「ねぇ新堂。割のいいバイトがあるんだけど、やってみない?」
そう言ってクラスメートの山田が話を振ってきたのは昼休みのことだった。
私と山田は特に親しい訳ではないけれど、隣の席同士ということもあり他の男子よりは会話をする機会が多いのだ。
そういえば昨日、財布の残高がピンチだと愚痴った気がする。
「やるやる!で、どんなバイト?」
願ってもない思わず身を乗り出し、私はうきうきと尋ねた。この話を受ければ親に頭を下げて前借りをする必要もないのだ、断る訳がない。
「俺の作品のモデル。課題の提出が近いんだ」
少し照れたように山田は微笑んだ。そういえば山田は美術部所属だったか。
じっとしているのは退屈しそうだが、座っているだけでお金がもらえるのなら確かに割のいいバイトだ。
結局二つ返事で返事をした私は、山田と共に放課後の美術室に向かったのだった。
「そう、膝に手を置いて。表情は楽にしていいからね」
木の椅子の固い感触が、何だか気を引き締めてくれるような気がする。
着席した私のポーズをテキパキと指示し、山田は真面目な顔をしてキャンバスに向き合った。
絵の具や粘土の匂いが溢れる部室は、不思議と居心地がいい。思わず居眠りしてしまいそうな心地よさの中、私は一心不乱に筆を動かす山田を見つめていた。
普段のどこか緩い雰囲気は一切なく、彼は真剣な面持ちでキャンバスにスケッチしてる。
上手く描けてたら写メらせてもらおう、などとぼんやり考えながら私は山田の動きを眺め続けていた。
そんな私が違和感に気付いたのは、時計でも見ようと思った時だった。
視線を落として腕時計を見ようとしたが、何故か目が山田から離れないのだ。集中しすぎて目が疲れたのだろうか。
慌てて瞬きをしようとしたが、おかしなことに瞼までもがピクリとも動かない。違和感は他にもあった。
今更ながら、私は全身がまるで金縛りにあったかのように動かないことに気付いたのだ。
どんなに力を込めても、指先ひとつ動かすことも出来ない。慌てて山田に異変を伝えようとするが、声をだそうとしても一向に身体はその役目を果たさなかった。
むしろ今の私は、呼吸さえしていなかった。そのくせ苦しさは一切感じない。
そういえば、瞬き出来ずに開いたままの目も、乾きを感じることはなかった。
果たしてこれはどういうことなのだろう。
「あ、もう固まった?」
パニックになりつつあった私を現実に引き戻したのは、やけに楽しそうな山田の声だった。
筆を置いてニコニコしながら近づいてくる山田に、私は必死に目でこの非常事態を訴える。この状況を何とか出来るのは、山田しかいないのだ。
先生でも救急車でもなんでもいいから早く助けを呼んでほしい。
「身体、動かないでしょ」
私の頬をサワサワと撫でながら、山田が問い掛けてくる。
私の窮地だというのにこの笑顔。どうにも様子がおかしい。
「ごめんね、それ俺の仕業。悪いけど一週間だけ新堂のこと借りるわ」
あまりに簡単に山田は理不尽な宣告をした。上手く回らない頭でも、自分が山田にはめられたということは理解できた。
でも、借りるって一体…
「お、黒レース」
楽しそうな声とともに、下半身をスウッと冷たい空気が撫でていった。
固定された視界の隅で、山田が私のスカートをまくりあげているのが見える。
カアッと顔が熱くなるような羞恥心。
怒りと恥ずかしさで気が狂いそうになるが、動かない表情はきっと今もぼんやりとした表情のままだろう。
さらに恐怖感が襲ったのは、山田が楽し気に私のブラウスのボタンを弾きはじめたからだ。
ヒヤっとした空気に驚く間もなく、すぐさま下着越しに胸を包み込まれる。
ひそかに自慢だった胸を、山田はまるで品定めするかのように揉みだす。
もちろん快感なんかあるわけがない。ただただ嫌悪感が私を支配するばかりだ。
彼の手を楽しませているであろう自身の弾力がこの時ばかりは憎らしいくらいだ。
しばらく胸を弄っていた山田の手が、遂にブラのフロントホックへと伸ばされた。
あ、と思う隙さえなかった。
プチン、と軽い音と共に私の胸が外気に曝される。
窮屈な下着から解放された胸が、ふるんと勢いよく揺れるのが分かった。
「へぇ、意外にでかいね」
無遠慮な感想とともに、その手は私の胸を揉みはじめる。指で執拗に先端を転がし、全体を揉み込み揺さぶる。
敏感な先端をしつこくねぶられるうちに、嫌悪感や違和感以外の感情が私を満たすのを感じた。
摘まれるたびにキュンと下半身が疼く。
まさか私は…
「…感じてる?立ってるよ」
ピンと弾かれた胸の先端は、確かにねだるように立ち上がっていた。
