『ギルドランキング928位・ミツキ=エクスリッター』  
 
 手渡された紙には、モンスター討伐数で表されるランキング順位と、その順位に当たる名前が書かれていた。  
「ミツキさんってパーティー組まないの? やっぱり、魔法って大切でしょ?」  
 俺に紙を手渡した受付嬢が、カウンター越しに疑問を投げ掛けて来る。  
 ここのギルドには何度も足を運んでいるので、すっかりと顔馴染みになっていた。  
「いらん。コイツの方が役に立つ」  
 コイツ、と背負っている大剣を母指で示す。  
 しかし受付嬢は納得して無いと言う表情。  
「でもぉ、ウィザードのパーティーと戦う事も有るかも知れないし、魔法を使える仲間が居れば……100位以内に入れるんじゃない? ん~~~うん。ミツキさんなら入れるよ」  
 しきりにパーティーを組む事を進めて来る。  
 俺の身を案じてくれるのは解るが、今のところ、その気は全く無い。それに……  
「仲間なら、もう居るさ」  
 視線を依頼書の貼られている壁に移し、『仲間』の居る場所で制止。  
 赤い髪を左右で二つに纏め、ユラユラと揺らしながら動き回る相方を眺める。  
「えっ!?」  
 受付嬢は俺の視線先から仲間を発見すると、驚きの顔を見せて硬直した。  
「あっ……そうなの? ふふっ、ずいぶんと可愛いのね。クラスはやっぱりウィザード? それともクレリック?」  
 そう言われれば、アイツにクラスは無い。強いて上げるなら、  
「リトルフラワー」  
 側に在るだけで、心が和む……なんてな。我ながら酔狂な例えをしたものだ。  
 
「さて、仕事を探すか」  
 意識して出音する様に席を立ち、会話を打ち切る台詞を吐く。  
「Little flower・・・直訳すると『小さな花ね』。でも、そんなクラス在ったかしら?」  
 それが、終わらせた会話の後から聞こえてた、最後の声だった。  
 くっ、恥辱を感じるので有れば、言うんじゃなかったな。  
 自分でも赤くなってるのが理解できてたので、仕方無く……  
「シリュー!! 何か見つかったか?」  
 不必要に大声で、リトルフラワーの名を呼んだ。  
 
 
 
       『Little Flower』  
    ~朱い霧のシーティアーズ編~  
 
 
 
「ミツキ。これなんか良いんじゃない? 『緊急! 荷物の運搬者求む』。だって」  
 シリューは壁に貼って有る依頼書の中から一枚を剥がすと、内容の出だしを読み上げた。  
「それは俺も見たが……却下だ」  
「どうして? 報酬も破格だし、規定人数も二人だから、パーティーを組まなくても良いんだよ?」  
 そう不満を漏らし、更なる答えを要求して来る。簡単には折れません、って事か。  
「荷物を運ぶ経路を見ろ。『ホワイトエール』から『帝都ヴァルキュリア』まで、って書いて有るだろ?」  
 俺の言葉に従い視線を依頼書に戻すと、じっくりと見直す。そして数間後。  
「わっ!? これは大変だよー」  
 驚きの声を上げ、元の位置に依頼書を貼り直すシリューが居た。  
 最南の街『ホワイトエール』から北の帝都『ヴァルキュリア』まで、普通に歩いて半年は掛かる距離。  
「それにな……俺が荷物を持って歩くとして、その時モンスターに襲われたらどうする? 簡単に全滅するだろ?」  
 俺が言ったのは、予想以上の確定事項。だが、それが気に入らないらしく、シリューは口をヘの字に歪ませる。  
「ムッ、それは遠回しに、私を役立たずと言ってるのかしら? 戦う力も荷物を持つ力も無い、単なる美少女だと……そう言ってるの?」  
 美少女? そんな事を臭わせる台詞は言ってないと思うが。  
「美少女かどうかはとにかく、運搬系の依頼は無しだ。パーティーを組んだとしても、もっと安全なので行く」  
「えーっ! パーティー組むなんてヤダよー。大人って、みんなロリコンなんだもん」  
 シリューは俺の腕にしがみ付くと、上目使いに不満を吐き出す。  
 シリューの言う『大人の人』に、俺も入ってるのだろうか?  
 
「―――♪」  
 仕方無く腕にシリューをくっつけたまま、依頼書の壁に目を流す。  
 わざわざ機嫌を損なわせる事も無いしな。  
「何か……無いか」  
 視線を上から下、下から上、左から右に動かす。  
 七割はギルド依頼のモンスター討伐か。これらの依頼、金額は良いのだが、モンスターが凶悪過ぎる。  
 それに数百数千でパーティーを組むから連携が取れず、周りの奴等が足手纏いになる事が多い。  
 以前に一度、Bクラスモンスター『ガンフォリンクス』と言う毒放鳥の討伐に参加した時も、先制で食らったポイズンブレスに数百人が死に、それで恐怖した馬鹿共が一気に隊を乱した。  
 結果として、二千人の大軍で戦った割には、報酬を受け取った時、三桁にも届かない人数しかいなかった。  
「……っと」  
 思考を切り替える。気になる依頼書を見付けた。  
「ミツキ、これが良いの?」  
 シリューも俺の目線に気付いた様で、手を伸ばそうとした俺よりも早くに剥がし取る。  
「えっと、『霧払い』だって。『水の都シーティアーズ』からの依頼よ。『都全体が、晴れない霧に覆われた。解決して欲しい』……だって。これにしようよ。報償金も良いし、人数規定も無いよ?」  
 疑問は残るが、確かに条件は良い。  
「そうだな。たまには直感を信じるのも良いだろ」  
 シリューから依頼書を貰い、そのままカウンターに置く。  
「この依頼を受けたい」  
 だが、受付嬢はその依頼書を見た瞬間、明らかに視線を外して床に落とした。  
「んっ、この依頼書がどうかしたのか? 例えば……これだけの好条件なのに、掲載日から四ヶ月以上経っても、壁から剥がされない事に関係有る……とか?」  
 俺が言葉を続けると、一瞬だけ体が震えた。  
「この依頼、何か『いわく』が付いているとでも?」  
「いえっ、そうではないの。ただ、この依頼の解決に何組ものパーティーが行ったけど、一組も帰って来て無いから。依頼主からも、解決の連絡が来ないし、正直……この依頼、お勧めできません」  
 表情通りの沈み込んだままの声で、淡々と話す。  
 それを、いわく付きと言うのだがな。  
「これで良い。パートナーも乗り気だし、俺も晴れない霧に興味が湧いた」  
 俺の台詞を聞くと、シリューは「しゅっ、しゅっ」と自分の口で効果音を鳴らしながらシャドーを始め、受付嬢は大きく溜息を吐き、『ギルドランキング928位 ミツキ=エクスリッター』と書かれた紙を依頼書の上に乗せ、怠慢気に壁へ止め直した。  
 
「ミツキ……ここがシーティアーズ?」  
「地図の通りに来たとすればそうなる」  
 まだ陽も現れぬ宵覚めの時刻。シーティアーズを眼前に控えて見えたモノは、  
「何も、見えないね?」  
 霧に抱かれた街だった。  
 残り数歩でシーティアーズの入り口境界。にも関わらず、都の全景が微かも覗けない。一番手前に在る建物の造形も分からない。  
 それまでに霧は濃く、  
「この香は……血の匂いか?」  
 朱く色付いている。  
 どこまで見通せるか。一メートル先か? 二メートル先か?  
「ミツキ、この中に入るんだよね?」  
 シリューは小さく震えながら、俺の上着を両手で掴む。  
「そうだ。死んでも放すなよ」  
 離れられては、モンスターから守る事が出来ない。  
「しごこーちょくってヤツね?」  
「……例えだ。そう言う気で居ろってな」  
 想像できるモンスタータイプとしては二パターン。霧を創り出すモンスターか、霧の幻覚を見せるモンスター。  
 この二パターンなら、恐らく前択。幻覚を見せるのに、わざわざ霧で有る必要は無いからだ。そして霧を創り出すので有れば、俺の知っている限りで一種類しかいない。  
「ふぅぅぅっ……」  
 深く息を吐き、ゆっくりと、歩き始める。  
 霧は十秒も待たずに視界を奪い、シリューと俺のみの空間を生み出す。  
「ミツキ、依頼主さんの家って何処か分かるの?」  
 依頼主……有り体に言えば、シーティアーズで一番偉い人物。  
「ああ、入り口から真っ直ぐ。突き当たりの家だ」  
 何より、モンスターの正体も気になるが、複雑な場所に家が有るのでは、この霧の中を行こうとは考えなかった。  
 
 歩むにつれ、進むにつれ、目測範囲が殺され、二人の空間も侵略されて行く。  
 ここまで来れば断定出来る。この霧を、『偽りの霧』を創っているのは、『擬水鳥ペールフォリンクス』。  
 だが、シリューを守りながら戦える相手では無い。戦うのは体勢を立て直してから。それでも、勝てるかどうか。  
「シリュー、はし……ッ!?」  
 
「ゲギャァァァァァァッッッ!!!」  
 
 突然の咆哮。俺の口音とシリューの足音を黙らせ、都中に響き渡らせる。  
 ペールフォリンクス!? 俺達の進入に気付いたか?  
「ミツキ、走ろう!」  
 消された台詞をシリューが補完する。シリューの身体を右腕で抱え持ち、  
「飛ばすぞシリュー!!」  
  低い上体で大地を蹴り飛ばす。地面スレスレの水平跳躍。  
 俺達に反応したのでは無ければ良いが。  
「みつきぃ、はやいよー」  
「喋るな。舌を噛むぞ」  
 ちぃッ! この霧量では、正面に進んでいるのかすら分からん。  
 そして何度目かの跳躍。  
「んっ、明かり? 家か?」  
 うっすらと光が見え始める。  
「あの家かなミツキ?」  
「だと、良いがな」  
 こんな朝か夜かも判断できない時刻に明かりが付いてるんだ。家には入れて貰えるだろう。  
 徐々に歩幅を狭め、きっかり玄関前で勢いを殺し切る。  
「ここだと良いね」  
「そうだな」  
 左手甲で扉を二度叩く。  
 すると即座に初老の男性が扉を開け、俺達を見上げた。  
「ギルドの依頼書を見て来た。依頼主の家は、ここで合ってるか?」  
 そう言った直後、シリューを抱えた俺の姿をじっくりと見渡し、  
「どうぞ、お入りください」  
 俺達を家の中へと招き入れた。  
 
