初めての感触は、意外なまでに柔らかかった。  
 
目を瞑っていたために、天音がどんな表情をしているかは分からなかった。  
ただ、天音の柔らかい唇の感触だけは、とても、良く分かった。  
五秒、いや、十秒以上は経っていたかもしれない。  
とにかくそれくらいの時間が経ってから、俺達は、触れ合わせていた唇を、そっと離した。  
そして、伏せていた瞳を、そっと開いた。  
「……なんか……変な感じ、だね……」  
恥ずかしそうに視線を逸らしながら、天音が呟いた。  
控えめに朱に染まっている、その表情が愛らしい。  
「そ、そう、か?」  
いかにもたいしたことなさそうに言おうとしたが、どこか声が上ずってしまったようだった。  
俺の心臓は、恐ろしいスピードで鼓動を刻んでいる。  
やはり、初めてとなると、流石の俺でも緊張してしまうのである。  
誰でもこういう時はそうであるはずだと思いながら、天音にこの鼓動音が届いていない事を願っていた。  
 
とりあえず、一つ息をついて、自分を落ち着かせる。  
落ち着け、俺。天音だって(多分)初めてなんだ、天音だって緊張してるはずだ。落ち着けー。  
そう唱え続けながら。  
しばらくして落ち着いてくると、尻尾をぱたぱたさせている天音の顎に手をやった。  
「…………」  
何も言わずに、俺の事をまっすぐにみつめてくれる天音。  
その視線に応えながら、もう一度口付ける。  
「んっ……」  
もう一度、その柔らかい感触を、ゆっくりと。  
今度は目を瞑らないで、天音をしっかりと見つめながら。  
天音の方は、さっきと同じように、目を瞑って、俺と口付けを交わしていた。  
赤くなっている顔も可愛いけど、なにより、ふにふにと柔らかく動く犬耳が可愛らしくてしかたがなかった。  
本人は意識していないんだろうけど、尻尾が、嬉しそうにぱたぱたと揺れていた。  
 
もう一度、さっきのように、そっと唇を離す。  
「……涼……」  
上目遣いで、天音が甘えるような声を出した。  
こう、なんというか、胸がキュンとするというか、煩悩が刺激されるというか、なんだか妙な感覚に襲われる。  
いままでの天音とのギャップがまた、今の天音の可愛さを強調させていた。  
さて、どうしようか。ここからどうもっていけばいいのか、見当もつかない。  
いきなりベッドに、っていうのはなんか嫌だし、ましてや立ったままとかありえない。  
そんな風に思案していると。  
俺の事を上目遣いで見つめている天音の眉が、悩ましげにひそめられた。そして犬耳がひょこりと伏せる。  
そしてとどめの一言。  
 
「くぅん……」  
 
……キタ。  
これはキタ。  
一瞬頭の中が真っ白になり、次に怒涛の勢いで煩悩が駆け巡った。  
「きゃんっ」  
犬のような声を可愛らしく上げながら、天音は俺に押し倒される。  
もうなに考えてるかさっぱり分からなくなるくらいの衝撃だった。  
あの一言で、俺の男としての欲望が完全に刺激され、理性はほぼ消滅したのである。  
 
「おとこーはー おおーかみー♪おとーこーはー おおーかみー♪」という謎のメロディーが頭の中で流れ続ける。  
ベッドが軋みをあげた。そりゃ当然だ、二人分の体重が一気にかかったのだから。それもものすごい勢いで。  
頭にかーっと血が上り、心臓の鼓動はもはや人間の限界を超えていた。  
ほぼ野獣と化した俺に、天音は、どことなく嬉しそうな視線を向けてきていた。  
そしてまた一言。  
「優しく……してね?」  
 
その時、どこかの誰かの理性の糸が切れた音が、近隣の住宅にたしかに届いた。  
 
 
 
