・少女剣士の手難 ep1  
 
 彼女は絶体絶命の窮地に立たされていた。  
 振り返る童顔は険しく、足取りは不安定で重く、見るからに満身創痍の様相だ。  
 陽は中天にあるものの、追う側にそんなことは関係ない。  
 ここは廃墟と化した街、相手は仲間を失った少女、そして……自分は化物だからだ。  
 
「――きゃあっ!」  
 
 伸ばした触手が、少女の四肢を容易く捕らえた。  
 剣を抜く余裕もないほど、彼女は怯えきってしまっていたのだ。  
 
「や……やめて…………」  
 
 懇願は空しくかき消えるだけだった。  
 怪物の顔と思われる部分が歪んだように見えた。  
 少女はといえば……悲鳴を上げる力すら残されておらず、澄んだ緑の瞳からは涙がこぼれていた。  
 これから遭う目を十分に理解できるのだろう。  
 ふいに、ひときわ鋭い一本の触手が少女の前に現れると、それは目にも止まらぬ速さで少女の身体に奔った。  
 すると、少女が着ていた衣服が裂かれ、肌には傷一つつかずに全裸にされているではないか。  
 
「…………っ!!」  
 
 頬を濡らしながら、羞恥と恐怖で顔を赤らめ歯噛みする少女。  
 なんで……どうしてこんなことになっちゃったんだろう……?  
 問いかけても、答えなど返ってこない。  
 もはや彼女は、くもの巣に囚われた蝶々と変わらぬ存在。  
 ただただ自分が犯され、辱められた挙句、激痛に泣き叫びながら捕食されるのを待つしかない。  
 それは、文字通りの絶望――――  
 四肢を四方に伸ばされ、空中で宙吊りにされた少女が最初にみたものは、異様なまでにぬめった無数の黒い触手だった。  
 ふとめの中指ほどもあるそれは、不気味な音を立てながら、思い思いの場所にまとわりついてゆく。  
 首すじ、耳、ほお、顎、うなじ、肩、わき、太もも、へそ…………  
 
「…………――ひぃいいっっ!!!」  
 
 全身にはしった異常な悪寒に、少女は激しくわななきながら悲鳴をあげた。  
 粘っこい感触の気持ち悪さに加えて、強い催淫効果もある。  
 処女であっても自慰の味を知っている彼女ならば、それに敏感に反応するのは当然だった。  
 そして、触手は待ちわびていたかのように、今度は程よい膨らみに二本の欲望を走らせた。  
 ピンクの突起にぬめった触手がぴとっと着地する。  
 
「っっぃやあ、ン……!!」  
 
 すでに愉悦を帯びた少女のあえぎ声。  
 それから間もなく、黒の触手は吸盤のように変形し、ちゅく、ちゅく、と乳首を吸う淫らな音が響き始めた。  
 異様な恍惚感が少女に襲いかかる。  
 
「ひゃっ! ……やっ、あっ、あん! きゃふ、んっ……や、やめへぇ!!」  
 
 その言葉とは裏腹に、少女の心は陶然としていた。  
 殺意を感じない触手に恐怖を覚えなくなると、脳の中は激しすぎる快感の炎に覆われてしまっていた。  
 声は完全に、自涜に及んでいる時しか出さなかった筈の艶かしい響きを帯びている。  
 
「あぁん、はぁ、んんっ……いいっ……! ひゃぁっ、ンっ…………」  
 
 自ら求めるようによがってしまう少女。  
 欲望に溺れた雌へ成り下がる寸前で、微かに残る理性が彼女に呼びかけた。  
 私は犯しつくされた後、この怪物に喰われる。そんな相手にいい様にされるなんて嫌……!  
 しかしそんな想いも、絶対的な快さを前にして飲み込まれそうだった。  
 どうせ私が抵抗したところで敵いっこない。逃げられるハズもない……  
 
「……っひ!??」  
 
 陰部に強烈な違和感をおぼえ、少女は恐るおそる下方をうかがった。  
 正視をはばかられる、太く粘り気のある黒触手が緑眼に映される。  
 それは、先端で三つに枝分かれしていて、さらにそれぞれが虫の肢の様なモノを無数に蠢かせていた――  
   
「いやぁああ゛っっ!!!」  
 
 見た目の気持ち悪さに、少女は我に帰って絶叫した。  
 こんなモノが自分の身体に触れていたと考えると、精神に異常をきたしそうだった。  
 くちゅ、くちゅ、と耳に入ってくる淫猥な水音が、少女をすこしずつ快楽の波に溺れさせてゆく。  
 
「ひいっ………………い…………やっ……んぅっ、あんっ……あっ!! あぁん! ひゃぁンっ!!」  
 
 少女の意志は、脆く儚いものだった。  
 秘処を奇形の触手によって穢されているというのに、だらしなく舌を出しよだれを垂らして悶えてしまう。  
 
「あンっ! はぁッ! ひゃあ! くっ、ふ、んんんっ……あぅ、はンっ、あっあっやっきゃぁあんっ!!」  
 
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、といやらしい音が発されるたびに、少女の口からもまた淫らな響きがついて出る。  
 淫核・膣内・尻穴の三箇所を巧みに犯され、触手の粘液とも少女の愛液ともつかぬ欲望の元が、地面に向けて大量にほとばしっている。  
 実は既に絶頂を迎えていることに、少女自身は気づいていない。  
 異常な気持ちよさが継続しすぎて、性的感覚を倒錯させられてしまったのだ。  
 
