(さて、これからどうするべきか……)
竜人の下には、雌のような匂いを振り撒く人間男性。
勘違いで竜人に食われると思い込み、逃れようとバタバタ暴れている。
「食ったりしないから、落ち着け…」
「うわわぁぁあっ!おいしくありませんからぁぁっ!骨と皮だけですからぁぁっ!」
(……聞こえてないな。)
そうこうしている間にも男性の匂いは着実に、竜人の理性を削っていく。
それほど男性の暴れる力は強くないのに、竜人の息が荒くなり始めた。
(このままじゃ、マズイ…)
ついうっかり理性が飛んでしまえば、次に理性が戻るのは数日後であろう。
種族柄強力な精力が、その間ずっとこの男を『喰らい』続ける。
何とかして落ち着かなければ、
「いやだいやだいやだぁっ!許してくださいぃっ!」
何とかして落ち着き
「た、食べないで下さいっ!お願いですからぁっ…」
何とかして
「た、食べないで……?…」
男性にふと、疑問が浮かんだ。
「…何で、僕はここにいるんですか?」
「ハッ…ハッ…それはだな…」
残り少なかった理性が、質問に答えるために急速に戻っていく。
「(危なかった…)俺が、あの後暇潰しに町を歩いてたら、虎共に襲われているお前を、見つけたんだよ。」
「……それで?」
「気絶したお前を運んで、ここに戻ってきたんだよ。」
「…何で僕を運べたんですか?」
「察しろ。」
男性は暴れること無く、竜人をじっと見つめている。
「…助けて、くれたんですか?」
「まあ、そういうことになるな。」
「その見返りに、ぼ、僕を食べようと…」
「そんな訳あるか。食わないよ。」
「…本当、ですか?」
「本当だ。賭けたっていい。」
急速に頭が冷えた男性の竜人に対する恐怖心が、言葉を聞くにつれて薄まっていった。
同時に初対面でやらかした事において、申し訳なさが溢れてくる。
「あの…あんなこと言って、すいませんでした。」
「あ?あぁ…」
もし男性が直立していたなら、深々と頭を下げていただろう。
しかしベッドに寝かされていたので、代わりに竜人をしっかりと見据えた。
「それから、僕を助けてくださって、ありがとうございます。」
「あー、それ程の事じゃネェよ。」
竜人は、お礼の言葉が恥ずかしいのか爪で自分の頬を掻いている。
「本当に、どんなお礼をしたら良いのか……」
男性には金銭面にはそれなりな余裕があった。
「いや、お礼なんざ別に…」
「いえいえ、本当に食事の一回ぐらいは奢らせて……」
竜人の体躯は、男性より遥かに逞しく、牛一頭も平然と食べてしまいそうである。
「…やっぱり、服の一着くらいは……」
竜人は今服と言えるのかは分からないが、腰布だけを身に付けている。不便な様子は無い。
「…やっぱり剣とかの武器を……」
この町は売られている武器の品質が高い事に定評がある。
純度の高いレアメタル製の武具が主流で、一番安いものでも男性には僅差で買えない。
「……すいません…何も、お礼できそうにないです。」
男性は恩を返せない自分の申し訳なさで、しょんぼりしてしまう。
「いや別に礼なんか…いや……」
竜人の中にむくむくと悪戯心が浮かんでくる。
少し男性に申し訳ない気もするが、お礼がしたいようなので甘えさせてもらうことにした。
「…ちょっとしてもらいたい事があるんだが、いいか?」
「え?あっ…はい!何ですか?」
やっとお礼が出来ると思ったのか、男性はぱぁっと顔を明るくして、竜人を見上げた。
「あのよぉ……」
「…食べ物ならちょっと自重してください……賄いきれる気がしませんから……っ!?」
竜人が自分の真横に身体を移したと思った途端、
竜人の太い腕が男性の華奢な背中に回され、顔が厚い胸板に押し付けられる。
そのまま身体をくっ付けられて、むぎゅっと抱き締められる状態となった。
「え、ちょっと……」
突然の出来事に男性は竜人の胸から顔を離し、見上げて顔の方を向く。
「暫くこのまま抱かれててくれないか?」
竜人は心地良さそうに目を細め、男性を優しく見下ろした。
