大蛇の胴体が圭一の肌を、するすると「舐めて」いく。  
 それは圭一の身体に巻きつきながら、ゆっくりと回り続けているのだ。  
 ときおり強く締めつけたり、再び緩めたりを不規則に繰り返しながら。  
 まるで女の胎内に肩まで呑み込まれた感覚を、圭一は味わっていた。  
 そうであるならば「彼女」は、ミミズ千匹どころではない「名器」だ。  
 大蛇の胴体は細やかな鱗に覆われており、それらが圭一の肌に密着したまま、法則性もなく蠢動している。  
「……ひぁ……んひっ……ひきぃっ……んぁぁぁっ……ひぐぅぅぅぅぅっ……!」  
 ぎゅっとつむった眼の端に涙を浮かべて、圭一は少女のように喘いだ。  
「……圭一、可愛い……」  
 くすくすと《大蛇》は笑って、ヒトに似た手を差し伸ばし、圭一の頬を撫でる。  
 そして長い胴をくねらせながらヒトを凌ぐ美貌を近づけ、圭一に、口づけた。  
「……んんっ……」  
 圭一の唇を舌でなぞり、相手が息をついた隙に、口腔内に潜り込ませる。  
 舌に舌を絡めて、舐(ねぶ)る。ぴしゃぴしゃと、いやらしく音を立てて。  
《大蛇》は少女の上半身を備えていた。  
 いや、むしろ少女の腰から下が、長さ数メートルの蛇の胴体であると表現するべきか。  
 腰まで届く艶やかな黒髪。きめ細やかな、白磁のような肌。深い湖のような紺瑠璃の瞳。  
 悪戯っぽい笑みをたたえる、ぷっくりとして艶めかしい薄紅色の唇。  
 張りのある乳房の頂きで天を指す、可憐な桜色の乳頭。  
 そして――細くくびれた腰から下の、金と銀と黒とが散りばめられた錦のような蛇の胴体。  
 彼女は完璧といっていい容姿を備えていた――蛇である部分を含めて。そう、圭一は思っていた。  
 半人半蛇の彼女はラミアと呼ばれる種族に属する。  
 名前は美維(みい)。圭一の恋人で、同じ学校に通う先輩でもある。  
 ここは学校帰りに、ふたりで立ち寄ったホテルだ。  
「……あぅっ、せ……先輩っ、僕、もうっ……!」  
 圭一は美維から顔を離して切迫した声を上げたが、その先の言葉を美維は唇で封じた。  
「……んあっ……んぁぁぁ……!」  
 身震いする圭一の唇を、舌を、ついばむように美維は吸ってやる。  
 それから唇を離し、微笑みながら囁いた。  
「いいよ、このまま出して。あたしの錦の鱗を、圭一の白いので染めて」  
「……あぅっ……先輩、あぁっ……あっ、あっ……!」  
 人間など及びもつかない魔性を備えたラミアが蛇の胴体を存分に用いての快感責めであった。  
 獲物となった男は蠢動する鱗に嬲られるうち、全身を性感帯に変えられてしまう。  
 堕ちずにいられるわけがない。  
「あぁぁぁぁっ……! みっ、美維先輩ぃぃぃぃぃっ……!」  
 どくっ、どくっどくっ……!  
