真っ赤だなぁ、真っ赤だなぁ、秋の夕日は真っ赤だなぁ♪ サキちゃんのオめめも真っ赤だよぉ♪♪  
 アレから二日後の夕方、学校帰り、制服のまま。ボクの家、ボクの部屋、ボクのベッドの上で、サキちゃんは寝転がって漫画を読み、ボクはその端に座って地図帳をめくる。  
 来月までに好きな町へ行き、そこがどんな町なのかを写真付きでレポート発表しなくてはいけないのだ。  
 必ず2〜4人のグループを組み、もちろんサキちゃんとのフタリぼっち……なのに、電車の時刻から下調べから、全部ボクがやってるよ。  
「まっはふもぉ」(コロコロ……)  
 口に飴を咥えながら、舌の上でコロコロ転がしながら、歩くルートを赤ペンでなぞって行く。  
 んっ、それにしてもコレ美味しい。机に置いてあったけど、いつ買ったんだっけ? う〜〜〜ん、まっ、いっか。  
 まずは電車で駅前まで行って、そこから商店街、小さな映画館、その後に……  
 
「なぁ、ゆーと? オレさ、机の上にチュッパチャップス置いてたよな?」  
 
 ぐにゅりと、突然に背中へ柔らかな感触の負荷が掛けられ、後ろから抱き着くように両腕を首に回された。  
 耳を暖かな吐息が撫で、聞こえる声はこの部屋に居るもう一人の人物。おっぱい……当たってるんだけど? 言わないけどさ。  
「ひらないよ?」(コロコロ……)  
 チュッパチャップスかぁっ、サキちゃんがいっつも咥えてる飴だよね? やっぱり分からないから、視線は地図帳に落としたまま、知らないと答える。  
 
「はぁっ? んなわけねぇだろ? ゆーとの部屋でしか食わねぇんだから」  
 
 それでもサキちゃんは食い下がり、ボクの言葉を全く信用してない。  
 産まれた時から16年も幼馴染みしてるのに……疑うなんてヒドイよっ!!  
 ってセリフを言おうとした瞬間。ピコーン、豆電球!! 大事な事を思い出す。  
「ん〜っ、て、ほらっ! 机の引き出し見てみて? いっぱい有るんじゃない?」(コロコロ……)  
 机の上に置いてあった飴を、邪魔だからと引き出しにしまったのだ。ふぅぅっ、危ないアブナイ。  
 だがそれでも、のしかかる力は減って行かず、むしろ増えて全部の体重を掛けられてるイメージ。  
「ねぇよ! オレは、な? 曜日ごとに舐める味を決めてんだ。毎週、毎週、決まった数を買ってんのによ、今日のチョコミント味が……無いんだよ。これは、どう言う事だゆーと?」  
 そして嫌なイメージもフラッシュバック。サキちゃんの声は徐々に低く冷たくなる。  
 ああ、そうだ。飴を仕舞う時、一個ぐらい良いかなって……コロコロ。うんっ、やっぱり美味しい! チョコミント味だっ!!  
「ぼ、ボク買ってきゅるよっ!!」(コロコロ……)  
 サーっと血の気が引き、ベッドから立ち上がろうとして、  
 
