喧騒に包まれた教室を、俺は静かに眺め回した。  
春休みも間近なせいか、教室の空気もいつもに増して浮足立っているように感じる。  
取り分け女子は、皆一様にきゃっきゃっとはしゃぎながら長期休暇の予定を話し合っている。その様子を横目に、俺は次のターゲットを探していた。  
俺のクラスの女子はなかなかレベルが高く、それぞれが年相応の魅力を持っている。この中からひとまず一人だけ選ぶとなると、かなり悩んでしまうのだ。  
短いスカートから伸びる少女達の脚を堪能しながら、俺はようやく一人の女子に目を付けた。  
近くの女子と談笑しているその少女は、安藤ひかりである。  
高めに結わえたツインテールに、勝ち気そうな大きな目。艶やかな黒髪とは対象的な白い肌が印象に残る。  
ひかりはクラスでも中心的な存在である。ツンツンしている部分もあるが根はいい奴で、愛らしい容姿も相俟って校内ではなかなかの人気を誇っている。  
ひかりなら、シールの獲物として充分満足出来る。  
頭の中で素早く計画を立てると、俺は放課後を待った。  
 
放課後、俺は保健室のベッドの中で機を伺っていた。  
この保健室の主である養護教諭の安藤紗耶香は、ひかりの姉である。彼女らは仲睦まじい姉妹であるらしく、紗耶香が残業でない限りは毎日一緒に帰っているようだ。  
現に今も、ひかりは紗耶香の仕事が終わるまで保健室で待機している。ちなみに紗耶香は部活の顧問を受け持っているため、今は留守にしている。  
つまりシールを使うなら今がチャンスなのだ。  
 
そっとベッドからはい出ると、俺はシールを一枚剥がし取った。文字はもう既に書いてある。  
俺に背を向けているひかりは、忍び寄る危険に気付かず退屈そうに携帯電話を弄っている。瞬時に距離を詰めると、ひかりが振り返る時間さえ与えずにシールを貼付けた。  
うなじにたたき付けるように貼付けたため、ひかりの身体はがくんと椅子の上で大きく傾ぐ。その反動だろう。カツン、と硬質な音を立ててひかりの携帯電話が手から滑り落ちた。  
落とした携帯電話を拾おうともせず、急に現れた俺の存在にも驚くこともなく、ひかりは未だこちらに背を向けたまま動かない。  
 
彼女の座っている回転椅子をグイッと動かすと、ひかりもゆっくりと椅子の回転と共にこちらを向いた。  
眉を少しだけしかめ、目を見開いたひかりと目が合う。しかし、その瞳には力がこもっていなかった。  
恐らくは直前に気配に気付いたのだろうか、疑問を浮かべかけた表情のままひかりは一切の動きを止めていたのだ。  
ひかりのうなじに貼られたシールには、綾子さんと同じく『マネキン』と書かれていた。俺の存在を認識する間もなく、可憐な少女は呆気なく人形と化したのだ。  
 
「…ひとまずは成功かな」  
 
意思を持たぬまま、ただ椅子に身を沈めているひかりを眺めながら、俺は安堵した。キャンキャン騒がしいひかりに見つかっていたら、きっと大声を出されていたに違いないから。  
さて、家に持ち帰るためにはマネキンのままでは無理がある。シールに新たに文字を書き込もうとしたその瞬間だった。  
 
がらり、と。唐突にドアが開かれた。  
隠れる暇もなく、俺は入ってきた人物と正面から向かい合ってしまった。  
 
「あら、君はどうしたの?」  
 
キョトンとした様子で俺を見つめたのは、ひかりの姉の紗耶香だった。部活が早く終わったのだろうか、予想外の遭遇に俺の心臓は早鐘を打つ。  
不測の事態に狼狽する俺を余所に、彼女の視線が横で硬直しているひかりを捉えた。姉の視線にも気付かず、ひかりは未だに茫洋とした虚ろな視線をさ迷わせている。  
 
俺の人生、終わった。  
パニックになりながらも、俺は最悪の事態を覚悟した。  
じきに紗耶香は妹のただならぬ様子に気づき、人を呼ぶだろう。勿論犯人は一緒にいた俺だ。この状況ではもはや言い逃れも出来まい。  
しかし、そんな俺にかけられた言葉は意外なものだった。  
 
「あら、なあに?このマネキン」  
 
紗耶香はこちらに近づくと、ひかりを覗き込んでそう言ったのだ。  
 
「…え?」  
 
意味が理解できずに聞き返すと、紗耶香がふんわりと笑いながら付け足す。  
 
「もしかして君が持ち込んだの?ダメじゃない、こんなのどこから持ってきたの?」  
 
現状の把握に頭が追いつかない俺だったが、やがてあるひとつの推論にたどり着いた。  
…シールに書いた文字は第三者にも作用するのか?今の紗耶香の目には、自分の妹がマネキンに写っているというのか。  
試しに俺はひかりのシールに新たに文字を書き込むと、紗耶香の様子を伺った。  
 