「え、えっ!?いや…それは、まあ…少しなら……」
「そうか。」
そして竜人はじっと男性を見る。
(抱き枕か、何かの代わりだろうか。それとも、昔に何かあったん……だろうか…)
鍛えられた竜人の肉体は、むちむちとした弾力があって、鱗の下からは確かな体温と鼓動を感じる。
男性の眠気を誘うには十分だった。
(…寝ても、良いよね……)
竜人の肌色がかった胸元に頭を押し付けると、程良い感触がする。
それが実に心地良くて、男性はすぐに寝入ってしまった。
眠りこけてしまった男性に布団を自分ごとさっと掛け、布と自身の肉体でしっかりと男性を包む。
改めて匂いを嗅いでみると、まさしく雌の香りが男性から振り撒かれている。
頭がクリアになった今、竜人は男性を襲おうとする気は無くなった。
しかし男性の匂いは本能を刺激する。
(いっそのこと襲ってしまおうか、いやしかし……)
襲われていたのを助けられる。そのお礼に竜人に抱かれる。
男性がひたすら不憫だ。どちらにせよ同姓に犯されるのだから。
何にせよお礼は『このまましばらく抱かれてもらう』だ。存分に堪能したら良いじゃないか。
そう考えが纏まった竜人は、まずは鼻先を男性の頭に寄せ、深く息を吸った。
途端に理性が吹き飛び、牙を剥いて男性の服を噛み裂こうと口を開けて肩辺りに噛み付こうとした所で、
どうにか動きを止めた。
(直に嗅ぐだけで理性が飛んでくとは……)
どうやらこの男性、相当特殊な体質の持ち主のようだ。もしかするかもしれないので男性の身を案じて身体を引き剥がそうとした。
が、男性の腕が自身の腕に絡み付いている。さらに男性は自分の胸を枕にしているから、
引き剥がした途端に起きるかもしれない。まだ一時間も経っていない気がするのに、
男性から身を離すのは少し、いや、かなり惜しい。
(仕方無い…俺も寝るか。)
男性の匂いを出来るだけ嗅がないように、枕に種族独特のマズルをめり込ませる。
やや寝苦しいが、ベッドの質が上等なようなので、十分に寝られる。
男性の寝息が胸元に当たって微かなこそばゆさを感じる中、竜人も眠りに落ちていった。
・
・
すぅ、すぅ……ぐぅ、ぐう……すぅ、すぅ…
ぐぅ、ふーっ…
すぅ、す「んー…」しゅーっ、ふーっ…
「うーん…?」
もぞもぞと身体を捩らせ、男性は夢の世界から離れた。
「…おはよう御座います、暫く眠っていて…?」
竜人の呼吸音が荒くなっているのに気付き、大きな身体を揺する。
「…大丈夫ですか?何か病気でも?」
しかし竜人の身体は男性に比べとても大きい。
男性が全力を出して揺らしても、竜人は少し動く程度だった。
ユサユサと身体が揺らされ、竜人の眉間に皺が形成される。
「…グルルゥッ……」「わっ…」
牙を剥いた顔の余りの迫力に、慌てて竜人から離れようかと考えたが、
そうする前に竜人の眼が開かれ、目を細めながら男性を見る。
「…随分と呼吸が乱れてましたが、大丈夫ですか?嫌な夢を見たのでしたら、丁度夢を見ずに眠れる薬草がありますけど…」
言いながら隅の荷物を取ろうとベッドから離れようとする男性を、背中に回した腕に力を込めて離さない。
「…すいません。薬草取れないんですけど……」
「……お前に質問がある。」
強引に向き合う形をとらされている男性を、竜人は穴が空くほど男性を見据えている。
その視線の強さに、思わず眼線を顔から下、発達した上半身に向ける。
「…何、ですか?」
「…今日、お前は、虎人の雄に、襲われていたよな?」
「は、はい。」
竜人の台詞、言葉の端々に妙な威圧感が。
「…以前、同じようなこと…無かったか?」
「え!?」
改めて男性は今までの旅を懸命に思い出し始めた。日記などの旅の記録になるものは所持していなかった。
──旅に出てから六個目の町で蜥蜴人に、あの町の二つ前で獅子人に、
この町の四つ前で蛇人に…そして…で……あと…
「…数え切れない程あります。」
「…やっぱりか……」
(……そういえば、そうだ。自分は何でこんなに同姓に襲われやすいのだろうか。)