「待てよっ、さっきから口に入れてる、コロコロ鳴らしてんの吐き出せ」  
 
 力を入れても、少しもその場から動けない。逃がしてくれない。  
 
 唇の間からハミ出てるプラスチックの棒を、力強く掴んで引っ張られる。  
 心境は水戸黄門開始から45分後。飴を盗んだ悪党なボクは、印籠を突き付けられてホールドアップ。  
「んっ、ふぁい」  
 べぇー。観念して口を開けば、すぐに抜き取られて目の前でクルクルと回される。  
 そして何の躊躇(ちゅうちょ)も戸惑いも無く、ボクの耳元に顔を寄せて、  
「はぁぁっ、ゆーとの唾液でベトベトだなっ♪ まったく……ぢゅっ、やっぱりゅ、ちゅるちゅるちゅる、チョコ、はあぁっ……ミントじゃねぇか!!」  
 美味しそうに飴を舐め始めた。舐めると言うよりは吸い付くように、しゃぶり尽くすように、ちゃぱちゅぱと音を聞かせるように。  
 あっ、間接キス……とか、サキちゃんは気にしないのかな? って思ったけど、背中からドキドキ伝わってくるよ。  
 ついでに、ガリガリって噛み砕く音も聞こえてくる。やっぱり怒ってる……よね?  
「サキちゃんゴメンっ!!」  
 今度こそサキちゃんの腕をほどいて逃れ、ベッドから下りて振り向いて、目さえ合わせずに土下座する。  
 一呼吸。二呼吸。三。四。五つも置いてから、返事さえしてくれない幼馴染みへ、ゆっくりと顔を上げた。鬼が居た。  
「ゆーとぉっ、オメェさぁ……奴隷としての自覚が、まるで足りねぇよ」  
 噛んでいたプラスチックの棒部分を、ペッと部屋隅のゴミ箱へナイスシュート。  
 イライラの募った表情で睨み、腕を組んで足を組む。ベッドを椅子代わりに腰掛け、ボクを見下して罰の執行。  
「じ、かく?」  
 組まれて上に在った右足はボクの目前に差し出され、相変わらず赤いタイツに覆われてる。  
 ああ。なんとなく、何となくだけど予言できそう。ってよりも、この現状、この状況なら、考えられるのはコレしかない。  
 サキちゃんの瞳は三日月の形で微笑み、口横も両サイドが吊り上がり、発するのは的中する一言。  
 
 
「おいっ、奴隷……ご主人様の、アシの、ユビを、ナメろっ」  
 
 
 ふぅあふぅあ、スーパービンゴ。やっぱり最悪な想像通り。  
 足の指を舐めろって、幼馴染みに言う台詞じゃないよっ。でも、興奮す……ちがうちがうっ!! 今回はボクが悪いから、仕方なくだよっ!!  
「うっ、ぐっ……はい」  
 プライドなんかペッ、ゴミ箱へナイスシュート。あーんと口を拡げ、舌を限界まで伸ばして、ぴちゃり。舐め始める。  
 親指の裏側から沿うように、爪の表面まで丹念に。タイツのゾリゾリとした舌触りを挟み、猫がミルクを飲む動きで丁寧に舐めて行く。  
 ぴちゃ、ぴちゃ、ぺちょり。  
 もう夕方だし、ムレて汗臭いと思ったけど、そんな事は無い。いつもと同じ、足の指だって同じ柚子(ゆず)の香り。  
 味気も無くて、もしかしたら汗でしょっぱいのかな? って程度。  
「んんっ!? ふふっ、くすぐったい♪ それじゃあ、奴隷には質問に答えて貰おうかな? ウソは……つくなよ?」  
 視線だけで見上げれば、姫の機嫌は全回復。気持ち良さそうに身震いしてる。  
 このままなら、けっこう早く許して貰えるかも。  
「ちゅ、ぢゅっ、ふぁいっ」  
 ぎゅにっ、ぎゅぢゅぎゅぢゅっ……  
 指を口に含んで甘噛みし、コクンと首を振る。ウソは、ダメね?  
 
「昨日は、オナニーしたか?」  
 
 
 
 
   『ボクが奴隷に落ちるまで』  
    〜契約満期まで後27日〜  
 
 
 
