そうか。私はおっぱいが大好きなんだ。  
 なんて。  
 心からそう思えるようになったのは、本当に最近のことだ。  
 それまでは、大きくて、重くて、蒸れるし、注目されるし、何より似合う服がなくなるのが、  
本当に嫌だった。  
 ブラを外しても、なお谷間ができるほど大きいおっぱい。  
 私のおっぱいのことだ。  
 まだ小学五年生の、私のおっぱいの話だ。  
 嘘じゃないよ。本当だよ。自分でも信じられないけれど、信じたくもないけど、確かに私の  
おっぱいは本物だよ。  
 どうしてこうなってしまったのだろう。  
 何か悪い食べ物食べたとか、家の水道水に環境ホルモン的なものが混入していたのか。しか  
し私なお母さんもお姉ちゃんも、皆普通のおっぱいだ。こんなにおっ  
ぱいの大きい小学生は、この町でも私だけだろう。  
 ずいぶん苦労した。  
 幸いにも痴漢に襲われるとか、実際的な被害に遭ったことはないけ  
れど、みんなの視線が辛いと思ったことはある。  
 私は背が低い。おっぱい以外はやせっぽっちだ。そういう体型なので、よりおっぱいの大き  
さが強調されてしまう。それが、多くの人には奇異と映るのだ。  
 どうして詰め物をしてるんだとか、男子にからかわれることはしょっちゅうだ。  
 女子は女子で「鹿島さんは巨乳だから〜」だの「鹿島さんは巨乳なのに〜」だの、勝手なレ  
ッテルを貼って私を批評する。  
 大人達ですら。  
 私はただの小学生なのに。女の子なのに。そうでしかないのに。勉強ができるのも、運動が  
下手なのも、巨乳であることとは全く関係ない。私は人並みに努力して、人並みの成果を上げ  
ただけなのに、皆は二言目には「巨乳」とつけてくる。  
 うんざりだった。  
 私が巨乳なのではなく、巨乳が私であるみたいな、最悪の気分だった。  
 私は確かに、おっぱいが大嫌いだった。  
 それが、最近ちょっと、変わっ。  
「今日もお願い。ユッキー」  
「……うん」  
 私には幼なじみの親友がいる。物心ついたこれから、ずっと一緒だった。  
 だからその親友は、『私』を見てくれていた。巨乳ではない私をいつも見ていて、隣に居て  
くれた。  
 歳の割にはやんちゃすぎたり、やや直情径行な面もあるけど、私はその子が好きだった。  
 しかし先日、転機が訪れる。  
「ユッキー。相変わらず綺麗な色の乳首してる」  
「……っ! つっついちゃだめえ」  
 私の親友が、自分はおっぱい好きなのだと、カミングアウトしてきたのだ。  
 そしてさらに、私の『美巨乳』を研究させてほしいと、依頼してきた。  
 大変驚いた。  
 だってその親友は――鈴理は、女の子なのだから。  
 いや女の子でも、おっぱいに触りたいと興味を持つことくらいはあるかもしれない。しかし  
鈴理のように、乳首に吸い付き、舌で舐めしゃぶりたいとまで思う女の子は、滅多にいないと  
思うし、それを実行して、  
「ユッキーのおっぱいおいしいねえ、塩味だけど」  
 とまで言える子は、皆無だろう。  
 私は。  
 ブラウスの前をあけて、ブラを外し、白いおっぱいだけが見えるように開けている。その先  
端を、鈴理は赤ん坊のようにしゃぶっている。  
 ハイトク的というのだろうか。小学生の女の子同士でするには、かなり危ない光景だと思う。  
「いっぱいしゃぶっていいよ。すずちゃん」  
 しかし、鈴理には理由がある。  
 彼女は、母親のことを殆ど覚えていない。  
 物心つく前に、彼女の母親が病死してしまったからだ。だから、鈴理が憶えている母親の思  
い出とは、おっぱいを吸って母乳を飲んでいたことだけらしい。  
 だから、おっぱい。  
 
