言葉を持たないということは、一体どんなものなのだろう。こいつを見るたびに、そんなことを考える。  
俺の隣に座り、俺のMP3プレイヤーを奪って音楽を楽しんでいるこいつ。一見すれば、こいつはただの可愛らしい女の子だ。  
が、こいつは他の奴等と、決定的に違う部分がある。  
「おい、あとでちゃんとそれ返せよ」  
俺が言うと、可愛らしい笑みを浮かべ、こう答える。  
「ハー」  
「……今はいいけど、あとで返せな」  
「ハー!」  
彼女が出す声は、掠れた息の通り抜ける音でしかない。しかも、それは言葉を出そうという意思すら感じさせない。  
それもそのはず。彼女は、いわゆる『言葉』というものが喋れないのだ。俺や他の人が言う言葉はきちんと聞き取り、理解するのだが、  
彼女は自身の言葉を持たない。どうも言葉というもの自体を使いこなせないらしく、字も読むことはできるのだが、それを自身の  
言葉にして表すことはできない。だから、彼女は筆談も不可能だ。  
また、生まれつき声帯がおかしいらしく、言葉を発することもできない。出てくる音は、ちょうど、鳴きすぎて声を嗄らした  
子猫の出すような音だ。  
「ヒァー」  
不意に声の調子が変わり、俺はそちらに目を向ける。彼女はイヤホンを放り出し、冷凍庫を見つめている。  
「何だよ、またアイスか?」  
「ハー!」  
「さっき食ったじゃん。もうダメだぞ」  
俺が言うと不機嫌そうな声を出し、膨れっ面を見せる。  
「ハー……シァー!」  
「……わかったわかった、あと一個だけな」  
「ハー!」  
結構わがままな子でもある。何かと俺に物をねだってくるし、断ると不機嫌になる。俺のデザート横領は数知れない。  
何と言うか、こいつはすごく猫に似ている。声はまるで子猫の鳴き声だし、意思の疎通の仕方も似ている。性格なんて言わずもがな。  
そして、こいつは苗字が二井谷という。『にいたに』と読むらしいが、谷を『や』と読むこともできる。  
なのでそれをもじって、俺はこいつのことをもっぱら『ニャー』と呼んでいる。猫っぽい響きといい、こいつにはぴったりだろう。  
ちなみにニャーも、この呼び方を気に入っているらしい。  
「おいニャー、これ食ったらそろそろ帰れよ」  
「ヒァ〜……ハ…」  
ニャーは元気のない声を出し、僅かにうつむく。  
「また喧嘩かよ。お前、少しはなぁ…」  
「シァーッ!ヒャーッ!」  
今度は一転、俺に向かって怒りに満ちた声を出してくる。  
「……はいはい、おんなじこと言うなってのね」  
「ハ」  
こいつの家族以外で、ニャーの言いたいことを理解できるのは俺だけだ。と言っても、俺からすれば、どうして他の奴が  
理解できないのか、そっちが理解できない。仕草や表情は変わらないのだから、その辺を見れば大まかな意思の疎通はできるのに。  
 
そういえば、俺がこいつと仲良くなったのも、その辺が縁になったんだった。  
大学のレポート地獄にうんざりして、現実逃避のために、たまたま近くでやってた夏祭りに行ったときだ。  
凄まじい喧騒の中、何だかあちこちきょろきょろ見回して、不安そうな顔をしてる女の子を見つけた。見た感じでは、  
明らかに迷子になった小学生って感じだった。そんな彼女に、俺はどうしたんだと声をかけた。が、帰ってきた言葉は―――  
「シー……ヒァー、ハー」  
「……ん?」  
「ヒャー!ヒャー、ヒャ!ハッ!」  
一瞬ふざけているのかとも思ったが、彼女は真面目だった。そして、何やら指差す先を見ると、ヨーヨー掬いの店がある。  
「……やりたいの?」  
