「MS少女・せつな」  
 
 漆黒の宇宙に閃光が走った。  
 ギィン ギィン  
 二つの光が激突するたびに宇宙を振動が駆け抜ける。  
 それは“音”ではない。空気のない宇宙空間に音波は響かない。  
 空間そのものを振動させて伝わる“空間振動波”だ。  
 この“世界”に生きる者たちは、生まれつき“空間振動波”を感じ取る感覚器官を持っている。今後宇宙空間で“音”が表現されたとき、それは“空間振動波”を意味している。  
「このぉっ」  
 せつなはビームサーベルを振るった。  
「甘いっ」  
 ギィン  
 相対するハンブラビもまた、ビームサーベルでせつなの攻撃を受け流す。  
 異世界“MGサンライズ”。創造神“ヨシユキ・トミノ”と“ミカ・アキタカ”によって生み出されたと伝えられるこの世界で、ふたつの種族がその生存権を賭けて激突していた。  
 ひとつはMSと呼ばれる。この世界とは別の世界のTVプログラムに登場するロボット“モビル・スーツ”に酷似した外観をしているが、れっきとした生物である。  
 もうひとつは“MS少女”。モビルスーツに酷似した鎧を身にまとった少女のような姿の生物だ。  
 MSも、MS少女も空間そのものからエネルギーを得て生きており、宇宙空間でも生存が可能だ。  
「いい加減に落ちなさい!」  
 ボシュッ ボシュッ  
 レオタードにZガンダム風の鎧をまとったせつなは、ハンブラビに向けて左腕からグレネードランチャーをはなった。  
「お嬢ちゃんにやられるオレさまじゃないぜ!」  
 ガキャッ  
 ハンブラビは素早く変形し、エイのような形態になると、高速移動してグレネードをかわす。  
 
「しつこいっ」  
 ドシューン ドシューン  
 ビームライフルでハンブラビを狙撃するせつな。しかし素早い動きに翻弄され、全く当たらない。  
「その腕でオレさまを倒そうなんざ十年早いっ!」  
 ビビ――ッ  
「ああっ」  
 すれ違いざま、せつなのレオタードを引き裂くハンブラビ。せつなのおへそのあたりが裂けてむき出しになる。羞恥心でせつなの動きが一瞬止まる。その隙を見逃すハンブラビではない。  
ヒューン ガキュン  
「もらったぁぁ!」  
 素早くせつなの背後に回り込むと、ハンブラビはまたも形態をチェンジし、触手状の武器、“海ヘビ”を右腕から伸ばし、振るった。  
 バチバチバチッ  
「きゃあああああっ!!」  
 海ヘビの発する高圧電流に感電し、絶叫するせつな!  
「ヒヒヒヒッ、もうおしまいだな、お嬢ちゃん」  
「ううっ……」  
 電流によって神経が麻痺し、虚空を漂うせつな。  
「たっぷりかわいがってやるぜ」  
 舌なめずりせんばかりの様子でハンブラビはせつなの可憐な肢体にゆっくりと近づいてくるのだった。  
 To be continued……  
 

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