 母親がいないという欠落を埋めたいがために、鈴理はおっぱい好きになったのだ。  
 よこしまな気持ちなんて、どこにもない。純粋だ。  
 そんな願いすら聞けないようでは、親友失格である。  
「んうっ……強い、よ……すずちゃ……!」  
 親友失格。  
 ああ、しかし。それなら。私はどうなのだろう。  
 鈴理が、私のおっぱいにしがみついている。  
 彼女の唇と舌が、私の乳首をほぐしている。  
 それが、それがとても。  
「すずちゃん……!」  
 気持ち良いのだ。  
 鈴理の唇が私のおっぱいに触れる度に背筋がぞくぞくして、だらしなく口が開いてしまう。  
 触れるという刺激に、敏感になっている。  
 気がついたら乳首が充血していて、ぴんと尖っている。それが楽しいのか、鈴理は私の乳首  
にさらなる刺激を与えてくる。  
 特に、きゅうと吸われるのがたまらない。母乳なんて出るわけないけど、なにか、それ以上  
に切実なものが、体にあふれてくる。  
 その溢れたものは、声になったり。  
「……うわ」  
 私のあの部分から蜜となって出て来て、パンツを濡らしてしまうの  
だ。  
「びしょびしょだよ……これ」  
 今。  
 鈴理といつもの『遊び』を終えてから、私は風呂の脱衣所にいた。  
 パンツを下ろして、濡れた女の子の部分を確かめている。  
 そこに少し触れただけでも、蜜がべっとり絡み付いた。それどころか、今も体の奥が疼き、とめどな  
く蜜が溢れてくる。  
「これって、つまり、そういうことだよね……」  
 私は、興奮していると。  
 女の子で、同い年で、親友の鈴理におっぱいを吸われてえっちな気持ちになっていると。  
 そういうことなのだろう。  
「え、いや、どういうことなの」  
 そりゃ、鈴理は元気だし、かわいいし、かっこいい。それなのに嫌味ったらしい所がなくて、  
同性にも異性にも人気だ。  
 しかし、だからといって、女の子である私が。  
 鈴理で興奮するなんて、そんなことが、あって良いのだろうか。  
「ダメでしょ。それは……」  
 絶対にノゥだ。  
 鈴理は私のおっぱいが好きなだけで、他意はない。友達として好いてはくれているだろうけ  
れど、それ以上の感情はない。  
 女の子が好きとか、そういう子じゃない。  
 だから、そこのところを履き違えてはいけないのだ。鈴理は、普通の子なんだから。  
 おっぱいを吸われて興奮するようなヘンタイとは、違うのだから。  
「ヘンタイ……」  
 自分で思い付いた言葉にショックを受けて、私は頭を抱えた。  
 しかし、それで、疼きがおさまるわけでもない。  
「どうしよう……」  
 私は脱衣所で独り、途方にくれた。  
 
 その、ほんの数分後。  
 私はやっぱり、お風呂に入っていた。  
「こんなこと、したくてやってるわけじゃなくて……」  
 お風呂で、両手でもって、自分のおっぱいを揉んでいた。  
 潰して、締め付けて、捻って、摘んで、引っ張っていた。  
「く……ふっ」  
 
