「…あとで覚えていなさいよ」  
 
尻の下で悔しそうな唸り声が聞こえた。  
その言葉に答えるようにわざとドッカリと座り直してやれば、彼女のツインテールがピョコンと揺れた。そのくせ、俺の全体重を受けても彼女の華奢な身体はびくともしない。  
シールの能力は精神だけではなく身体にも作用する。  
『椅子』であるひかりにとって、標準体重の俺を支えるくらいどうということはないのだ。  
現在、ひかりは四つん這いの姿勢をとっている。湯上がりなのにも関わらず制服姿なのは、着衣を乱すことにエロスを感じる俺の趣味だ。  
下着を見せ付けるかのように尻をあげているひかりが、屈辱に顔を歪める。  
 
「早くどきなさいよ!」  
 
「無理だな」  
 
俺の答えに、しかしひかりはそれ以上言い返すことはない。  
俺が許可しない限り、彼女はシールの力によって身も心も俺の『椅子』としてあり続けなければならないのだ。  
通常、椅子は持ち主に歯向かうわけがない。会話上は普段通りでいることを許可されているが、ひかりはあくまで俺の椅子なのである。  
 
スカートを強めになぞり、ひかりの形のよい尻を楽しむ。割れ目を押し広げるたびに、ひかりは情けない声をあげた。  
無駄な肉のない引き締まった尻の感触は、それはそれで触り心地がいい。  
スカートをぺろりと捲ってやれば、無防備なショーツの全てが丸見えになる。  
そろそろと指を秘所にずらして撫であげると、ひかりが小さく呻いた。  
 
「もう…やだぁ…止めて」  
 
先程の姉との痴態の名残だろう、切なそうな吐息が彼女の高ぶりを伝えていた。  
もし身体が自由ならば、彼女は腰でも振ってねだるだろうか。徐々に固さを帯びはじめた秘芯に軽く触れるだけで、ひかりは苦しげに息をついた。いい感度だ。  
 
「ひかり、次は『ベンチ』」  
 
彼女からひょいと尻を退かして、俺はひかりに言い放つ。一瞬キョトンとした表情で俺を見上げた彼女だが、次の瞬間にはくたりと俯せのまま床に転がり、気をつけの姿勢をとった。  
まるで一枚の板のように、彼女の身体はそのままピンと硬直したのだ。  
 
「よいしょ、と」  
 
その姿勢のまま動かない彼女を、ころりと仰向けに裏返してやる。まるでまな板の上の魚のように、ひかりは俺のなすがままだ。  
キョトンとした表情はすでに抜け落ち、ひかりは意思を感じさせない瞳をぼんやりと宙にさ迷わせていた。  
少しだけ開かれた唇から漏れる呼吸だけが、彼女が人形ではないことを示しているようだ。  
スカートの中に手を這わせて再び秘芯を刺激してみるが、今のひかりは何ひとつ反応しない。  
 
「綾子さん、安藤先生」  
 
隅に控えていた二人に声をかければ、今までマネキンとなって動きを止めていた綾子さんと紗耶香が俺の傍へとやって来た。  
もはや俺とシールは同化しつつあるのだろうか。簡単なことならば、わざわざ書き込まなくてもシールの能力は発揮される。  
現在の彼女達は例えるならばマリオネットだ。俺の言葉が糸となり、彼女達を思うがままに動かすことが出来る。虚ろな表情をしている彼女たちには、当然ながら意思はない。  
 
「今から二人は『台座』だよ」  
 
そう言ってやると、二人は直ぐに立て膝をついて向かい合った。綾子さんの手を何かを支えるかのような形に調節し、俺はピンと硬直しているひかりを抱え上げる。  
綾子さんには頭を、紗耶香には足を持たせるようにしてひかりを寝かせると、そこには立派なベンチが出来上がった。  
試しにひかりの腹に腰掛けてみるが、頭と足を支えられただけにも関わらず彼女はびくともしない。  
支えている二人も、一切身じろぎせずにただただ『台座』としての役目を果たしていた。  
無表情かつ無意識のまま、彼女達は人間だった自分を忘れてベンチになりきっている。胸を触ろうが唇を奪おうが、その表情はなにひとつ変わらない。  
美女三人からなる人間椅子の出来に、俺は大いに満足した。どんなに威勢がよくても、このシールの前では無力なのだ。  
虚ろな表情のひかりを撫でてやるうちに、俺はちょっとした遊びを思い付いた。  
 
「ひかり、起きていいよ」  
 
瞬きさえせずに天井を見つめていたひかりだが、俺の声で目に意思が灯った。  
 
「ん…今度は…なに?」  
 
状況を把握できずにぼんやりとしているひかりを尻目に、俺は彼女のブレザーをはだき、ブラウスのボタンに手をかける。  
 
「いやぁ!何してるのよ!」  
 
「椅子のカバーを外しているだけだ」  
 
「…カバー?」  
 
「そう。お前は椅子でこれはカバーだろ?」  
 
悪びれもなく答えた俺は、一気に第三ボタンまで弾きブラジャーに包まれた彼女の胸をあらわにする。  
 
「いやぁ!」  
 
涙を流してひかりは抵抗しようとするが、残念ながら椅子は自ら動くことはない。綾子さんと紗耶香に支えられ、ひかりはただ板のように固まっていることしか出来ないのだ。  
 
「何がいやなんだよ」  
 
ブラジャーの上からやわやわと胸を揉み上げ、俺は意地悪く聞いてやる。柔らかい膨らみが、手の中で面白いくらいに形を変えて心地よい。  
 
「だってぇ…うぅ、やだぁ…」  
 
「ひかり、お前は椅子だろ」  
 
「そう…だけど…」  
 
「椅子に羞恥心なんてある訳無いだろ」  
 
その言葉に、ひかりの泣き顔が少しずつ和らいでいった。  
彼女の意識なんて、シールの力を使えば一瞬で書き換えることが出来る。しかし、こうやって少しずつ彼女を書き換えるのも楽しいものだ。  
 
「私…椅子で…恥ずかしくない…?そうね、椅子は…恥ずかしいことなんて…」  
 
「椅子になりきれないお前は椅子失格か?」  
 
「…っ!違うもん!恥ずかしいわけないでしょ!」  
 
もはや完全に普段の勝ち気さを取り戻した彼女が、勢いよく言い放った。  
 
「私は、れっきとした椅子よ」  
 
自らの言葉に何ひとつ疑いを持たず、ひかりはそう断言した。先程まで嫌がっていた彼女がまるで嘘のように、その表情は晴れ晴れとしていた。  
 
「そうか。ならせいぜい椅子らしくするんだな」  
 
俺の言葉に、ひかりは再び目から光りを消す。今度は自分の意思で、ひかりは椅子になるべく自らの意識を閉ざしたのだ。  
再びただの椅子と化したひかりは、もはや俺の愛撫にもなにひとつ文句を言わないただの人形だ。  
そんな彼女を眺めながら、俺は自分にサディストの気があっただろうかと苦笑してしまう。  
 
なんにせよ、このシールがある限り俺の生活は退屈しそうにない。可愛い家具に囲まれ、俺はこれからも様々な快楽を見出だすだろう。  
これから続く楽しみに心を躍らせ、俺は『椅子』の『カバー』を勢いよく剥ぎ取ったのだった。  
 
 
人形遊びシール編(完結)  
 

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