そして、夜。  
 
 
「う、ううん……」  
妙に、頭が重い。  
片手で額の辺りを押さえながら、俺は頭を二、三度振って、意識を覚醒させた。  
窓の方を見やる。  
カーテンの微妙な隙間から射していた日差しはどこへやら、外は真っ暗闇だった。  
(眠っていたのか……)  
眠っていたというより、疲れ果てて気絶したと言ったほうが、ある意味正しいかもしれない。  
今朝の事を思い出す。  
始まりこそ強引であったが(というより俺が押し倒してしまった)、その後はめくるめく時間が過ぎていった。  
そしていつのまにか、眠りについてしまったのである。  
俺だけでなく、今俺の腕の中で、すやすやと寝息を立てている……天音も。  
その安らかな寝顔からは考えられないくらい、今朝は激しかった。もう、形容できないくらいである。  
まあ、俺も例外ではないのだけれど。  
ふと、眠っている天音が、もぞもぞと身体を動かす。  
「離れないで」という言葉とともに添えられた、俺の片手をしっかりと握るその手はそのままで。  
俺の身体に、天音がさらに体重を預けてくる。  
すぅ、すぅという静かな寝息と一緒に揺れる犬耳をそっと撫でる。  
この耳や尻尾を責めてみた時は特にすごかった。  
触るだけでなく息を吹きかけた時など、華奢な体が可愛らしく震えて……。  
「ん、んん……りょ、う?」  
今朝の情事の記憶がかなり鮮明に蘇ってきた頃、いつのまにか天音が目を覚ましていた。  
半分だけ開かれた瞳が、とても眠たそうである。  
「あ、ごめん。起こしちゃったか?」  
瞼をこすりながら、天音は「ううん」と首を横に振った。  
 
「ね、ねえ、涼」  
「なんだ?」  
「け、今朝は、その……」  
天音はそれだけ言って、ごにょごにょと語尾を濁らせてしまった。  
ようやく思い出したのか、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに俯いている。  
そんな天音に俺は微笑みながら、面白いからちょっとからかってやろう、なんてことを思い付いた。  
「激しかったな。びっくりしたよ」  
ぼっ、という効果音付きで、天音の顔が耳まで真っ赤になった。  
「もうあれだな、『私の中に、涼のちょうだい……』なんて言われた日には死んでもいいと思ったな」  
わざとらしい声色で、今朝の悩ましげなセリフや様子を、つらつらと挙げていく。  
天音が顔どころか、首筋まで真っ赤にしているのが面白かった。  
「俺のを舐めてくれた時とかもすごかったけど、やっぱりああいう風に求められたのはキたなあ……  
なにせ、あの天音がお尻をこっちに向けて、こう……『もっと……して』とか……ぶっ!!」  
「きゃー!!きゃー!!やだ、そういうこと言わないでよぅ!」  
い、一日と半日ぶりに、黄金の左が炸裂した……。  
グッド、ジョブ、だぜ、天音……。  
「えっ?り、涼?ちょっと、涼!!」  
最後の力を振り絞ってぐっ、と親指を立て、俺は白いシーツを鼻血で赤く染めながら、倒れ込む。  
「ねえ、涼、涼ったら!冗談やめてよ、ねえ!」  
「…………」  
「い、いや……嫌ぁ……」  
天音の顔がさきほどと対照的に真っ青になり、いまにも泣き出しそうな表情になる。  
「なーんちゃってー」  
その反応に満足した俺は、「ドッキリ!」と書かれた立て札を持ちながら、むくりと起き上がる。  
天音は狐につままれたように呆然としていたが(この程度で騙されるとはやっぱり純粋である)、そのまま俺の胸に顔を埋めて、ただ一言「馬鹿……」と言って、俺の胸を小突いた。  
「ごめん。……でもこれで、毎回ブン殴られる俺の気持ちが分かったかな?」  
天音がこくりと頷く。  
 