 疼きを止めるために。  
 鈴理がしてくれない分を自分でやるために。  
「大体、すずちゃんがいけないんだもん」  
 誰に言うでもなく、独り言。  
「研究のためとかなんとか言って、おっぱいをあんなに、あんなにしておいて……」  
 最初は、触ったり吸ったりするだけだった。  
 けれど最近では、モノを挟んだり、筆で刺激されたりもした。  
 個人的に一番ひどかったのが、ハチミツを使われた時だ。おっぱいにたっぷりかけられて、  
その一滴すら残さず舐めとられた。ハチミツのねっとりした感触が鈴理の舌と合わさり、気が  
狂いそうになるほど気持ち良かった。  
 そのすべてが、素で『美巨乳を育てるため』と信じこんでいるというのが恐ろしい。鈴理は  
『揉まれると大きくなる』という都市伝説を未だに信じているクチで、しかもそれを拡大解釈  
しているのだ。  
 中にはまあ、巨乳を保つための筋トレとか、まともな活動もあるけれど、やはり彼女の第一  
目的は、私のおっぱいで遊ぶことでしかない。  
「でも、あんなにするくらいなら、ちょっとくらいこっちでシてもいいじゃない……」  
 こっち。  
 ええと。露骨に言うのも解剖学的に言うのもはばかられるのだけど。きっと鈴理なら臆面も  
なく『おまんこ』と言えるのだろうけど。  
 それはうらやましいような、そうでもないような。  
 ともかく、そこに、私は右手の指を這わせた。  
 割って、開いて、入り口のあたりをくすぐる。  
 さすがに、指を入れることはできない。怖いし、痛そうだから。  
 そのかわり。  
「んっ……う」  
 固く、乳首と同じように勃起したクリトリスは、安心して触れることができた。  
 包皮ごとつまんで、コスってみる。  
 おっぱいとは違い、私のクリトリスは普通の大きさ……だと思う。他人と比べたことなんて  
あるわけない。推測だ。  
 けれど少なくとも、規格外というわけではないだろう。そう願いたい。  
 左手をおっぱいに。右手をおまんこに。二つの刺激で、私は私を慰める。  
「うう……ダメえ、足りないよお……」  
 何かが、足りない。イけない。  
 鈴理が直接してくれなくても、せめて、見ていてくるれば、簡単にイケる気がするのに。  
 一人じゃ、どうしても、ダメ。  
 いや、一つくらいならある。私が一人でもイケる方法。それは、先日見つけることはできて  
いた。しかも、今の状態でもそれを試みることは可能だ。  
 「だ……ダメ!」  
 叫んだ。  
 右手と左手を、体から離した。  
 それをやりかけた自分を、必死にセーブする。  
 いやいや。  
 確かに、やったことはある。確実で簡単な方法ではある。  
 けれど、ありえない。あれをやってはいけない。そんな気がしてならないのだ。  
「うえ……」  
 ありえない。  
 だめ、だめ。  
 でもイケない。イケなくて辛い。  
 火照って、疼いて、たまらない。  
「ユッキー?」  
 不意に、突然。  
 風呂と脱衣所とを隔てる曇りガラスの向こうから、鈴理の声がした。  
「まだー? 私もシャワー浴びたいんだけど……」  
「ひぃっ!」  
 頓狂な声を上げて、私はその場に縮こまる。  
「ユッキー?」  
「ま、まままま、まだ! まだダメっ……!」  
 心配そうな鈴理の声を掻き消すように、私は叫んだ。  
 
「でも、だったら一緒に入ればいいのに」  
 今度は不満そうに、鈴理は唸った。  
 うう。  
 そうだった。まだ、鈴理はシャワーを浴びてないし、浴びる予定なのだ。それこそ、私と鈴  
理が暗黙の内に課した手順なのだから。  
 おっぱいで遊んだら、体を洗う。当たり前のように、最初から、私達はそうしていた。  
 けれど、最初とは違う点もある。  
 それがこれ、私達は、二人で風呂に入ることがなくなった。正確には、私が鈴理と一緒に入  
ることを拒んだ。  
「ダメ、なの! 恥ずかしいじゃない!」  
「そんな今更。私はユッキーのおっぱいもお尻もふくらはぎもうなじも腋の下も見てるのにぃ」  
「とにかく……ダメ!」  
 曇りガラスの向こうからの視線に耐える。腕で防御する。  
 確かに、見てない部分はないかもしれない。  
 でも、私の内にあるこれは――やらしい気持ちは、決して見られてはならないものなのだ。  
 多分、きっと、絶対。  
「もうすぐ出るから……ね。ちょっと漫画でも読んでてよ」  
 懇願。  
 それは本心からだったけれど、嘘ではなかったけれど、真実ではなかった。  
 本当は。本当は、全部打ち明けてしまいたい。私がヘンタイだということを明かして、思い  
きり、何度も、イってしまいたい。それをしてしまえば、二度と親友に戻れなくなるのだとし  
ても。  
「もうすぐだから……」  
 しかし、繰り返す。それはダメだと、自分を押さえ付ける。  
 鈴理は私の大切な親友だ。  
 彼女のきれいな友愛を、汚してはならないのだ。絶対に。  
「ん……わかった。じゃあ、もっかい『ドッ硬連』読んでくる」  
「うん。そうして……ごめんね」  
 いいってことよ。と、鈴理は答えて、その足跡が脱衣所から離れた。脱衣所の扉が閉まって、  
私は再び、二重に隔離される。  
 よし。  
 あとは……  
「ってぇ! うわあ!」  
 危ない!  
 安心して、やってしまう所だった!  
 あれはダメだと、何度も自分に言い聞かせていたのに!  
 あれをやったら、クセになったら、私は本物じゃあないか。  
 本物の、ヘンタイじゃないか。  
「……でも」  
 逆に考えると。  
 この時点でもう、私は十分、ヘンタイじゃなかろうか。女の子にいやらしい気持ちになる時  
点で、その気持ちに悩む時点で。  
「いやいや……いや」  
 諦めて、どうする。  
 自分がヘンタイだとしても、節度を持つべきだ。ヘンタイだから何をしてもいいなんて理屈  
は通らない。  
 誰にも、迷惑をかけてはいけない。  
「そうだよ。そう……」  
 誰にも迷惑をかけないなら。  
 その範囲なら。  
 何をしたって。  
「私、悪くない」  
 そうして。  
 私は、あの行為を行うロジックを、手に入れてしまった。  
 