 身体が止まる。口が止まる。息すら止まる。封殺されて瞬間硬直。  
 ボクはサキちゃんを見上げ、サキちゃんはボクを見下ろす。二人の視線はぶつかって、多分の高差で交差する。  
 本気……だよね? それならいいよ、どーせ高校生になったらみんなしてるし、してないって方がウソなんだから。  
「むぢゅちゅっ、ふぁいっ……ひまひた」  
 だったら真実を述べるだけ。先月から父親が単身赴任で海外に行って、母親はそれに付いてった。  
 二年後の、ボクが卒業間近になるまで帰って来ない。家には一人で……そしたら回数だって増えちゃうよ!!  
 昨日も、漏れずに、オナニーした。今月はこれで皆勤賞。  
「よろしいっ♪ では、ゆーと君の部屋にはエッチなDVDや本が在りませんが、オカズはどうしているのですか? ちなみに、夕食のオカズなんて答えたらブッ飛ばすから♪♪」  
 なんでボクのエロ本事情まで知ってるんだよっ!!? まぁ、そりゃエッチな本やDVDは見たいけどさ、ボクには要らないんだ。  
 買えないんじゃなく買わない。買う必要がない。  
 サキちゃんは笑ってる、微笑んだままだけど、少しずつ、少しずつ、追い込まれてる。  
 そう、ボクがオカズにするのは二人だけ。昨日はその内の一人。誰よりも綺麗で、格好良くて、オッパイが大きい、幼馴染み……だけど、本人の前で言えないよっ!!  
「ちゅぱっ……んっ、それは、マヤちゃん、とか」  
 結局はもう一人の名前で誤魔化す。もう一人の幼馴染みの名前で、この場を乗りきろうとする。  
 でもっ、  
 
「ふぅん、でっ……オレはっ?」  
「はいっ!?」  
 
 気付けば巣のド真ん中。念密に誘導された蜘蛛の糸に、絡め取られた餌の虫。  
 ボクの瞳はまんまるで、口は開いて閉じれない。上擦った声を吐き出すのが精一杯。  
「オレは、オナニーのオカズにしてくれないの?」  
 頬っぺたは赤くなってるはず。サキちゃんの頬っぺただってほんのり赤いんだから。  
 それにやっぱり、答えを聞くまでは満足しないんだね? 冗談じゃ、ないんだね?  
 そしたらさ、そんなのさ、言える訳ないよ……オレをオカズにすんな!! ってキレられるかも知れないし。  
「サキ、ちゃんはっ、オカズになんか……しなっ、ひぎゃっ!? イタイっ! ひたひぃっ!!」  
 なぁんて考えが甘かった。嘘は途中で遮られ、足の親指と人差し指で、器用に舌を挟まれて引っ張られる。  
 ギチッとつねられて伸ばされて、舌全体が凄く痛い。ボクのベロがっ!? ボクのベロがぁぁぁっ!!? もげるっ、もげるぅっ!!!  
「嘘は付くなって、言わなかったか? オレの名前を切なそうに呼びやがってよぉっ……隣の家だぜ? オレの部屋からこの部屋まで、手を伸ばしゃ届くんだぜ? 聞こえてねぇとでも思ってたのかよバーカ♪」  
 ボクのベ……はっ? 聞こえてたって、オナニーしてる時の声が?  
 いや、今の言葉はもっと深い。  
「そん、なっ」  
 だいたい、オナニーを始めたのは小学五年の頃。その頃から部屋位置は変わってない。つまりその頃からサキちゃんに聞かれていたんだ。  
 それを今までボクに隠してて、それで今のボクをけなしてる。  
「嘘を付く奴隷には罰をやらなきゃ、なっ? 今日からオレが許可を出すまで、オナニーは、キ、ン、シ……わかったか?」  
 もうこんな事を言われても、微塵だって反論できない。サキちゃんの瞳は三日月の形で微笑み、口横も両サイドが吊り上がったまま。  
 そしてボクに見せ付けるのは、録音再生画面の携帯電話ディスプレイ。  
 何件も、何件も。再生ボタンが押されれば、どれでもオナニーロードショー。だから……  
「はい」  
 って言うしか、残ってなかった。  
 