「それじゃあ互いに理解しあえたところで……第二ラウンドといこうか」  
「……え?」  
あっけにとられた天音の隙を突き、再び押し倒す!  
「ちょ、ちょっと!やだ、今日は「先祖返り」を調べるんだって……」  
「おいおい、こんな夜中に調べにいくつもりか?どうせなら、明日でいいだろ」  
「そ、それじゃあ早く寝なきゃ……」  
「さっきまで寝てたじゃないか」  
天音の苦し紛れのいいわけを、にっこり微笑みつつ撃破する。  
口と表情はどちらかといえば拒否の意を表してはいるが、尻尾がぱたぱた振れているのを俺は見逃さなかった。  
「でも、シャワー浴びたい……」  
「あ、それは俺も同意」  
「で、でしょ?」  
当然のことながら、さっきから互いに一糸纏わぬ姿のままである。  
行為のあとのためか汗でベタつき、気持ち悪い。  
天音の場合は、その、まあ……様々な体液を洗い流したいという気持ちがあるのだろう。  
とりあえずベッドから降りると、散乱している洋服を回収し、天音に先にシャワーを浴びていてもらう。  
その間に窓を伝って着替えを回収しにいき、天音が出てくるのを待つ。……のだが。  
着替えを回収しに自分の部屋に戻った時、俺はとんでもない物を見つけてしまった。  
「こ、これは……!」  
なんでこんな物が俺の部屋にあるのかはまあ置いておいて、とにかくとんでもない物を手に入れた。  
さりげなくそれを隠し持ち、天音の家へとまた窓を伝って戻った。  
 
 
「ふいー、さっぱりしたー」  
とりあえず洋服を着て、俺は脱衣所から出た。  
……まあ、これからまた汗を流す行為をすることになるんだろうけど、一応。  
居間には、天音が見当たらない。おそらく、寝室へ向かったんだろう。  
そう決め込んで、俺は意気揚々と寝室の扉を開けてみた。  
すると……。  
 
「……」  
ベッドには、一糸纏わぬ姿の天音が座っていた。  
恥ずかしそうに視線を逸らしながら、胸と局部が上手く隠れるように手をついている。  
耳の方はだらりと伏せられていたけど、尻尾のほうは正直で、すでにぱたぱた揺れている。  
ちょうど、餌なんかを目の前にして「待て」と命令されて待っている犬のようだ。  
……んじゃ何か。俺は餌か。交尾の後に食われる雄のカマキリか。 そういうスプラッタな展開はないと思いたい。  
「ねえ、涼」  
「何?」  
天音がちらちらとこちらを見ながら、呟いた。  
「謝りたいことがあるの……」  
天音が謝らなきゃならない事?記憶にないな。  
俺が謝るべきことなら山ほどある。心当たりありまくりである。  
そう思っていたんだけど。  
「アタシ、今までいつもいつも、涼のこと、その、ぶってたから……謝りたいの」  
なんだそのことか。そんなのべつに……。  
という言葉が俺の口から出ようとした瞬間、俺はある事を思い付いた。  
天音には悪いが、この機会を利用させてもらうとしよう。  
「うーん、いまいち謝罪の意が伝わらないのう」  
できるだけわざとらしく、おおげさに言ってみせると、天音はすぐに反応した。  
「そ、それじゃあ……アタシ、涼のためなら、なんだって……」  
うむうむ。期待通りの発言。  
「よかろう、それならこれを付けなさい」  
言いながら俺は、先ほど自室で手に入れた、ある物を天音に渡した。  
 
「ねえ、涼」  
「ん?なんじゃい?」  
天音が訝しげに、俺の渡したブツを見つめている。  
「これって、その……」  
「うん、見ての通りだけど。……まさか嫌だなんて、いわないよな?」  
ちょっとプレッシャーをかけてみたりする。これがまた、天音は面白いぐらいに乗ってきてくれるのだ。  
「そんなこと、ないもん!見てなさいよね……」  
半分ムキになりながら、天音はそれを、自分の首に巻き付けた。  
まさに気分は諸葛亮孔明。ふふふ、これも私の策のうち……。  
 
「これで、いい?」  
「締めすぎじゃないか?もうちょっと……うん、これでよし」  
締め付けを調整して、ちょっと首に余裕があるようにしてやる。そして頭から爪先までじっくり鑑賞してみる。  
うむ、やはり合うな。なまじ犬の耳と尻尾が生えてるだけに、リアリティがある。  
もう分かっているとは思うが、俺の持っていたブツとは、犬用の首輪である。ちなみに、俺が犬を買っていた覚えはない。  
それなのになんで首輪があるのかは聞くな。世の中都合で出来てるようなもんだ。  
 