 今朝、都の現状を自ら確認して、その後依頼主にから状況を詳しく聞き、そこからこの休息部屋に案内されたのが、昼も近い数分前。  
「ミツキ……私、聞いてない」  
「人数規定は無いんだ。こう言う事も有るだろう」  
 依頼主に用意された宿屋の一室で、四角いテーブルを囲む様に五人は向かい合っていた。  
 入室ドアから一番近い場所に一人。左右に一人ずつ。最も奥側に俺とシリューが。それぞれ丸椅子に座る。  
「俺達のクラスは、俺がスペルナイト。で、こっちがガンナー。こっちがウィザード。ギルドランキングは647位だ」  
 頭役のスペルナイトが、視線と右手人差し指で仲間達の紹介を始めた。  
 つまり……  
「この人達とパーティー組むのミツキ?」  
 この場限りの、共闘戦線を張らなければならない。  
「そうだ」  
 他のパーティーと依頼を受ける日が重なるとは、ツキが無いな。  
「こっちは俺がファイター。そしてコイツは……付き人だ。クラスには着いて無い。ギルドランキングは928位」  
 その場限りでの共闘をする時に語るのが、クラスとランク順位。ランク上位の者が作戦を決め、それぞれの役割を決める。  
 そう……この展開、  
「それなら、俺が作戦を決めるぜ?」  
 スペルナイトが作戦を決める事になる。  
「俺の勘じゃあ、モンスターは小型。朝の霧に紛れて人を襲っているに違いねぇ。それ以外に考え付かねぇしな。なら作戦は決まりだ。まず、そのガキを囮にして、モンスターを誘き出す。そして出て来た所を、俺達で一気にブチのめす。どうだ、良い作戦だろ?」  
 はっ……『勘』、だと? こいつらは、どれ程の経験を積んだと言うんだ? 初言からこれは有り得んぞ。  
 しかし、その戯けているとしか思えない作戦に、  
「良いんじゃねぇか」  
 ウィザードは酒を飲みながら応え、  
「だなっ」  
 ガンナーは右手のリボルバーを連射し、窓から見える鳥を撃ち落としながら応えた。  
 こいつらは、この都の現状を見たのか? 依頼主の話しを聞いたのか? 解決する気が有るのか?  
 この都は、夜から朝に代わる一時だけ、全く違う顔を見せる。それが分からないのか? 何時まで敵が小型モンスターだと、『自然に発生する霧に紛れて人を襲うモンスター』だと思っている!?  
 それに、スペルナイトが立てた作戦……お粗末にも程が有る。囮は最終手段だ。それもクラスに着いて無いシリューを囮として上げるとは、人間として信用できん。  
 
「全滅すると分かっているお前等の作戦には、参加出来んな」  
 尚更。一字一句聞こえる様に、聞き逃さない様に、三人組を否定した。  
 集まる敵視を流し、構わずに続ける。  
「お前等の愚かな作戦と方法では、この命を預けられないと言ったんだ」  
 意地も思考も経験も生方も、一斉否定。  
 呆れる……どれ程に愚か。ギルドランキングが647位で、俺よりも上位で、こんな作戦しか立てられないのか?  
 ならば役に立たん。こいつらの『余裕』と感じていた行動も、メッキが剥がれ、『油断』に見えて来る。  
 スペルナイトは剣を壁に立て掛け、  
 ガンナーは先程討ち尽くした銃に未だ送弾せず、  
 ウィザードは三杯目の酒を飲む。  
 クラス別の初歩も知らない奴が、真っ当な作戦など立てられる訳がない。どうせ『647』と言う順位も、Eクラス以下のモンスターばかりを狩って築いた硝子。作戦など必要ない相手しか戦った事が無いから、作戦も方法も立てられない。  
 「子持ちが! 随分とデカイ口を叩くじゃねぇか」  
 最初に反応したのは、三人の頭で在ろうスペルナイト。  
 初歩を知らないばかりか、仲間を纏める役の者が真っ先に冷静さを欠いては、連携も期待できない。  
 下手に慣れや癖が有る分、シリューよりも供戦しにくい。  
 つまり……足手纏い以下。  
「仕方、無いな」  
『力』で分からせるしか無いか。  
「よしっ、今からお前等三人に喧嘩を売る。俺が勝った場合は、俺が作戦を立て直す。お前等はそれに従え」  
 本当はこんな事を言いたく無いんだが、こいつ等の作戦に従って命を落とすよりはマシだ。  
「ランキングで四桁を切ったばかりの奴が、来いよオラ!」  
 机を叩く重低音が鳴り、三組の視線が俺に集まる。ふっ……まったく。  
「焦るな。表へ出ろ」  
 顎で扉を指し、三人を外に誘導する。  
 どこまで面倒を見なければならない。  
「ねぇミツキ、どうして『ココ』で戦わなかったの?」  
 シリューは三人が退出するのを見届けると、俺の服を引っ張りながら、小声で聞いて来た。  
 気付いたな……一つ、成長させるか。  
「お前を巻き込まない事も有るが、それだけじゃない。何だと思う?」  
 シリューは、俺の問い返しへ僅かに眉を上げると、左手の親指を唇に当て、小さく唸り始めた。  
 
「うーん……分かんないよ。答えは?」  
 そして数秒間後、リタイアしたシリューが両手を上げる。  
「情けを掛けた。戦闘準備をする時間を与えたんだ」  
 これから教える事は、必ずシリューを成長させるだろう。  
「あれっ? 前は、「敵と戦う時は情けを掛けるな」って言ってなかったっけ?」  
 俺の答えに、シリューは、再び口に親指を当て、考えるポーズを取る。  
 ふむ……どうやら覚えている様だな。  
「ああ、確かにそう言った。だが、『何故?』と言う部分は教えて無かったろ?」  
「そう言えば、そうかも」  
 シリューが「一緒に行動にする」と言った時に、代わりとして、いくつかの条件を出した。  
 その中の一つが、『敵に情けを掛けるな』。真意までは分からないまでも、その言葉は覚えさせた。出会ったばかりのシリューは、年程に物を知らなく……良い意味でも、悪い意味でも、無垢で居たから。  
「俺は、三人に情けを掛けた。すぐに戦えば、あっさり勝てたにも関わらず、準備する間を与えてやった。結果どうなるか?」  
「ミツキが、大変になるんじゃない?」  
 段々と、返答に掛かる時間が短くなっている。どうやら、シリューも確信に近づいている様だな。  
「ああ、そうだ。力の過信は死に繋がる。敵は倒せる時に倒して置くのがベストだ」  
「じゃあ……ミツキは、それを私に教える為だけに、情けを掛けて見せたの?」  
 そう返すシリューの目は真剣になり、眉を吊り上げて俺の瞳を直視する。  
「私は、知らない事より、ミツキが傷付く方が何倍も嫌だよ!?」  
 シリューに心配を掛けるとは、言い方が悪かったか?  
「安心しろ。それだけの為に、情けを掛けた訳じゃない。教えたのは、ついでだ」  
 シリューの頭に手を乗せ、悟す様に撫でると……  
「うーん。ミツキがそう言うなら、信じるよー」  
 途端に目を細め、眠そうな声に変わった。  
 まぁ室内で戦うと、備品を壊したら修理代を払わなくてはいけないと言うのも有るが……ここで大切なのは、これだけ準備する時間をやって、万全の状態で、どこまで力が出せるのか? と言う事。  
 あの三人は間違いなく全力で来る。それは言い訳のしようもなく実力。その実力が余りにも低いのなら、俺とシリューの二人で戦う事も考えなくてはならない。  
「さて……そろそろ準備も整ったろうし、行くか?」  
 考えが一段落した処で、シリューの背中を軽く叩き、「一緒に来い」と意志表示をする。  
「えっ! 私も戦うの?」  
「戦わなくて良い。見てるだけでも経験は積める」  
 シリューは普通で言う幼児期に当たり、教えた事は、1から10まで全て吸収していく。  
 だからか、こんな風に思うのは? いつか……シリュ―が一人で生きて行く日の為に、出来る限りの事を体験させてやりたい……と。  
 
「ほえー……こんなに大きいの初めて見たよ」  
 まったくだ。外周は二百メートル程度も有るか?  
 中央広場の中心には、『水の都』の肩書きに恥じない巨大噴水が在った。  
 子供や女性だけでなく、年輩の方や、クラスに着いている者も、鎧を脱ぎ、丁度良い冷気に身体を晒している。『憩いの場』と言う言葉を、そのまま抜き現した場所。  
 ここ以外にも、街の至る所に小さな滝が存在し、空気を一層澄んだものにしていた。  
 できれば、こんな場所でやりたくは無いが、これくらい広くないと動けないからな。  
「あっ、ヘボいの三人はっけーん!」  
 シリューは一度目を細めると、「へぼへぼよー」と広場端のベンチを指差す。  
 そこには、確かに三人組が居たが……  
「はぁー。勘弁してくれ」  
 自然と溜め息が漏れる。  
 こんな時に氷菓子を食うなど、余程の大者か馬鹿かのどちらかだぞ。こいつらの場合は、考えるまでも無く後者だと分かるが。  
「みつきー。私も食べたい」  
 くいくいと服が引っ張られる。  
 大丈夫だ。シリューはきっと大者になるだろう……と言うか、これ以上『後者』になられたら、ストレスで俺がダウンしてしまう。  
「この依頼が終わったら死ぬほど食わせてやるから、我慢してくれ」  
 あいつらも、こちらに気付いたみたいだしな。  
 三人組はニヤニヤと笑いながら、たらたらと近づいて来る。  
「シリュー、人払い頼めるか?」  
「がってんしょーち!」  
             
