ネイラがシャランドの村に急いで戻ろうとしていた頃、既にシャランドは地獄絵図と化していた。  
再び村に戻ってきたシーロンとベイツが片っ端から村人を虐殺していたのだ。  
「天然モノってのは弱いねぇ」  
シーロンが振り払った槍が若い女性の首を勢いよく斬り飛ばす。  
「う、うわっ、た、助けてくれーっ」  
走って逃げ出そうとする若い男性をベイツは見逃さない。  
「人間」とは思えぬ跳躍力で飛ぶと、相手の首根っこを掴み、そのまま一気に下方向へと力を込める。  
鈍い音とともに、男の首が折れる音がはっきりとベイツの耳に聞こえる。  
「終わったのか?」  
殲滅を一通り終えたベイツがシーロンに尋ねる。  
「いや、まだあの家がある」  
ベイツは家屋にも手当たり次第放火していたが、シーロンがまだ1軒無事な家を見つけたのだ。  
家の洋服タンスの中には、トールが隠れていた。  
家々が燃える音、人々の断末魔はもちろんトールにも聞こえていた。  
だが、ここで迂闊に家を出たら自分まで殺されかねない。  
今のトールが出来ることは、ただ災難が過ぎ去るまでじっと待つことだけだった。  
だが、その期待も無残に裏切られることとなった。  
「やけにきちんと整頓されてるわね、この家」  
洋服タンスの外をシーロンがウロウロしている。  
「良い服ないのかしらね、全く」  
シーロンが洋服タンスに手をかける。そして・・・  
「うわああああっ!」  
扉が開くと同時に、トールが外に転げ落ちてしまう。「獲物」を見つけたシーロンが  
悪魔のような笑みを浮かべる。  
 
「また遭ったわね、坊や」  
「お、お前は・・・」  
「なぁに、すぐに殺しちゃあ面白くないからねぇ。私に『ご奉仕』してくれたら助けてあげてもいいんだけど」  
トールにはシーロンの「ご奉仕」の意味がすぐには理解できなかった。  
「ご奉仕・・・?」  
トールがおそるおそるシーロンに尋ねる。  
「おーや、そんな事も分かんないの?アンタってウブねぇ」  
シーロンはトールのズボンに手をかける。  
トールはうすうす「ご奉仕」の意味を理解しつつあった。  
「さっさと脱ぎなさい」  
シーロンはトールのズボンを勢いよくずらす。飾り気の無い白いブリーフが露わになった。  
「最近の男の子はトランクス派が多いって聞いたんだけど、ま、いいわ」  
「な、何すんだよっ!」  
トールが顔を赤らめて懸命に抗議する。  
「言ったでしょ。ご奉仕したら助けてあげてもいいって。それとも、今ここで死にたいの?」  
恐怖の2択を迫るシーロンに対して、トールはすぐ答えられなかった。いや、選択権など  
無い、という方が正しかった。  
スルスル、とトールのブリーフが脱がされる。まだ小さな男根と、さほど濃くない茂みが  
露わになった。ここまで来ると、トールも流石に自分がこれから何をされるのか理解した。  
男として最も大切な、そして恥ずかしい部分が晒されている・・・・  
 