「ハー!」  
「もしかして、別に迷子じゃなかったとか?」  
「シァー、ハー」  
「……なるほど。迷子になったせいで、やりたいのにできないと」  
「ハーッ!ハー!」  
何だか嬉しそうに頷く彼女は、とても可愛らしく見えた。元々が現実逃避のために来ていたので、俺はこの不思議な女の子に  
付き合うことにした。  
結果、ヨーヨー掬いを一回で一個。焼きそばを一つ。杏子飴一つ。金魚掬いは一回で6匹掬い、屋台の人を降参させていた。  
次に射的へ向かおうとしたところで、彼女の家族と出会い、ニャーは無事、家族の元へ戻った。  
聞いてみると、家は比較的近所とのことだった。そして、小学生にしか見えなかったが、ニャーはこれでも中学三年になるそうだ。  
それから一年が経っているので、ニャーも高校生ということになる。まあ、まともな学校には行けてないんだろうけど。俺は相変わらず、  
大学の底辺学生だ。  
あの日以来、ニャーとはちょくちょく会う仲になり、今ではこうして家に押しかけられることも珍しくない。その度に、俺の財政は  
圧迫されるのだが、どうもニャーには甘くなってしまう俺がいる。  
こいつが来るようになってから、俺の生活は少し張りが出た。あまり色気を感じないとはいえ、女っ気があるというのは悪くない。  
そのせいも多分にあるんだろう。  
「……夕飯、食ってくか?」  
「ハー!」  
「オーケー。お前んとこ、電話入れとくか」  
「ヒァー!」  
「んなこと言ったって、心配かけちゃダメだろ。それに、向こうでも飯用意してたら、無駄んなっちまうしな」  
「ヒァー……ハ〜…」  
「わかればよろしい。ま、飯にはまだ早いしな、適当にやってていいぜ」  
「ハー」  
家に来ると言っても、ニャーはニャーで好き勝手にやっていることが多い。俺も必要以上には構わず、課題やらレポートやらを  
こなしている。どうやらこいつにとっては、それがとても居心地よく感じるらしい。  
 
俺のPSPを持ち出し、勝手に作ったセーブデータで遊び始めるニャーを尻目に、俺は夕食の準備に取り掛かる。RPGじゃないし、  
データの上書きの心配はない。  
「ニャー、チャーハンと野菜炒めと、どっちがいい?」  
「……ハ!」  
「チャーハンか」  
「ハー!」  
「オッケ。ちゃちゃっと作るから、テーブルの上だけ物どかしといてくれ」  
ネギを刻み、卵を溶き、鍋を火にかけたところで、ニャーがトコトコと近寄ってくる。  
「ハー」  
「テーブルはオーケー?」  
「ハー」  
「ほいよ。じゃ、そこから皿出して…」  
「シァー!」  
「……そこの解凍したご飯、言ったら入れてくれ」  
「ハー!」  
こいつはなぜか、俺の料理の手伝いをするのが大好きだ。役に立っているとは言い難いが、本当に楽しそうなので、いつも手伝って  
もらっている。俺としても、楽しげなこいつを見ているのは楽しいものだ。  
二人で飯を作り、皿に盛り付け、テーブルに運ぶ。俺の手料理を、これまた本当にうまそうに食ってくれるので、俺もついつい  
気合を入れて作ってしまう。  
「ハー!」  
「うまいか、よかったな」  
「ハッ!」  
「はは、お前も一緒に作ったんだし、当たり前か」  
コロコロとよく変わる表情も、見ていて飽きない。もっとも、その辺が年齢より幼く見える所以でもあるのだが。  
「ところで、それどうよ?進んだ?」  
「ハー!」  
ニャーは何やら得意げに、途中停止してあるゲームの画面を見せてきた。  
「……げ、もう上位かよ。武器何使ってんの?」  
「ハ!」  
