【精神官能】
時計の針は日付の変わる12時を指していた。
美咲は、ベッドにばふりと身を投げ出すと、仰向けになって軽く膝を立てる。
そして、寝間着代わりのワンピースの裾に手を滑らせた。
トロントに留学して3ヶ月、言葉が上手く通じないストレスは少しずつ美咲に蓄積していて、いつの間にか夜毎のクリオナニーがストレス発散の重要な儀式になってしまっている。
安物の下着の上から、くるくると小さな円を描く。円の中心はもちろんクリトリスで、最初はそこには触れない。
けれどクリトリスはやがてくる快感を覚えていて、期待に膨らみ始めている。
それを焦らすように、円はなかなかその半径を縮めない。
自分でシていることとはいえ、もどかしさに鼻にかかった吐息が漏れた。
クリトリスがじくじくと疼いている。
すでに下着を押し上げているので、くるくると回す指の振動は布を伝ってクリトリスに響いている。
「ああ…」
濡れた声に急かされる様に、指はクリトリスに触れた。
薄い布越しに、尖ったクリトリスの先端をくるくると撫で回すと、腰が自然にぴくぴくと跳ねた。
「あっ、あっ、あん…ッ」
すっかり足を広げた状態になって、夢中でクリトリスを擦るうちに、快楽の大波が寄せてくるのを感じた美咲は、くるくると撫で回していた指の爪を立てた。
カリカリ。
すこし強く、押しつぶすように爪でクリトリスを引っかくと、目の奥に閃光が走った。
「あんんーーっ!!!」
一方その頃、日本は午後2時。授業の真っ最中だ。
「(;゚д゚)ァ.... 」
美春はびくりと身体を揺らした。弾みでシャープペンを落としてしまい、慌てて席を立ってしゃがみこんだ。
(あ…ッ)
唐突にむくりと膨らんだクリトリスが、しゃがんだせいで下着にこすり付けられた。
(やだ、美咲ちゃん…なにしてるの、こんな時間に)
ああ違う、向こうは…夜の12時だ。遠い異国の地にいる双子の片割れを思い出す。
双子のテレパシーとはよく聞くが、実際、そんな便利な機能が搭載された双子は稀だ。
美咲と美春も、そんなネタのTV番組を観ては「ありえないよね!」と笑いあっていたのだが、美咲が留学してからこっち、なぜか美咲が「そういうこと」をシている感覚を、美春が受信するようになってしまった。
もちろん恥ずかしくて直接問いただしたことはない。というか、どう問いただしたらいいのだ、こんなこと。
「クリオナニーの刺激がこっちに伝わるから辞めて」とか無理だ。
そそくさとシャープペンを拾うと、美春は着席した。
クリトリスがむずむずしてきた。
美咲はクリトリスに直接触っていないのだろう。
美春のクリトリスは、現実ではない刺激を受けてじわじわと勃ち上がってきた。
(はぁ…っ)
周囲にバレないよう、細く、ゆっくりと息を吐く。
ぎゅっと目を閉じると、美咲の白い指がくるくるとクリトリスの先端を撫で回す様子が浮かぶようだ。
(ダメ、美咲ちゃん…!)
想像の中で、美咲の指が美春のクリトリスを蹂躙しはじめた。
軽くつまんだり、柔らかく押したり、根元から先端に向かって押し上げたり。
もはや、美咲との精神感応でクリトリスが疼くのか、自分の想像でクリトリスを尖らせてしまっているのか、分からない。
(美咲ちゃん…美咲ちゃん、どうして…ッ)
カリカリ。
すこし強く、押しつぶすように爪でクリトリスを引っかかれる感覚に、美春はぎゅっと眉根を寄せた。
と同時に、授業の終わりを告げる鐘。
美春は教師とほぼ同時の勢いで教室を飛び出した。
目指すは人の少ない、特別教室棟のトイレだ。
美咲はクリオナニーを終わらせたのだろう、もう刺激は感じない。
だが、美咲はそれで満足かもしれないが…
(あんなぬるい刺激でイけるワケないでしょーっ!美咲ちゃんのやり方はダメだわ!)
もっと強く揉んだり、擦ったりしないとイけない。
美春が普段しているクリオナニーは、もっと激しいヤツなのだ。
(私がシたら、美咲ちゃんも感じるわよね?今日は私のやり方を教えてあげるわ美咲ちゃん)