大学生の佳奈は、友人の恵美と典子と共に、女3人旅行を楽しんでいた。  
女だけとはいえ、充実した楽しい旅行だった。  
あの恥ずかしかった思い出を除けば……。  
 
 
朝は車を運転し、昼は海で遊んだ。  
佳奈は容姿に自信があり、海では視線を集めたが、そのあまりにも可憐で豊満な姿から、逆にナンパなどがされることが無かった。  
疲れた体で旅館に着くと、今までの疲れは何処にやら、佳奈は仲居の話しも聞かず、すぐに温泉に走り出した。  
 
「現在、清掃中か……」  
入口の前には立て札が置いてあり、どうやらまだ準備中の様だ。  
谷に沿った広い旅館の温泉は、客室から遠く離れており、さらに階段を上り下りしないとならない。再び歩いてくるには面倒だ。  
「うーん、中の様子を見てみようかな?」  
立て札を無視し中に進入。女湯を覗きこむと、そこには誰もおらず、綺麗に見える脱衣所は既に清掃が終わっている様に感じさせた。  
入口に戻り、門付近にある張り紙を見る。張り紙には温泉の効能などが書かれていたが、佳奈はろくに読みもせず、張り紙を流し見て数字を探す。  
「あった!」  
温泉は16時からの開放らしい。携帯で時間を確認すると、今は15時46分。  
(清掃が終わっている様なら、ちょっと先に入っちゃおうかしら……、やった!1番風呂ね!)  
 
佳奈は脱衣所に入ると、若干の後ろめたさもあり、周りを気にしながらいそいそと急ぎ脱ぎだした。  
しかし、そんな気持ちは浴場に入るとすっかり忘れていた。  
「流石、大自然の中にある旅館!」  
浴場は旅館に見合う、非常に広い空間だった。  
「こんな広い温泉を独り占め出来るなんて」  
佳奈は嬉しくなり、何も持たずに浴場を進んで行った。  
 
体を簡単に流すと、思わず温泉で泳いでみた。  
広い大浴場の他に、幾つかの温泉があるようだ。さらに外には大自然の露天風呂があり、外の景色をぐるっと眺めると、浴場と露天風呂の間に建物があった。サウナがあったのだ。  
「ふふふ、汗をかいてから、さっぱり体を洗い、温泉でゆっくりするのも悪くないわね」  
 
静かにサウナに入っていると、部屋の外が騒がしくなってきた。  
どうやら他のお客も入ってきたのだろう。窓から外を覗くと、水着を着た女子高生ぐらいの娘達が入って来た。  
(この温泉は水着着用OKなのかしら、最近多いみたいよね)  
(あの娘達は自分の体に自信がないのね……、まぁ、あの頃の年頃は恥ずかしがるからね)  
佳奈は微笑ましく、勝ち誇った様に眺めていた。  
(ああ、私はこんなに見事な体をしているんだから、私の体をみんなに見せ付けたいのに!なんてね)  
……そして、それは実現するのである。  
 
サウナに先ほどの娘達が入って来た。娘達は佳奈に気が付くと、チラっと佳奈の方を見て、ひっそり会話した様に見えた。  
(ふふ、私の体が羨ましいのかしら)  
佳奈は嬉しそうに悦に浸った。さらにサウナの気持ち良さがあり、ボーっとしていると部屋で過ごしていると、外は一段と賑やかになっていった。  
 
突然、男の老人がサウナに入って来た。  
「おやおや、今日は若い娘が沢山おるのぉ」  
「ふぇ?」  
佳奈は驚いた。  
(え、ここ混浴だったの!?そんな入口には女湯の暖簾が垂れていたのに!!)  
仲居の説明を聞かず、入口の張り紙を見なかった佳奈は知らない。  
この温泉は16時から、大浴場(女湯)が混浴になるのである。  
 
佳奈は慌ててサウナを飛び出すと、強く閉めた扉のせいで、周りの視線が一気に注目する。  
中はサウナ室と違い人で賑わっており、ほとんど水着を着用して見える。ただし、着用してないのは、小さな子供か老人しか見当たらない。いい歳をして裸なのは佳奈ぐらいだった。  
しかも、佳奈はタオル1枚持っていなかった。何も隠すものがない。  
(もしかして、さっきの娘達が私の体を見て話したのって……)  
 
