俺は先週から姉夫妻に寄生させて貰うことになった。
とは言っても義兄は単身赴任で実質2人ぐらしになってしまう。
最初は少し戸惑うこともあったが
やはり腐っても姉弟なわけだ。
1週間も経てばそんな生活にも慣れてしまった。
全てが順調に回り始めた、そんな矢先のことだった。
その夜、俺は何故か寝付くことができなかった。
どけか不安定で落ち着かない空気を感じていた。
妙にざわめく気持ちを静めるために俺は夜空を眺めることにした。
ベッドから下りてカーテンを開ける。
ひんやりとしたフローリングに腰を下ろし、星を探してみた。
しかし、四角く切り取られた空に星を見つけることはできなかった。
暗く静まり返った部屋には時計の音だけがどこか淋しく響いていた。
「静かな夜だね」
俺の隣で、彼女は穏やかに呟いた。
いつからそこに居たのだろう。
いや、本当は気が付いていた。
ただその事実を認めてしまったとき、何か大切なものが壊れてしまう気がしたのだ。
「ああ、静かだな……姉さん」
無機質に時を刻む音と共に、世界は少しずつ狂い始めていた。
何かを求めるように彼女の小さな手が俺自身に重ねられた。
俺にはそれを拒むことができなかった。