少女は自転車に乗り、目的地に向かっている。
彼女の名前は西町山(さいまちやま)みちか。11歳の女子小学生である。
しかし彼女には、同じく11歳の「彼氏」がいるのである。
その彼氏はハンサムで成績も良く運動神経もそこそこ、その上誰にでも優しいという、完璧人間なのである。
そんな完璧人間のハートを見事に射止めたみちかもまた、顔立ちは整っており、成績優秀な少女である。
ただ彼女の方は、運動神経だけは全く駄目なのだが…。
しかし運動神経がダメとは言っても、自転車くらいは漕ぐ事は出来る。
椅子からお尻を離したいわゆる「立ち漕ぎ」をしながら、みちかは彼氏の家に急いでいた。
だが、みちかは彼氏の家にたどり着く事は出来なかった。
住宅街の曲がり角を曲がった瞬間、ふと地面が「光る」のをみちかは見た。
例えるなら…と言いたいが例えが見つからない。
コンクリートの道がいきなり、青く光ったのだ。
「きゃっ!!」
みちかは驚きの声をあげて、自転車に乗ったまま派手に転んでしまう。
そして、11歳の少女の体はピクリとも動かなくなる。
この光景を見ていた人間は一瞬、彼女に不幸な事があったと思ってしまうだろう。
だが大丈夫だ。彼女の脈はちゃんとあるし、心臓もしっかりと動いている。
彼女は驚きの表情で、立ち漕ぎの状態のまま「動けなく」なっただけだ。
青く光った石。それは「フローズンストーン」と呼ばれる、最近発見された物質だ。
これは温度が徐々に下がると、コンクリートと化学反応を起こし、人間の身体を硬直させてしまう「光」を発生させる。
その硬直は肌の硬さなどは変わらないものの、人間を凍らせ、一時的に冷凍睡眠に近い状態にしてしまう。
医学界では、手術に耐えられない人間へ使ったりで大活躍である。
(やっとこさ捕まえましたよ……。)
自転車に乗ったままコテンと転んだみちかの体を起こしながら、眼鏡をかけた少女「ちとせ」は心の中で呟く。
彼女はみちかと同じクラスの女子小学生であり、風紀委員を務めている。
本来小学校の風紀委員は、名前に反して余り「風紀」に熱心で無い者が多いが、ちとせはその限りではないらしく、凄く熱心な活動を行っている。
流石に常時「風紀委員」の腕章を付けているわけではないが…。
(ずっと逃げられていましたからね。みちかさん。)
彼女の方から彼に告白して、付き合う事になったみちか。
その日から、学校から帰ってきて、家にランドセルを放り投げて、そのまま自転車で彼の家に向かう。
そして、若干疲れた顔で、大体6時30分くらいに帰ってくる。という生活を繰り返していた。
遊び疲れた…のならいい。ぶっちゃけその程度ならちとせも許す。彼女も好きな女の子が居るし、恋愛なんて誰もがする事だからだ。
しかし、恋愛の「次の段階」ともなれば、話は別だ。ましてや小学生がその事をしてはならない!
(本当に遊んでいるだけなのか、それとも…なのか、
私がチェックをさせていただきます!)
