「本当だって!すごい気持ちいいんだよ?」
「へぇー…」
友人である由実の言葉を、優希(ゆうき)は明らかに聞き流している様子だった。
「レディース性感倶楽部ねぇ…」
優希は聞いた言葉を繰り返す。
由実が言うには、最近流行の女性向けヘルスの事らしい。
手と口で女性の性器を愛撫し、快感を与える風俗店だと。
きゅっ。
硬質な音を立てて水道の蛇口が締められる。
「ばっかばか、し。」
優希はおどける様な口調で囁いた。
由実が眉を顰める。
「…聞こえてるんですけど。もー、ゆっきってばすぐそれだ!」
手を拭いながら歩き去る優希を追い、由実も駆け出す。
その時、女子トイレの前を少年が横切った。
「お、本マグロのユキじゃん!」
彼は優希を指差して笑う。
「うるさいわよ、早漏」
優希は肩を竦めてそれをあしらう。少年は少しばつが悪そうに踵を返した。
「早漏はないんじゃない?啓太くんは絶倫な方らしいし」
後ろから由実が呆れ気味の声をかける。
「それを言うなら本マグロもあんまりじゃない?」
「まぁ…お互い様かな」
由実は嘆息する。
「本当だって!すごい気持ちいいんだよ?」
「へぇー…」
友人である由実の言葉を、優希(ゆうき)は明らかに聞き流している様子だった。
「レディース性感倶楽部ねぇ…」
優希は聞いた言葉を繰り返す。
由実が言うには、最近流行の女性向けヘルスの事らしい。
手と口で女性の性器を愛撫し、快感を与える風俗店だと。
きゅっ。
硬質な音を立てて水道の蛇口が締められる。
「ばっかばか、し。」
優希はおどける様な口調で囁いた。
由実が眉を顰める。
「…聞こえてるんですけど。もー、ゆっきってばすぐそれだ!」
手を拭いながら歩き去る優希を追い、由実も駆け出す。
その時、女子トイレの前を少年が横切った。
「お、本マグロのユキじゃん!」
彼は優希を指差して笑う。
「うるさいわよ、早漏」
優希は肩を竦めてそれをあしらう。少年は少しばつが悪そうに踵を返した。
「早漏はないんじゃない?啓太くんは絶倫な方らしいし」
後ろから由実が呆れ気味の声をかける。
「それを言うなら本マグロもあんまりじゃない?」
「まぁ…お互い様かな」
由実は嘆息する。
本マグロ、という優希への形容は二つの意味がある。
ひとつは上物、絶品だという意味。
絹状に裂いた鉱石のような光沢を持つ髪、
切れ長の瞳、すっとした顎、水泳で鍛えられた抜群のスタイル。
胸は通う高校内で一番というボリュームを誇ったし、
ハイソックスに包まれた脚線には一切無駄な肉がなかった。
豊かな胸をものともせず記録を塗り替えるプールの艶姿は、いつしか誰からか『本マグロ』と称された。
……と、もうひとつ。
優希がいわゆる「マグロ女」である事が二番目の理由だ。
優希はその類稀な容姿から、齢17にしてすでに両手ほどの男を経験している。
早くは13の時にピアノの家庭教師と連れ歩いていた目撃情報がある。
しかし経験豊富なその男も、また精気漲る先の少年も、一切優希を感じさせる事ができなかった。
喘ぐ演技をするのが返って失礼だ、と考える優希は一切声を上げなかった。
破瓜の痛みもよくわからなかったし、快感というものもない。
ベッドに横たわって愛撫されても、ただ欠伸を噛み殺すのに必死なだけだ。
そうして自信を打ち砕かれた男達がつけたあだ名が、やはり『本マグロ』だったのである。
「マグロかぁ…。鈍いようには見えないんだけどねぇ」
由実が優希の顔を覗き込んで言う。精悍といってもいい涼やかな美貌だ。
「当ったり前でしょうが」
優希はびん、と由実の額を指ではじいた。あいた、と由実が額を押さえる。
本当にプライド高いなぁ、と由実は内心で舌を出した。
「いいわ。じゃあその性感倶楽部っていうのに連れて行ってよ」
優希がそう言ったのは突然だった。
「ふぇ?」
由実は唖然とする。
「だから、あんたの話してた例のやつよ。私がそこに行くわ。
で、もし時間内に私が感じなかったら料金はタダにして貰うの。
ドリンクなんかも含めてね。どう?」
「ど、どうって、そんな事認められるわけ……」
「ええ、結構よ」
倶楽部でサービスを担当する嬢―カリナは、あっさりその条件を呑んだ。
由実はまたしても唖然とする。
「だってお客様に感じて頂けないなら、仕事を果たした事になりませんもの」
「ふふっ、それはどうも」
優希は悠然と椅子に腰掛け、アップルティーを啜っていた。
「では、再度確認させて頂きます。時間は最長の3時間コース。
この間私が優希さまにサービスして、一度も達さなければノーマネー。
逆に一度達するごとに千円のサービス料。
……本当によろしいのですね?」
「勿論。30分も2時間も変わんないからね」
優希は椅子に座ったまま目を閉じる。
(…ちょっとゆっき、本当に大丈夫なの?)