 例えば。  
 背中の痒い部分に手が届かないといった経験は誰にでもあると思う。  
 
 それほど深刻ではないけれど、でも自分ではどうしようもない、そんなちっぽけな苦境。腕  
を伸ばしても回しても、どうしてもそこに届かない。  
 他人にかいて貰えるならそれが一番だ。そうでなければ、孫の手使えば良い。  
 しかし、私はそこで考えた。  
 手がにょーんと伸びて、かゆい場所へ届くようになれば良いのではないかと。  
 非現実的な考えだが、もし可能だとすればそれ以上のことはない。自分のかゆみだ。他人や  
道具を使わずにできるのがいい。  
 前置きが長い。  
 ともかく、私がしたのは、そういうことなのだ。そうでなければ、誰があんな痴態を許すも  
のか。  
 そう。かゆいところをひっかくだけ。それと同じ。  
 私は、そうやって自分を正当化した。  
「く……は……」  
 私は。  
 自分のおっぱいを、両手で持ち上げていた。  
 上へ。上へ。  
 そうして、首を縮めて、必死に舌を延ばす。  
 ああ、そうだ。そうすれば。  
「ん……ふぅう!」  
 私の舌の先っぽが、乳首に届くのだ。  
 信じられるだろうか。  
 自分で自分の乳首を舐めて、慰める。  
 さすがに唇全体で吸い付くことはできないが……舌が届くだけでも、相当だ。男の子では不  
可能だし、並の巨乳でも無茶になる。  
 だが、それをしない理由は、もっと別にある気がする。できたとしてもやらない理由が、他  
の人にはある。  
 だって、これ。  
 すごく恥ずかしくて、情けないのだもの。  
 何も自分で慰めることが恥ずかしいとまでは言わない。けれどそれも、あくまで一般的な範  
疇までだ。背中をかくために他人や道具に頼ることはあっても、背中を伸ばすことはありえな  
い。  
 こんな。  
 鼻息荒く、舌をはしたなく伸ばして、柔らかくてこぼれそうなおっぱいを必死に持ち上げて、  
そこまでして乳首を舐めようだなんて。  
 ヘンタイの所業だ。  
 誰にも迷惑はかけてないけど。自分が恥ずかしいだけだけど。  
 うう。うう。  
 でも、やっぱり、気持ち良い。  
 舌で舐められる快感。突いて、すりあげて、押し潰す。自分の好きなタイミングで、好きな  
強さで、好きなだけできること。  
 加えて、舐める快感もある。  
 乳首の感触は、勃起して尖った固さは、存外に心地良い。他の部分はやわらかいのに、そこ  
だけが固さと熱を持っているのだ。  
 ひょっとして、鈴理のもこんな感触なのだろうか。それを想うと、さらに激しく舐めたくな  
る。  
 れるれろ、れろれれ、れら。  
 舐める。舐める。舐める。  
 そのうち、コツがつかめてくる。舌は細かく動き、大きな動きはおっぱいを動かす方が良い  
らしいと。  
 そして、がんばれば。  
「ん、んう……」  
 両方の乳首を同時に舐めることだって、できてしまう。  
 ああ、私はヘンタイだ。  
 鏡を見たくない。自分の乳首をなめ回して目をとろかせている姿なんて、客観視したくない。  
 足が勝手に開いて、付け根が蜜でとろとろに濡れている姿なんて。  
 
 しかし、それが逆に、気持ち良くもあって。受ける刺激と与える刺激が互いに増幅しあって、  
どんどんどんどん高まっていって。  
「んん……んう!」  
 イケる。  
 そう思った私は、さらに激しく舌を動かそうと。  
「すずちゃん……すずちゃん……すずちゃん!」  
 動かそうと。  
 動かそうと。  
 した。  
 のに。  
「どーん! やっぱり一緒に入ろう! ユッキー!」  
 止まった。  
 体が。  
 空気が。  
「すずちゃ……」  
 私はおっぱいに舌を伸ばしたまま鈴理を見て。  
「ユッキー?」  
 鈴理は、戸に向かって足を開く私を、呆然と見返した。  
 