「どんな感じ?」  
とりあえず聞いてみる。  
「なんだか……本物の犬になっちゃったみたい」  
首輪をいじりながら、天音が答えてくれた。  
全裸に首輪というかなーりマニアックな格好のためか、恥ずかしそうである。顔が真っ赤だ。  
「もう、許してくれる?」  
不安そうな視線を向けてきながらいわれると、うんいいよとは答えられない。俺はひねくれてるから。  
「うーん、まだだな」  
「え?それじゃ、どうすれば……」  
「なーに、簡単な事さ」  
俺は、すかさず取り外し式の紐を、首輪に取りつけた……。  
 
天音の家にはよく来ていたので、間取りは完璧に記憶している。  
寝室を出て、玄関口に向かった。……天音を連れながら。  
「ほ、ほんとに外に行くの?」  
俺が今握り締めている紐の先は、天音の首輪へと通じている。  
その天音は、四つん這いで俺の後に続いているのだ。  
そう、まさに犬の散歩。  
さすがに物凄く嫌がったが、俺が「じゃあ俺の肉体的苦痛と精神的苦痛は癒されないまま過ぎていくのか…」  
とか言ってみたら承諾してくれた。やっぱり、天音は純粋すぎると思う。ま、そこも含めて好きなんだけどね。  
んで、俺は―――いまさらながら調子乗ってると自分でも思う―――そのまま外に出ようと提案したのである。  
「男に二言はありませんが何か?」  
「な、何か?じゃなくて……こんな姿、誰かに見られちゃったら……」  
天音が心配するのも無理はない。だって裸のまんまなんだし。  
それを承知で俺はこのプレイに乗り出してみたのである。  
「大丈夫大丈夫、こんな夜中だし、行くのは人気のない公園だから問題ないって」  
「でも……」  
「さ、行こうか」  
めんどくさいので外に出る。 もしかして俺って鬼畜ってやつなのかな……。  
いや、ただ単に天音をからかってるだけだ。うん、俺はノーマルだ。  
 
目的地の公園は、すぐそこにある。  
規模はそれなりなんだけど、さすがに夜中ともなると誰もいない。  
なんか、男女のアレな声が草むらから聞こえるけど、この際無視する。  
「ね、ねえ、涼……」  
天音の辛そうな声がする。  
「どした?」  
「さ、寒い……」  
……あ。  
そうだった、まだ冬だった。  
どうりで寒いわけだ……って、天音は裸じゃねえか!ヤバイヤバイ!  
俺はすぐに近場の草むらに天音を連れて入り、着ていた上着を脱いで、それを天音の身体に包らせた。  
 
「う、うぅ……寒いよぅ……」  
「……ほんとに寒いのか?」  
上着に包らせて抱き寄せながら、言ってみた。  
「あ、当たり前じゃない!こんな寒いのに……もう」  
「いやさ、ここはそうでもないみたいだけど」  
さりげなく、天音の秘裂へ手を伸ばし、そこに触れてみると、くちゅり、という水音が響いた。  
「……ぁ」  
天音の頬が、段々と紅潮していった。  
「寒いならさ、あったまろうぜ?お互いに」  
俺の誘いに、視線を逸らした天音ではあったけど。  
「……うん」  
今朝と同じ、とろんとした瞳のままで、天音が答えた。  
その答えに満足して、俺は天音を抱きしめたまま、舌先を触れ合わせてから、口付けた。  
口の端から唾液が垂れるほどに、激しく絡め合う。そして、そのまま舌を胸へとなぞるようにおろしていく。  
「はあっ……あったかくて、気持ちい……んっ」  
天音が、溜め息のような、切ない吐息をする。  
それは白い吐息となって、静かな夜の闇へと消えていく。  
ちょうど首筋にかかるので、妙な感覚が俺の背筋に走り続けた。  
乳房を口いっぱいにほおばって、口の中で、乳首を舌で刺激する。  
「あんっ……あぁっ」  
天音はけっこう敏感な体質らしく、乳首を刺激しただけでも、甘い声をあげてくれる。  
俺は乳房から口を離すと、そのまま、ぴんと立った犬耳に、息を吹きかけてみた。  
「ひゃっ、駄目、耳は、感じちゃうから……ひゃうっ」  
「息吹きかけただけでこんなだもんな」  
こんな言葉を囁いてあげるだけでも、かなり効果がある。  
「ふぁ、あぁ……」  
口元からさっきの唾液を垂らしながら、俺の腕の中で、天音の身体がびくびくと震える。  
 