 ……はっ?  
 了承と言う事なのだろうか? 基本的に街では好き勝手に行動させているので、俺の知らない言葉や知識を覚えて来る事が多々有る。  
「はーいみなさーん! 今から喧嘩が始まるから、もう少し下がってくださいねー!」  
 大声で走りながら、シリューは噴水の辺りを回り始めた。  
「そこの少年! 私より内側に入らない!」  
 ビシバシと人々を仕切っているが、シリュー自体が目立つ為、「何事」と、逆に野次馬が集まって来る。  
 シリューが円の外周になり、邪魔する者が入らない様にして、その中には俺と三人組が残されていた。  
「子持ち、何のマネだ?」  
 スペルナイト……焦っているのか? どうやら俺としては、良い方向へ転がってくれたな。  
 奴等はこれで引けなくなった。プライドだけは高そうだから、絶対に勝ちに来るだろう。ここで全力を見極める……っと。その前に、『コイツ』を外さないとな。  
 こいこいと、シリューに手招きする。  
 
 ――とてとてとて。  
 
 シリューの足音は、歓声の中でも一際に異色を放ち、そのまま目の前に来ると、  
「お呼びですかマスター?」  
 更に異色で俺を呼んだ。  
 片膝まで着き、本人は理解し難いやる気が有るみたいだが……  
「余計に馬鹿っぽく見えるからヤメとけ」  
「がーん! ますたぁー」  
 だからヤメろって。  
 
「ふぅー……で、用は何ミツキ?」  
 シリューは俺の返答が気に入らなかったのか、飽きたのか、満足したのかは分からないが、しゃんと俺の眼を見て答えを求めて来る。  
「『コイツ』を預かっててくれ」  
 右肩から左腰に掛かるラバーベルト。右肩に有るラバーベルトの金具を外すと、直後で破壊的な衝突音が鳴った。  
 支えが無くなれば落ちるのは当然。  
 もちろん、背負っていたコイツも例外ではない。  
「シリュー、『対人武器』をくれ」  
「あっ……こっち使うんだ?」  
 シリューは『こっち』と言いながら、自身に巻かれているベルトのバックルに触れた。  
 本当は武器など使う迄も無いと思うが、これだけの前でそれをやると、奴等の面目が無くなるしな。  
 シリューに心配掛けたばかりでも有るし……だが、武器を使ってやる。と言うのも、情けか?  
「はぁ……辺りに人だかりが出来ているんだ、危なくて使えん」  
「ん、そうだね。渡すね」  
 シリューはバックルの金具をスライドして外し、  
「はい。あんまりイジメちゃダメだよ……ヘボイんだから」  
 ベルトを俺の眼前に差し出した。  
 それを一呼吸で自らの腰に巻き付けて行く。  
「この重加……久しいな」  
 ベルトには左腰部と後腰部に剣が備え付けられており、適度な重さが下半身に送られる。  
 普段は鍛える訓練も兼ねてシリューに持たせているが、人間と戦う場合や、一桁メートル程度のモンスターと戦う場合は俺が装備し直す。  
「じゃあ、そっちは私が預かって置くね?」  
「ああ、アイゼルヴィント……確かに預けたぞ」  
 
「らじゃッス」  
 ――ズリズリズリ。  
 シリューは俺の背から外れ地面に接着しているアイゼルヴィントの柄を持つと、白い布切れで螺旋状に巻かれている刀身を引きずって円の外周まで離れる。  
 いずれはシリューにアイゼルヴィントを持たせて、身体を鍛えさせようと思っていたが、剣よりもシリューが小さくては無理か。  
 まずは身長を伸ばしてやらんとな。背を伸ばすには、何を食させたら良いか? いや……その前に、偏食を治すのが先だな。野菜しか食べないのでは筋力が付かない。肉や魚を、無理矢理にでも食べさせないと。  
 
「やるか……」  
 思考を止め、三人組へと振り返る。  
 これからの方針も決まった事だし、さっさと退治してしまおう。  
 腰を落とし、足場を固定し、両手を二刀剣の柄に添える。  
 さて……誰から倒すべきか?  
「子持ち! オメェから振っ掛けて来た喧嘩だ。もう止められねぇぜ!」  
 先頭のスペルナイトが吠え、十指で第一の印を組む。  
 それに続いて、ガンナーは両腰のリボルバーを抜き、ウィザードは詠唱を始めた。  
 先はガンナーだな。スペルナイトは自己強化の魔法だろうし、ウィザードは論外だ。酔いが回っていては、とても詠唱できん。  
「どう出るか?」  
 ガンナーの銃はリボルバー。左右合わせても十二発。それを凌ぎ切れば終わりだ。  
 アレを使うか?  
 「ふぅぅぅぅっ……」  
 一呼吸置いて集中力を高め、目線の高さで、右手を握り締める。  
「尊き精霊の光よ、我の道を示す導となれ。フェアリーライト!」  
 俺が発したのは詠唱。魔法を主としないクラスでも使用出来る、初歩中の初歩。俺はおろか、シリューでさえ扱う事の出来る唯一の魔法。  
 僅かな魔力が光球となって、右掌から光を溢れさせる。  
 「オイオイ、戦闘中にフェアリーライトかよ。頭イカレてんじゃねぇか?」  
 表面情報だけを受け取り、ガンナーが銃を構えながらゆっくりと迫って来る。  
 ケタケタと言う笑み声は、明らかに余裕のそれ。油断が過ぎるな。ファイターで在る俺に、ガンナーが接近して来るなど。  
 遠距離から『溜め』無しで攻撃出来ると言うのが、ガンナーの利点で有るのに、自分でそれを潰してしまうとは、愚か以外の何でも無い。  
「まったく……」  
 手を開き、魔法を誕生させる。  
「マジでフェアリーライトか? そんな魔法、恥ずかしくて使えねぇよ」  
 まだ近付いて来る、こちらの真意に気付いていなのか?  
「詰みだ、ガンナー」  
「何言ってやがる。気でも狂ったか?」  
 ガンナーとの距離は、目測で三メートル程度。  
 左拳で拳を作り、魔力を流し込める。  
「貴様は、不用意に近付き過ぎた!!」  
 十分に魔力が溜まっているぞ!  
「ブレイクッ!!」  
 叫び、フェアリーライトを魔力の込められた拳で殴壊する。  
 そして起こるのは、視覚と聴覚を麻痺させる閃光と爆音。  
「ぐあッ!? 誰が閃光魔法なんか唱えやがった!?」  
 ガンナーは両手の甲で目を押さえ、苦痛まみれに驚言を吐く。  
 フェアリーライト。直径にしても10センチ程の淡い光球で、普段は街灯の代わりにしかならない魔法だが、中に詰まっている魔力を爆発させれば、短時間で低範囲と言う条件付きで、問題無く閃光魔法の代わりを努めてくれる。  
「終わりだガンナー」  
 二度目の台詞。言葉通り、ガンナーは終わった。  
 銃使いが最も大切にしなければならないのは視力。正確に狙いが付けられなくなった時点で、普通なら前線から引かなければならない。  
 何故なら、銃が優れているのは殺傷能力で有って破壊力では無いからだ。急所を狙い撃てず、味方に誤射する可能性が有るのでは、足を引っ張るだけ。  
「クソがッ!」  
 駄弁と共にガンナーは在らぬ方向へと両銃を構える。普通のガンナーならサーチスコープ、最低でもサングラスは掛けているものだが……やはり、圧倒的に『経験』が足りてない。  
 
 眼球自体に閃光系を遮断する術式を施したのでも無いし、簡単な応用に気付かなかったのも、単に『知らなかった』からだろう。  
 その結果、ガンナーは無力になった。  
「ふッ!」  
 詰みの最終手。一息でガンナーへと擦れ違う様に跳び、交差と同時、ガンナーの頸椎に、最速で手側を打ち落とした。  
 空中で向きをガンナーへと変え、着地の瞬間に地面滑走で勢いを殺す。  
「がぁっ……な、にっ?」  
 ガンナーは被害箇所を抑える事もできぬまま、細い声を上げて膝から崩れ落ちる。  
「一人目……」  
 残るは、スペルナイトとウィザード。  
「みつきぃー! その調子よー!!」  
 外周から聞こえる反響の声。  
 視線をズラすと……ジャブ、ジャブ、ストレート。  
 勘弁してくれ。  
 シリューのシャドーは、本人の回りにも外周を作るほど目立っていた。  
 高揚するとシャドーを始める癖は、直してやらんといかんな。無意味に注目を引いてしまう。  
「さて……とっ!」  
 ウィザードへと向きを直し、再び跳ぶ。  
 これだけ間を置いても、何も来ない、か。  
 魔法が来ないのを確認し、ウィザードの眼前へと着地。  
 こいつもか。  
「なっ!?」  
 ウィザードは酔いの表情ながらも、恐怖と驚愕を浮かべて上半身を後ろに逸らす。  
 こいつも。  
 その状況を目視する刹那。  
「詰みだ、ウィザード!!」  
 ウィザードの鳩尾へと、フルインパクトで掌底を叩き込んだ。  
 攻撃と同時に行った踏み込みは、ウィザードの半端なスウェーを確実に潰す。  
「ウィザードが、咏唱に三秒以上掛かっては話しにならん」  
「がッ!?」  
 引け腰だったウィザードは、衝撃でそのまま後方に吹き飛び、転がりながら噴水の中へと落ちて行った。  
「二人目……」  
 最後は、スペルナイト。  
「わぁぁぁぁっ! みつきぃ、ステキすぎるよぅ!」  
 アホ声へと視線をズラす……フック、フック、ボディーブロー。全部、隣のオヤジに命中していた。  
 勘弁してくれ。  
 いつまで興奮してる気だアイツは?  
 シリューを見るのに耐えられなくなり、目線を身体ごとスペルナイトへと回す。調度。  
 おっ、完成……するか?  
 「イミテイションッ!!」  
 スペルナイトの身体を、薄紫に色付いた魔力が足先から頭部に駆けて抜ける。  
 長い時間を費やし印を組み上げた魔法は、自身の筋力を強制的に強化、膨張させる法『イミテーション』。  
 使用者の魔力高低による効果差は殆ど無いが、攻撃用では無く、ウィザードやクレリック等が自らを打たれ強くするのに使うのが主の魔法。  
「子持ちぃっ! こうなった俺は……無敵、だぜ?」  
 行動が三流なら、台詞も三流。良くもまぁ、やられ役の台詞が次々と出て来る。  
 イミテーション。モンスター相手なら分かるが、人間を相手にしている時……まして、ナイト系クラスや俺の様なファイターは、間違っても使用しない魔法だ。  
「剣を抜け! 俺は、前の二人とは格が違うぜ」  
 良く吠える。弱い犬ほど……とは言ったものだ。対人武器を使うまでも無いか? 『これ』で……じゅうぶんだ。  
 