 うわもうやだ死にたいすぐ死にたい今死にたい鈴理を殺して私も死ぬ絶対死ぬ必ず死ぬ恥ず  
かしい死にたいなんでなんでなんでなんで。  
 などと、頭はこの上ないほど混乱していたが。  
「うわ!」  
 行動それ自体は、とてもシンプルだった。  
 1。呆然とする鈴理の腕を掴む。  
 2。タイミングを計ってその腕を引き、バランスを崩す。  
 3。勢いを利用して立ち上がり、かつ倒れる鈴理と位置を入れ替える。  
 4。鈴理を引き倒し、そのお腹にまたがって動きを封じる。  
 この間一秒にも満たない。正に早業だった。  
「こ……」  
 だが、早業もそこまで。  
 そこからはただ、口が動かない。うまく言葉が出てこない。  
「ど、どったの? ユッキー?」  
 たじたじした様子で、鈴理は私に尋ねて来た。その目は完全に泳いでいて、事態を把握仕切  
れていないように思える。  
 いや、そうか。気付いていないのか。鈴理は、私の行為の意味を理解していない。  
「……こ」  
 よし。  
 それならまだ、ごまかしようはある。  
「これは! 自主トレです!」  
 声を大に。  
 風呂場に響くように。  
「自分でおっぱい舐めたら、大きくなるのではないかと考えまして!」  
「……え、て、すごい。そこまで大きかったんだ」  
 勢いに気圧されたのか、鈴理の口がぽかんと開いている。  
 とりあえず、疑ってはいないようだ。  
「そうなのであります。ほら、こんな風に!」  
 鈴理の上で、もう一度私はそれを実演する。おっぱいを抱え上げて、舌を延ばし、乳首を舐  
める。  
 見せ付けるために、ゆっくりと。  
「わあ、本当だ。すごい!」  
 これまた素直に、鈴理は驚く。私にのしかかられていたので、たいした身振り手ぶりもでき  
ないけれど。  
 見られてる。  
 恥ずかしいけれど、どんどん胸が高鳴る。たまらなくて、止まらない。  
 ああ、もう、いいんじゃないのか。  
 
「すずちゃん」  
 おっぱいから手を離して、私は鈴理を見つめた。  
「お願いがあるの」  
 まっすぐ、真剣に。  
「お願い? いいよ。なんでも聞くよ」  
 即答だった。まだどんなお願いをするのかも言ってないのに、鈴理は私のお願いを即断で受  
け入れた。  
「だって、ユッキーのおっぱいにいろいろしちゃってるし。親友同士でも、何らかの見返りが  
ないとね」  
 最初からそう答えると決めていたかのような淀みない答えだった。  
「…………」  
 ああ。  
 私はなんと素晴らしい親友を持てたのだろう。  
 そして、私はそんな素晴らしい親友を、騙そうとしているのだ。ただ、己の快楽のために。  
 罪悪感。  
 しかし同時に、それは身震いするほどに素晴らしいものだった。  
 白い壁に思いきりペンキをぶちまけるような、そういう感覚。目の前にあるものを目茶苦茶  
にしてあげたいという、衝動。  
 それじゃあ。  
「ここ、舐めてくれる?」  
 足を広げて、指を差し込んで、私は私の真ん中を割開いた。  
 そこはすでに蜜であふれていて、媚肉もやわらかくとろけといる。  
「え……」  
 鈴理は驚いた。当たり前だ。親友とはいえ、奥まで見たのは初めてだろうから。  
 まして、そこを舐めろだなんて。  
「ユッキー、そこどうしたの? なんか、あふれてるけど……」  
 違う。  
 鈴理が驚いたのは、そこの変化に対してだった。  
「おしっこ……じゃあ、ないよね? でも、なんでそんなに……」  
「…………」  
 さて。  
 どんな言い訳を、したものか。  
 一瞬だけ間を置いて、私は答えた。  
「すずちゃんの、せいだよ……」  
「え?」  
 私は。  
 涙声で、そう言った。  
「すずちゃんがおっぱいを触ってから、止まらないの。どんどん、あふれてくるんだよ。だか  
ら……」  
 演技だ。わざとだ。  
 けれど、そうしてほしいのは本当だった。  
「……私が舐めれば、収まるの?」  
「…………」  
 あえて、言葉にはしなかった。ただ、首を縦に振った。  
 通じるだろうか。  
 親友は、私の嘘を受け取ってくれるだろうか。  
「……わかった」  
 それが、答えだった。  
 鈴理の唇が、私の陰裂に吸い付いた。  
「あう……」  
 呻いたのは、私。  
 鈴理の唇と舌が想像以上にやわらかくてあたたかくて。思わず声を漏らしてしまった。  
 なにより。こうして鈴理の顔をまたぎ、彼女の口を汚すことは、体の内側が燃えるように熱  
くなる。  
 自然と、私は両手で自分のおっぱいを揉み始めた。大きくて重くてやわらかくてはしたなくていやらしいおっぱいを、  
握って潰して摘んですりあげた。  
 
