはいえさすが重力。俺の肢体を完全に捕らえて離さない。  
そんなMに目覚めようとしている俺の意識を妹の言葉が覚醒させた。  
「保険体育の実践お願いしたいんだけど」  
「了解するかボケ」  
「いいじゃない、減るもんじゃないし」  
「俺の子種が減る。億単位で」  
全人類俺の子計画に支障がでてしまうではないか。  
一人一オタマで子供一人。俺の遺伝子が世界を統べるぜうははははは。  
「頭の悪い妄想はそこまでにしてくれない?」  
「いーじゃねーかよー、妄想は心の栄養剤だぞ」  
よっ、と足を下ろした。おお、世界が真っ赤っか。  
んで目の前の妹をみる。  
容姿的にはあの両親から産まれたとは考えられんほど美しい。  
キツめにつり上がった目、すっと通った鼻筋、薄い唇。  
ただ生まれつき色素が薄いため髪が白く、肌もぞっとするほど青白い。たしかアルビノ、といったかね?  
体の肉付きも不健康なものでまっ平ら。女のミリキにはほど遠いねぇ。  
ポニーテールにまとめられた白い髪を揺らし、妹さんが俺の肩に手をかけた。  
「否定はしないけど…ちょっとはこのことを言うきっかけを聞いてみようとは思わないわけ?」  
「じゃあなんでんなことしようなんて思ったんよ」  
「…事務的ね」  
「じゃあ心を込めて言ってやろう。な、なにを言ってるんだ!?俺たちはきょ、兄妹なんだぞ!」  
「今更って感じ…まあいいわ。実はね、保険体育で宿題がでたの」  
 
腰に手を当てて仁王立ち。どこからか荒木風な効果音が聞こえてくるよママン。  
「それでね、男女間の性行についての授業があったの」  
「それで興味ができたっつーわけか」  
布団に潜り込んだ俺は投げやりにそういいました。  
うわ、期待と不安の目で俺様を眺めてらっしゃるよ妹さん。  
「うん…だから、ね」  
俺の寝ているベッドに近づいてくるよ、なんだ、何故だ?  
「何言ってやがるんですか、俺たち異父母兄妹だろ」  
「…それは血の繋がりなんて無いってことでしょうが」  
しまった火に油!?もしくはカマ掘り!?  
「ね、だから…」  
「だからもDAKARAもないっつーの!」  
「…えいっ」  
「うわなにをするやめr」  
 
妹さんは俺の寝ているベッドに入ってきやがりますた。  
薄い青のシンプルなパジャマ…のような病人服をするすると脱いでいく。  
「妹よ、まあ待て。兄の知っている限りお前には男とつきあった経験はないはずだよな」  
「当たり前よ、何年入院してたと思ってるの」  
「八年と二ヶ月、あと三日」  
「…即答できるの」  
「俺がもらわれてきた日に入院したからな」  
その通り、俺様養子である。  
だいたい一歳くらいのころ孤児院に捨てられ、すくすく育った九年間。  
おそらく十歳くらいのときにこの家に引き取られたんだこりゃ。  
いや義父さんも義母さんも変じn…もといいい人だからもらわれてラッキー♪とは思っているのだが。  
で、この妹は俺が就任した日に入院、去年までぐうたらやってた奴だ。  
見舞いに行ってるときは名前で呼んでたんだがなぁ、退院してから兄さんと呼んできやがった。  
「今に至るまでの説明ご苦労様」  
「疲れたぜこのやろう」  
「じゃあ、ここからは先を考えましょう、兄さん」  
うっっっっすい胸をさらし、妹さんはぱんつ一枚になりやがりました。  
相変わらず青白いねぇ、ちゃんと肉食え、肉。  
「ねぇ…どう?」  
「つるぺた」  
「……………………」  
あ、沈んだ。  
いや速攻思いついた単語を出しただけなんだが。  
「……………短小」  
「ぶるわぁぁぁあ!!」  
ゆ、ゆーてはならんことを!!  
「そりゃあ一般水準よりは小さいさ!だけどきっちり剥けてるんだぞ!!」  
日本の八割は包茎なんだ!俺はズル剥けだ!  
 
「だから、私にはちょうどいいの…」  
…うぉっ!?い、妹さん?  
「お、おいおい、そこはブラザーの住居だぜ、無断進入事故の元」  
俺のトランクスごしにマイサンつかむ妹の手。  
最初はただ押しつけるだけだった小さな手がゆっくりと上下に擦り始めやがったよ…う、やば。  
「…あ、勃起した」  
「言うんじゃねえ」  
兄さんは悲しい!うら若き年頃の娘さんが勃起だなんて!勃起だなんてハァハァ…いや違う!  
「え、こ、こんなに膨らむの?」  
な、情けねえ俺。言葉責めに弱いのか…やはりMなのか?  
「そのまま固くなると思ったのか、まいしすたー」  
「授業じゃこんなこと教えてないし…」  
だろうねぇ、ゆとり教育も考えもんだ。  
俺が、まあ、その、人より小さくても通常時と戦闘モードでは戦闘力が違う。  
違うったら違う。違うと信じたい…  
「熱い…固いわね、ゴムみたい」  
ぐにぐにすんな!気持ちいいじゃねえか!  
「あ、きもちいい?兄さん」  
「そりゃあ人に触られるのは気持ちいいが」  
「……!」  
ぎゃああああっ!!?  
お、おいこら玉握りしめるな精子死ぬ子種消える俺の夢も潰える!  
 
「……ねえ兄さん、誰かとしたこと、あるの?」  
「あるがどうしたっ!いだだだだ爪立てんな爪!」  
「…だって」  
と、手の力が緩んだ隙をついて腰を引き…  
「…私のよ。私の、私だけの兄さんなの。誰にも触ってほしくないわ」  
その言葉に凍り付いちまった。  
「私の肌を綺麗だって言ってくれた。私の髪が好きって言ってくれた」  
懐かしい思い出だ。  
俺がこの家にもらわれてきたときに、コイツに言ったことだな。  
「私の目を優しく見てくれた。だから、私は兄さんが欲しいの。兄さんだからしたいの」  
「…あー、んな大層なこと言った訳じゃないんだけどねぇ」  
だいたい人と違うっつーのが、んな気になんのか?わからん。  
「大切とかそういうのじゃないわ…心に刻まれたの、この人が私のただひとりなんだって」  
「んな大げさな…」  
一歩間違えばストーカーだぜ妹よ。  
「ま、これだけ並べれば理由付けはいいわね。それじゃ続きね」  
………おーい。  
 

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