身動きどころか呼吸さえ出来ないのに、何故かそこは私の快感を如実に告げていたのだ。
それだけではない。
「早いね、こっちももう濡れてるんじゃない?」
急に下半身を這う指に、まるで電撃が走ったかのような快感を感じる。
直接触れられた快感に、先程以上に溢れた液が下着を濡らしていくのが分かった。
どうして私がこんな目に逢うというのだろう。泣きたい気分だったが、涙は流れない。
それなのに下半身はしっかりと濡れているのが余計惨めだ。
事が済んだら絶対にただでは置かない。百叩きの末に警察に突き出してもまだ足りないくらいだ。
「ごめん、虐めすぎたね。でも、怖いのも恥ずかしいのも直ぐにどうでもよくなると思うよ」
そんな私の荒ぶる心情を理解したのだろうか、山田が優しく微笑みかける。
誰のせいよ、と心の中で激しく毒づく私を尻目に山田は絵筆を取った。
「大丈夫。気持ちいのは嫌いじゃないでしょ?」
そう言って山田は、私の下着の上から絵筆の柄を押し付けてきた。
ぐりぐりと痛くない程度の絶妙な加減は、私の理性を徐々に崩壊させていく。
むず痒いような刺激は、あっという間に快感を伴って私を苛んだ。声が出ていたら、きっとあられもない声を上げていただろう。
クチュクチュと恥ずかしい音が私から響いているのが聞こえる。いつの間にかショーツまで奪われ、私の秘所内は絵筆によって乱されていった。
立ち上がった恥ずかしい芽が捏ねくり回されるたびに、私の頭は白くショートする。
柔らかい筆先が芽を撫であげ、私はなすすべもなく高みへと昇っていくのが分かった。
「顔、動かしていいよ」
何やら声が聞こえるが、もはや意味など分からない。
快感のせいだろうか。へにゃ、と顔がだらし無く歪むのが分かる。
開かれた口に荒々しく押し込まれた舌に夢中でしゃぶりつき、秘所の中で踊る絵筆に快楽の涙が流れる。
ひくひくと疼く下半身は、少しでも快感を逃すまいと敏感になっていた。
ようやく山田が私から離れた頃には、既に私は何ひとつ身につけていなかった。
きっと今の私は、唾液と涙と愛液に塗れて情けない姿を晒しているのだろう。
「そろそろ仕上げだね」
パレットを満たす液体を絵筆に絡ませながら、山田は呟く。
仕上げってなんのことだろう。未だに続く快感の余韻に身体を疼かせ、私はぼんやりと回らない頭で考える。
突如、ひたりと秘所に何かを塗られるのを感じた。未だ膨らんでいる芽を執拗になぶりつつ、トロリとした粘性のある液体が秘所全体に塗り伸ばされていく。
それが何かなど知る必要もなかった。爆発的な快感が私を襲い、再び頭の中を掻き乱されたからだ。
丹念に身体を這う絵筆が別な場所に移っても、秘所の快感は変わらないまま私を苛む。
太もも、お腹、胸と、新たな快感が生まれ、体中をめちゃくちゃに駆け巡っていった。
「どこか塗り残しは?」
どれだけ時間が経っただろうか。
もう声も出していいよ、と山田は私の唇をついたのが朧げながらに分かった。
「ふあぁぁぁ…きもひぃの…やま…だぁ…」
大きな快楽の波が徐々に迫るのを感じる。自由になった発声器官は、もはや快楽を告げることしか出来ない。
「…この様子なら大丈夫みたいだね」
にこやかに山田が私の身体を愛撫している。動かない身体がもどかしかった。もっともっとめちゃくちゃに乱してとねだりたい。
「新堂に塗った薬はさ、絶頂と同時に人の身体を大理石に作り替えるんだ。一週間で元に戻るけど…副作用で石の間はその時の快感がずっと続いちゃうんだけどね」
山田が何かを言っている。よく分かんない。そんなの良いから早く私を絶頂に導いてほしい。
「早く…もっと筆で触ってぇ…」
私の懇願に苦笑した山田が、投げやりに私の乳首を弾いた。
「…あ!んああああああああああ!!」
最早、絶頂のスイッチは何でもよかったのだろうか。信じられないくらいの快感。
もう意味なんて分からない。ただ、大きな快楽の波が私の頭を真っ白に染め上げていくことだけが分かった。
同時に、身体を違和感が包む。少しずつ、視界の隅に映る私の身体が白く染まっていくのだ。
しかしそんなことも、もうどうだっていい気がする。
ピシピシと身体から響く音が、私の聴覚や視覚を徐々に閉ざしていった。ようやく動かすことを許された顔も固まり、開け放した口からぷつりと嬌声が途切れても、高ぶりの波は引くことはなかった。
いつまでもいつまでも、押し上げられた快感は途切れることなく私を弄ぶ。
「うわ…こういういやらしい像、先生受け取ってくれるかな…」
快楽で意識が途切れる間際、そんな楽しげな山田の声が聞こえた気がした。