 左足に巻き付けているラバーベルトから投擲用の両刃ナイフを一本引き抜き、右順手に持ち直す。  
 刀身も十五センチ程度の普通鉄のナイフだが、それでも負ける気はしない。  
「俺は、剣を抜けと言ったぜ? それとも、腰に付いてる得物はナマクラか?」  
「コレで相手をしようと言うのだ。それくらい察しろ」  
「へっ……そうかよ。こっちは、抜くぜ?」  
 スペルナイトが引き抜いたのは、右腰の長刃ブレード。  
「腕の一本くらい、覚悟しろよ!」  
 それを戯言に乗せ、右手に持ち代えながら上段へ移行する。  
「良く言ったスペルナイト。その傲慢な心構え……根本から粛正してやろう」  
 ナイフを回し逆手に変え、左半身前の下段構え。左掌は地面に着き、重心は極限まで低く、多分の視線差でスペルナイトを見上げる。  
「行くぜぇッ!!」  
 互いの眼界が交差。  
「行くぞッ!!」  
 互いの標的が交差。  
「みつきぃファイトよー!」  
 互いの初動が重発する。  
 見ているなシリュー? その眼に刻んで置け。これが……術(すべ)だ!  
「であぁぁッ!!」  
 振り下ろされる一振りを、  
「遅いッ!」  
 振り上げる一振りで弾き返す。  
 繋げる動作でナイフを手放し、落下中を左手で掴む。  
「次もだッ!!」  
 それを、剣がスピードに乗る前に刃元へナイフをぶつけ、二撃目となる薙払いを弾く。  
「ッ!? まぐれか!!?」  
「だったら良いな」  
「ぎっ……シャャァァァァッッ!」  
 乱雑に放たれるスペルナイトの連撃を、力が乗る前……肩の動きだけを見て防ぎ切る。  
 するとどうだ? 筋力は意味を成さない。  
「どうしたスペルナイト。それで精一杯か?」  
 確かに……確かにイミテーションは筋力を高めてくれるが、イコール強くなるかと言えば、答えはノーだ。  
 そんなに膨張した筋肉では、攻撃の手を教えている様なもの。筋肉が必要以上に動き、敵に次動を教えてしまう。  
 パワーを重視するモンスター戦ならともかく、テクニックを重視する対人戦……それもファイターやナイトと言った、接近戦に主を置くクラスを相手にしている時は、僅かな体の流れが勝敗を分ける。  
 素早い攻撃でも、解っていれば恐怖を感じない。故に見切り易い。力が乗る前に潰せば良いだけの話し。  
「きッ! 俺の攻撃に付いて来るとは、いつの間に補助魔法なんか使いやがった!?」  
 信じられない……か? 一度でも死戦を潜り抜けた者なら、決して吐き出さない台詞。己の技量の無さを、魔法のせいにする等。  
 そんな言葉しか出て来ないのは、命の危機に直面した事の無い証拠。つまり、人としての……クラスとしての経験が、全く足りてない。  
「そろそろ、終わりにさせてもらうぞ!!」  
 大きく弾き、間合いを取り直す。  
 ナイフを示指と中指で挟み持ち直し、ゆっくり、ゆっくりと、スペルナイトにも反応出来るモーションで投擲。  
「はっ! そんなモン食らうかよ!!」  
 予想通り。スペルナイトは、放たれたナイフを剣で払う事により回避し、  
「なん……だ、とっ!?」  
 無動で無様を晒す。首筋に、次なるナイフを突き付けられて。  
「何で、弾いた筈の武器をテメエが持ってる!?」  
「何で? おかしな事を言う。もう一本持っていたからに決まっているだろ?」  
 相手の武器や戦力把握は、戦前に行う最優先事項。この結果は、それを怠ったスペルナイトのミス。  
 まぁ、知っていた処で、こんな簡単なフェイントに掛かるのでは駄目だが。投げられたナイフに気を取られて、同時に接近する俺に気付かないのでは……  
「詰みだなスペルナイト? 作戦は、俺が立て直す」  
 俺の言葉に、スペルナイトはガクンと膝から崩れ落ちた。  
「やたー! みつきぃ、カッコイイよう!!」  
 シリューは、今の戦いを見ていたのか?  
 戦意を無くしたスペルナイトから視線を外し、シリューへと移す。  
 三人ケーオーしていた。  
 シリューの周りにうずくまる大人達。  
 勘弁してくれ。  
 
「作戦は以上。使うマジックアイテムは、レオストーンを五つ。それだけだ」  
 作戦会議が終わり、三人組がそれぞれに頷く。  
 さて、後は頑張り次第か。  
「ミツキ……私、何も言われてない」  
 衣服を引っ張られる違和感と声に呼ばれ、隣に座っているシリューへと顔を向ける。  
 すっかり萎んでいた。  
 俺の役に立とうと気張ってくれるのは嬉しいのだが……  
「荷物番が有るだろ?」  
 明らかに危険と分かる場所には連れて行けない。  
「こんな馬鹿でかい剣なんか、取る奴いないよ! このっ、重いっつーの!!」  
 シリューは終に耐えられなくなったのか、引き擦って持っていたアイゼルヴィントを、不満混じりに押し放した。  
「わかったわかった。レオストーンを一つ渡して置くから、シリューはトドメの一撃を頼む。だから、俺の合図が有るまで待機しててくれ」  
 なだめてる最中、シリューはずっと座った目を俺に向けていた。フォローがわざとらし過ぎるか? とも思ったが、  
「出番無しの秘密兵器は嫌だよ?」  
 シリューの考えは別の処に有った様だ。  
「ああ、良い処を残す。合図から遅れるなよ?」  
 口が笑みを作り、高揚を始めたシリューに向けて左手を開くと、  
「ふっ!」  
 ――パチンッ!  
 返事代わりの右ストレートを打ち込まれた。  
 
 
 決戦前夜。用意された宿の一室。窓から差し込む月明かりを浴びて、幾度もイメージトレーニングを繰り返す。  
 ベッドに腰掛け、目をつむり、擬水鳥の仕留め方を何パターンも展開させる。勝率は九割……いや、八割あるかどうか。  
 それでも僥倖。俺だけなら五割を切ってた。  
「みつきぃ~、カラダふいてぇっ」  
 相方のアホ声に思考も切って目を開く。  
 すると映るのは、月の光を浴びて、濡れた全身を煌めかせるシリューの裸体。  
 髪を解き、水を滴らせ、いつものように両手でタオルを差し出す。  
「そろそろ自分で拭いたらどうだ?」  
 それを受け取って後ろを向かせ、タオルを纏った両手で長い髪を挟みながら叩く。  
 時間は掛かるが、髪を傷付けない唯一の拭き方だと、ガキの頃に姉さんから教わった。  
「んん~♪ なんだかんだ言ってもシてくれるんだからん♪」  
 シリューに出会ってそろそろ二年。  
 最初は近くに寄っただけでビクビクし、身体を拭く時も顔を赤くして可愛い気も有ったが……どこで育て方を間違ったか。  
「ほらっ、後は自分でやれ。次は俺が風呂に入る番だ」  
 タオルを幼い頭に被せ、腰を上げようと両手をベッドに置き、  
「えっ? わわっ!? まってぇっ!」  
 慌てて振り向いたシリューに抱き着かれる。  
 ああ、拭けと言ったのに。俺の服も乾かさないと駄目だな。  
「はぁっ、どうしたシリュー?」  
 手を肩に移して引き離し、目線を落として潤む瞳を覗く。  
「あー、えーっと、ミツキさんや、わたしにセーエキくださいましぃ」  
 すると視線を横に外し、僅かに頬を染めてタオルを床に落とした。  
 はっ? セーエキ? 精液か? そうか、もうそんな時期か。  
「わかった。風呂に入ってから……」  
「そのままでいーのっ!!」  
 先程と同じ展開。立ち上がろうとしたのを、再び抱き着かれて止められる。  
 どうしたいんだシリューは?  
「そのまま、ズボンだけ脱いでよ」  
 溜め息を吐き、言われるまま下を脱いでベッドに座り直す。  
 シリューはその間、服も着ずにジッと突っ立つだけ。  
 難儀なもんだなシリューも。まだ子供なのに、男の精を貰わないんと生きて行けんとは。  
「良いぞシリュー……」  
 手を伸ばし、まだ水分の残る頭をゆっくりと撫でる。  
 真偽は知らんが、シリューとの出会いを考えれば信じられるさ。  
 シリューは普通じゃない。魔術の研究所で産まれた異端児。そこで俺は、複数の男に囲まれ、犯されていたシリューを連れ出した。  
 実際は、生きる為に精を注がれていたらしい。  
「ほーらヘビさん、わたしハダカですよー? もうっ、なんでおっきくなってないのー!」  
 シリューは床に落としたタオルの上で膝立ちになり、俺の足の間で萎えたままのペニスを罵倒する。  
 やはり俺は正常だったな。こんな幼児体型に反応したのでは死にたくなるぞ。まぁ、どうせこれから、そうなってしまうのだがな。  
「くんくん、やっぱり匂うねミツキ。にひひぃっ♪」  
 数秒開け、無言で腰を上げる。  
「わー、違うよぉっ! うぅっ……やっぱり違うくないけど、私この匂い好きだよ!? キレイキレイしてあげたいよ? おっきくしてあげたいよ? だからっ、座ってみつきぃっ!!」  
 三度(みたび)抱き着かれ、三度座り直す。  
 頼むから、するなら黙ってしてくれ。喋る度に気を削がれるのでは敵わん。  
 
 
「ふふっ、じゃあ……いただきまーす♪ はむっ、んぢゅっ、ぢゅぢゅぢゅっ!」  
 シリューはトロトロの唾液に溢れた、小さな口をいっぱいに拡げて見せると、目を細め、三日月の形に変え、何の躊躇も無くペニスを咥え込んだ。  
 ちゅぶっ、ちゅぶぶぶぶっ……  
「ぐうっ!?」  
 俺の股ぐらに顔を埋め、上目使いに妖しく微笑み、肩でフーフーと息をする。  
 