「…自分の体臭は、解るか?」
「は?…あまり匂わないってことは、解りますけど……」
この竜人は、何を言っているのか、男性は全く理解できなかった。
竜人の威圧感が、増していることについても。
「お前は…雌の匂いが…するんだよ。」
「め、雌の匂い、ですか?あの、あの……」
「…ああ、そうだ、雌の匂いだ。だから…お前は…襲われやすいんだよ……」
「そそそ、そうなんですか…いや…ちょっと、」
男性は竜人からただならぬ気配を感じていた。まるで恐ろしい何かが隣にいるような感じだ。
「だからな…どうにも…理性が…持たない…みたいだ。」
「えっ…!や、やめ……!」
「赦せよ…そんな匂いを出すお前が悪いんだ……」
竜人を取り巻くのは、本能のままに獲物を刈る獣の気配。
獲物とされた男性は、蛇に睨まれた蛙のように、眉の根一つ動かせない。
ただ、弱々しい声を出して拒むだけだった。
「グフゥゥゥ……」
「やっ…やめっ…むうぅぅ!?」
まず男性の口内に、竜人の舌が割り込んでくる。
「フッ…グフゥッ…フーッ…」
「むぐっうぅっ…ぐむぅぅっ!…
分厚く長い舌は男性の喉奥まで容易に潜り、口腔を好きに蹂躙する。
「むっ…ふむぅぅっ……!むーっ!」
無論男性は堪ったものではない。
苦しさや嫌悪感ではない、奇妙な感覚、血と肉と野性味を足して三乗したような風味が口一杯に広がる。
上蓋を擦りながら、竜人の舌が自身の舌に巻き付けられ、そのまま器用に扱かれる。
「ふぐぅっ!?むくっ……うぅぅ…っ…」
その刺激は書き表せないほどに奇妙で、強く、男性の背筋はぞくぞくと震えた。
そうしてひたすらに口内を虐められ、十二分に敏感になったところで、
「くはっ!はぁ……はぁ……」
「……甘い、な…」
舌に唾液の味を刻み付けるかのような舌技の後、ようやく口が解放される。
あまりの刺激に、既に男性の下半身は膨張していた。
「……足りない……もっとだ…!」
そう言って竜人は、びりぃっと男性の服を上も下も布切れに変えてしまった。
「うあぁっ…ちょっと……待って…」
男性には抵抗出来る力は無い。むき出しになった前を隠すこともしなかった。
仮に抵抗出来る力があったとしてもそれは使えないだろう。
それ程の舌技で竜人は男性を骨抜きにしてしまっていた。
「…力、抜いとけよ?」
自身の手をべちゃべちゃと舐めながら竜人は男性に忠告する。
男性は力を抜く、以前に身体に力を入れていない。なんとか呼吸を整えようとしている。
しかし、竜人はゆっくりと行動を起こし、止まらない。
「や…ぅぅっ……」
唾液でたっぷりと濡らされた竜人の指が、ほんの一本だけ男性の後孔に侵入、
狭い中を拡げるように、探るように動かし始める。
「こんな……あぅぅ…」
「…すぐに、良くなる筈、だ……」
後孔を弄りながら、男性の首筋を溶かすように鈍く竜人の舌が這い回る。
「ひぁっ……こんなぁ…」
双方から男性を襲う刺激は、じわじわとそれを不明瞭な物から、快感へと容貌を変えていく。
舌が走る首筋は紅潮し、指が挿れられた後孔は竜人を受け入れかけたようにその孔が拡がっている。
指を深めに中に挿すと、それを歓迎するように締め付けてくる。
内壁をなぞるように動かして、ある部分を擦った。
「ひゃぅあ…っ!?」
男性の内部から今までより強く、異質な快感が走る。それは射精感に近く、身体の奥底に響くようで。
「…ここが、良いんだな……」
竜人は一本指が入っている後孔に、同じ手の指を二本纏めて挿し込み、
ぐりゅっ…ぐりぃっ…にゅぐっ…
その一点を抉り取るような動きをして、男性を責め立てる。
「にゃぅぅっ!ソコばっかりっ…やぁっ……」
頭の中で直に弾けているような快感が際限無く後孔から与えられる。
ぐちゃぐちゃという水音が頭から離れない。指の形を覚えるように締め付けてしまう。
びくびくと震えた性器から今にも噴出しそうだ。
「…これはどうだ?」
奥まで指を突き入れ、力を入れて敏感な部分を含めた、内側を引っ掻く。
「ふあぁぁぁっ!?
