この年で僕は頭おかしくなっちゃったのかな…。
幼なじみの夏美に思いっきりバカにされるし…。
なんだか憂鬱な気分になる。
これも全部この本のせいだ。
僕の学校には図書準備室という名の本の物置がある。
貸し出ししてない本や古くなった本とかをしまっておく場所。
今週僕たちの班は図書室の掃除当番だ。
たまたま目に付いたという理由で先生に強制的に指名された僕と夏美は
二人で隣の図書準備室の掃除をさせられることになった。
それで掃除を始めてまもなく、ダンボールに無造作に置かれている一つの本に目が付いた。
学校に似合わない禍々しい感じの本。趣味の悪い百科事典のような感じの。
そんな場違いな本に興味を持った僕は手にとってパラパラとめくってみた。
「うわっ!?なんだこれ…。」
英語でもフランス語でもない。とにかく見たことの無い文字がびっしりと書かれていた。
「気味悪っ。おい、夏美これ見てみろよ。」
「アンタね。サボってないで掃除しなさいよ。私一人にやらせる気?」
「いいからちょっと見てみろって。」
と夏美にこの本を見せたんだけど、
「何?ただの白紙のノートじゃないの。」
………。??
「これのどこが白紙なんだよ?というかノートじゃないし。」
「アンタおかしくなったの?ふざけてないで掃除しなさいよ…。」
「いやいやいや、これのどこが白紙…」
と夏美と押し問答することになった。
どう見ても白紙には見えないのだけど、夏美には白紙に見えるらしい。
釈然としない僕は隣の図書室に行って同じ班の連中にも見せる。
やっぱり白紙のノートに見えるらしい。
僕には気味の悪い百科事典にしか見えないんだけど…。
結局、夏美と同じ班のクラスメイト、さらには先生にまで
「どう見ても白紙のノートでしょ!」と馬鹿にされ、一人唖然とすることになった。
狐につままれるとはこのことか。僕は幻覚が見えるようになってしまったのか。クスリやってないのに…。
そうこうして掃除が終わり、今放課後になって僕は一人でまた図書準備室にいる。
普段は鍵がかかってるんだけど、忘れ物をしたとか適当に理由をつけて先生に鍵を借りてきた。
だって気になるじゃないか。僕にだけ文字が見える本なんて。
またあの本の前に立つ。手にとって見てみる。
不気味だ…。妙な図が書いてあったりして気持ち悪いんだけどなんだか気になる本だ…。と思っていたら、
ボン!と大きな音がする。TVの効果音に使われてそうないかにも破裂音という感じの音。
「うわっ!」不意打ちに爆竹を食らったような感じになった僕は驚いて仰け反る。
「ハーイ、呼びましたか?」女の子の声。ちょっとかわいい感じの声。
「え、えええええええ!?」驚いて目が点になる。
なんだこの展開!なんじゃこれ?僕は漫画の世界に迷い込んだのか?
僕が視線を向けるとそこにはちっちゃな妖精というか悪魔というか…
なんだかよくわからない羽の生えた小さな女の子。素っ裸。
一体何が起こってるんだ…
「それで、旦那、どの魔法を使いたいんですかな?」羽の生えた生物がおどけた口調で喋る。
「変なのが喋った!!」
「変なのとは何よ!失礼ね!」
昔の外国アニメ映画のピーター○○に出てくるティン○○ベルみたいなのが僕の目の前で喋っている。
別の言葉で例えるなら、小さな女の子が遊ぶようなお人形、または大きなお友達が集めてそうな美少女フィギュアみたいな感じ。
「それでどのH魔法を使いたいのよ?さっさとしてくれない?ひっさしぶりに起きてアタシすごい眠いんだけど。」
「H魔法!?なんだよそれ!」
「もう!はっきりしないなあ…。あんたみたいな男は女の子に嫌われるわよ。」
会話が噛み合わない。会話にならない。
「もういいわよ。アタシが適当に選んであげる。優しいでしょう?」
そう言ってそのちっちゃな妖精っぽいのがヒラヒラと手を動かす。すると勝手にこの奇妙な本が宙に浮いてパラパラと捲れる。
「もうこれでいいわ。H召喚魔法でいいでしょ?それで相手は?誰?誰がいいの?」
「いやいやいや、だからH召喚て何?相手って何?何のこと?今一体何が起きてるの?」
「もー。相手も決められないの?優柔不断な男ねえ。ますます評価ダウン。
しょうがないからアタシが決めてあげる。直前に会った女性でいいわね?」
「検索魔法によると、直前に会った女の子は夏美ちゃんていうあんたの幼なじみみたいね。
よし!じゃあこの娘にしよう。いいでしょう?ね。決まり。え?もっとサービスして欲しい?しょうがないわね。
じゃあ、もう一人。えーと他に直前に会ったのはあんたの担任の松下綾乃先生みたいね。この人でいいでしょ?」
「二人も選んであげるなんてあたし太っ腹だわね。よーしこれでいこう。」
妖精っぽいのが一人で勝手に話を進めてる。僕はわけがわからない。
困惑してる俺を無視してこの妖精ぽいのは呪文らしきものを唱え始める。
なんだか本物っぽい本格的な呪文だなあ。変なクスリやると、こんな幻覚みちゃうのかな…。僕はやってないのに…。
呪文を唱え終わったのと同時にまた破裂音が聞こえる。ちょっとした煙もたちこめる。
二度目とはいえびっくりした僕はまた仰け反る。何なんだよ…。
煙が消えるとあの妖精ぽい女の子の姿がなくなってる。消えてしまった…。
この奇妙な本は宙を舞って勝手に元の定位置に戻り、僕だけが図書準備室に残される。
「何なんだよコレ…。」僕は混乱している。情報量オーバーで僕の脳はパンクしてる。
ちょっとの間僕は固まったまま動けなかった。今起きた色々な出来事を整理するのにはちょっと時間がかかりそうだ。
僕がぼーっとしていると急に夏美が側にいることに気づく。
「うわっ!ビックリした!!」いつの間に現れたんだ…。
驚きながらも目の前にいる夏美を見ると…、あれ?何をしてらっしゃる??