シーロンはトールの男根を手に取ると、しげしげと眺める。  
「やっぱりウブねぇ、アンタ。でもこれから本当の楽しさってのを教えてあげる」  
トールの男根がシーロンの手によって激しく揺り動かされ始めた。  
ブルブルブルブル・・・という感覚がトールの身体の奥底にまで伝わってくる。  
「ちょ、な、なんだこれ・・・」  
シーロンはさらに速度を速める。徐々に男根が堅くなっていくのを見つめ、ニヤリと笑う。  
しばらくすると、シーロンは手を止め、男根を下にクイッと指で押した後、ポーンと離す。  
既にしっかりと勃起し、弾力性を持っていた男根が、元の位置に戻るまでにいきおい良く揺れる。  
「ふふっ、随分エッチな事考えちゃってるのね」  
シーロンは今度はトールの男根の先の皮を剥く。中から綺麗なピンク色をした「中身」が出る。  
「もっともっと気持ちよくさせたげる」  
シーロンの舌がトールの先端に触れる。先端をひとなめしただけで、トールの身体がピクンと跳ねた。  
「うっ・・・」  
「微妙に嫌がってるみたいだけど、結局感じちゃってるじゃないの」  
彼女のテクニックは絶妙で、一舐めごとにトールの快感は高まっていく。  
やがて、シーロンはトールの男根を根本までくわえ込んだ。  
グチュ、グチュ、グチュ・・・  
いやらしい水音が、シーロンの口の間とトールの男根の間から響き渡る。  
「くっぅぅ・・・おかしく、なっちゃうよ・・・」  
トールは自分の意志を保とうとはしているが、快感によって視界はボヤけつつあり、  
男根に加え、どこから身体の奥底からわき上がってくる快感にひたすら耐えてきた。  
(で、出る、おしっこが出ちゃう!)  
トールは男根の先端に熱いものが集まるのを感じていた。いや、それは実は  
小便ではなく、別のものも含まれていた。  
ピチャ、ニチャ、クチャ、クチャ・・・  
トールはもう目の前で行われていることを正視できなかった。目を閉じ、額に汗を浮かべ、  
ただただ快感に流されまいとしていた。  
シーロンが上目遣いでトールを見る。その表情から、彼女は限界が近づいていることを悟った。  
何度目だろうか、シーロンがトールの性感帯を刺激した瞬間、  
「う、うわああ、出、出ちゃうぅぅぅ!」  
トールの絶叫と共に、男根から小水と、白い液体がシーロンの口の中に吐き出された。  
シーロンは黙ってそれを受け止めている。  
ゴクン、という音がシーロンの喉から響く。2度、その音をさせると、シーロンはようやく口を離した。  
ツゥ、と白い糸がシーロンの唇の端から落ちていった。  
トールは涙目になり、ハァハァと息をしながら必死に身体を落ち着かせようとしていた。  
 
トールの頭から生えている狐の耳も身体の震えと連動してピクピク震えている。  
男根の先端からまだ白い液体が僅かではあるが垂れ、床に落ちている。  
「さてと、二回戦といきましょうか。後ろを向いて四つんばいになってくれない?」  
シーロンはトールの「穴」を開発しよう、というのだ。  
「こう・・・?」  
トールはシーロンの言われるままに四つんばいになり、尻を突き出した格好になる。  
当然、トールの菊門がシーロンの目に入る。  
「いや、いやだっ、こんな格好、恥ずかしいよっ!」  
「今更気付くなんて、本当にアンタって子供ね」  
トールのアナルがシーロンの指によって左右に開かれる。  
中からは綺麗なピンク色をした肉の襞が現れる。  
シーロンが顔を埋め、肉の襞をペロリと舐めた。  
「そんなとこ、汚いよ!何やってるのさ!」  
必死に抗議するトールは恥ずかしくてたまらなかった。アナルなど、親や姉にも見せた  
ことが無い場所だ。まさか他人に見られるとは思わなかったのだ。  
そんなトールに構わず、シーロンは穴を舌で突き始める。  
「いぅっ!?ううう・・・」  
トールが身体を震わせると、それと連動して尻から生えている狐の尻尾も揺れ動く。  
ふさふさとした毛がシーロンの鼻をくすぐる。  
ぴちゃ、ぴちゃ・・・  
いやらしい水音が響き渡り、その音によってもトールの快感が再び高まり始める。  
「もう・・・やめてよ・・・」  
ピクン、ピクンと尻尾が跳ね上がる尻尾を見たシーロンは、悪戯っぽい笑みを浮かべ、  
尻尾をクイっと引っ張った。  
「あううっ!」  
快感以上の苦痛がトールの全身に走り、トールは全身を痙攣させた。  
両腕で身体を支えられなくなり、バタンと床に倒れてしまう。  
「・・・痛いよぉ」  
「あらら、それだったらゴメンね、キツすぎたかしら」  
そんな口調とは裏腹に、シーロンはまったく悪びれる様子がない。  
「ほら、さっさと四つんばいになって」  
シーロンはトールに再び四つんばいの姿勢になるように命令する。  
(なんでこんなことされなくちゃなんないのさ・・・)  
トールの顔は紅潮し、恥ずかしさと屈辱感で涙も流れていた。  
ポタ、ポタと、頬からこぼれ落ちた滴が床を少し濡らすが、シーロンは勿論意に介さない。  
「前フリが済んだから本番よ」  
トールが我慢してきた今までの恥辱は「前フリ」に過ぎず、それを思い知らされたトールは  
もはや絶叫したい気持ちになりつつあった。  
 