「あらやだ。よく見たらマネキンじゃなくて椅子じゃない」  
 
ぺたぺたと珍しそうにひかりに触れていた紗耶香が、驚きの声をあげた。  
その声に応えるように、今まで微動にしなかったひかりが突然動き出した。相変わらず虚ろな表情のままひかりは椅子から下り、何の躊躇いもなく床の上に四つん這いになったのだ。  
尻をくいっと高く突き上げているせいで、スカートの中のパンツが丸見えである。そんな自身の痴態にも、『椅子』であるひかりは気付かないようだ。  
その体制のまま、再びひかりは一切の動きを止めた。  
 
「疲れてるのかしら、見間違えちゃったのね」  
 
恥ずかしそうに笑いながら、紗耶香は四つん這いのひかりの上に腰掛けた。まるで自分の椅子に座るかのように、あまりにも自然な動作でだ。  
どうみても、ふざけているようには見えない。  
ひかりはこちらにパンツを剥き出しにした体制のまま、易々と姉の体重を受け止めている。  
 
張り詰めていた緊張感が、ふっと解けた。  
思いがけないシールの効果のおかげで、どうやら最悪の事態は免れたようだ。一度安心すると、俺の中で新たな欲望が顔をもたげた。  
予定外だが俺を驚かせた罰だ、ついでに紗耶香にもシールの餌食になってもらおう。  
顔のつくりはひかりと似ているが、柔らかな雰囲気を持つ紗耶香は妹とは違う魅力を持っている。この美しい養護教諭もお持ち帰り決定だ。  
シールに文字を書き込むと、俺は目の前の『椅子』に腰掛けている紗耶香に躊躇いなく貼付けた。  
 
「きゃっ、何こ………」  
 
突然貼られたシールに紗耶香が抗議の声をあげたが、次の瞬間には顔からすとんと険が抜け落ちた。続いて、椅子から立ち上がると恭しく俺を仰ぎ見た。  
 
「紗耶香、車を出せ」  
 
生徒である俺の尊大な口利きにも文句を言わず、紗耶香は楚々と頭を下げた。  
彼女に貼られたシールには『専属ドライバー』と書いてある。  
まずは彼女の車で安藤姉妹を運ぶことにしよう。あとは家に帰ってゆっくりと楽しめばいい。  
思わぬ形で手に入れた獲物を見ながら、俺は満足するのだった。  
 
部屋のドアを開けると、モーター音と共に嬌声が響いた。  
部屋の中ではポールハンガー、もとい綾子さんが未だに小刻みに振動を続けており、長い脚に大量の愛液を絡み付かせていた。  
ショーツは既に色が変わるほどに濡れており、内側でうごめく玩具がうっすら透けて見えていた。  
 
「ん………あぅ……」  
 
相変わらず綾子さんは虚ろな表情だが、小さく喘ぎながら全身は真っ赤に上気している。ブラジャーを外してみると、双丘の先端が痛いくらいに自己主張していた。  
ブラジャーを外す際の布擦れにも、綾子さんは悩ましい声をあげた。もはや感度は最高潮に達しているのだ。  
 
「お疲れ様」  
 
頭を撫でてやりながら剥き出しの乳首を摘むと、綾子さんの嬌声がぴたりと止んだ。  
スイッチのオフで、綾子さんは再び何も感じないただのポールハンガーへと戻ったのだ。  
秘所から玩具を抜き取ってやっても、綾子さんは声ひとつあげずに虚空を見つめていた。  
 
「紗耶香もこっち来いよ」  
 
未だ椅子になりきっているひかりを部屋に運び込むと、俺は静かにドアの前で待機する紗耶香に声を掛けてやった。  
遠慮がちにこちらに近づいてくる紗耶香を抱きすくめると、俺は一気にベッドに押し倒した。紗耶香は小さく悲鳴をあげると、身じろいで抵抗をする。  
どうやら『専属ドライバー』の彼女にいやらしい行為を強要するのは骨が折れそうだ。  
24歳の若々しい身体は、未だ固さを残すひかりとは対象的に柔らかく熟れている。ゆっくりと胸を揉んでやると、彼女はふんと悩ましげに鼻を鳴らした。  
 
なかなか大きな胸だ。  
ひかりも高校生にしては大きい方だが、さすがは姉といったところだ。たっぷりとしたボリュームを持っている。  
 
「あ、あの!…ふっ…困り…ます…やめ…」  
 
ふにふにと感触を楽しむ俺を、紗耶香は困ったように押しのけようとする。優しく組み伏せようとする俺から逃れようと、紗耶香はいやいやと首を振った。  
 
ふと、愛液濡れになっている綾子さんが視界に入った。やはり嫌がる女を組み伏せるよりは、こうして人間としての意識を奪ったほうがこちらも楽しめる。  
俺は必死に身をよじらせる紗耶香を押さえ付けると、シールに素早く文字を書き込んだ。  
びくんと身体を大きく震わせると、紗耶香は一切の抵抗を止めて静かになった。  
 