「……ガンランスとか、渋いなお前。てかさ、そんなに気に入ったんなら、ニャーもそのうち買おうぜ。そしたら一緒にできるぞ」  
「ヒァー……ハー!」  
「無理無理、俺は買えないって。貧乏学生にそこまで期待するな」  
こういうどうでもいい話が、すごく楽しく感じる。お互いに構えず話せるから、余計そう感じるんだろう。  
大学の友達も、別にいないわけじゃないし、話してて楽しくないわけじゃない。けど、ニャーと話している方が、なぜかよっぽど  
楽しく感じる。  
 
「ところでニャー。お前、彼氏とかできた?」  
「……クー」  
俺が尋ねると、ニャーの手が止まり、俺をジトッとした目で睨みつけてくる。  
「怒るなよ。単なる興味なんだから」  
「クァー!シィー!」  
「お、怒るなよ。わかった、俺が悪かった、すまんかった」  
「……シュ〜…」  
ここまで怒るとは予想だにしなかったが、ともかくも嫌な話題らしいので、もうその話はしないことに決めた。  
飯を食い終わり、食器を下げる。もういい加減、ニャーは帰った方がいいと思うのだが、帰る気配は微塵もない。  
「おい、ニャー。そろそろ帰った方がいいんじゃないのか。いくら何でも、うちの人心配するだろ」  
「……ヒァ」  
「やだって、お前なあ…」  
「ハ」  
ニャーは不意に、洗面所を指差した。トイレというわけではなさそうだし、手を洗いたいわけでもなさそうだ。  
「……何?シャワー?風呂?」  
「ハー」  
「いや、いいけどさ……お湯張っとくか?」  
「ハー」  
こいつが風呂に入りたがるのは初めて見た。そこまで帰りたくないんだろうか。  
ともかくも、俺は風呂桶にややぬるめのお湯を張ってやる。夕飯を食うことは言ってあるし、少々遅くても送ってやれば問題ないだろう。  
「ニャー、もう風呂入れるぞ。ちゃちゃっと入ってきちまえよ」  
「……ハー」  
ニャーは俺の顔を見上げ、風呂を指差す。  
「……何?俺に入れって?」  
「ヒァー!ハ!」  
「……一緒に入れ?」  
「ハー」  
「一緒に!?」  
「ハー」  
「い、いや、それはほら、まずいだろ。仮にも男と女だし…」  
「シァー!!クァー!!」  
「……わかったよ、わかりましたよ。入ればいいんだろ、入れば…」  
何だか妙な流れになってしまったが、言った以上は仕方ない。服を脱ぎ、狭いユニットバスに何とか二人で入り込む。  
ニャーの体は、やはり外見と同じで幼く見える。ああは言ったが、俺達の関係もあって、あまり『女』だとは意識しない。  
仲のいい子供と一緒に風呂に入っているだけだと思えば、そんなに慌てるようなことでもないだろう。  
「狭いなー。ニャー、平気か?」  
「……ハ」  
俺は風呂桶の中で足を曲げて座り、ニャーはその間に体を入れている。後ろを向いているので、肩と背中しか見えない。  
 
それにしても、風呂に入っているのはいいが、ニャーはあまり声を出さず、動きもしない。いつものこいつらしくないなと思っていると、  
不意にこっちを向いた。  
「ん?どうした?」  
「………」  
ニャーは答えず、そのまま体ごとこっちに向き直った。つるぺたな胸より、俺はその真剣な顔に目を奪われた。  
「……ハー」  
「な、何だよ?」  
いつもと違って、表情がまったく読めない。何が言いたいのかも、まったく理解できない。  
「……ハ」  
「だから、何だって…」  
言いかけた言葉は、最後まで出せなかった。  
まったく突然に、ニャーは俺の口を自身の唇で塞いできた。予想もしない行為に、俺はただ驚くばかりだった。  