 耳まで紅潮させて、それでもペニスは離さない。  
 溶けそうな程に熱い口の中。舌を巻き付け、唇をすぼめ、頬肉で柔らかく咀嚼する動き。  
 うぢゅるうぢゅる、にゅくにゅくにゅく、ちゅるちゅるちゅる……  
 金で買う娼婦とは比べ物にならない刺激で、心と身体を強制的に高ぶらせてペニスを勃起させる。  
 何度されても、気持ち良いものだな。子供にされて感じてる俺がオカシイのか、それともコイツが特別なのか。  
「もぎゅもぎゅ……ちゅぽっ♪ んっ、はあぁっ、おっきくなったね? 今日もたっくさんちょーだ……ちゅぶ、にゅちゅちゅっ♪」  
 シリューは棒状となったペニスから一旦クチを離すと、ピンク色の舌を伸ばし、上面の細かいヒダを裏スジに沿わせるようにして、少しずつ焦らしながら迎え入れる。  
 あくまで上目使いから逸らさず、奥まで、奥まで、ノドのオクまで。  
 唇で、舌で、食道で、先端を、カリ首を、サオを、余す所無く蕩けさせる。  
「ちぃっ……」  
 毒付く声は自身から。歯を食い縛って堪えるだけ。僅かなプライドが、シリューの奉仕で喘ぐ事を許さない。  
 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅぷぢゅぷぢゅぷ……  
「ん、ん、ん♪ んっ♪ んっ♪ みふひぃっ、きもひいいっ?」  
 月明かりを浴びて透明に輝く、糸引く唾液に満たされた穴の中。  
 唇を隙間無く密着させ、舌を巻き付かせ、更に狭い食道で締め上げる。  
「そう、だな」  
 俺から一時も視線を変えず、俺の目を見詰めたまま、根元から先端までの長いストロークで顔を前後させ、凄まじい快楽を生み出す。  
 堪えているこっちとしては、たまったものではない。ブザマな顔は晒してないか? ブザマな声はあげてないか? ポーカーフェイスは気取れてるか?  
 シリューがペニスを咥えてる時に視線を外さないのは、俺の表情から微かな変化も見逃さないため。  
 感じるポイントを発見し、的確に押さえ、イカせるまでの時間を徐々に短縮させる。  
 ぢゅぶ、ぢゅぶ、ぢゅぶ、ぢゅぶ、ぢゅぶ、ぢゅぶ……  
 敵わんな、本当に。  
 シリューのストロークが加速し、ペニスの感覚はよりリアルになる。  
 巻き付き、擦り上げる、舌ヒダの一つ一つの動きまで正確に伝う。限界は近い。  
「んぢゅぢゅ、んぢゅぢゅ、へぇっへー♪ みふひぃのソーロー、そおろおっ♪♪ ふんんっ……ぢゅぅ~~~~っ!!!」  
 俺の腰に手を回し、ヒルのように根元まで吸い付くと、睾丸から直接に精液を啜ろうとする強烈なバキューム。  
 いつもと同じ。いつもとなんら変わらない最後。どんなに我慢しようと無駄。例外無く精液を搾り取られる。  
「くっ……ぐうぅっ!?」  
 ビュビュゥゥゥッ!!  
 俺は唯々、咥内へ、咽奥へ、胃袋へ、空になるまで精液を注ぎ込むだけ。  
 ドクドクと長い射精を、腹が孕む程に膨らむまで。  
「んん~♪ んく、んく、んくっ、んむむっ……んぐっ、ぢゅ、ぷはぁっ! はあっ、お腹いっぱい夢いっぱい」  
 シリューはそれを全て胃に収め、鈴口に舌先を差し込んで一滴も残さずに嚥下する。  
 苦にもせずニッコリと笑い、唇を舐め上げて、俺の言葉を待つ。  
 ニコニコニコニコ。  
 はぁぁっ、どうしたもんか。  
「ああ……気持ち良かったぞシリュー」  
 シリューの頭に手を置いて軽く撫で、感謝の思いも上乗せする。  
 最初はシリューの罪悪感を消す為に言っていたのが、今じゃ当たり前に締め括りの一言。  
「えへへー♪♪」  
 その間は眠そうに瞳を閉じ、ペニスを咥えてる時よりも一層に頬を上気させている。  
 褒められると言う事が、何よりも嬉しいんだな……  
「ほらっ、明日は早いんだ、もう服を着ろ。俺は風呂に入って来るから」  
「えっ? わっ、まってー、私も一緒にはいるー!」  
 
 そして、決戦の朝を迎える。  
 
 
 闇が光に負け、明かりを世界に広げ出す。  
 まだ鳥も鳴かぬ早朝、生あくびを噛み殺し、霧の中を歩く。  
 シーティアーズ……ここは墓場だ。進入した者を逃がさんとする、一方通行の強制墓地。  
 進めば進む程、霧は濃度を増して朱く色付く。血の香が充満し、死臭さえも漂う。墓場……それ以前の処刑場。『水の都』と唄われた観光都市の面影は、何一つ残っていない。  
「ねぇ、みつきぃ。向かってる場所って、昨日の中央広場だよね?」  
 アイゼルヴィントを引きずりながら横を歩くシリューが、視界最不良の道に困惑恐怖を覚えて問い掛けてくる。  
 やはり怖い……のか?  
「そうだ。そこで魚鳥をフライにする」  
「それは、とってもうまそうですなー」  
 気のせいか?  
 
 三人組は俺とシリューから数メートルも後ろを歩き、霧状な風景を見渡していた。  
 さて……と。  
「シリュー、レオストーンの使い方は、二種類とも覚えてるか?」  
 決戦の場に着くまで時間は有る。作戦の復習も兼ねてシリューの強化を狙ってみるのもよい。  
「えっ、『発(はつ)』と『勁(けい)』でしょ? ちゃんと覚えてるよん」  
 流石に……特にシリューには不要な心配だったな。  
「敵に向かって発動させるか、自分に付属させるか、だよね?」  
「ああ、そうだ」  
 視線は空で答えを返しながら、握っている左手の指を僅かに動かす。  
 すると二つの小石がぶつかり合い、カチカチと音を立てた。  
 掌に収まって余る程度の青光色石『レオストーン』。  
 その半透明な石中からは、『雷獣レオブロード』の血と『風の元素(マナ)』が混ざりあった、淡い青光が外へと放たれている。  
 そして、この魔力石こそが、今回のキーアイテム。擬水鳥ペールフォリンクスを、霧の中を泳ぎ回る巨大魚鳥を、この都で倒す切り札になる。  
 
 魚鳥ペールフォリンクス。全長八メートル前後。フォルムはそのまま魚と鶏を掛け合わせた姿で、毒放鳥ガンフォリンクスと同じくフォリンクス系の派生種。  
 臨時戦闘に陥った場合、全滅する可能性のかなり高いモンスターだ。ガンフォリンクスと違いポイズンブレスを吐くでも無いし、空を飛ぶ事も無い。皮膚の強度も軟化の類に入るだろう。  
 しかし、小さく退化した翼の代わりに、他のフォリンクス系統と全く別の生態をしている。  
 それが『霧中遊泳(ミストスイム)』。霧に擬態し、霧の中を自由に泳ぎ回る。更に羽毛の形をする鱗から水分を体内に取り込み、霧として体外に撒き散らす事も可能。  
 つまり、川や湖が近くにある場所で前準備無しに遭遇したら、全滅コース濃厚の敵。  
 だが、事前準備さえしていれば、他のフォリンクス派生より数段ランクが下がる敵で有るのも確か。  
 擬態はカモフラージュで、己の身体が貧弱だから隠しているに過ぎない。姿さえ見えれば……空を飛べず、皮膚も他系統の様にゴム質では無いので、通常武器でも対応が効く。  
 ましてやレオストーン。雷気の圧縮封印された魔力石は、魚類の天敵アイテム。ペールフォリンクスも例外じゃない。この石は、これから始まる戦いを随分と有利に傾けてくれるだろう。  
 
「そろそろ着くぞシリュー。気を張って置け」  
 ここまでの歩数で距離を確認し、目的地が近いとシリューに伝え……目線だけで三人組に合図を送る。  
 この地形条件は、モンスターの腹中も同じ。尽きる事の無い水を使って霧を作り、ゆったりと人を喰えば良い。  
「ミツキ……勝てる、よね?」  
 突然。シリューが足を止め、上着を掴んで裾をクイクイと引く。  
 俺も歩行を止め、掴んでる腕を離しながら中腰になり、シリューと目線の高さを合わせる。  
 でも……シリューの表情は映らない。目線の高さを並べても、シリューがそれ以上に俯いてしまっているから。  
 不安、か? それとも、恐怖か? 決戦の場がここまで近くなって、やっとシリューも戸惑って来たみたいだな。   
 ここは、渇入れして置くべきか? もう一つ……成長させるのも良いだろう。  
「ほらっ」  
 右手の甲で軽くシリューの額を小突く。  
「痛い……」  
 その一手で、声と共に視線は上がるが……瞳は虚ろに、光は沈んでいた。  
 まったく、仕方無い。シリューの不安を払ってやるか。  
「ふぅぅっ……」  
 一呼吸置き、  
「己の技を鍛え、弱き者の義に応え、真に偽の無い者になれ」  
 一呼吸で言った。  
「えっ? なに……それ?」  
 三つの『ギ』。技術と義理と偽心。そして……それを貫く覚悟。師匠から引き継いだ台詞を、シリューに引き継がせる。  
「絶対に負けない秘訣だ。言葉だけでも覚えて置け」  
 再度シリューの額を小突く。  
 音が鳴って、眉間がピクリと動いた。即座に右手を返し、身体の前へ。  
「いたい……って、言ってるでしょ!!」  
 ――パチンッ!!  
 開かれた右手に、シリューの左ストレートが決まる。  
「あほッ!!」  
 ――パチンッ!!  
 もう一撃。  
 
