「今日からお世話になります!」  
 そう言って彼女は少し高めの声で場違いなほどの天真爛漫な挨拶を僕によこしてきた。  
 軽くうなずき、よろしく、と答えると、にっこりと微笑んだまま一列に並ぶ使用人たちの末尾につき、  
一同整列して僕に一礼をする。  
 さて、仕事仕事。  
 オフィスでのいつも通りの一日が始まる。  
 書類に目を通そうとして、ふと何かの残り香が漂っているのに気づいた。  
 「香水はやめてくれないか。気が散るんでね」  
 ざっと使用人たちの間に緊張が走り、互いに顔を見合わせては己の潔白を表情にだそうとしている中で、  
新入りのなんだっけ誰だっけ?だかが一人きょとんとした顔をしていた。  
 女性陣につつかれ、不穏な空気を察した彼女は不本意な顔をしながら言う。  
 「香水なんてつけてません」  
 僕はため息をついた。  
 皆に規律は徹底してある、まず新入りからチェックするか。  
 「ちょっと来い、お前……」  
 執務室の奥にある書斎の扉を開いて、僕が入っていくと、ほかの使用人たちに背中を押されるような形で彼女が  
部屋へ入ってきた。  
 中へ放り込まれ、困惑した顔のまま立ち尽くす彼女。  
 「扉は閉めるように。鍵も掛けて」  
 「すみません、あの、ほんとに何もつけてないんですけど……」  
 彼女は言い訳しながらも律儀に言われたことをやった。  
 僕は質実剛健を絵に描いたような机にもたれて、彼女の姿を上から下まで眺める。  
 意外と悪くなかった。  
 モノトーンの制服が似合う。  
 ふんわりした白いエプロンが腰の華奢さを強調しているぐらいだ。  
 おびえるように立つ彼女の側までいこうとしたが、やめておいた。  
 「こっちに来てみろ。あと、名前は?」  
 「アリサです。さっきも名乗ったんですけど……」  
 「最近の新入りはすぐにやめてしまうからな、いちいち覚えてられるか」  
 会話をしながら僕と彼女の距離が縮まる。  
 いっそう華やいだような空気に襲われ、眉をしかめる。  
 「どこのブランドだ?仕事場に香水なんか必要あるのか、使用人が目立ってどうする」  
 肩の辺りで揃えられたやわらかな髪に指を巻きつけて引っ張ると、  
 「何すんですか!」  
 とやり返してくる。  
 「先ほどから思ってたが、言葉使いも態度も、どうも躾が行き届いてないな……」  
 「育ちが育ちですから」  
 しれっと言い返してくる顔を見ていると、僕の悪い趣味がじわじわと表面に這い出てこようとする。  
 「俺は常々、躾にも色々あると思っていてね。立ち居振る舞い、教養、奉仕の精神……まぁとにかく、躾、だ」  
 僕から発散される穏やかならざる気配に感づいたのか、彼女がそわそわし始めた。  
 「メイドだからって、そんな何でもするわけじゃないですよ、そうでしょ? 一般的に考えて……」  
 「メイドじゃない。使用人だ。後ろを向いて机に手をついて」  
 話の脈絡についていけないといった感じで彼女が黙る。  
 「香水だ。本当につけていないのか調べる。早くしろ」  
 「……脱がさないでくださいよ……」  
 「どこのエロ漫画だ、あほか」  
 本当に僕に脱がすつもりがないことを感じ取ったのか、くるっと背中を向けてきた。  
 「つけてないって言ってるのに……」  
 口ではぶつくさ文句を言い続けてはいるが、態度は素直だ。  
 「もしつけてたらどうなるんです? 解雇ですか?」  
 「その場合はお仕置きだ」  
 「どっちがエロ漫画ですか。じゃあ、つけてないってわかったらご褒美でももらえるんですかね」  
 「そうだな、考えておこう。お前は無駄口が多すぎる、もう黙ってじっとしてろ」  
 「はーい」  
 なんだこの使用人。次の面接からは僕も参加しよう。  
 
 後ろ背に近づく。黒いシャツが細みな身体を綺麗におさめている。  
 「首筋、ではないな……」  
 香水のついている位置を点検するためにそっと顔をよせる。  
 「ふむ……」  
 身体には決して触れない距離を保ち、すらりとのびる腕にも近づく。ブラウスの脇にも。  
 しばらくそんなふうに遊んでいると、彼女の体温が少しずつ上がってくるのがわかる。  
 そっと背中から腕をまわし、両手を机の上にある彼女の手に重ねた。  
 案の定、ぴくっと反応しただけで、逃げようとはしてこなかった。  
 何故逃げないと聞くのは簡単だが、それでは面白くない。  
 後ろから抱くようにして手を這わしていき、スカートの裾をゆっくりと上にずらしていく。  
 小さく震えだした彼女の耳元に唇をよせて、軽く息を吹きかけた。  
 「あっやぁ……触んないでください……約束が、違います……」  
 声が濡れてるのに何を言ってるんだか。  
 「脱がさないという約束は守っている。だが、ここでやめたらご褒美はやれないな」  
 彼女はなんとも言えない微妙な表情を浮かべて僕を上目遣いでみやるが、口は閉ざしたままだった。  
 「そうか、お仕置きされるほうがいいのか。それともこんな雇い主からは解雇がお望みかな?」  
 「……待って! だって、私、あなたの側で働きたくて……面接受かったのは自分でも不思議だけど、  
 ここまでくるのに努力もしたんです……だからお願い、解雇しないで……」  