思った以上に柔らかく、温かい唇。荒い鼻息が頬をくすぐる。それら全てが、俺から平常心を奪っていく。  
その上、口の中に柔らかい物が入り込んできた。怖々と侵入してくるそれが、ニャーの舌だとわかった瞬間、俺は理性を総動員して  
ニャーの体を押し退けた。  
「ぷはっ!お、おいよせって!ニャーよせ!」  
なおも俺に迫ろうとするニャーを、肩を掴んで無理矢理引き剥がす。そんな俺を、ニャーはなぜかムッとした顔で見つめる。  
「い、いきなり何だよ…!?」  
「………」  
不機嫌そうな顔ではある。しかし、その目はどこか悲しげだった。  
俺達はそのまま、しばらく見詰め合った。  
今の今まで、何も感じなかったニャーの体に『女』を感じる。キスをされたことだけが原因とも思えない。その雰囲気も、明らかに  
変わっている。目の前にいるのは、今までの『女の子』ではなく、一人の『女』だった。  
「……ハー」  
一瞬、俺が気を抜いた隙を突き、ニャーは肩の手を払いのけ、逆に俺の肩に手を掛けた。そして、俺の腰にゆっくりと跨る。  
「うっ…!」  
複雑な表情を見せるニャーの顔。肌に直接感じる体温。そして、下腹部に感じる、他とは明らかに異なる感触。  
吹っ飛びそうになる理性を全力で押さえつけ、俺は再びニャーの体を押し退けた。  
「よせ…!ニャー、やめろ…!」  
不機嫌そうな、それでいて悲しげな表情のニャー。その視線から逃れるように、俺は立ち上がった。  
「そ、その、適当に温まって出て来いよ!俺は、その、先に出てるから!」  
振り返りもせず、湯船から出ると体をざっと拭き、部屋に戻る。  
バクバクと心臓の音がうるさい。あんなニャーの姿は初めて見た。それに、いきなりどうして、あいつはあんな真似をしてきたんだろう。  
混乱した頭でわかるわけもなく、とにかく気を落ち着けるために、そんなことを考える。しかしそれを考えれば、あのニャーの体と、  
唇の感触が蘇り、再び落ち着かなくなる。  
そんな俺に追い討ちをかけるように、洗面所のドアが開く音がした。思わず振り返った俺は、そのまま固まってしまう。  
 
そこではニャーが、一糸纏わぬ姿で立っていた。体はざっと拭いてあるようだが、張りのある肌のところどころに水滴が光っている。  
髪は黒く艶かしく輝き、今まで彼女に感じたこともなかった色気を醸し出している。  
「お、おいニャー!おまっ、お前、服っ…!」  
「……ハー…」  
怯えているような、悲しんでいるような、ニャーはそんな声を出す。  
「な……何だよ、どうしたんだよ…?」  
「ハー……ハーッ!」  
突然、出ない声を張り上げると、ニャーは俺に飛びついてきた。いきなりで対処しきれず、俺はその場に尻餅をついた。  
俺自身、タオルを腰に巻いてるだけで、ほぼ裸だ。湯船の中より、もっとはっきりと彼女の体を感じる。  
温かくて、滑らかで柔らかい肌。俺の体をぎゅっと抱き締める、小さな手。  
その手が、俺の腰にあるタオルにかかる。止める間もなく、ニャーはそれを剥ぎ取り、向こうに放ってしまった。  
「おい、ニャー…!」  
「……ハーッ…!」  
俺を見上げる、潤んだ瞳。それがスッと閉じられ、目の前に近づく。そして、唇にあの柔らかい感触。  
再び、ニャーは俺の腰に跨っている。それどころか、まるで俺の腹に秘部を擦り付けるかのように、腰をぐいぐいと動かしてくる。  
そこで、はっきりと悟った。ニャーは、俺を誘っている。抱いてほしいとねだっている。  
一瞬、頭の中に様々な思いが駆け巡る。未成年相手にそれは犯罪だとか、でもここまでされて我慢できないとか、いざという時に  