「ドあほッ!!」  
 ――パチンッ!!  
 更に。  
 
「すかたーん!!」  
 ――パチィィィィィンッ!!  
 渾身の一撃だろうストレートが右手に入る。  
 
 フム。良い肩だ。シリューは『強肩』で『狂犬』……と。  
「その気迫だシリュー。トドメは任せると言ったんだ。全開までテンションを上げてろ」  
「あーっ、もーっ、わかったわよ! 心配なんてしてあげないわ!!」  
 シリューは、ベーっと舌を垂らして中指を立てると、すっかり振っ切れて、ついでに頬も膨らませて歩き出す。  
「心配するなシリュー。絶対に負けん。それとな……」  
 シリューへと、一歩進む。  
「着いて来ないで!」  
 着いて行くつもりは無い。だが……  
「シリュー、来た道を戻ってどうする。そっちは逆方向だ」  
「知ってたよ! 助走を付けてたの!!」  
 凄い言い訳だな。  
 赤い顔をしながら、シリューが定位置へと戻って来る。  
「準備は良いなシリュー。戦いに……入るぞ!」  
 
 霧は、朱く、赤く、染まり尽くした。  
 家畜を喰い荒らし、残された血液だけを霧に混ぜる。  
 視界を殺す為に、  
 恐怖心を煽る為に、  
 補喰を容易にする為に、  
 霧を放ち、霧で抱く。  
 魚鳥を始末するならば今。餌が居なくなれば、民家を破壊してでも餌を探しだす筈。  
 そうなっては手遅れ。旅客に知られては手遅れだ。人が喰われる観光都市等、真っ先に廃れてしまう。  
「ふぅぅぅぅっ……はぁぁぁぁッ!」  
 戦闘用の呼吸法で集気を高め、五感を研ぎ澄ます。  
 既に他のメンバーは視界に映らず、血と共に吸い込まれ吐き出される霧の音で位置を把握する。  
 それぞれの立ち位置は昨日の作戦通り。都の協力で水抜きされた巨大噴水の中心にウィザード。その横にガンナー。二人の僅か前方にスペルナイト。更に十数メートル先が、この位置。  
 そしてシリューは、中央広場の外周ギリギリの場所に居る。あの位置なら、戦いに巻き込む恐れは皆無と言える。  
「そろそろ……始めるぞッ!!」  
 この、シリューを除いたメンバーの立ち位置こそが、霧を無効化し、ペールフォリンクスを弱体化させる術(すべ)。  
「んっ」  
 後方から聞こえるは、微かな破裂音と淡い青色光。ウィザードがレオストーンを使い、自らの身体に雷気を付属させた証。  
 左手から聞こえるは、同じ光を放つレオストーンの相打音。俺の所持数は三つで、二つは左手、一つは左胸のポケットに。  
「さて……」  
 左手から右手へレオストーンを一つ移す。これで、左右に一つずつ。  
「人喰い趣向の魚鳥は、俺の生活を潤す報償金に代わってもらう!!」  
 強く地面を踏み直し、肩幅よりも広い位置に両足を着ける。腰を軽く落とし、右手の内側に魔力を流す。  
「宿れ、レオストーンよ! 発ッ!!」  
 元素の解放。『発』の真言に反応して、青光の雷気が右手から全身に流動する。  
 右腕、胸部、腹部、脚部、頭部、左腕。順に雷気が駆け巡り、バチバチと音を立てて属性を宿す。  
 そして、役目を終えたレオストーンはヒビ割れて砕け散り、硝子粒子に変わり果てる。後はサラサラと、風に運ばれて消えるだけ。  
「ゆくぞっ! シリューも三人組も、我慢しろよ」  
 左手のレオストーンを頭上に掲げ、上空へと掌を開き、唯一触れている掌から魔力を流す。一定方向から魔力を送り込み、発動する力に指向性を持たせる為。  
 放つは遙か高みへ。響かせるは水の都全域へ。誘き出すは巨大魚鳥ペールフォリンクス。  
「さあ……ここに来いペールフォリンクス。豪華な鉄塊を喰わせてやるぞ! 勁ッ!!」  
 轟音と青光が昇る。もう一つの解放術『勁』。詰まっている魔力を、攻撃魔法代わりに発動させる真言。  
 放たれた雷気は俺の左手から溢れて地から天へ。空へと落ちる滝と化す。  
 その殆どは霧を掻き消して昇天するが、僅かな雷気は昇り切れずに霧の中へと流れて行く。  
 隙間無く覆われた霧は、この世の摂理に従い、微かな雷気を都中に伝達する。もちろん俺自身にもだ。雷気を付属していても、軽い静電気ほどは感じてしまう。  
 
「まっ、これなら大した事は無いな」  
 やはり水は雷気を良く通すか。だが、この程度ならシリュー達も問題無いだろう。  
 魔力を無くし、二つ目のレオストーンが光を失って風化した。  
 それと同時、  
「ゲギャャャャャャャッッッ!!!」  
 身体の弱い者なら、聞いただけで嘔吐する声が、音の波が、霧中を多大に震撼させる。ビリビリと受信する威圧感。  
「ぐッ!? 震撼吠口(ハウンドシャウト)か? 流石にBクラス。使って来る」  
 震撼吠口。特殊音域の音を広範囲に発し、体内水分を揺らして一時的に体調を悪化させる力で、主に巨大獣系モンスターや『双頭のハウンドウルフ』が得意とする能力。  
「ふぅぅぅ、はぁぁぁぁ……」  
 再度呼吸法を取り、ドクドクと鳴る心臓音を静め抑える。  
「ふぅぅぅ、はぁぁぁぁ……」  
 大丈夫だ。目眩も無い。気さえ落ち着かせれば……いや、俺一人では駄目だ。あの三人組も……  
「んっ!?」  
 建物でも倒れたのか、遠くから破壊音が響き、聴覚情報だけを刷り込ませて来る。  
「ほら、ここに来い擬水鳥」  
 また。一度目よりも大きい粉砕音。  
 三度目。これまでを凌駕する。  
 違うな。音が大になっているのでは無い。音が近付いているのだ。即ち、接近する爆砕音は、疑う余地無くペールフォリンクス!  
 四度目。  
 近い!? 既に中央広場に入ったか?  
「くッ!」  
 眼前で両腕をクロスさせ、更に重心を低く。衝撃に備える為の守りの型を取る。  
 目視できるのは霧。血の香を呑ませる朱い霧。巨大魚鳥が放つ偽りの霧。その霧の、僅かな流れを読む。  
 ギュルギュルと。鰭(ひれ)と鱗(うろこ)の摩擦音から捉える刹那の音を、瞬時に脳へ叩き込み、常にペールフォリンクスへと向きを変える。  
 恐らく正対している筈だ。万が一にも別の方へと構えてしまえば、突進一発で骨が砕かれ、内蔵が破裂するだろう。  
 だからこれだけは……『雷気を展開する面』だけは、絶対に間違えられない。  
 ――ギュロッ。  
 音が変わり、霧の流れが止まる。  
 来るかっ!? 早急に全魔力の流動をッ!!  身体の前方表面のみに雷気魔力を集めて固めれば、体当たり一撃程度……何とかなる。  
「ふぅぅぅ……はぁぁぁぁぁッ!!」  
 三人組に行くなよっ! 俺に、正面から、来いっ!!  
 次瞬。  
 
 ――ドゴオォォォォォォォン!!!  
 
「ぐぅっッ!!?」  
 防壁として前方表面に張られた雷気魔力は、一発で爆音に砕かれる。身体を衝突波が包み、構えた腕がミシリと鈍い音を立てた。  
「どうやら、正対していたみたいだな」  
 だがそれだけ。腕がイカレて、衝撃が突き抜けただけだ。一歩も引いてない!  
「づあッ!!」  
 俺の両腕と全魔力。そして、レオストーンから付属された雷気魔力と引き替えに、ペールフォリンクスの攻撃インパクトを完全に潰した。  
 
 ペールフォリンクスは……俺の目前!!  
「ウィザァァドォォォォォッ!!!」  
 限りの声で叫ぶ。これが、討伐の開始合図。  
 魔法音が即座に呼応し、青の光と充満した雷気が、中央広場全体を囲み、『この世界』を創る。  
「もう……」  
 隔離空間を創ったのは、対ブレス、対魔法に使われる魔法結界。雷気の付属した魔法結界を中央広場に張り巡らし、外の世界を遮断した。  
「逃がさん!!」  
 雷気に負け、ペールフォリンクスに作り出された偽りの霧が、スリーカウントで消滅して行く。  
 ウィザードが中心場所から発動させた魔法は、霧を消し去り、ペールフォリンクスを『この世界』に幽閉する鳥籠。  
 更に、腕が瞬間完治。スペルナイトから初発の『リカバリー』が唱えられ、腕に存在する痛感以外の外傷を消し去った。  
「ゲギャアァァァァァッッ!!」  
 叫声を上げ、霧中遊泳の不可能になったペールフォリンクスが、大音を立てて地に落ち、その姿を現す。  
「発ッ!!」  
 左胸のレオストーンを取り出し、一動作で付属雷気に変える。  
 その流れのまま、後腰剣の柄を左逆手、左腰剣の柄を右順手で持ち、異名の二刀剣を引き抜く。  
「狙うは頭部。一刀で沈める!!」  
 左逆手で腹前に構えるのは『曲剣レヴァル』。ミスリル合金製の鋼鉄剣で、重量が2.5kgながらも上位硬度を誇る。  
 別名フェザーとも呼ばれる剣で、力の無いウィザードやクレリックが近接物理防御に使うのが主の剣。  
 刀身も他と比べると短く、剣主体で戦うナイト系クラスやファイターには攻撃に向いている剣とは言えないが、小回りが利く分、逆手に持てば十分に盾の役割を果たす。  
 グリップも自分用に改良して有り、攻撃にも瞬時転化出来るので、その真価は限り無く高い。  
 右順手で胸前に構えるのは『避剣ディスタンスラヴァー』。刀身の長さが100cmオーバーの細身両刃長剣で、レヴァルの三倍近い尺が有る。  
 性能もレヴァルと対になる剣で、レヴァルが受ける剣ならば、ディスタンスラヴァーは避ける剣。  
 その長さを生かし相手との距離を保つ事で極度接近を避けれるので、特に撤退戦に置いて真価を発揮する。  
「ゲギィィィィィィッッ!!」  
 奇怪の唸り声を上げ、魚鳥が体勢を立て直す。  
 魚にも鳥にもなり切れない半端な怪物。『異端』故に強く、異端故に『正当』に弱い。対時してしまえば、正当が勝るのは道理。  
 殺気が反発し合い、迫る視線が高差で交差し、二対の究極が吠える。  
「ぐぅぅッ!!」  
 ペールフォリンクスが振るうのは『鎌』。長く鋭敏に発達した『ヒレ』の鎌。この鎌のみが、高い硬度を誇る武器で有り部位。  
 