ちとせはまず、硬直したみちかを自転車から下ろし、近くにある自宅に持ち帰る。
下にダンボールを引き、そのまま引き摺ったのだ。
自宅に持ち帰った後、ちとせはみちかの体をマジマジと見つめる。
立ち漕ぎのまま固まってしまった彼女は、右足を若干前にしながら、お尻を突き出し、静止している。
この年齢の少女が大体持っている、美しい下半身だ。
ちとせはそんな下半身を露出させるため、まず…若干短めのデニムスカートを下ろす。
ちとせなら彼女を脱がしやすいポーズにする事も出来るし、実際に服を脱がす事も出来る。
(ふむ、パンツは普通ですね。)
驚いた表情のまま脱がされていくみちか。
パンツは普通のブリーフだったが、ちとせはそんなものには興味はない。
いや「ない」と言い切ってしまうとウソになるが、少なくとも今回の目的はそれじゃない。
(……では、ご開帳と行きますか。)
ちとせはそういうと、簡単にパンツを脱がした。
現れたのは、……まだ毛も生えていない、美しい性器。
ちとせも同じものを持っているが、実を言うと他人の性器をここまで間近で見るのは初めてである。
ぐっと息を飲みつつも、まじまじと性器を見つめる。
みちかが彼氏とアレな事をしているのなら、きっとその股は、自分の「それ」とは違うだろう。そう思っていた。
……が、みちかの性器は、自分の性器と、著しく形が異なる事はない。
小さな門がついた、おしっこ発射装置だ。
(……全く分からないわ)
第一、セックスのしかたは本で見たし(と言いたいが殆ど目を逸らしていた)、それをやると「処女」が「非処女」になるとは聞いたけど、
それで体がどうなるとかそういうのは…余り恥ずかしくて読んでいないのだ。
いくら風紀委員とはいえ、ちとせも結局は11歳の少女でしかない。
必要な知識を得る事よりも、「恥ずかしくて見てられない!」という感情を優先してしまったのだ。
だが、目の前には、せっかく硬直させたみちかがいるのだ。このまま帰すのはなんかもったいない。
それに、解放された彼女は真っ先に彼氏の家に行き……、もしかしたら、「する」かもしれない。
「……っ!! 私に、卑猥な妄想をさせないでください!」
勝手にしておいて何を!と、普段ならみちかは反論しただろう。
だが、フローズンストーンに凍らされた少女は何も言わない。ただの人形だ。
「……あそこに…突っ込むから、……ここかぁ!」
人形にされたみちかは……、実は、無実だ。
だから、性器の中なんて、誰にも見られた事はないし、自分でも見た事はない。
病院の人が小さい時に見た可能性はあるかもしれないが、少なくともみちかの記憶にはない。…将来的には彼氏に見てもらうつもりだったらしいが。
しかし、その願いは届かなかった。
彼女はそんなに仲がいい方ではない風紀委員の少女に、初めて、自分の性器を「開けられた」のだ。
そして、その感想は……。
「……わぁ〜…。」という感激だった。
顔を赤くして…しかし直視しているちとせ。
その瞬間、彼女の頭の中から、「風紀委員として、みちかがエッチな事をしていないかどうか確かめる!」という使命は吹っ飛んでいた。
性器を閉じたり開いたりして、その性器の、グロテクスかもしれない中身を見て、目を逸らして赤面して、そしてもう一度見る。
そんな事を繰り返しているうちに、みちかの胸のあたりから、大きな音楽が流れた。
「ひゃう!!」
ちとせはいけない事をしている時に親に見つかった時のような声を立てるが、その声に反応するものはいない。
どうやら携帯電話が鳴っているらしい。
そりゃあ彼氏のところに行くのだ、約束の一つや二つはしているし、来るのが遅い彼女を心配して電話をかけるのもあるだろう。
だが、その大きな音をたてたイレギュラーのおかげで、ちとせの頭は正常に戻ったらしい。
(……流石にこれ以上はやばいですね……。)
すぐさま服を着せ、……そして、「硬直解除」の薬を飲ませる。
みちかは意識を取り戻し、そして見知らぬ場所が目に入り、混乱するが…委員長の顔を見て安心する。
そしてちとせは、こういった。
「貴方、私の家の前で突然倒れたのですよ。
だから…その、家に連れて 休ませようかと思ったの。」
結局みちかは「ありがとう!この恩は絶対に返す!」とだけ言って、そそくさと彼氏の場所に走って行った。
みちかが部屋からいなくなった後。ちとせは、
(あ!……エッチな事していないか、聞くのを忘れてしまいました!)
と自分の使命の事を思い出す。
だが、今の彼女にとっては、そんな事はどうでもよかった。
何故なら……女の子の性器を触るのは、それは十分にエッチな事なのではないか。
(……風紀委員失格ですね……。はぁ)
ため息をつくも、しかしちとせはどこか、嬉しい気持ちになっていた。
数日後、みちかと彼氏は別れた。
理由は、「どちらも完璧すぎた」かららしい。喧嘩離れではないらしく、友達としては良い付き合いをしているらしい。
ちなみにエッチな事は全くしていないとの事だ。
……彼女はこの先、自分の性器の中をちとせに見られた事も知らず、生きていくことになる。
(全く、ませた人たちですね…。)
ちとせは心の中でそう冷静に呟くも、頭ではみちかの下半身が気になって仕方が無い。
実は…脱がした時、みちかにパンツを返すのを忘れていた。
そして、そのパンツの下に隠されていた口が……彼女には気になって仕方が無いらしい。
(……また、みたいなぁ……。出来れば別の子のあそこを…)
フローズンストーンはまだあるが……さて、どの少女をどうやって固めようか……。
笑顔で友達と談笑するみちかや同級生の少女達を見詰めながら、ちとせは一人、心の中で考えていた。