「夏美?夏美さん?」僕は声をかける。
夏美は僕の前にしゃがみこんでる。あれ?白い物が夏美の足に引っかかってる?
夏美はまるで和式トイレにしゃがみこむようなポーズをって…
?!!!!!
えええええ!!
夏美はトイレにしゃがみこんでるようなポーズをとってる!下着を足もとに下ろして。へえ、あんなパンツはいてんだ。違う違う!そうじゃなくて!
今にも用を足しますよ。といった感じで。女の子の放尿ポーズ。
僕はさっきに続いて固まる。夏美を見つめたまま動けない。唖然として体が動かない。
不意に夏美が顔を上げる。僕と目が合う。二人は見つめあう。この奇妙なシチュエーションで。夏美はぽかーんとしてる。
「陽太?」陽太、ヨウタ。つまり僕の名前を呼ぶ。
「ん?ここトイレじゃ?ん?陽太?目の前に陽太?」夏美はこんらんしている。
「え?ん?はあ!!?」夏美はハッとした顔になる。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「なんでアンタがいるのよ!!!!!」
パンチとキックの嵐。近くにあった古びた本がどんどん飛んでくる。
僕はボコボコに殴られる。星が見える。意識が遠くなる。僕の人生の最後はこんなんなのか…。
と人生の終わりを覚悟しながら考える。
仰向けで大の字に倒れた僕に容赦なく本を投げてくる夏美。
本を投げながら周りの状況に気づいたのか夏美が
「あれっ…?ここトイレじゃない!?……図書準備室?」
夏美は今自分がいる場所を把握したようだ。
僕はすかさず夏美に話しかける。もう殴られたくないから。死にたくない。
「夏美!!どうしたんだよ!?なんでここにいるの!!?」
「え?ウソ!?なんで図書準備室?」夏美はうろたえながら何かを考えるような表情をする。
「知らないよ!夏美が急に僕の前に現れたんじゃないか!!」
「どうして!?あたしトイレにいたのよ!!?なんで?!」
「知らないよ!夏美が急に僕の前にry」
しばらく押し問答が続く。
堂々巡りで話が噛み合わない。
しばらく意味不明なやり取りをして僕が言う。
「あのう…夏美……スカートの中が…その…見えそうなんだけど…。」僕は顔が赤くなる。
「!?」夏美はハッとしたような表情になる。
夏美はパンツを足元に下ろしたまま仁王立ちのようなポーズ。
片手に僕に投げるためであろう重そうな本を持っている。
パンツが足元にある=夏美は今ノーパン。のーぱん。
大の字に倒れてる僕の何メートルか後ろに立ってる。
夏美がもうちょっと僕の前の方に来ると見えそう。中身が。今は暗闇に包まれてるけど。
夏美の顔が赤くなる。さらに赤くなって真っ赤になる。羞恥に染まる。
「いやあああああああああああああああああああああああ!!!」
ものっすごい勢いで僕から離れて、ものっすごい勢いでパンツをずり上げる。パンツが股間に食い込むんじゃないかってぐらい。
いや、完全に食い込んでるだろうな。
そしてものすごい勢いで図書準備室から走り去って出て行く。二度も夏美の大きな悲鳴を聞いて僕の耳はキーンと耳鳴りがする。
心拍数が上がってドキドキする…。何なんだよ…何が起きてんだ……。
当然僕は起こった出来事の意味がわからずにいた。考えがまとまらない。
妖精?魔法?目の前に夏美?おしっこポーズで。パンツは足元。ここは図書準備室。
頭の中を色んな考えがグルグルと回る。これが頭の中パニックって奴か。
しばらく大の字のまま僕は動けないでいた。この数分間が何時間にも感じる。
なんだか普通なら一生体験できないことが体験できたような。
またしばらくすると目の前がパッと暗くなる。
「もう…なんでトイレに行ったと思ったら図書準備室にいるのよ…。」
「よりによってヨウタがいるなんて……。うーー。我慢してたから漏れちゃいそう…。」
夏美の声が聞こえる。ん?一体どこから?
声と同時に僕の顔の上に何かが来たようだ。僕の顔は「何か」によって太陽の光を遮られて日陰になる。
月に太陽の光が遮られる日食のような状況。
割れ目。タテ筋。穴。毛。女の子のやばい匂い。アソコがヒクヒクと動いてる。後ろの穴。シワが…。
初めて見る。生で見る女の子のアレ。あり得ない至近距離。
僕は大の字に寝てる。夏美は僕の顔の上で和式トイレに座るような姿勢。
日食に例えるなら僕の顔が地球。夏美の体が月の役割。
僕の顔は夏美のアソコに光が遮られて暗くなっている。まあでもそれなりに見える。アレが。モロに。本当に初めて生で見たよ。
幼なじみの秘密をこんな形で見るなんて…。しかもかなりの至近距離で…。
いつのまにか現れた夏美が僕の顔をまたぐようにしておしっこポーズを取っていた。
ふっと夏美が視線を下に向ける。僕と目が合う。夏美はトイレに行こうとしてたようだ。
つまり本来なら便器があるべき場所に僕の顔があるわけだ。
これは殺されるな……。このHなハプニングは冥土の土産って奴か…。
僕は死を覚悟しながらまじまじと幼なじみのむき出しの陰部を見つめるのだった…。
つづく??