さっきまで天音の身体を包んでいた俺の上着は、いまではシーツ代わりとなっていた。  
元々が雑草なので、寝かせても問題はないんだけど、なんとなく、俺は天音を抱きしめていたかった。  
ただ単に寒いから、というわけじゃない。  
やっぱり、俺は天音の事が好きだ。だから、こんな時でも、しっかりと、この身体を抱きしめていたいんだ。  
 
「どう?あったまってきたろ?」  
「うん。でも、ここが寂しいの……」  
天音が俺の右手を、そのままするすると、天音自身の秘部へと持っていく。  
思わず苦笑いしたけど、俺は拒絶する事なく、秘裂の中へと指を侵入させた。  
「んはぁ!指が……入ってきてる……涼の、指が……ああぁっ」  
媚肉は悠々と異物の侵入を許し、はっきり分かるくらいに俺の指を締め付けた。  
ふっふっふ、今朝の行為で、すでに天音の弱点は見抜いているのだ!  
指を上手く動かしながら前後させ、その角度を細かく変える。  
「あんんっ、はっ、くぅん!」  
かき出されるように蜜があふれ出て、俺の指だけでなく、手までを濡らした。  
よくよく見てみれば、地面にまでたれてしまっている。  
「天音、すごい量だぜ……」  
「り、涼の、あんっ、指が、気持ちいいのぉ……だから、仕方ないの……」  
頭がぼーっとしてるのか、うわごとのように、一語一語を途切れながらに呟いている。  
「でも、天音はけっこうえっちだと思うけどなあ。こんなに濡れちゃう娘なんて、滅多にいないと思うけど」  
無論経験でなく憶測です。間違っても天音以外の女性とこういう状況になった事があるわけじゃないし。  
「涼は、えっちなアタシは、嫌い……?」  
「まさか。天音は天音さ。俺は好きだよ」  
天音が嬉しそうに微笑んだ。  
「じゃあ、アタシのこと……もっと、えっちにしてぇ……」  
何気に物凄い事言ってるの気づいてるのかな?  
なんかアレだ、性格が豹変するってのはこういうのを言うのかもしれん。  
まあそんな事を考えながら、俺は天音の身体を、さっきまでみたいに、四つん這いにさせた。  
 
足を立てて四つん這いにさせて、本当の犬のような体勢を再現する。  
天音の性格から察するに、こちらの方が興奮する。というより、俺がする。  
「ここがさっきから、熱くて止まらないの……だから、涼ので、おさえて……お願い……」  
甘えた声でお願いをしてくる天音の意思を表すかのように、尻尾が激しく揺れているのが、俺の興奮を掻き立てた。  
ふさふさとした尻尾を撫でながら、俺はモノを取り出し、秘裂にあてがった。  
愛液の熱さと媚肉の感触が、先端に感じられる。  
「いくよ、天音……」  
それだけ言って、俺は腰を進めた。  
ほとんど抵抗なく、モノは秘所へと埋まっていった。  
「あっ、はぁぁあぁ……」  
それなりの深さまで挿入し、一旦腰を進めるのを中断する。  
程よい柔らかさと、驚くほどの熱さを持った淫肉が、モノを包み込むようにして締め付けてくる。  
今回は二度目なので、よりその快感を味わう事が出来た。  
「う、動いて……このままじゃ、おかしくなっちゃう……」  
言われなくても、と思いながら、俺は腰をゆっくりと引いた。  
俺の動きに反応して、天音の脚ががくがくと、耐え切れないといった感じに震えた。  
腕のほうは、いつ地面に肘をついてもおかしくなさそうだ。  
「もっと……早く……ああっ!」  
緩やかに、そして段々と早めていくつもりだったんだけど、いつのまにか腰が早く動いていた。  
最奥まで打ち付ける度に、ぱん、ぱんと、肌と肌の当る音が響く。  
「涼っ、りょうぅっ!気持ちいいよぉ!あっ、んはっ、はぁんっ!」  
肉欲が先行して、俺の腰の動きはどんどん加速していく。  
それが天音の快感を刺激して、そして膣内の締め付けが俺をまた刺激して……。  
このまま、一気に駆け上ってしまいそうだった。  
「駄目ぇ、気持ちよすぎ、て……ふぁ、ああ!……もう、んっ、腕に、力が……」  
ついに耐え切れなくなったのか、天音の身体ががくんと下がった。  
それにつられて俺も体重を前にかけてしまい、一気に奥まで貫いてしまう。  
「あっ、あぁぁぁぁ!!」  
それでも止まることなく、天音が膝を突いて上半身を地面に突っ伏したまま、俺は抽送を続けた。  
 