「ぅンっ、やぁっ、ひゃん! あふぅ……はぁんっ!! ――ふあっ!?」  
 
 欲望に溺れきった表情が、少し和らいだ。  
 攻めを一旦中断して四肢を拘束していた触手がうごき、少女の姿勢を無理矢理変えさせられたからだ。  
 両手を頭上にかかげ、上半身を屈めて尻をつき出す前傾姿勢……いわゆる後背位に適した格好だった。  
 
「はぁっ…………!!」  
 
 頬を染めて舌なめずりしながら後方をうかがった少女の双眸に、正しく男性器を思わせる形状の赤黒い触手が映し出された。  
 が、それも一瞬のこと――  
 
「――ひゃぁああっふぅぅうんんぅっっ……!!!」  
 
 ゆるやかに後ろの穴に侵入してきたそれは、異様な滑りを帯びていた。  
 しかも、どういうわけか微かに震動までしていて、中にいられるだけで激しすぎる甘い衝撃が少女を襲うのだった。  
 
「あんっあっ! ひゃっ、んッ……うぅ、あぁぁっ!! きゃふぅぅう……っ!!!」  
 
 僅か数回ずぷずぷと出し入れされているだけで、少女はいとも容易く果ててしまった。  
 快楽によって生み出された透明の液体が、ピュッ、ピュッ、ピュッ、と一定間隔で放出されてゆく。  
 だが、触手はそんなことお構いなしに未だピストン運動を繰り返している。  
 
「あぅっ、はっ、ん……あぁぁあん! ひゃぁぁんっ……出る、でちゃうぅ――あぁん!! あっあっあっあぁん!! やぁぁぁアんっ!!!」  
 
 十を数えぬうちに再び絶頂が訪れ、少女の身体を激しく痙攣させる。  
 脳内は愉悦によって焼き尽くされ、気を失いそうなくらいの心地よさを伴っている筈だが、それでも決して意識を手放そうとはしない。  
 いや、‘手放せない’のだ。  
 ――と、再び四肢に絡まっている触手が動き出した。  
 今度少女がさせられた姿勢は、先刻と同様両手を頭上に拘束されての――M字開脚の格好だった。  
 羞恥などとっくに失せている少女には、それは新たな快楽を味わえるという餌でしかなかった。  
 彼女を待ちわびせることなく、あっという間に黒触手が一本、秘境に向けて迫り出した。  
 例によって虫の肢を無数に生やした先端が、すでに濡れそぼっている処に優しく触れ始めた。  
 
「あ、ん……♪ あん……あぁん……あん……やん……あっ、あぁっ、はぁあん……! きもち、いいぃっ…………!!」  
 
 上下にうごめいて淫核をくにゅくにゅ刺激する様は、愛し合う男女間での前戯を思わせる。  
 少女の方もそれを愉しむようにリズムよく喘ぎ声を上げ、少しづつぴゅっぴゅっと愛液を漏らしながら、気持ちよさを堪能している。  
 しかし、それは長続きしなかった。  
 少女は双眸を閉ざしていたため、ソレの接近には全く気づかぬうちに――  
 
「あん……はぁあん、あ――――が!!!」  
 
 何かを破る音とともに、悲痛なうめきが洩れた。  
 彼女の、未発達の恥部に挿されているのは……男性器の周りに小さな棘がびっしり備わっているような形状の、‘その怪物の性器’だった。  
 
「あがぁあ、ハっ……ッ……ぎぃっ!!!」  
 
 処女膜を貫かれ、幼い秘陰の周囲に紅い花びらが舞った。  
 少女は、身体のなかに何かが植えつけられるのを感じ取った。  
 そう……怪物は自身の精を放っているのだ。  
 この少女を、子孫を残す媒介に選んだのだ。  
 
「――――ぐごっ」  
 
 ようやく怪物の性器が抜かれると、奇異な苦鳴が少女の口から洩れた。  
 首がだらんと垂れ下がっているのを見るに、どうやら気を失ってしまったようだ。  
 すると用済みと判断したのか、怪物は四肢を拘束していた触手を解き、巨体に似合わぬ速さで何処かへ立ち去ってしまった。  
 
 
 
 
 
- Epilogue -  
 
 少女には三人の仲間がいた。  
 彼女以外は男だったが、女というハンデをものともしない剣の冴えを有していたから、少女はパーティのリーダーを努めていた。  
 そんな彼らが、ひとつの街を潰した名も無き賞金首の怪物の情報を聞き、少女の決定で意気揚々と廃街へと向かった。  
 しかし、怪物は強かった。  
 仲間の魔術士・僧侶・弓使いが、文字通り一瞬で血祭りに上げられてしまった。  
 ――人間の男に対しては圧倒的な力でねじ伏せるが、女に対してはその半分も力を発揮できない。  
 事前に調べていれば結果も違ったろうに、少女は仲間を失った上、惨状を目の当たりにした恐怖から無力な乙女になってしまったのだ。  
 
 怪物が去った後の廃街には誰も訪れず、また少女も暫くは意識を取り戻すことはなかった。  
 だが、彼女の体の中では着実に何かが繁殖し、新たな生命を次々に作り出していた。  
 そして、一週間後。  
 少女はようやく、意識を現実に引きずり戻された。  
 
 ――――激痛によって。  
 
 腹部にこみあげる猛烈な痛みと、喉元から吐き出される血塊に。  
 少女は、双眸を大きく見開いた――――  
 
 
「            !!!!!!」  
 
 
 絶望の叫びは、声にならなかった。  
 再び薄まりゆく意識の中、少女が最後に見たものは……自らの腹を食い破って蠢く、無数の蟲の姿だった――――――  
 
 
 
 BAD END  
 

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