「や、やめ…やめろ!」
困惑と焦燥が、彼の顔からうかがえた。でも私は、服を脱ぐ手を止めなかった。
指は震えていた。彼は必死で私を制していた。それでも、止められなかった。
「狡いよ、いつも、私だけ」
「やめろ、待て、やめるんだ」
「嫌よ…!」
一糸纏わぬ姿で、眠っている間に腕をベッドに縛り付けられた彼に、跨がった。
彼のYシャツの釦も、一つ一つ、外していく。見慣れた、よく締まった胸部が露になった。そこに、啄むようにキスを落とした。
「やめてくれ、…っ」
「やめない…。狡い、いつも、私に、してる癖に!」
彼の唇を奪った。彼が毎晩、私にするように。強引に、熱く、激しく。
「ん、ん…ねぇ、欲しい、欲しいの、貴方が欲しい」
彼のそこに手を伸ばした。いつもなら、私の意志と関係無く私の中に入ってくる、それ。だけど、今日は私が望んで私の中に受け入れる。
「馨さん…っ!!」
「凛っ、うぁ、あ!」
ゆっくりゆっくり、彼を受け入れた。熱い。拡がる。
「あ、痛い…っ、痛い…」
何度受け入れても、その大きさに、動揺する。痛みすら伴う。
いつも、泣きながら彼を拒むけれど、今日は泣きながら、彼と一つになった。
腰を大きく揺らしながら、彼を締め付けた。
「凛、やめてくれ、う…っ」
「ん、嫌よ…、嫌、絶対、誰にもあげないんだから」
私の初めてを無理矢理奪って、毎晩毎晩私を犯していた癖に、 他の女を幸せにするなんて、許さない。
私を捨てるなんて、許さない。
私を彼が愛していないのなんて分かってる。でもこの人は私のものよ。
「出して。赤ちゃん、出来たら、ずっと一緒に居てくれるでしょ」
「凛、ダメだっ!ダメだ!」
「貴方だけ幸せになるなんて許さないっ…」
胸を彼の胸に擦り付けながら、私は喘ぐ。気持ちいい。彼が深くまで来ているから。
「誤解だ!凛、誤解だよ」
「何でもいい、馨さんの赤ちゃん、欲しいのぉっ」
泣きながら懇願した。離れたくなかった。
彼は苦し気に呻いて、欲を吐き出した。
満たされた筈なのに、私は虚しさを抱えたまま彼の胸に倒れ込んだ。