由実が優希に耳打ちする。
「だぁいじょうぶよ。今までの経験から言って、ね。
それに一回や2回逝ったところで、たかが2千円じゃない」
優希はわざわざカリナに聞こえるように言い、由実の度肝を抜いた。
「さぁ、それでは由実さま」
カリナは反応を示さず、由実に優しく退出を勧める。
「あ…はい。じゃあ…頑張ってね」
部屋を出つつ由実が見た優希は、雑誌を手に取りながらひらひらと手を振って見せた。
瞬間、由実の目が見開かれる。
…カリナが凄絶な笑みを浮かべていた。
由実は嫌な予感に駆られたが、時既に遅く、鋼鉄の扉は硬く閉ざされた。
※
「では優希さま、念の為脚を固定させて頂きますが、宜しいですか?」
カリナの言葉に、優希はちらりと雑誌から目線を外す。
「ええ。ご自由に」
そう言ってまた雑誌の記事に目を通しはじめた。
乾燥する季節の化粧方法についての生地だ。随分な余裕ぶりである。
「では」
カリナは一言呟いて、優希の脚を持ち上げる。
「無駄のない良い筋肉ですわね。凄い張りとしなやかさがありそう」
カリナは称えながら、優希の脚を椅子の手すりへと結び付けていく。
――ずいぶん厳重に縛るのね… 暴れるわけないのに。
優希は記事を追いながら思う。
やがて優希の脚はM字を描くように縛められた。
「ほらできた。えっちな格好」
カリナは見惚れるように息を吐き、その息をゆっくりと優希のショーツに近づける。
「感度の鈍い子は、まず、ここ」
はむっ。
カリナの暖かい口粘膜がショーツを包む。唾液が滲んで絹を粘ついた感触に変える。
優希はまったく顔色を変えなかった。
初めてではない。男の何人かも同じ事をしていた。
しかし……違う。
――あれ、吸われてるって…はっきりわかる。
優希は少し目を見開く。唾液で滑った生地が秘裂へ押し込まれ、次は強く吸い上げられる。
その布地の動きに合わせて陰核が擦れた。
舌は次に布越しに陰核を包み、扱く様にする。
「っ!」
カン、と音がした。優希の手がグラスを揺らした音だ。
「あら、どうか致しました?」
カリナが一旦口を離して問う。口元は大量の唾液でショーツと繋がっていた。
優希は答えない。代わりに一回息を吸う。
このカリナという女、舌の力が相当強い。少なくとも、今までの男よりずっと。
その後もショーツ越しに陰核を押し込み、吸い上げ、が繰り返される。
優希は指でそれをされるような力強さを感じていた。
しかし指ではない。舌の柔らかさと唾液のぬめりが強さに加わり、何ともいえない。
数分後、カリナは不意に口を離した。そして笑みを作る。
「ふふ、コリコリになってきましたね。感度はともかく、反応はするみたい」
「……くっ……!」
優希は記事を睨みながら歯を鳴らす。記事の内容はもう頭に入らない。
舌による嬲りで陰核が変化したのは認めざるをえなかった。
くすり、とカリナが口を拭って笑う。
「若いだけあってほんのりと汗ばんだ、良い香りでした。
……ああ…そういえば、シャワーがまだでしたね」
カリナはそう言い、優希のショーツを尻側から捲り上げた。
「!!」
優希の身体が強張る。
カリナは開いた脚の中ほどにショーツを絡ませると、改めて優希の秘部に目を凝らした。
「あら、子供みたいなピンク色。襞もきっちり揃ってて綺麗ね」
「そりゃあ、ファンも多いから…ね」
優希は気恥ずかしさを誤魔化すように言い返す。
「でしょうね」
