「ひあっ!?」
「あっ、すいません。」
「いえ、だ、大丈夫です…。」
揺れた拍子に私の耳に触れた男性が一歩離れた。
たまに慣れない電車に乗るとこれだ。嫌になる。
普段通勤で使わないのでうっかり満員の時間帯に乗ってしまい、すし詰め状態の中で必死に耳を庇う。
私達エルフは耳が性感帯であることが多いからだ。勿論私も。
しかし揺れる満員電車の中で耳を守るのは容易ではなく、今のように触られてしまうこともしばしば。
はあっ、と思わず溜め息が出る。
ローパーやスライム専用車両はあるのに何でエルフ専用車両はないのか。一種の差別ではないか。
などと考えていると車両がゆっくりと傾きだした。大きなカーブにさしかかったのだ。
やがて背中側からギュウギュウと圧力を感じ、ドアに押しつけられる。
仕方ないとは思いつつ顔をしかめると次の瞬間、
「きゃうっ!?」
さっきの男性の、今度は唇が私の耳に触れたのだ。
「ああ、ごめんなさい。」
「ひぅ!だ、大丈夫ですから…。」
ほとんど唇が触れたままで謝罪する男性。声が出ないように必死に我慢する。ああ嫌だ。
しばらくすると私はある異変に気づいた。
カーブは既に終わっているのに後ろからかかる重みは変わらず、私はドアに押しつけられたままなのだ。
「…あの、もう少し下がれませんか?」
未だに私の耳に軽く触れたままの男性に声をかけるが反応はない。
もっと語気を強めようと息を吸ったとたん、
パクリ
「ひゃんっ!?」
一瞬何が起こったかわからなかったが、どうやら男性、いや、男が私の耳をくわえたようだ。
「なっ、何を!」
ペロペロ、ジュルジュル、チュウチュウチュパ
「ひあああぁっ!」
男が耳を舐め上げ、しゃぶり、吸う。あまりの刺激に声を上げ、体が仰け反る。
「や、やめて…さもないと警察に…、んやぁ!」
私の言うことなどお構いなしにさらに甘噛みを交えた愛撫が続く。気づけばもう一方の耳も指で撫でられている。
「や、やめて!だめっ!あんっ!」
ジュルジュル、チュウチュウ、さわさわ、ハムハム、なでなで、チュパチュパ
「お願い、も、もうやめて、や、やめ、あっ、あっ、あっ、だめっ、だ、あ、あああああああ!!」
耐え難い快感に抗えず、ついに大声を上げて達してしまった…。
周りがざわついているのがわかる…。
くたりと力の抜けた躯を男に預けると、彼は私の肩を抱いて知らない駅で降ろされてしまった…。