責任は取れるのかとか、信じられないほどの勢いで頭が働いた。  
だが、それも一瞬のこと。こんなことをされて我慢できるはずもなく、ここで止めては彼女に恥をかかせるだけだ。  
頬を両手でそっと包み、優しく押しのける。ニャーは名残惜しげに舌を伸ばし、そこに唾液が糸を引く。  
「……おい、ニャー」  
俺が呼ぶと、すぐに声の変化に気付いたらしく、ニャーは俺の顔を見つめた。  
「お前……何するのか、わかってるのか…?」  
「ハー」  
「何されるのかも、わかってるのか?」  
「……ハー」  
ニャーは真面目な顔で頷く。次の言葉を出せば、もう後戻りはできない。それでも、俺は言った。  
「後悔、しないな?」  
「……ハ…」  
躊躇いがちに、しかし確かに頷く。それを見て、俺も覚悟を決めた。  
ニャーの体を抱き寄せ、平たい胸にある小さな突起に舌を這わせる。途端に、小さな体がピクンと跳ねた。  
「ヒャッ…!?ヒァ…!」  
突然の刺激に驚いたようで、ニャーは嫌がるように身を捩る。しかし、その力は弱く、俺の行為を妨げるようなものではない。  
「ハッ……ハァ…!ヒャッ…!」  
ニャーは掠れた喘ぎ声を上げ、俺の腕をぎゅっと握ってくる。熱い吐息が耳にかかり、それが何とも言えない快感をもたらす。  
舌先で突付き、舐め、弄ぶ。俺の刺激に、ニャーは素直に反応する。  
「ハァッ……ハッ、ハッ……フゥー…!」  
背中を撫でれば、子供のように艶やかな肌の感触。上気した体からは、少しずつ汗の匂いがし始め、腹に押し付けられた秘部からは  
熱い液体が滲むのを感じる。  
 
右手を滑らせ、ニャーの太腿を撫でる。そのまま内股へと回し、一度下腹部を通してから、そっと秘所に這わせる。  
「ハァーッ!ハッ……ハァッ!ハ、ハゥ…!」  
抱きしめた体がビクリと震え、ニャーの手が俺の腕から肩へと移る。俺を押しのけようとし、しかしそれを躊躇い、肩に手を置いたまま  
ブルブルと震える。俺は胸から口を離し、彼女の顔を見つめた。  
「ニャー、平気か?」  
そう尋ねると、ニャーは不安げな目に少しだけ安堵の色を見せた。  
「……ハー」  
「無理は、するなよ」  
「ハ…」  
小さく頷くと、ニャーはまた顔を寄せてくる。それに応える形で、俺も顔を寄せる。  
俺の唇を、頬を、彼女の小さな唇が優しく触れる。やはりというか、前戯の知識はほとんどないらしく、ニャーはただただ、俺に何度も  
キスをする。でも、それが彼女の純粋さを表しているようで、何とも微笑ましい。  
キスを受けながら、俺は彼女の秘唇を撫で、滲み出る愛液を指に絡める。十分に付いたところで、そっと秘唇を開き、指先を沈める。  
「ハァーッ!ヒャァッ!!ハッ!!」  
「ごめん、痛かったか?」  
指を抜くと、ニャーは大きな目をまん丸にして俺の顔を見つめる。どうやら、痛かったというよりは、びっくりしてしまっただけらしい。  
「ごめんな、もうちょっと準備してからがいいよな」  
「ハー……ハッ!?フ、ハァ!」  
小さいながらも、しっかりと膨らんだ陰核をくすぐるように撫で、摘み、くりくりと弄る。途端に、ニャーの体は弾かれたように  
跳ね上がる。  
「ここ、気持ちいいか?」  
「ハァーッ!ハッ!ハッ!ヒァッ!ハーッ!!!」  
どうやら相当に敏感らしく、ニャーは掠れ声で叫びながらガクガクと体を震わせている。  
頃合を見て、再び慎重に彼女の中へ指を沈める。今度は驚くようなこともなく、ただ俺の指を痛いほどに締め付けてくる。  
「ファ…!ハッ!!ハァ〜!!」  