「まずは軽ーく、と」  
シーロンの唾液で潤ったトールの穴に、シーロンは右手の人差し指を第1関節のあたりまで入れる。  
にゅぷ、という音がして、シーロンの指が穴に入っていく。  
「うあああああっ!」  
今度は苦痛がトールを襲う。シーロンにしてみれば愛撫か何かのつもりなのだろうが、  
今のトールにとってはただの凌辱行為に過ぎない。  
「んん・・・結構カタいわね」  
ギチ、ギチ、ギチ・・・メリ、メリ・・・メリ・・・・  
シーロンの指が締め付けられるが、それにも構わずシーロンの指は奥に入っていく。  
トールの尻の肉が少しづつ、しかし確実に引き裂かれていく音がする。  
肉の粒がはじけるような感覚がトールに伝わり、一裂きごとにトールは苦悶の表情を浮かべる。  
「い、い、あぎゃ、ああああ!」  
トールは必死に歯を食いしばり、全身に汗を浮かべてこの責め苦に耐えている。  
シーロンの指は第二関節の手前まで埋まりつつあった。  
くいっ、とシーロンが指を曲げ、トールの内部をかき乱す。  
「やだ、やだ、いやだ、いたいいいいいい!!」  
「ここを我慢しなきゃ気持ちよくなれないのよ」  
シーロンは思い切って指を一気に突っ込む。  
ジュブジュブジュブジュブ!!!  
指が第二関節よりも先まで入った。  
「ぎゃあああああっ!!!!」  
トールが絶叫したのも無理はない。予期せぬ責めに遭ったのだから。  
本来何も入っていないはずの場所に棒状のものが突っ込まれている異様な感覚に、  
トールの精神がいつまでも耐えられるわけがなかった。  
「いい加減・・・いい加減にしないと、怒るぞ・・・」  
トールの頭から生えている狐の耳がピクピクと動く。  
シーロンに対する激しい怒りが、痛み、そして屈辱感を少しばかりの間ではあるが振り払う。  
「こっちが黙っていりゃ好き勝手なことばかりしやがって・・・」  
トールの態度の変化に気付いたシーロンも口調を変える。  
「何よ、今までせっかく優しくして上げたのを何だと思ってるのよ」  
「お前だけは・・・お前だけは絶対に許さない!」  
トールの全身がブルブルと震え始める。今まさに、トールの肉体の変貌が始まろうとしていた。  
 
トールの肌のあちこちに黒いシミが浮かび上がってくる。  
震えが止まらず、黒いシミとともに獣毛も生え、筋肉量も増加していく。  
ググ・・グググ・・・  
トールの着ていたシャツが悲鳴を上げ始める。  
爪も伸びていき、トールの両手両脚は完全に豹のそれに代わる。  
尻尾もさらに長く、太くなっていく。  
「随分と元気のいいこと!」  
シーロンがトールの尻を蹴る。その蹴りが合図にでもなったのか、  
トールの着ているシャツが完全に散り散りの破片となり、獣人となった  
トールが憎しみに燃えた目でシーロンに飛びかかった。  
二人の身体が床を転がり、カギのかかっていなかったドアを突き抜けて屋外に飛び出る。  
「お前なんか、お前なんか殺してやる!」  
声こそトールのものだったが、既に本能は獣のそれに支配されていた。  
シーロンは組み伏せられそうになったところをどうにかして振りほどく。  
トールは獣の俊敏さで素早く立ち上がったが、  
立ち上がって再び襲いかかろうとしていたトールの股間に、シーロンは仰向けに倒れた状態から  
トールの急所に蹴りを食らわせる。  
「うっ・・・」  
豹になろうが元は人間だ。急所の周りに激痛が走り、トールの身体が  
まるで時間が止まったかの如くピタリと止まる。  
ザワザワザワ・・・  
シーロンの身体にも獣毛が生えだしていた。  
「あんたみたいな奴が豹だなんてね・・・」  
シーロンはトールの身体に覆い被さり、地面に押し倒す。  
その間にもシーロンの身体は膨れあがる。  
ブチッ、という音がして、シーロンの尻からズボンを突き破って豹の尻尾が飛び出した。  
トールは目の前でシーロンの顔が人間のものから豹のものに代わっていくのを正視できなかった。  
「ああああっ!」  
獣人になったシーロンの爪がトールの肩に食い込む。鋭く尖った爪が、肉を裂き、血を噴き出させる。  
「さぁて、どこの筋から使い物にならなくしてあげようかねぇ」  
トールは悪魔のような笑みを浮かべるシーロンを押しのけようとするが、  
完全に押さえ込まれていて腕でのけようにも動きが取れない。  
 