 要約……この双鎌を落としてしまえば、魚鳥に凶器は無い!  
「ちいぃぃっ!!」  
 センチ単位まで迫る右鎌を、上体を後ろに反らし、レヴァルで下側面から切り上げ、雷気を流しながら受け返す。  
 残るは左鎌。これを捌き切れば、眉間にナイフを全弾叩き込んで終わり。戦いの終局図は見えた。  
「ふッ!」  
 左鎌は振り上げる前……存分の無視で行ける。振り降ろす以上の限界速度でペールフォリンクスの目前に、跳ぶ!  
 懐に入ってしまえば、俺の動きを遮るモノなど何も無……  
「ッ!!?」  
 着地前に、ペールフォリンクスの攻撃が届く。  
 何と言う自惚れ。愚かな過信を持っていたのは、紛れも無く俺自身。  
 安易な予想で戦局を組み立てた結果がコレだ。  
 ペールフォリンクスの凶器は双鎌だけでは無い。俺の眼前でディスタンスラヴァーを突き揺らす『嘴(くちばし)』も、生身を貫く程度の硬度は有るだろう。  
「であぁぁぁぁぁッ!!」  
 歴然の差はパワー。雷気によってインパクト衝撃は相殺出来ても、この差は埋まらない。  
 このままはではマズいな。剣は壊れないまでも、腕はそういかん。ここは引かねばならんか?  
 身体を嘴軌道から外し、その場でディスタンスラヴァーを手放し、腕を押力から逃がす。  
 急激な解放には付いて来れん筈。力を抑え切れずにディスタンスラヴァーを地に突き落としたと同時に、レヴァルで嘴をパリーして体勢を崩せば……  
 
「ぐぎッ!!?」  
 身体が『曲がる』。  
 予測外から来て右腕ごと身体を捉えたのは、未だ『その場』に在る嘴では無く、先程確認した左のヒレ鎌。  
 その力に逆らわず、抜ける方向へと身体を飛ばす。左に飛ばねば……ここでダメージ吸収を行わねば、右腕が完全に死ぬ。  
「ぐぅぅッ!!?」  
 『飛んだ』では無く『飛ばされた』と言う浮遊感。  
 そして程間で、受け身も取れずに背面衝突。  
「がッ!?」  
 数バウンドの後、何とか右掌と両足を着いて地面滑走に持って行く。  
 異物との摩擦熱により右掌から血が滲んで来た処で、やっと勢いを全て殺し切る。  
「なるほど……簡単には行かんか!?」  
 再び距離の開いたペールフォリンクスを見上げ、右手の残力を把握。  
 腕は動く。開閉も問題無い。どちらも痛みだけ。ペールフォリンクスの攻撃能力も自眼で確認した。二度と退かん!!  
 左足のナイフを三本全て右手で引き抜く。  
「ふぅぅぅっ……はぁぁぁぁッ!!」  
 それを、示指。中指。薬指。小指の間に、一本づつ挟み構え、次動で全弾第一投射。  
 
 ペールフォリンクスの眉間へ、身体の捻りを加えて投げ上げる。  
「まだ、続くぞ!」  
 スペルナイト戦の要領で自らも飛び、ナイフに続く。  
 ペールフォリンクスは左鎌でナイフを弾くと、俺の接近に合わせて右鎌を振り降ろす。  
「一意……」  
 初撃同様に右鎌をレヴァルで上方へ。  
「専心ッ!!」  
 第二投射。右足のナイフ全てを、狙いも定め切らずにペールフォリンクスの頭部へ投擲。  
   
「ゲギャアァァァァァァッッ!!?」  
 投射本数と刺音数、そしてペールフォリンクスの苦声とがシンクロする。紛れ無い全弾命中。  
「我が愛剣よ!」  
 足元のディスタンスラヴァーを右手で拾い上げ、  
「貫けいッ!!」  
 突き上げる。  
「ゲギュュュッ!?」  
 顎部から鼻根までを貫通。力無く下がった頭部は、断然狙い易い位置に在った。  
 再びディスタンスラヴァーを手放し、左手首を返す。繋げて下肢に力を込め、  
「ふッ!」  
 真上への跳躍。僅か、ペールフォリンクスの頭部と俺の体部が平行位置になる。  
 これが、最終一手!!  
「ぬあぁぁぁぁぁぁっッ!!」  
「ゲギャ……!?」  
 グチャリと腕に響く低反動。レヴァルは明確にペールフォリンクスの右眼球を刺し殺した。  
 身体の雷気を、このまま送り込む!  
 全身の雷気流動。付属魔力を左手に集める。左手のレヴァルに。レヴァルの刀身に。  
「くたば……ッッ!?」  
 
 二重浮遊。  
 『浮いた身体が浮く』。ペールフォリンクスは首の縦振りだけで、俺の身体を更なる上空に投げ飛ばす。  
 レヴァルから手は離なされ、その手は……  
「どうやら、苦し紛れの行動だったらしいな」  
 足底と同位置、ペールフォリンクスの背に着かれた。  
 苦し紛れ。俺を放り上げ、地面に激突させよう等の考えが有った訳では無い。痛みで、本能で暴れただけ。だから背に落ちる。  
「まったく……」  
 右胸から最後の武器、七本目のハンティングナイフを取り出し、右逆手で振り上げ、  
「二度も言わせるなッ、くたばれ!!」  
 両足の間。柔らかな背中に最後の武器を突き刺す。  
 こんな刃では致命傷にはならないが、体内に微かでも進入していれば良い。  
 ナイフに付属魔力を流し、ペールフォリンクスの体内から雷気を放出させる。  
「勁ッ!!」  
 雷気を攻撃転化させる真言。そして雷音。そして閃光。そして……  
 
 ――ドオォォォォォォォウ!!!  
 
 爆発。ペールフォリンクスが『体内爆発』を起こす。これで内蔵機関は、ペールフォリンクスは死んだ。  
 横になる事も出来ず、直立で絶命している。  
 
 時を同じく、『世界が一つになる』。ウィザードが発動した隔離空間は、ペールフォリンクスの死期を悟る様に消えて行った。  
「ウィザードの魔力も、魔量回復アイテムも尽きたか。良いタイミングで倒せた」  
 自然に戻った中央広場は、外界の霧を許し始める。  
 霧が、侵し始める。  
「なにっ!?」  
 この霧量は半端では無い。明らかに土地発生と違う。明らかに朱い霧。  
 つまり……ペールフォリンクスは、  
「ゲギャアァァァァァッッ!!」  
 生きている!  
   
「しまった!!」  
 半端な残力雷気では火力不足だったか。  
 グラグラと足場が揺れ、  
 ペールフォリンクスが、重歩で動き出す。  
 「ここで逃げられてはッ!!」  
 更に外へ。  
 これ以上はいかん。レヴァルを引き抜いて、もう一度切るしか……  
「みつきぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」  
「んっ!?」  
 コダマする呼び声。左下方から近付いて来る。この声は、  
「シリュー!?」  
 シリューはペールフォリンクスの射程近くまで駆け寄って急停止をすると、  
「いくよ、受け取って!!」  
 青い光の魔力石……五つ目のレオストーンを、俺の身体を的に投げ放った。  
 レオストーンが吸い込まれる様に左掌に収まる。石から漏れる淡青光は、既にシリューの魔力が込められている事を示す。  
 これが、ラストテイク!  
   
 右手でナイフを抜き去り、  
 その傷口に、手首まで左手を捻込んだ。  
 さぁ、終焉真言!  
「勁ッ!!」  
 光が溢れ、音が溢れ、雷気が溢れ、  
 
 ――ドゴオォォォォォォォォォン!!!  
 
 爆発する。叫びにもならない、擬水鳥の無声断末。  
 
 焦げた音と煙も溢れ、朱い霧は、完全消失。  
「はぁっ、はぁっ、はぁぁぁっ」  
 朱い霧を創り、この都を恐怖抱擁していた巨大魚鳥は、擬水鳥ペールフォリンクスは、今、この瞬間に……討伐された。  
「大丈夫みつきぃー?」  
 ペールフォリンクスの足横まで来ていたシリューは、高い背に乗った俺を珍しそうに見上げている。  
「ああ、大丈夫だ」  
 俺は直立死の背から左手を抜き、シリューに向けて小さく手を振って、簡潔な無事表現を返した。  
「待っててミツキ、そこから降ろしてあげるから」  
 ……??? 何を言ってるんだシリューは? こんな高さ、どうでも無いと言うのは解っている筈だが。まさか……高揚しているのか?  
 