興奮と緊張とで、今や彼女の体は真っ赤に染まり、顎からはポタポタと汗が滴り落ちている。全身もじっとりと汗ばんでおり、  
俺にしがみつく体は、はっきりとわかるほどに熱くなっている。  
そして、彼女の中はそれこそ、火傷しそうなほどに熱い。ぬるぬると熱い粘液が指に絡みつき、中の肉が指をぎゅっと締め付けてくる。  
その感覚だけでも、俺の最後の理性を取っ払うのには十分だった。  
指を引き抜くと、ニャーの体がピクンと震える。引き抜かれた俺の指を見て、そこに糸を引く愛液を見て取ると、ニャーは恥ずかしげに  
俺の胸に顔を埋めた。  
「……おい、ニャー。そろそろ……いいか?」  
「ハ…」  
その言葉に、ニャーは目だけを俺の方に向け、やがてコクンと頷くと、再び俺の胸に顔を埋める。きっと、恥ずかしいというのも  
あるだろうが、怖いのだろう。  
ニャーの頭を撫でながら、体をずらして挿入可能な位置まで持ってくる。そして、秘唇をそっと開くと、そこに俺のモノを押し当てる。  
「ハッ……ハァ…!」  
いよいよ、ニャーは体を強張らせ、震える吐息を漏らす。そんな彼女の頭を優しく撫で、そっと抱き締める。  
「ニャー、痛かったらすぐ言えよ。無理はしないから」  
「……ハ……ハー…」  
少しずつ、慎重に腰を突き出す。ニャーは腰を浮かせて逃げようとするが、怖いながらも覚悟は決めているらしく、やがて再び  
腰を下ろしていく。  
 
ゆっくりゆっくり、俺のモノが彼女の中に入り込んでいく。先端部分が入り込むと、その熱さと締め付けで、一気に突き入れたい衝動に  
駆られるが、辛うじて思い止まる。  
「ハーッ……ハーッ、ハーッ!!ハーッ!!!」  
だんだん痛くなってきたのか、ニャーの声は喘ぎではなく、悲鳴に近くなっている。おまけに、俺の胸にじわりと熱いものが伝うのを  
感じ、俺は動きを止めた。  
「ニャー、泣いてまで無理しなくていいぞ。もう十分だろ?」  
残った理性を総動員し、そう声をかける。が、ニャーは涙に濡れた顔を上げると、必死にかぶりを振って見せた。  
「ヒァー…!ヒャー…!」  
「んなこと言ったって……大体、お前まだ小さいんだし、無理だって」  
「ヒャー!」  
一体何が気に入らなかったのか、ニャーは涙声で抗議すると、こともあろうに、自分から結合部に全体重をかけた。  
ずぶりと、俺のモノが根元まで彼女の中に埋まり込む。一気に根元まで広がった快感に、俺はまた理性が吹っ飛びかけたが、ニャーの  
悲鳴がそれを繋ぎ止めた。  
「ハーーーーッ!!!ヒアァーーーッ!!!ハーッ!!!ハーッ!!!ハアァーーーッ!!!」  
「お、おいニャー!!平気か!?大丈夫か!?」  
涙をぼろぼろと零し、必死に叫ぶニャーの姿は見ていて痛々しかった。何とかしてやりたかったが、俺が彼女の体に手をかけると、  
彼女自身の手で振り払われた。  
「フアァ…!ハアァ〜…!」  
彼女の声が、悲鳴すら掠れ声なのは幸いだった。きっと、あれをまともな声で叫ばれたら、今頃きっと隣人に通報されているだろう。  
「ニャー……どうしたってんだよ…!?どうしてそこまで…!?」  
「……ハー…!」  
比較的すぐに痛みは落ち着いてきたらしく、ニャーは涙をゴシゴシと拭っている。やがて、新しい涙が溢れなくなると、  
ニャーは俺の目をじっと見つめてきた。  
「ハー…」  
苦痛に歪んだ、しかしその中に確かに見える、女の意地の光。  
「……これぐらいできるって、見せたかったのか…?」  
「……ハ」  
「……馬鹿だな、お前」  
思わず口走って、俺はニャーの体を抱き締めた。  