「いああ・・・いあっ・・・」  
ブチブチッ!  
何かが裂ける音がする。トールの両肩の筋が何本か裂かれたのだ。  
「ああああああぁぁーーーっ!」  
トールはあまりの痛さに身をよじるが、シーロンはがっちり身体を捕らえて離さない。  
(このままじゃ・・・そうだ!)  
トールははっと気付いた。何も武器は手や脚だけじゃない。  
シーロンが牙でトールを噛み殺そうとしたのか、それとも唇を奪おうとしたのかどうかは分からなかったが、  
顔を近づけようとしたシーロンに、トールは思い切って頭突きを食らわせた。  
不意の一撃にシーロンが込めていた力が弱まる。  
「今だ!」  
トールはシーロンをはねのける。はじき飛ばされたシーロンの身体が地面に転がる。  
「お返しだ!」  
トールは鋭い牙でシーロンの顔面に噛みついた。  
もちろん今度はシーロンが悲鳴を上げる番だ。  
(このまま噛み砕いてやる!)  
トールは腕でシーロンの身体を掴み、一気に骨まで砕こうとした。  
だが、トールの両肩は何本か筋が切られている。そんな状態でも腕を動かせたこと自体、  
シーロンに対する憎悪がいかに強かったかの証左でもあった。  
もう少しでかみ砕ける!というときになって、トールの腕の力が弱まってしまう。  
やはり肩の傷が影響してきたのだ。  
ブン!とシーロンがようやくトールの牙から自分の顔を解放する。  
美しかったであろう顔面は一面血まみれになっている。その朱にまみれた顔で、  
シーロンはトールを睨み付ける。  
「私の顔によくもこんな傷を・・・」  
 
今度はシーロンの逆襲が始まる。  
常人では到底反応できぬ速さのハイキックがトールにヒットする。  
骨が砕けたかのような衝撃を受けたトールがよろよろとよろける。  
そこを逃さず、シーロンがトールの身体を掴むと、膝蹴りを一撃、二撃と  
正確にトールの腹に入れる。  
「おご・・・ぐはっ!」  
トールの口からゴバっと胃液が吐き出される。身体の中のものが全て  
逆流して出てきそうなほどだった。  
「アンタは獣人失格」  
さらにトールに肘打ちを食らわせたシーロンは、懐に潜り込むとトールの腕を  
掴み、一気に投げ飛ばした。  
トールの豹の身体が一回転して、地面に叩きつけられる。背負い投げだ。  
受け身を取ることもできなかったトールは声にならぬうめき声を出している。  
シーロンは倒れているトールを引き起こすと、右手で首筋をひっ掴み、  
ネックハンキングの姿勢にさせる。  
シーロンの右手に力がこもる。腕一本で人を吊り下げられるというのはやはり  
獣人故のパワーであろうか。  
ドスッ!ドスッ!ドスッ!  
トールの腹にシーロンのボディーブローが容赦なく入る。  
一発入るたびに、トールの顔が苦痛に歪む。  
「さぁ、どんな死に方がいいの?アンタに特別に選ばせてあげるわ」  
そんあ問いにもトールはもはや答えられる状況でない。  
「じゃあこっちが決めてあげるわ。血まみれという野蛮な方法は好きじゃないから、  
関節か骨を砕いてあげる方法でいくわ」  
シーロンは一旦トールを地面に下ろすと、背中の側から上に持ち上げた。  
シーロンの肩の上にトールを仰向けに乗せ、あごと腿をつかむ。  
シーロンは自分の首を支点として、背中を弓なりに反らせ始めた。  
当然トールの背骨が痛めつけられるのは言うまでもなかった。  
 