「しりゅゅゅゅゅゅゅっ……」  
 自らの名をなぞりながら、シリューは右腕を弓でも引くかの如く、ぐぐっと振りかぶって、  
「なっこぉッ!!」  
 ――ごちん。  
 ペールフォリンクスの足を殴りつけた。  
 そのコミカルな音と共に足場が揺れ、最初に魚鳥の身体が倒れ、  
「ぎゃっ!」  
 俺の身体からもコミカルな音が沸き出る。  
 
 アスファルトの地面をベッドにしながら思う。  
 シリューよ、これは『おろす』じゃなくて『おとす』だ。  
 そして、痛みが無くなる。スペルナイトから二発目のリカバリーが掛かった。  
 何だかなぁ。洒落にしか思えん。  
 シリューはシリューで、  
「この右ストレートはチャンプの証!!」  
 右腕を掲げて、『行き場の無いやる気』を叫んでいた。  
 何時まで高揚してる気だコイツは?  
「はぁ……」  
   
 本当に、勘弁してくれ。  
 
 
   エピローグ  
 
 ――ズリズリズリ。  
 アイゼルヴィントを、「私が持つよ」と言い出したシリュ―に持たせて帰路の道を歩く。  
「大丈夫かシリュ―?」  
 後ろを歩くシリュ―のスピードが明らかに遅くなって来たので、「俺が持つか?」との意味も兼ねて声を掛けるが、  
「ふっ、この程度で根をあげる私では無いわ。シリュ―は強い子になります!」  
 汗を流しながらもビシッと親指を突き立てて見せた。  
「ならば良いさ」  
 歩速を緩めて再び歩く。  
 頭が弱い子にならなければ、それで良い。  
「そう言えばミツキ、モンスターはあのままで良かったの?」  
「ああ、俺達は報奨金を全額得るんだ。それ以外は譲ってやらんとな」  
 三人組が分配を辞退して来たので、ペールフォリンクスから武具の素材になる部位を剥いだりもせず、『ソウルゲイザー』による魂集もせずに、残らず譲り与えた。俺には理解出来んが、奴らにとっては、金よりも順位が大切と言う事か。  
「えーっ、だって役に立たなかったんでしょう? 譲る事ないよー」  
「そう言うな。役に立ったさ」  
 ペールフォリンクス戦、ウィザードが結界を張る。ガンナーがウィザードの魔力常時回復。スペルナイトがその二人の護衛と、俺への随時リカバリー。  
 実際に戦ったのは俺だが、三人組もそれなりに役割を果たしてくれた。  
「私よりも?」  
「ああ……」  
「かっ、ちーん!!」  
 シリュ―は自分の口で効果音を出すと、それになぞって頬を膨らませ、  
「シリュ―はあったまにきました。解決するには、べりーすいーとなフルーツを差し出すしかありません!」  
 舌を満たせと要求する。  
 べりーすいーと? いかんいかん。シリュ―の舌は貧乏舌で良い。肥えられたら食費が嵩む。  
「報奨金をギルドで受け取るまで金は無い。後五日は干し肉とパンだ」  
 フルーツ程度なら途中の街で買ってやっても良いが、ここは食費を切り詰め、貧乏に慣れさせた方が得策。  
「うるせー! 野菜食わせろー! 草食わせろー!!」  
 ――ズリズリズリズリズリズリ。  
 シリュ―はテンパった不満を叫びながら、超加速で距離を詰めて来るが、  
「ぜーは、ぜー……ぎっ、ぎぶ」  
 5秒でピタリと止まっていた。  
「体力無さ過ぎだな」  
 貧血を起こしそうな程、顔が青くなっている。  
「そう言えるのも今の内よミツキ。ふふふ……必ずミツキより強くなって見せるわ」  
 その台詞が、明日まで続く事を祈ろう。  
 
  ─── 一時間後 ───  
 
「やっぱり重いよー」  
 避難の声を無視する。  
 一日も持たなかったな。  
「おーもーいーよー!!」  
 俺は坂の最頂で腰掛け、未だに登り切らない人物を、昼食の準備をしながら待っていた。  
「早く登って来い! 飯を全部食うぞ!」  
 余りに遅いので、一番効果の催促を掛ける。  
「えーっ! 待ってよー!!」  
 ――ズリズリズリズリ。  
 おお、早くなった早くなった。  
「もう、これ邪魔!!」  
 不快を発する声がし、引きずっていた荷物と、それを結んでいた腕が解かれる。  
 ――ズリ、ドスンッ!!  
「軽い、かるぅい♪」  
 支えの無くなった物は、重力に逆らえず、  
 
 ――ズザアァァァァァァァッッ!!  
 
 坂道を下って行く。  
 ……!!?  
「ああああぁぁぁっッ!!」  
 
 坂道を下って行く。  
 次に下ったのは、追い駆ける俺自身。  
 
 まったく、勘弁してくれ。  
 
 
       『Little Flower』  
    ~朱い霧のシーティアーズ編~  
          完  
 
 
 
 
 
 
 
    『Little Flower』  
ここまでの話しで、名前の出て来たキーワード。  
     街名  
『帝都ヴァルキュリア』  
北方に位置し、最大級の財力と兵力を持つ巨大な帝都。唯一、女性が治めている帝都としても有名。  
『最南の町ホワイトエール』  
最南に位置する町で、日々温暖な気候が続く町。フルーツ栽培や、練金術の研究が盛ん。  
『水の都シーティアーズ』  
中心より西に位置し、都中を流れる無数の滝により、観光都市として有名。常に水の加護を受けている。詳しくは本編参照。  
 
     人物  
『ミツキ=エクスリッター』Age23  
ある人物を探して、ギルドで生活費を稼ぎながら旅を続ける。口癖は「さて」「まったく」「勘弁してくれ」。詳しくは本編参照。  
『シリュー=アイゼンロード』Age11  
以前起きた事件以降、ミツキと行動を共にする。属性ツインテール。天敵はグドン。詳しくは本編参照。  
 
     武具  
攻撃性能と防御性能を、それぞれA~Gの七段階で評価。  
『アイゼルヴィント』  
攻撃性能? 防御性能?  
未だ使われない両手用大剣。ミツキが愛用するも、振るう機会は少ない。シリューのトレーニング器具としても使われる。詳しくは本編参照。  
『曲剣(きょくけん)レヴァル』  
攻撃性能F 防御性能E  
小振りな変曲片手剣。その軽さから、力の無い者が持つ事が多い。詳しくは本編参照。  
『シリューナックル』  
攻撃性能━━ 防御性能━━  
シリューが放つ拳技。その時の気分で、ジャブ、フック、ボディブロー、ストレート、アッパーカットに派生する。威力は皆無。平民をケーオーするのが関の山。  
『ハンティングナイフ』  
攻撃性能F~G 防御性能━━  
投擲用の小型ナイフ。剣として使用すると、攻撃性能は一ランク下がる。ミツキも七本所持。詳しくは本編参照。  
『避剣(ひけん)ディスタンスラヴァー』  
攻撃性能E 防御性能E  
極めて長い刀身を持つ片手剣。牽制や距離を取る場合に最適。詳しくは本編参照。  
 
     魔術道具  
『ソウルゲイザー』  
死亡したモンスターから魂を抜き取るアイテム。ギルドからの配給品で、クラスに着いている者なら誰でも所持している。  
抜き取った魂の合計数でランキングが決まる。容姿は銀の球体。大きさは手に収まる程度。  
『レオストーン』  
雷付属の魔力が多量に混じっているマジックストーン。値段は高いが、その価値も高い。詳しくは本編参照。  
 
     魔法  
『イミテーション』  
無属性魔法。自身の筋力を強制的に、強化、膨張させる魔法。詳しくは本編参照。  
『フェアリーライト』  
光属性魔法。暗い森中等で、外灯代わりに使われる魔法。詳しくは本編参照。  
『リカバリー』  
無属性魔法。傷を治す魔法で、術者の魔力高低に比例して効果が変わる。リカバリーの場合は回復する程度。擦り傷しか直せない者から、離れた腕を接合出来る者まで居る。なお、病気の治療は含まれない。  
 
     クラス  
『ウィザード』  
攻撃魔法を主とするクラスで、自己の修練により魔法を習得使用する者。魔力は高いが、筋力が低いのがクラス特徴。  
『ガンナー』  
遠距離戦を生命線とするクラス。銃弾の種類により攻撃魔法と近い効果を発揮する物も在るが、銃弾は固定ダメージなので、十分な予備弾装と、それを揃える十分な資金が必要になる。  
体力と魔力のどちらも低いが、視覚、聴覚、嗅覚と言った五感能力に優れるのがクラス特徴。  
『クレリック』  
補助魔法使いの最高峰。ウィザードとは違い、幻神や精霊、元素(マナ)を崇拝する事により、魔法を使用するクラス。  
筋力はそれほど高く無く、基礎魔力もウィザード程高く無いが、その土地の精霊や元素等の恩恵効果を受けるので、戦う地によって様々な能力が著しく上下してしまうのがクラス特徴。  
『スペルナイト』  
軽量装備を扱い、低ランクの補助魔法も使いこなす。  
接近戦を主に戦うが、先頭を切るよりは、ウィザード等の護衛に回る事が多いクラス。良くも悪くもクラス特徴は無い。  
『ファイター』  
防具類は殆ど身に着けず、敏捷性を活かして戦うクラス。主に小型モンスターや、中型モンスターを相手にする。  
接近戦闘技術は優れているが、魔力はその逆。飛行モンスターや霊体モンスター相手だと、全く無力になる反面も有る。  
 
     モンスター  
強悪さによりA~Gの七段階で評価。  
『擬水鳥(ぎすいちょう)ペールフォリンクス』  
C~Eクラス  
全長7~10メートル。フォリンクス派生の亜種で、飛ぶ事よりも泳ぐ事に突出している。  
偽りの霧を創り出すのも特徴。その姿は水辺や大森林で見掛ける事が出来る。詳しくは本編参照。  
『毒放鳥(どくほうちょう)ガンフォリンクス』  
Bクラス  
全長12~17メートル。フォリンクス系の派生種族。毒のブレスを吐き、弱らせてから捕食する特性が有る。  
山頂部を巣にし、山の周りを優雅に飛行する姿も確認されている。  
『双頭のハウンドウルフ』  
Fクラス  
全長1~2メートル。頭部が二つ有るモンスター。それぞれの頭部に意思が有る為、仲が悪いと互いに噛み合って死ぬ事も有る。  
決まった生息地は無く、各地で見られる。群は成さない。  
『雷獣(らいじゅう)レオブロード』  
Fクラス。  
全長1~2メートル。体内で電気を生成する珍しい種族。その気高い遠吠えは、北地の降雪地帯で聞く事が出来る。  
レオブロードやフォリンクス派生に限らず、その殆どのモンスターが、武具や道具の素材になる。  
 
     ギルド  
クラスに着いた者が様々な依頼を解決し、報償金を得る場所。報償金は、依頼主からギルド経由で得る。  
ギルドランキングは、倒したモンスターの数で順位を表すランキング。  
表示名は個人から団体まで何でも良く、団体ならば、全員の数を加えて数える。  
したがって、上位に行けば行く程、パーティー人数が増えて行く傾向に有る。  
倒したモンスターの数をギルドで登録するには、『ソウルゲイザー』と言う特殊なアイテムを使う事が必要。  
 
 
 

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