「あんっ、ひあっ!りょうの、おっきいのが、あたしのなか……うぅんっ!かきまわしてるぅ……」  
だんだん頭がぼーっとしてきた。  
天音自身は完璧に快感に飲み込まれているようで、淫猥な台詞が喘ぎ混じりに飛び出している。  
快楽の波が、そろそろ絶頂を迎えようとしていた。  
「あ、天音、俺そろそろ……!」  
「いやぁ、もっとしてぇ!あたしのなか、ぐちゃぐちゃにしてぇ……!」  
左様ですか。それなら我慢します。しますとも。  
歯を食いしばり、射精欲に限界まで耐える。  
「あはぁん!あっああっ!!あたまのなか、まっしろになっちゃうぅ!」  
持てる限りの力を出しきり、天音の秘所へと打ち付ける。  
いいかげん、我慢の限界を超えそう……だ……。  
「ひゃぅぅ!あっ、あたし、もう駄目ぇ!りょう、中に、いっぱい、涼のを出して、あんんっ!」  
「天音……もう……!!」  
あっぁっ、あはぁぁぁ!!りょう、りょ、う……んはぁあああああぁ!!」  
尻尾がぴん、と立ち、天音が一際高い声を上げた。  
絶頂を迎え、締め付けられた瞬間、俺の欲望も解放され、溜まっていた白濁液が一気に放出された。  
「ぁんっ!あ、ふぁ、ぁぁぁ……りょうのが……ふるえ……てる……」  
天音は身体をぶるぶると震わせて、絶頂の余韻に浸っている。  
俺も力が抜け、互いに地面に寝転がってしまう。  
そんなことも気にせず、静かな夜の中、俺達は、愛しい人の体を抱きしめ合っていた……。  
 
 
「……へくちっ!」  
「大丈夫か?天音」  
今俺達は、暖かいストーブの前で、一つの毛布に二人で包まっている。  
ちなみに今の可愛いくしゃみは、天音がした。  
「アタシ、涼みたいに頑丈じゃないし……なにより裸、だったから……へくちっ」  
「俺だってくしゃみが……へ、へーちょ」  
うーん、やっぱり偽者のくしゃみは何か違うな。  
「なによそのくしゃみ。もう……涼の馬鹿」  
天音がふてくされて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。  
「ごめんよ。……でもさ」  
俺はその肩に手を回し、抱き寄せる。  
「俺達、ようやく結ばれたんだな……」  
大切な人と一緒にいれる喜び。  
大切な人と肌を合わせて暖めあえる嬉しさ。  
そして……側にいれる、いてくれるというコト。  
「……うん……」  
「嬉しいぜ、俺」  
「アタシだって……」  
微笑んだまま見つめ合う。  
天音の頭にひょこひょこと生えている犬耳と、ぱたぱた揺れるしっぽ。  
こいつのおかげで、俺達は一緒になれた。一つになれた。  
ちょっとは感謝しなきゃ、かな?  
「涼……」  
「ん?」  
「大好き」  
気がついた時には、天音が俺の唇を奪っていた。  
「……ああ」  
これからも、いつまでも……。  
いつまでもこうしていようと、いつまでも、こうしていこうと。  
俺は……俺達は、誓った。  
 

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