 蛇の胴体に巻きつかれた内側で、圭一は精を放った。  
「……んんっ……!」  
 美維も眼を細め、頬を朱に染めながら身震いする。  
 ラミアにとって蛇の胴体は、乳房や性器に劣らない性感帯だ。  
 圭一を責め立てる一方で、美維自身も快感を味わっていたのである。  
 そして圭一が射精したと同時に、美維も達した。  
 ラミアの性技を駆使して最愛の少年を絶頂に導けたことが美維には誇らしい。  
 人間である彼はラミアである彼女を選んだ。だから美維は、全身全霊で彼に応える。  
 自分のそこまでの想いを、彼女が口に出すことはないのだけど――  
 
「……はぁぁぁ……」  
 圭一に巻きついていた蛇の胴体が離れる。  
 彼の腰に触れていた部分には、どろりとした精液にまみれていた。  
 美維は蛇の胴体をくねらせてそれに顔を近づけ、舌を伸ばして、精液を舐め上げる。  
「……んふぅ……」  
「そんな……先輩、舐めなくたって、いま拭いて綺麗にしますから……」  
 ベッドの頭上の棚に置いてあったティッシュの箱を取ろうとする圭一に、美維は悪戯っぽく眼を細めて、  
「べつに汚くないわよ、圭一が出したものだもの。あたしとのエッチが気持ちよくて出したんだものね?」  
「先輩……」  
 圭一は赤くなりながら、美維の蛇の胴体の手の届くところを優しく撫でた。  
「……んあっ……!」  
 びくんっと、美維は身を震わせる。圭一が撫で続けるとそれに応じて、ぴくぴくと美維は震える。  
「圭一、あたしの蛇のところ撫でるの、好きだよね……」  
「だって、手触りがいいですし……それに、こうしたときの先輩、とても可愛いから……」  
「……圭一のくせに生意気」  
 美維は頬を赤くしながらも、くすくす笑う。  
 それからヒトに似た上半身を圭一に近づけてきて、両手で持ち上げた乳房を、圭一の胸に押しつけた。  
 つんと硬く実を結んだ少女の乳首が、少年の平らな胸をくすぐる。  
「じゃあ、オッパイと蛇の部分なら、どっちがいいの?」  
「どっちも好きですよ。だって、全部含めて美維先輩ですから」  
「でも、本音ではオッパイのほうが好きなんでしょ? 哺乳類のオスなんて、みんなオッパイ星人だもの」  
「たとえそうだとしても、先輩より素敵なオッパイをした人間のメスはいないです。先輩が誰よりも最高です」  
「やっぱり、そうだよね」  
 美維は、にっこりとした。  
「圭一は幸せ者だよ? こんなに美人でオッパイも最高な彼女がいて」  
「心得てます。どうして僕が先輩とつき合えてるんだろうって、いつも夢みたいに思ってますよ」  
 苦笑いで言う圭一に、にこにこ笑顔のまま美維は小首をかしげ、  
「でもね、あたしも幸せなんだよ? あたしを誰よりも愛してくれる圭一が彼氏で」  
「それは……」  
 赤くなった圭一の頬に、美維はそっと手を触れて、  
「オスがいないラミア族は、人間の男と結ばれるしかない。でも、心から愛せる相手と出会えるのは稀なこと」  
「僕は学校で先輩の姿を初めて見たときから、ずっと美維先輩しか見えてないです」  
「あたしも、あたしの人間に似た部分――顔とかオッパイしか見ようとしない男は、眼中にない」  
 美維は、くすっと笑い、  
「あたしの全てを見て、全てを愛してくれるのは圭一だけ」  
「だって、先輩は全部綺麗じゃないですか。長い髪も顔もオッパイも、くびれた腰も……それに錦蛇の身体も」  
 圭一は美維の蛇の胴体を撫でた。  
「……んんっ……!」  
 美維は眼を細めて艶めかしく声を上げ、  
「ねえ、オッパイも可愛がって。あたしを全部可愛がって、圭一……」  
「はい……」  
 ちゅっ、と、音を立てて美維の乳首を、圭一は吸った。ちゅぷ、ちゅぷと音を立て、それを繰り返した。  
 もちろん蛇の部分を優しく撫で続けながら、だ。  
 二回戦は圭一の主導で人間と似たかたちでの性交となるだろう。  
 それもまた愛されている実感があって心地良い。美維は圭一の愛撫に身を委ねた。  
【あとは普通っぽいセクロスなので、ここで終わる(笑)】  
 

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