びゅくっ、ぴゅるっ、とくっ、とくっ…
次の瞬間、男性の性器が跳ね、先端からやや薄目の白濁液が飛び出す。
長めの責めで粘性は少ないが、その分多目の量が、何度か分けて噴出した。
「そろそろ…」
「あっ…あぅぅっ……」
男性の中の指がゆっくりと引き抜かれると、男性の後孔は閉じずに、何か栓を求めているようにヒクついている。
「力、抜いてろよ……」
その後孔にかなりの熱を持った、粘液にまみれた竜人の性器が押し付けられた。
「待って…やだ……無理です…っ」
後孔から感じる竜人の性器は、先端が人間のモノと違い、が槍のように細くなっているはずである。
だがこの竜人のモノは、先端の時点で先程挿れられた指より遥かに太く、びくびくと粘液を後孔に塗り付けていた。
「…挿れるぞ。」
たったそれだけ、竜人は言い放った。
ずぶぶぶぶぶぶ……
「ひゃぁぁぁっ!?無理ですっ!やめて……ふぁぁっ!?」
凶悪な大きさの肉棒が男性の後孔にねじ込まれ、中で目一杯自己主張を行う。
拡張された後孔は、その刺激のほぼ全てを快感と受け取り、先程放ったばかりの男性のモノに再び血が集まってくる。
見事に反り返ったモノが、男性の敏感な部分に擦れ、男性は矯声を放つ。
そのまま竜人のモノはその部分を擦り続ける。
ずりゅ…ごりゅ、ぐりゅう…
「ひやぁぁぁぁっ!?」
その快感は、脳髄まで溶かしそうな程強く、
「くあぁっ!こんな……ひうぅぅっ!?」
結局、男性の竜人のモノが全て収まるまでに、数度絶頂を迎えてしまう。
「あ……ひぅぅっ…」
竜人のモノが、体内にずっぽりと入り、びくびくと生き物のように震えている。
それを意識するだけで、気持ち良さを感じてしまう。
──ぶつん。
竜人の頭部辺りから、何かが切れるよ音が、した。
「グルルゥ…ッ!」
「ひぐぅぅぅっ!?」
そして竜人は男性の細い身体を自身の筋骨隆々な肉体にしっかりと密着させ、猛烈な勢いで腰を振り始めた。
「ふぁっ…あぁぁ……っ」
ぐちゅぐちゅと熱い塊が男性の内部を引きずり出すように抜かれ、押し込むように再び突き込まれる。
その度に男性の敏感な部分が何度も激しく擦られ、絶頂を何度も何度も迎えてしまう。
男性自身の性器は同じ様に跳ね、薄まった白濁を竜人の腹筋辺りに垂らしている。
もはやその行為は、獣が人を蹂躙するのに等しい。
「グルルッ…グフゥゥゥ!」
そして、獣が雌を孕ませるように、最奥に自身の性器をねじ込み、
「……グォォォッ!」
放水のような勢いで、男性の内部にたっぷりと精液をぶち撒ける。
「ひゃ…っ……あつ…い…」
中で暴れ回る竜人の性器と、注がれる溶岩のように熱い精液。
それから溢れる快感に、男性は意識を落とした。
「ありがとうございました……」
熊人が竜人と男性を視界に入れないように顔を逸らしながら返された鍵を預かる。
「あんな良さそうだったのに、なんでまぁ……
「人の初めて奪っておいて、何言ってるんですか!」
「…申し訳ありません。」
現在、竜人は腰布一枚の姿で、背中には荷物と男性と男性の荷物が。
数時間後男性が目覚めて無論竜人に対し大激怒。
しかし腰を動かそうとすると猛烈な痛みが全身に走るため、竜人に担がれている。
実際には、男性を担ぐ理由はもう一つあった。それは
「よぉ、この前は随分な目に遭わせてくれたな。」
「くれたな。」
「みたいだな。」
「……貴方達は…」
男性達の目の前に、以前男性を襲いかけた虎人、黒豹人、そして獅子人が進行方向に立っている。
「絶対許さねぇからな、覚悟しろ。こいつは滅茶苦茶強く…」
ごしゃあ。めしょ、ぐし、どごぉん。
男性は竜人に対し、自分を襲った件について償え、さもなければ訴えるというような発言をし、
竜人はそれを受け入れた。それは
「…どの方角へ行くか?」
男性自身の用心棒(タダ働き)。
何故男性は自分が竜人を用心棒として雇おうと思ったのか、
「ままま、まずは北に……」
自分の気持ちに、気付いていないようだ。