「俺は、お前が痛がる姿なんか、見たいわけじゃないぞ。むしろそんなの、見てて辛い」  
「…………ハ」  
結合部には、新たに温かい液体の感触がある。ただ、そんなのをまともに見たら一気に萎えそうなので、俺はそこを見ないようにした。  
「……でも」  
「ハ?」  
「今、すげえ気持ちいい」  
「……ハッ!」  
俺の言葉に、ニャーは辛くも嬉しそうな笑顔を浮かべた。無邪気で、可愛い笑顔だった。  
「んで、ごめん。できれば、じっとしててやりたいけど……動かして、平気か?」  
「ハー」  
「悪い。痛かったら、今度こそ言えよ」  
ゆっくりと、腰を引く。途端に、彼女の中がそれを止めようとするかのように、強く締め付けてくる。逆に突き入れると、  
痛みにヒクヒクと震えつつも、必死に俺のモノを受け入れてくれる。  
 
腰を動かしつつ、小さな体を抱き締める。すると、ニャーは顔を上げ、俺の唇に顔を近づけようとする。  
その頭を抱き寄せ、今度は俺の方から唇を重ねてやる。嬉しそうに目を細め、ニャーは舌を絡めてくる。  
それこそ全身で、俺達は繋がっていた。キスをし、抱き合い、男女としての交わりを持つ。  
今の俺には、ニャーはただの友達などではなかった。この上もなく大切な、ただ一人の女の子。恋人とまで呼べるかはわからないが、  
少なくとも何より大切な存在だった。  
「ニャー……く、気持ちいいよ…!」  
「ハーッ……フアァ、ハー…!」  
ただでさえ、熱くきつい中の感触に、長く耐えるのは無理な話である。彼女の動き一つ一つが俺を追い込み、だんだんと気遣うことすら  
難しくなっていく。  
「はぁ、はぁ…!ニャー、もう出そうだ!」  
「ハーッ…!ハッ!」  
俺が言うと、ニャーはしっかりと俺に抱きつき、腰に足を絡みつかせてきた。  
「いや、ちょっ……腰引けって意味……が、あっ……も、もう無理だ!出る!」  
止めることなど出来るはずもなく、俺はニャーの中に思い切り精液を注ぎこんだ。途端に、ニャーの体がビクリと震える。  
「ハーッ、ハッ!?ハァーッ!ハッ……ハッ、ハ……ハ…」  
中に流れ込むのがわかるのか、ニャーは俺のモノが跳ねる度、中をぎゅっと締め付けてくる。それはまるで、精液を一滴残らず  
体の中に取り込もうとするかのような動きだった。  
結局、途中で腰を引くこともできず、俺は彼女の体内に全て注ぎ込んでしまった。やがて、俺のモノが硬さを失ってくると、  
彼女の中から自然に抜け出た。それと同時に、ニャーはぐったりと俺に体重を預けてきた。  
「はぁ……はぁ……ニャー、大丈夫か…?」  
「……ハ…」  
相当に消耗したらしく、その声に元気はない。しかし、どこか満足そうにも聞こえた。  
「風呂入ったのに、また汚れちまったな」  
「……ハー…」  
「……また、一緒に入るか?」  
俺が尋ねると、ニャーは顔を上げ、嬉しそうな笑顔を浮かべた。  
「ハー!」  
「よし。お前、まだ痛いだろ?連れてってやるから、じっとしてな」  
そっと抱き上げる。ニャーは嬉しそうに、俺の胸にかじりついてきた。  
こんなにも軽く、小さく、温かい体。たった今まで交わっていた相手とは、とても思えない。  
でも確かに、俺達は関係を持った。ただの歳の離れた友達としてではなく、男と女としての、大人の関係を。  
 
「ええ、はい。どうしても一緒にいたいようで……いえ、そんな。僕の方は大丈夫ですよ。そんな……はい、はい。ええ、はい。  
ええ、それでは、また。失礼します」  