湯煙が立ち込めるバスルームには、俺を含めて四人もひしめき合っている。  
風呂好きな両親のおかげで割と広めに設計されたバスルームだが、それでも四人もいるとなると若干窮屈である。しかし、それは『人間』が四人いる場合だ。  
 
『椅子』に腰掛けた俺は、愛液で汚れてしまった綾子さんを洗うべく『スポンジ』を泡立てている。  
このシールは不思議なもので、俺が意識して剥がさない限りどうやっても剥がれない。水を当ててもびくともしないため、安心して水場でもシールが使えるのだ。  
『スポンジ』の大きな膨らみにボディソープを取ると、俺はその豊かな双丘を揉み合わせてやる。  
先程までは触れられることにさえ抵抗していた紗耶香だが、『スポンジ』となった今では大人しくされるがままになっているのだ。  
柔らかな膨らみに程よく泡が乗ったのを確認すると、俺は『スポンジ』に『自動洗浄機能付き』と書き加えた。  
シールの効果を受けて動き出した紗耶香は、床に転がっている綾子さんに覆いかぶさると身体を擦り寄せ始めた。ぼんやりと意思のない表情で、自身の大きな胸を巧みに使いながら紗耶香は妖しくうごめいた。  
傍目から見ると、まるで美女が無抵抗なこれまた美女を襲っているように見える。その様子を眺めながら、俺は腰掛けている『椅子』にそっと手を這わせた。  
四つん這いのひかりは、姉には劣るもののやはり立派な胸を重そうに下げている。  
下から掬い上げるようにして揉んでやれば、タプタプと柔らかい感触を返してくれる。持ち上げた尻を無遠慮に撫で回し指を秘所に突き立てても、『椅子』のひかりは文句ひとつ言わずに俺を支えている。  
ぼんやりとどこか遠くを見つめているひかりは、普段の活発な面影が微塵にも感じられない。  
 
不意に、柔らかい感触が俺の身体を包んだ。顔をあげると、紗耶香が俺の身体に身体をこすりつけていた。  
既に綺麗に洗われた綾子さんは、床に転がったまま天井を見つめている。  
 
たぷんと音を立てそうな勢いで、紗耶香が俺の体に豊満な胸を擦り寄せた。そのまま、俺の胸板にこすりつける。  
度重なる胸への刺激のせいか、紗耶香の乳首が立ち上がっている。その感触が、俺の理性も一気に溶かしていった。  
 
我慢出来ずに、俺は今度こそとばかりに紗耶香を床に押し倒す。己の身に起きようとしている事態にも気付かず、紗耶香は健気にも『スポンジ』の役目を果たそうと両手で自身の胸を揉んで泡を起こそうとしていた。  
虚ろな表情のまま俺の下で自分を慰めるかのような動きをする紗耶香からは、とてつもなくエロスを感じる。  
 
そっと紗耶香の秘所に指を這わせ、俺は彼女の奥を押し広げる。  
なかなかいい具合に解れている。これならば入れても大丈夫だろう。  
そそり立つ自身を遠慮なく突き立てると、内壁の吸い付くような感触に頭が真っ白になりそうになる。綾子さんも気持ち良かったが、紗耶香はかなりの名器だ。  
本人には性交しているという自覚さえないくせに、絞り上げ、柔らかくくわえ込み、俺を翻弄する。  
グッグッと何度も腰を動かす俺に、紗耶香は未だに胸を擦り寄せつづける。二重の快感に耐え切れずにあっという間に欲望を放てば、ようやく俺を洗浄したと認識したらしい紗耶香が動きを止めた。  
ひかりに似てきめ細かい陶器肌が、白濁と絡み合ってテラテラと光った。  
 
 
シャワーを浴びて汗を流す俺の横で、可愛らしい喘ぎ声があがった。  
 
「んっ…!お…ねぇちゃっ…」  
 
四つん這いのまま『椅子』の体制を続けるひかりの身体を、紗耶香が機械的にまさぐっているのだ。  
現在のひかりは、自身が椅子であるということを自覚している。しかし、今までの記憶もしっかり持っている。  
つまり、『安藤ひかり』という自我を持ちながら『椅子』であることを強制的に納得させられているのである。  
 
「ひっ…そこ…んっ!だめぇ!」  
 
妹を淡々と清める紗耶香の指使いに翻弄され、ひかりが苦しげに喘いだ。しかし、俺の視線に気付くとキッとこちらを睨み付けてくる。  
 
「あんた…私達に…きゃんっ!何…したの…よ」  
 
「いちいち気にすんなよ、ひかりはただの椅子なんだから」  
 
「そりゃ…私は……あんたの…椅子…椅子なの?………えぇ、…椅子、だけど…ふぁ!」  
 
自身を納得させるように呟くと、ひかりはこれ以上俺に食ってかかることなく姉の指に悩ましげな声をあげる。  
言葉とは裏腹に、蕩けた表情がこの上なくいやらしい。  
 
 
ますます楽しくなってきた。  
風呂からあがったら第二ラウンドと洒落込もうと、俺は姉妹の痴態を尻目にシャワーを終えたのだった。  
 

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