カリナは頷いてみせ、続ける。
「まぁそのうち、ぱっくり開いて大洪水になるんだけどね」
「ならないわよ」
優希の視線がカリナとぶつかる。カリナは一旦その視線を受け止め、すぐに微笑んだ。
商業用のスマイルだ。
「ともかく、綺麗にしてしまいましょうか。局所的で悪いけどね」
カリナはそう言って足元のバッグを開けた。
中からとろみのある液の入った瓶と細い綿棒が取り出される。
バッグには他にも導尿カテーテルやローター、その他全く使途の解らない物が詰め込まれていたが、
優希は見なかった事にした。
「じゃあ、いくわね」
カリナが声をかけると、優希は余裕を装って雑誌へと目をくれる。
淫核包皮の中にローションまみれの綿棒が差し込まれる、その瞬間を優希ははっきりと知覚した。
カリナの指が包皮ごと綿棒の先をつまみ、それをゆっくりと回転させはじめる…。
「………っ!! …………っっ!!!」
いつからだろう。
優希は手に持った雑誌を口に咥え、強く噛み締めていた。
「お風呂できちんと洗っているんですか?
拭っても拭ってもローションに白いカスがついてきますよ?」
優希は雑誌を噛んだまま頬を赤らめる。
清潔にしていたつもりだった。
同級生の誰より美容に気を遣っている自信があった。
それなのに、陰核包皮の中をくるくると回した綿棒が眼前に掲げられると、
そこには確かに白く濁ったとろみが付着しているのだ。
「こんなにカスが取れるんですもの、気持ちいいでしょう」
カリナは淫核を掠めるように綿棒を回しながら問うた。
その通りだった。包皮と陰核亀頭に挟まれて回る動きは言葉にもならない快感である。
優希は息が上がっている事を感じていた。
もう何分も目を見開いている。そこから涙を溢さないのが偉いとさえ思えた。
「くるくる回るようになったわねぇ。ってことは、潤滑剤が増えたって事よね?」
子供に言い聞かせるようにカリナが囁く。
「今クリちゃんがどうなってるかわかる?とろとろで、ビンビンで…。
最初は何とか頭に触れられるくらいだったのに、ラクに擦れるぐらい膨れてる」
カリナは淫核の付け根に円を刻み付ける。
「あああッッ!!!」
優希が前屈みになって叫ぶ。初めて出す明確な声だった。
初めての感覚だ。下手をすれば達していたかもしれない。
笑いが聞こえる。
「…何分なの……?」
俯いたまま優希が言った。
「今、何分経ったの!?」
「ふふ。たったの、20分よ。安心なさい、あと160分残ってるわ」
優希が目を見開く。
「とはいえ、時間は大切よね。お掃除も終わってクリちゃんも剥きだしになったし、
次にいきましょうか」
「ぐあああああ……あああ゛ああお……!!」
優希が目を見開いて発した声は濁っていた。
「あら、なんだか下品ね」
カリナは嘲笑いながら筆を走らせる。その先は優希の陰核亀頭。
彼女の陰核はゴム状の止め具で根元までくびり出され、包皮がズル剥けになっていた。
その充血した先へ、獣の尾を使った筆先で何かが塗りつけられている。
問題はその刺激臭を放つものが何か…。
漆だった。
瓶に入っている内は湯気さえ立てているそれが、空を舞う筆に冷やされてたっぷりと塗り込められているのである。
先に塗られたものは乾き、少なくとも優希の陰核の上で三層を為していた。
「さぁ、また綺麗になりましょう」
カリナは指先で優希の陰核を扱き、固まった漆を引き剥がす。