時間も時間で、おまけにあんなことをしては、ニャーが帰れるわけもなく、帰すわけにもいかない。彼女の家に、今日は泊めるとの  
連絡を入れると、特に何の疑いもなく、あっさりと承知してくれた。信頼関係っていうものの大切さを学んだ気がしたが、それを  
悪用してるような罪悪感も同時に生まれる。  
「とりあえず、連絡はしたからな。何も気にしないでいいぞ」  
「ハー!」  
パジャマなどはないので、ニャーには俺の服を着てもらっている。さすがにだぶだぶだが、パジャマにはちょうどいいだろう。  
「……にしてもさ、ニャー」  
「ヒャ?」  
「お前さ……どうしていきなり、あんな真似したんだよ?結局中に出しちゃったし……いや、もしもの場合には責任は取るけど…」  
俺が尋ねると、ニャーはムッと唇を尖らせた。  
「ヒャ。ハー、ハー」  
「……背伸びしたかった……なんてわけじゃなさそうだな」  
「ハー」  
「……ま、どうでもいいや」  
「シァーッ!!」  
「いや、そのどうでもいいって意味じゃないって。別にそれがどんな理由だって、お前は俺にとって、大切な子なんだよ」  
「……シュー」  
ニャーは、それでもまだ不服そうな顔をしている。  
「とにかくさ、今日はもう寝ろって。疲れただろ?」  
「ハー……ヒャ」  
「……ほら、こっち来いよ。一緒に寝ようぜ」  
「ハッ!」  
俺が寝転ぶと、ニャーもいそいそと寄ってくる。だが、布団を開けてやったにも関わらず、ニャーは俺の上に乗ってきやがった。  
「……どうして俺の上なんだよ…」  
「ハッ!……クー」  
今までとは違う音に、俺は首を傾げた。  
「ん?何か言いたいのか?」  
「ハー。シュ……シュアー、クァ」  
「……?」  
ニャーは必死に、何かを伝えようとしているらしい。しかし、今までに聞いたこともない声で、しかも表情はどこか苦しげなので、  
言いたいことはまったく理解できない。  
「クー……シュ……ク…」  
 
やがて、ニャーは俺の顔を真っ直ぐに見つめてきた。その顔は真面目で、しかしどこか楽しげな笑みが浮かんで見えた。  
その口が、ゆっくりと動いた。そして、掠れた声が、一つの言葉を紡ぎ出す。  
「……ス……キ…」  
「っ!?」  
今、こいつは確かに言葉を喋った。生まれついて、ただ一つの言葉も持たないはずの彼女が、だ。  
そして、俺は突然に、今までの疑問の答えを見つけた。  
「……そうか……そうか。お前、ずっとそうだったのか」  
「……ハー」  
食事中に、不用意に尋ねた質問。こいつはずっと、俺が好きだったんだ。だが、俺は気付かなかった。そのことに、ニャーもまた  
気付いていなかった。だから、俺がそんな質問をしたことに驚き、怒り、無理矢理に『恋人同士がやる行為』をしてみせたのだ。  
「ダメな奴だな、俺。普通に言葉がなくても通じることだけ、わかってやれなかったなんてさ」  
「……シュアー」  
ニャーはおどけた仕草で、俺の頭をこつんと叩いた。  
「……ニャー」  
「ヒャー?」  
「……俺も、お前が大好きだ」  
「……ハッ!!」  
ニャーは満面の笑みを浮かべ、俺に抱きついた。俺もしっかりと、その体を抱き返す。  
これ以上は、言葉なんて要らない。そんなものがなくったって、お互いの温もりだけで十分だ。  
お互いの温もりを味わおうとするかのように。お互いに放すまいとするように。そして、お互いの気持ちを確かめ合うように。  
強く強く抱き合ったまま、俺達は幸福な眠りへと落ちていった。  
 

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