空から幼なじみが降ってきた。
お袋に、お向かいさんの親父さんが入院中と聞いて、雪掻きしてやるべと、向かったんだが。
まさか・・・幼なじみが降って来るとは。
豪雪地帯に生まれた者としては、屋根の雪降ろしを終えた後のダイビングは、お約束だとは思うが・・・。
「梅子さ〜ん」
「・・・」
「竹松梅子さ〜ん!」
「ふっ、フルネームで呼ぶなっ!」
「じゃー何と呼べば良いのかね?」
「そっ、それは昔みたいに、アリスお姉たんと・・・」
ほぼ全身雪の中に埋まってはいるが、止めをさしてやろう。
俺の暗黒史と一緒に埋まってしまえっ!。
「らめっ!、止めて〜そんなにいっぱい白いのを〜」
「・・・」
「・・・」
「・・・さて、とっとと雪掻きやって温泉いくべ」
ん〜結構山積みだけど、雪降ろしは終わってるし、一時間ぐらいで終わるだろう。
よしっ、とっとと終わらせて、久々の村営浴場の露天風呂を堪能するべ。
《ごそごそ、がばー!!》
おう、もう復活か。
「わたーしーもー温泉行くっ!」
言うと思った・・・。
「俺、第一浴場に行こうと思ってるの、混浴だべよ」
「なーに意識してんの、昔あんなに一緒に入ってたべ」
「それとも、ないすなバデーに成長した私を意識してんだべか?」
ん〜22才になっても小学生から変わらず、身長150cm、体重は不明だか軽そう、
髪型も十年来変わらずの伸ばしっぱなしのロング、乳も・・・
ま〜でも、艶やかな白い肌、大きな瞳と長めの睫毛、バランスが整った、少し小さめの鼻と切れ長の口、
顔だけは、村の公民館で見た、ディズニーアニメのアリスに今だに似てるな・・・。
「浴場で欲情・・・てへっ!」
何かむかちゅく。
頭の上に持ち上げ、雪の山に放り込む。
「・・・酷いよ、大人の女性にする事じゃ無いよ〜」
「大人の女性は屋根ダイブしません」
「昔の可愛らしい武志ちゃんが、都会から帰って来たらろくでなしにっ!」
「いいもん・・・、温泉から上がったら、カフェアルバートでガレットを奢ろうと思ってたんだけと、止めるべですよ!」
カフェアルバートのガレット・・・。
村に有る、唯一の洒落た店で出す絶品のガレット・・・大好物なんだよなー。
「あー何だ、とっとと雪掻き終わらせてしまうべ」
「・・・」
「早く終わらせんと、入院中のとっちゃが起き出して雪掻きに来んど」
「・・・」
「・・・温泉にも行くんだべよ」
「・・・おっ、お!ー」
4つ違いの幼なじみ。
何時も一緒だった幼なじみ。
変わってしまってたらと緊張したけど、まだ大丈夫みたいだな。
「テレレレンレレーン♪」
「武坊はレベルが上がった」
「つんでれを覚えーたー」
よしっ!、もう一度屋根から落としてそれから埋めよう。
了。