一糸まとわぬ姿で現れた若い女性に、男達の視線は集まる。ある者は赤面して顔を逸らすが、大半の男達は予期せぬゲストの登場に、目を凝らし見つめてくる。  
辺りは沈黙に包まれたかのように思えた。佳奈にとってその間は非常に長い時間に感じた。  
(う、うそ……、知らない人達に裸を見られちゃった)  
(いや、知らない人達だったから、まだよかったのかな)  
居ても立ってもいられなかったが、様々な思考が巡り、佳奈はその場から動けなくなっていた。  
そのとき、聞き覚えのある声をかけられた。  
「佳奈じゃないの!」  
「あらら、そんな格好で来るなんて、体に自信がありますからねぇ」  
恵美と典子だった。  
「そんなところでアピールしてないで、こっちで体を洗ったら?」  
サウナ室の前は、浴場、露天の両方から丸見えだった。  
 
「そんな!混浴で水着着用なんて聞いてないわよ!」  
佳奈は小声で叫ぶと、典子が答えた。  
「そりゃ、あんたは仲居の話も聞かずに、荷物置いて走って行っちゃったからねぇ」  
「入口にはしっかり書いてあったのに、どうせしっかり見なかったんでしょうね」  
佳奈は黙ってしまった。  
体を洗わずサウナから出たばかりなのもあり、帰れずに体を洗い流す。  
幸いだったのは、シャワー室があり、周りの目から逃れられることだろうか。  
「そこは、この広くて豪華な浴場に感謝しないとね」  
 
しばらくすると、恵美と典子は濁りの湯に浸かると出て行った。  
慌てて走るように追いかけた佳奈は、またしても周りの注目を集めた。  
(うう、また見られてるよ……)  
早く帰りたかったが、未だ温泉に浸かっていないので、温泉に入りたかった。  
それに濁りの湯なら、安心してくつろげるだろうと佳奈は思った。  
 
「別に、気にしなくていいと思うわよ。混浴なんだし」  
「そんなこと言って、恵美と典子は水着着てる癖に……」  
「そうよ、混浴なんだから、もっと堂々としてた方がいいと思うけどな」  
浴場内は、若い女性2人に加え、先程から騒がしい豊満な裸を見せた佳奈達に視線が集まっていた。  
(うう……、恥ずかしいな。早く出たいけど、ここを出るとまた……)  
佳奈は濁った温泉の中に、口まで浸かってぶくぶくと泡を立てた。  
「そうそう、堂々としてる方が自然でいいと思うわよ」  
たしかに浴場という場で裸なのは自然だ。騒がなければ、そんなに注目を浴びることはないかも知れない。  
寧ろ、男だって裸の若い女性の登場に恥ずかしそうにしてる者もいる。彼の挙動不審な感じを眺めると、佳奈も堂々と平然を装った方が良いようにも思えてた。そんな矢先。  
「じゃあ、次はあっちの方に入って見ようか」  
そう言うと、恵美と典子は立ち上がり、滑らないように、ゆっくりゆっくり移動を始めた。  
 
慌てて佳奈も立ち上がり、後を追いかける。  
(堂々と平然としていれば大丈夫……)  
佳奈が歩く度に、大きな胸は上下に動き、ぷりっとしたお尻は左右に揺れている。  
勿論、男達はその光景を必死に脳内に収めようと、その視線は佳奈に集中していた。  
 
2人の元に追い付き、冷静に湯船を見ると、佳奈は凍りついた。  
こちらの温泉は、色がほとんど無色透明なのである。  
(えぇ!!これじゃ温泉に浸かってても、体が丸見えじゃない!!)  
(けど、ここで取り乱しては駄目、平然よ、堂々としているのよ……)  
佳奈は落ち着いて、2人の間に隠れるように温泉に浸かった。  
「ふふ、大丈夫、恥ずかしがってたら、余計にあの人達を興奮させちゃうわよ」  
「チラリズムってのがあるのは、佳奈も知ってるでしょ?」  
佳奈は再び凍りついた。周りには先客をはじめ、後から後からと大勢の他の客が集まってきているのである。  
当然、その目的は温泉に浸かることより、佳奈の裸を近くでみるためだった。  
 
恵美と典子は、「この温泉は効く」とか気に入り、その場を動こうとしない。  
結局、1時間近く佳奈は2人の間に、うずくまるように小さくなっていた。  
当然その間は、他に体を隠す物もなく、他の客の好奇の視線を集めたのである。  
そして、それは脱衣所で着替え終わるまで続いた。  
 
 

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