「くああああっ!!!!」
淫核の表皮をちぎり取られるような痛みに、優希が悶える。
優希は額から大粒の汗を流しながら、唇を震わせて呟いた。
「い、いか、せて……。一度でいいの、おねがい……。」
「千円よ?」
「は、はらう、から……!」
恥も外観もない懇願。だが無理もなかった。
優希の肉芽はいまや痛々しいほどに紅く腫れあがり、筆による嬲りの為か喘ぐようにひくついている。
その下には膣が小陰唇までをくっぱりと開き、愛液を止め処なく垂らしているのが見えた。
「ふふ、大洪水。」
カリナはその割れ目を筆先でなぞりながら罵る。
「ねぇ、予言通りでしょう?」
「この…!」
優希が睨み返そうとしたその瞬間、不意に筆が膣の中に差し込まれた。
優希の声が止まる。
「ほら、毛先の細かいおちんちんよ。気持ちいいでしょ?」
カリナは言いながら筆の先で膣の上側を擦りあげた。そこには陰核に通じる根元がある。
「いや、あ…だめ!やめて、やめてぇーーー!!」
優希がついに涙を零した。その上で泣き叫ぶ。
「逝かせてと言ったり駄目といったり、思考が安定しない子ね?」
カリナがせせら笑う。
シャカシャカシャカシャカ、とその部分が容赦なく扱きあげられ、ついに。
「もう…っだめっええええ!!!」
叫び声と共に優希の縛られた脚が硬直し、次いで弛緩した。
「イきましたね?」
はぁ、はぁ、と息を整える汗まみれの優希に、カリナの一言が突き刺さる。
「千円です。…このまま次がなければ、ね」
カリナは捕食者の笑みを浮かべ、指に満遍なくローションを塗し、ゆっくりと紅く腫れた陰核へ宛がう。
叫びが上がった。
「いやああああああ!!!っひゃ、休ませてえええええええ!!!!!!」
優希の叫びは間断なく続いていた。
彼女の脚はぶるぶると震えて止まらず、はち切れる寸前のように筋張っている。
その真ん中では細い女性の指が、夥しい愛液に塗れて小さな突起を責め苛んでいた。
「やれやれ、また泣き言ですか。まぁ2時間ほど経ったことですし、少し休ませましょう」
カリナはそう言って指を離す。
優希が大量の唾液を零しながら息をついた瞬間、ふたたび息を詰まらせる。
「勘違いしないで下さいね。休ませるのはあくまでクリちゃんだけ、あなたじゃないですよ」
そういいながらまた筆をとり、陰核には決して触れぬようその周囲を撫ぜていく。
今や優希はそれだけで、信じられないほど昂ぶらされるのだ。
優希は涙の滲む視界の中、カリナが次に手に取ろうとしている物を見て震えた。
それは極めて強力な電動マッサージ器。
あれを散々に昂ぶらされた陰核に押し当てられると、何も考えられなくなる。
ただただ絶頂し、失禁し、泣いてしまう。
何十回となく達してしまう。
「こんなの、もう……払え、ない……!!!」
優希の横には、この2時間で達した回数と、失禁1回ごとのクリーニング代の上乗せされた伝票がある。
締めて12万6千円。
本当にそれほどに達したのか、或いは嵌められたのかはわからない。
ただ優希は、それよりも自分がまともな思考を保ったままここから出られるのかだけを心配していた。
解った事がある。優希はマグロではない、それはただ大海を知らなかっただけで、
クジラの身体の如き底なしの感度を秘めていたのだ。
優希は泡を噴きながら暗い深海へと沈みゆく。
焼けるような陰核に、その意識を引き摺られながら……。