 奪い取ろうと手を伸ばしても、素早く反らされて携帯をオッパイの間に押し込んでしまう。  
 胸元からストラップだけが垂れ出て、女性の特権をフル活用してる。ぐぎぎっ……ズルい。  
「まっ、今日はこんなもんか? これ読んだら勝手に帰るから、下でメシでも食って来いよ?」  
 ゴロリン。サキちゃんは再びベッドに寝転がり、ボクが買ったジャンプをボクより先に読み始めた。  
 名前、瀬戸山サキ。幼馴染みで時代遅れな不良ヤンキー。そして趣味は……ボクが買ったジャンプをボクより先に読んで、ボクに内容を話す事。  
「おおっ!? 大人になったカイルとフレデリカが助け……」  
 最悪だーっ!! 楽しみにしてたのにぃっ!!  
「あーあー、きこえなーい!!」  
 耳を塞いで大声出して、一階のキッチンまでダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。  
 くそぅ、こうなったらヤッてやる、ヤッてやるってば!!  
 服を裂いて、ビリビリ。  
 ニプレス剥がして、ベリベリ。  
 ぱっぱして、パッパ。  
 中に出して、ジャー。   
 3分待ってできあがりぃっ!!  
 
 リビングでソファーに座り、完成したカップラーメンをすする。  
「まったくぅ、ズルズル、良く考えたらコレ、ズルズル、脅迫じゃないのっ? ぷはぁ〜っ、ごちそうさまでした。はい、おそまつさまでした」  
 溜め息吐いて一息吐いて、何度考えても納得いかない。さっきは雰囲気で頷いちゃったけど、やっぱりオナニー禁止は厳し過ぎるよ。  
 サキちゃんだって月に二回ぐらいはしてるだろうし、何でボクだけ!?  
 そう思ったら不条理は募る。気付けば自室にダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。  
 だけど、  
「ちょっとサキちゃ……ってアレ? 寝て、るのっ?」  
 ドアを開けて入室すれば、抗議する相手は熟睡中。ベッドに仰向けで横たわり、小さく、小さく、可愛い寝息。  
 赤く長い髪を翼のように広げ、両手をヘソの上で組み、足は両方とも膝を曲げて立ててる、サキちゃん独特の就寝ポーズ。  
「早く起きないと、イタズラしちゃうよ〜っ?」  
 
 すぅー、すぅー。  
 
 よしっ、イタズラしよう!! ターゲットは既に決まってる!!  
 狙うのは下半身。赤いタイツに締め付けられてるムチムチお肉。  
 それは膝の裏側。太股とふくらはぎ挟まれた秘密の桃源郷。体育座りみたいに足を折り曲げた時だけ現れる、チンコのぎゅぽぎゅぽスポット。  
 ここに挿れて腰を振ったら、モチモチして、プリプリして、更にタイツがゾリゾリして気持ち良いんだろーなぁ。  
 一度に三つの感触を味わえるのっ? なんてお得なんだぁっ!!!  
 はあぁぁっ、ヤバい……興奮してきたよ。まぁ、サキちゃんとの約束はオッパイ触らないってだけだし、別に良いよね?  
「ふぅっ、ふぅっ、んっ……はあぁぁっ、サキっ……ちゃん」  
 呼吸が荒い、身体が熱い、チンコが苦しい。限界まで勃起して、ファスナーの金具が先端に食い込んで凄く痛い。  
 そう、これは仕方の無い事なんだ。ベッドの隣に立ち、チンコも立ち、赤い髪の白雪姫を見下ろす。  
「食後のデザート、いただきますっ」  
 そして目の前で手を合わせて一礼。サキちゃんが起きるのが早いか、ボクがイクのが早いか……勝負ッ!!  
 
 
 
「オレ、ゆーとに食べられちゃうの?」  
 
 
 
 視線がぶつかった。パッチリ開かれた瞳が、ジィーっと不思議そうにボクを見上げてる。  
「あ」  
 だけど不思議そうに感じたサキちゃんの瞳は、瞬間湯沸し器より瞬間に沸騰した。  
 震えるボクは怖くて一歩も動けない。  
 
「オナニーすんなっつったろうがっ!!」  
「サキちゃんごめんなさいぃぃぃぃぃっ!! でもオナニーじゃなくて、ふともも&ふくらはぎズリだよぉっ!!!」  
 
 土下座をして謝罪して、男らしく言い訳もせず、ただひたすらに許しを請うだけだった。  
 
 

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