 こぼれないよう慎重に、より感じるために大胆に。華奢な体には不釣り合いな二つの肉鞠を、  
本能のままに弾ませた。  
「んはあ……ん、ん、うっ」  
 鈴理は時々息継ぎを交えながらも、懸命に私を舐めてくれた。クリトリスも、尿道口も、膣  
の中まで、必死に舌を延ばしてくれている。  
 蜜で汚れた私を、綺麗にしようとしてくれている。  
 私にしゃぶりつき、蜜で顔を汚している。  
「く……ふふ……はは!」  
 笑いが、込み上げて来た。  
 ああ、私は、ずっとこうしたかったんだ。  
 クラスで人気があって、誰からも好かれて、なのに嫌みったらしい所のない自分の親友を、  
こうしたかったんだ。  
 他の誰かに汚されるなら、自分の色で汚してしまいたかったんだ。  
 ぽたぽた、ぴちゃぴちゃ。  
 淫猥な音が風呂場に響く。  
 鈴理の舌が舐めるたび、私の快感が高まっていく。  
「んっ! んあ! ああ!」  
 その高まりが、天井に届くのを感じた。  
「! ユッキー?」  
 私は腿を閉め、両手を使って鈴理を固定した。そうして、私をより深く鈴理に押し付ける。  
 やわらかい顔の全部を、上から潰して。  
「ひぐ、う、んんん!」  
 私は、全身の肉を震わせて、イったのだ。  
   
 数分後。  
 私は、鈴理を洗っていた。  
 蜜でまみれてべとべとになった体を、頭から爪先まで、残らず。  
「ちょ、くすぐったいよ……ユッキー」  
 おなかまで洗おうとする私を鈴理は奇異に思ったが『それはそれで楽しいかも』と積極的に  
止めるようなことはせず、私に体を任せていた。  
 だから私は、ただ黙って洗う。磨く。流す。  
 それで私のつけた汚れがすすがれるわけではないと、知っているのに。  
「それにしても、おっぱいを吸われておまんこがあんなになるなんて、思わぬ副作用だね」  
 ぴた、と。  
 その言葉を聞いて、鈴理の背中にボディブラシをかけていた私の手が、止まった。  
「あんなになっちゃうんじゃ、収まるまで大変だし……どうしよっか」  
 どうしよっか。  
 軽い口調だった。事の意味が、わかっていない軽さだった。  
 実際そうなのだろう。  
 鈴理には、そういう感覚が欠けている。  
 おっぱいが好きでも、えっちなことは得意ではないのだ。  
「舐めるのは、イヤ?」  
 私は鈴理の背中から、それだけを聞いた。  
 んー、と鈴理は少しだけ考えて、振り向かずに答えた。  
「別に。ユッキーのなら平気」  
「…………」  
 感激した。  
 他のならダメかもしれないが、私のなら平気と言ってくれた。  
「ユッキー?」  
 私は思わず、鈴理を抱きしめた。  
「ちょ……おっぱいが、当たって、ぬるぬる……!」  
 あててんのよ。  
 なんて言葉は、言うだけ無粋だろう。  
 
 
 ありがとう鈴理。  
 私のおっぱいはあなたにあげるよ。鈴理のおかげで好きになれたこのおっぱいを、あなたに  
あげる。  
 そのかわり。  
 あなたは、私のものになりなさい。  
 

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