アルゼンチンバックブリーカーの態勢を取るシーロン。  
「んしょ、んしょ、んしょ」  
背をのけぞらせる度に、トールの反った身体から骨が潰れそうな音がする。  
「いいい・・・」  
トールの声にならぬ声が漏れる。  
(僕は・・・ここで死ぬのか・・・?)  
あと数十秒も経てば背骨を折られてしまうだろう。  
トールの目の前に白いもやのようなものがかかり、視界が狭くなる。  
(でも、こんな奴に殺されたくない!)  
トールの思いが死の淵からいったんは彼を救う。  
「うああああああ!」  
トールの四肢の筋肉が盛り上がり、その力がシーロンにも伝わる。  
「!?!?!?」  
シーロンの力が緩くなり、その隙に振りほどくことに成功したトールの身体がドッと地面に落ちる。  
獣の本性をムキ出しにしたトールがシーロンの尻に噛みつく。  
もはやシーロンが女性であるとか、そんな事はどうでも良かった。  
殺さなければ自分が殺される。今のトールを支配しているのはそれだけだった。  
牙が尻に食い込み、鮮血が飛び散る。  
ブチっ!  
何かがちぎれた音がした。トールの口にシーロンの尻尾があった。  
完全にブチ切れたシーロンが、トールに飛びかかり、鋭い爪で何度も何度も胸ぐらを引き裂く。  
トールも負けずにシーロンに殴りかかる。  
二匹の壮絶な戦いはいつ終わるとも知れなかった。  
まるでそこだけ時間が止まったかの如く、二人の戦いが続く。  
二人の筋肉ははちきれんばかりに盛り上がり、眼は血走り、腕は青筋が立つほど盛り上がる。  
徐々に疲れが見えだし、双方気力のみで戦い合う。  
だが、年上ながらシーロンの気力の方がわずかに勝った。  
トールの腕の振りが鈍ったのを見逃さず、左胸に裂帛の突きを入れる。  
シーロンの右腕はトールの左胸を貫通していた。血に染まった右手が背中から突き出ていた。  
ズブズブという音とともに、シーロンの右腕が引き抜かれると、トールの身体は  
スローモーションがかかったように地面に倒れていく。  
だが、シーロンも戦う気力は残っていなかった。その時だ。少女の声が響いたのは。  
 
「トール!トール!」  
村の異変に驚愕したネイラが倒れているトールの方にかけよってくる。  
「・・・遅い、遅すぎるわよ」  
獣人となっているシーロンが血まみれの身体でネイラを見る。  
「アンタが・・・アンタが全部やったの!?トールは、トールはどうなったの!?」  
ネイラは身体の奥底からわき上がってくる怒りを抑えきれない。  
「トール・・・誰よそれ・・・アンタの恋人なの・・・?」  
「別に恋人っていうわけじゃない・・・でも、どうなったのよ!」  
ネイラは半分涙目になっていた。その時、  
「ネ・・・ネイラ・・・」  
倒れている豹人からかすかに声が聞こえてくる。  
それだけで、ネイラは全てを理解した。獣人となったトールが必死になって自分の身を守ったことを・・・  
地面に血まみれになって倒れているトールがネイラに顔を向ける。  
「ぼ・・・僕はいいから・・・アイツを・・・」  
トールが最後まで言い終わらないうちに、ネイラの蹴りがシーロンの横っつらに入っていた。  
傷ついていたシーロンは避けられない。  
駒のように身体を回転させ、次々と回し蹴りを繰り出していくネイラにいいように蹴られる。  
ネイラの身体がフッと宙に浮く。両脚の間にシーロンの頭を挟み、そのまま身体をねじって  
地面に引き倒したのだ。  
ゴキ!という音がしてシーロンのどこかの骨が折れた音がした。  
「アンタなんて変身しなくても十分」  
倒れたシーロンがネイラを睨みつけるように、最期の一言を吐く。  
「私を倒したって・・・ベイツが・・・工場に・・・」  
それだけ言うとシーロンの首が垂れる。  
シーロンの最期を確かめると、ネイラはトールの元に駆け寄る。  
トールはもはや息も絶え絶えだった。二人の間に残された時間は僅かだった。  
「ネイ・・・ラ・・・」  
「トール!しっかりして!トール!」  
もうトールが助からないと分かっていても、ネイラは少しでもトールが長く生きて欲しいと思っていた。  
「何も・・してやれなくて・・本当に・・・ゴメンな」  
トールがハァハァと息を吐きながら懸命に言葉を絞り出す。  
「ゴメンと言わなければならないのはこっちよ。こんなわたしを助けてくれて・・・ありがとう」  
二人の目には涙が溜まっていた。  
「僕は・・・幸せだな・・・こんな僕でも・・・傍にいてくれたなんて・・」  
「何言ってるの!トールは人間よ、わたしと一緒、どんな格好になっても人間よ」  
「あの・・・女は・・・?」  
「倒した!わたしが確かに倒した!」  
それを聞いたトールの表情がゆるむ。  
「良かった、これで僕も安心して・・・」  
「何言ってるの!まだ死んじゃダメ!」  
「・・・・」  
トールの眼がゆっくり閉じられていく。  
「声が聞こえないの!返事をして!トール!トール!」  
トールはもはや何も答えなかった。  
「トール・・・・」  
ネイラの眼から流れ出た涙がどんどん地面を濡らしていった。  
地面についた両手がわなわなと震えていた。  
(わたしが・・・わたしがもう少し早く戻っていたら・・・)  
 
 

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