「あははっ」  
「きゃはは!」  
「まてぇー」  
「やだよーぅ!」  
「茜! 麻衣ちゃん! 走らないで! 静かにしなさーい!」  
「はーい!」  
 あまり迫力のない叱声に二人の少女はくすくす笑いながら声を揃えて返事する。  
 美津枝は、その返事もどこへやらですぐ駆け出し少女たちが視界から消えると溜息をついた。  
 夫の仕事の都合で姉のすぐ近くに越してきたはいいが、小学4年の娘茜は姉の娘である麻衣と非常に仲良くなり、毎日遊び回っている。  
 引っ込み思案なことが心配の種だったから、娘が一つ年上の麻衣になついて元気に遊ぶようになったのを喜んでいたのだが、最近は元気すぎて辟易することが多くなっていた。  
(あたしなんか子供の時は姉ちゃんと喧嘩ばかりしてたけどな・・・・・・・従姉妹同士だと違うのかしら)  
 夕食の用意をしながらそんなことを考えてると、ガターンという何かが倒れる音と笑いながらの悲鳴が2階から響いてくる。  
 美津枝は再び深い溜息をつくと、小さなギャングたちのことを頭から振り払って野菜を洗い始めた。  
 
「つっかまえー! 茜、かくごしろー!」  
「きゃーえっちいいい!」  
 勉強部屋の柔らかな絨毯の上に茜を仰向けに倒した麻衣は従姉妹の足首を捕まえそれぞれ両脇に抱え込む。  
 それから捲れ上がったチェックのスカートの奥にあるパンツの中央を右足裏で押さえ、ブルブルと震えさせた。  
 
「そーれ、電気アンマじゃー!」  
「ぎゃー、し・び・れ・るうー!」  
 従姉妹に脚で小刻みに揺すぶられて、茜は笑い混じりの悲鳴をあげる。  
 暫くして息を切らした麻衣が手を離して床に座り込むと、されるがままだった茜が逆襲に転じた。  
「よくもやったなあ、やあっ!」  
「うひー!」  
 上半身をどんと突かれ絨毯に仰向けに寝転がった麻衣は立ち上がった茜に両脚を掴まれる。  
 そして両脚が開かれ股間を従姉妹の小さな足があてがわれた。  
「逆電気あんまー!」  
「わー、こーさーん!」  
 笑いながらあっさり白旗を揚げた麻衣だったが、茜は構わずぐりぐりと股間を踵で躙りまくる。  
 小柄で力がないうえ本気でなかったこともあり、茜のそれはせいぜいくすぐったい程度だったので、麻衣は力を抜きされるがままになっていた。  
(あー疲れたぁ・・・・・・うーん、茜力ないなぁ、全然・・・・・こしょぐったい・・・・・)  
 一方茜は夢中で足を動かしていたが、ふと麻衣を見ると彼女が笑いを納め、息を詰めていることに気がついた。  
「麻衣ちゃん? ごめん、痛かった?!」  
「ち、違うよ! ・・・・・・つ、続けて、いいよっ!」  
「いいよ、もうやめる」  
「あ・・・ええっと、もうちょっと、して! お願い!」  
「なんで?」  
「あー・・・・・・あたしの股、筋肉こってるからちょうどいいの! ほら、パパやママ、肩を揉むと喜ぶでしょ、あんなカンジ」  
「じゃ、もうちょっとね。逆電気あんまーっ!」  
「うっ!」  
 従姉妹にまたも股間を踏み躙られて麻衣は目を閉じ眉を顰める。  
 だが苦しいのではない。むしろ逆だった。  
 
(やっぱりくすぐったい・・・・・・ムズムズする・・・・・オシッコしたいのにできないみたいな・・・・・・)  
 麻衣は初めての感覚に困惑しつつも心ゆくまでそれを味わう。  
 そしてそれは茜が疲れてやめてしまうまで続いた。  
 目を開けると麻衣は叫んだ。  
「ね、ねえ、続けて!」  
「あたし疲れちゃったよー・・・・お腹すいたあ」  
「うー・・・・・」  
 初めて知った摩訶不思議な感覚。  
 どこか不安を呼び覚ますのに、ないと辛いようなその感じを、麻衣は放したくはなかった。  
「ねえ茜、あたし今日お小遣い貰ったんだ。もし続けたらそれ半分あげる」  
「ホント?! じゃ頑張る!!」  
 現金なもので茜は気合いを入れ直し、元気に茜式電気あんまを再開する。  
 そして麻衣はあの何ものにもたとえがたい感覚が再び戻ってくるのを感じた。  
「ん・・・・・んっ・・・・・・・・・・ううんっ・・・・・・・」  
「麻衣ちゃん?」  
「やめちゃダメっ! やめないでっ!!」  
「う、うん」  
 年上の少女の股の筋肉が痙攣し、自然に腰が浮き上がる。  
 とりわけ股間のある一点を偶然踵に擦られるたび、麻衣の喉からは喘ぎが漏れるのだった。  
「あーっ・・・・・・・ああああ・・・・・・はあっ!」  
(・・・・怖い・・・・・)  
 茜は麻衣の思いがけない反応に怯えつつ続ける。  
 本当はもうやめたいのだが、いつしか麻衣が茜の足を強く掴んでおり、やめるのを許さないのだった。  
 
「あーーーあっあっ!! おーーーーーっ!!」  
(気持ちいいっ?! 気持ちいいよっ?!)  
 知識としてのオルガスムスも知らなかった少女にそれが怒濤のように襲いかかる。  
 麻衣は茜の足を股間に押し付けたまま背中を弓なりに仰け反らせ、ビクビクと痙攣した。  
「う゛ーーーーーっ!」  
「麻衣ちゃん! 麻衣ちゃん! 麻衣ちゃああああん!!」  
 硬直し、直後にぐったりと動かなくなった従姉妹に動転し、茜は被さるようにして麻衣の名を呼び続ける。  
 程なくして上気した顔の麻衣が目を開いた。  
「はぁ・・・・」  
「だいじょーぶ?! 麻衣ちゃんだいじょーぶっ?!」  
「うん・・・・・・あっ!」  
 ふと股間の違和感に気づき、がばっと上半身を起こした麻衣は脚を広げてそこを確かめる。  
 下着のステッチの部分はじっとりと湿り、ほのかに湯気を立てていた。  
 
(やばっ! オシッコ漏れた?!)  
「麻衣ちゃん?」  
「だ、大丈夫! 漏らしてなんかないない!」  
「へ?」  
「あいや、その・・・・・・そうだ、そろそろご飯だね!」  
「うん・・・・・・あそうだ、おこづかい半分!!」  
「くっそー、覚えてたか・・・・・・はい、50円」  
「えーこれだけーー?? 麻衣ちゃんずるぅーい!」  
「だって100円しかくんなかったんだもん。文句はあたしのママに言え」  
「ずるだずるだぁー! 疲れたのに、頑張ったのに、怖かったのにいいいい!」  
「まあまあ・・・・・・そうだ、いいこと教えてやるからそれで許して」  
「いいことぉーーーお?」  
「そ、さっき見つけたばっかの新発見!」  
「じゃ、教えて!」  
「ご飯食べたらね」  
 そこまで言ったところで実にタイミング良く階下から声がかかる。  
「茜、ご飯よー。麻衣ちゃんも食べてくよね?」  
「はーい、もちろんでーす! じゃ、新発見は後でね」  
「うん、楽しみにしてる」  
 トントンと音を立てて笑顔の少女たちが階段を下りていく。  
 夕闇は深くなり、彼女たちの無垢の時代は静かに幕を下ろそうとしていた。  
 
(了)  
 

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