 そんなところだろうと思った。  
 普通の女なら、調べる時点で逃げ出しているはずだし、僕の難癖に逆に怒ってもいいところだ。  
 僕が黙ったまま彼女の背にもたれかかると、女の香りがいっそう匂い立ってきた。  
 やっぱなんかつけてると思うんだが。  
 「躾の話、覚えてるか?」  
 「……え?」  
 振り向いた彼女の瞳には涙がにじんでいて、それがなぜか僕を息苦しくさせたが、無視することにした。  
 「まず呼び方から。俺を呼んでみて」  
 「…………ご主人様」  
 「そう。正解。はいご褒美」  
 内股に片手をすべりこませて、黒のストッキング越しにクリトリスを刺激した。  
 「……んっ……や、やだぁ……っ!」  
 「言葉使い」  
 「!……や、やめてください……ご主人様……」  
 けっこうノリノリなところを見ると、もしかしてこいつはMなのかな。  
 「主人に指図するようなメイドにはお仕置きがいるな」  
 言って耳たぶを軽く噛むと、彼女は髪を揺らして喘ぎ声を殺した。  
 そして誤魔化すように僕にツッコミを入れる。  
 「さっき……メイドじゃないって……」  
 「わかってないな、使用人じゃ雰囲気でないだろう」  
 僕はストッキングごとクリをつまみあげて、それ以上の反論を許さなかった。  
 指がしゅるしゅるとよく滑る。大きめなクリが布越しに主張していて、なでまわすのに支障はなかった。  
 遠慮も躊躇もなく彼女の勃起したクリをいじっていると、すぐに卑猥な音が響きだした。  
 「お前……いやらしい身体してるなぁ。俺を見て興奮してたんだろう」  
 「……違いますっこれは……その……わたしは……」  
 「興奮してますぅ、だろ? 言ってみろよ」  
 きゅっと強めにクリをこすりあげ、ぴたりと手をとめると、彼女が切ない息を吐いた。  
 「言えません!お願いもうやめて………あぅっ!」  
 クリトリスを指先で粘っこく上下にこする。ぬめりがクリを濡らし始めたあたりで、丸く円を描くように  
ゆっくりと柔らかく指でなでる。くにくにとした感触を転がすようにじっくりともてあそぶ。ストッキングの  
網目がほどけてしまうほど執拗に。  
 「あっあっそんなことされたらっ……ああっもういっちゃぅ………」  
 彼女の身体が軽く震え、弓なりにのけぞろうとした瞬間に、僕は手をとめる。  
 「そんなぁっ………!」  
 非難の声があがるが、これは躾だからしょうがない。  
 「お前はまだ勘違いをしているな……」  
 再び彼女の耳たぶを噛み、直接声を耳の中に注ぎ込む。  
 
 「俺が気に入らなきゃ、このままお前を皆の前に帰すこともできる。  
 こんなに顔を真っ赤にして、イク寸前で、クリトリスを膨らせたまま、な……  
 歩くたびにストッキングがお前のクリトリスを虐めるんだろうな、椅子に座ったら滲んだ愛液がスカートに  
 べっとりついて、雌の匂いを撒き散らして……  
 それともどこかで自分で処理するか? 真昼間に、誰に気づかれるかもわからん仕事場で……」  
 僕が言葉を並べ立てる度に、彼女の腰がびくりと震えた。  
 悪趣味だと自分でも思うが、生意気なくせにウブなやつを見ると穢したくなるんだよなぁ。  
 それに頭の悪そうな女でも無さそうだし、こちらの意図を読む程度のことはしてくれるだろう。  
 「お願い、します……こ、興奮するんです……だから、だから……」  
 たとえ涙目で泣き声だろうが、こういうのは言わせることに意義がある。  
 「……よくできました」  
 僕は耳の中にぬるっと舌をいれ彼女が身を硬くしたところに、手も下着の中へと滑り込ませた。  
 「はぅっやああ!」  
 布越しでなく直接なぶられるクリの感触にたまらず声をあげる彼女。  
 ぐちゃぐちゃでどろどろに愛液を溢れさせておそらく無意識に両脚を開いてきている。  
 「あぅ、はあっあ、あ、あ、あ、いい……ああ……いくぅ……」  
 指でクリをつまみ上げてくるくると擦り上げる。ふくらんだクリが皮に隠れていられず僕の指先に身を晒す。  
 しごくように音を立ててなでまわしていると、彼女が爪先立ちになり尻を浮かし、唇から涎をぽたりと  
机に垂らす。彼女のつっぱった脚がじーんと痺れていくように硬直したところでまた指を離すと、彼女は  
背をわななかせるようにふるわせて思いっきり睨みつけてきた。  
 そんな彼女の濡れた瞳を無遠慮に眺めながら、思わせぶりにびちょびちょになった指を抜き取っていく。  
 「……何考えてんですか……」  
 「何だと思う」  
 「………そんなのわかるわけないですよ」  
 「ふん、そうだな、まず机の上に座ってみろ」  
 彼女は机の上に落ちた自分の涎に気づきもせずに上に乗り、落ち着かないといった感じでこちらに向けて  
脚を下ろす。  
 「どういう状況かぐらいわかるだろう……脚を広げろ」  
 「ちょっ……待って!」  
 「俺はお前のなんだ?」  
 「ま、待ってください……ご主人様……」  
 「そうだな、早くしろ、また寸止めされたいのか」  
 彼女は唇を噛んで黙る。  
 閉じたままの両脚の間に僕の手を滑らせて湿る感触を探りだすと、抑えたような喘ぎが洩れた。  
 クリをいじる卑猥な音だけがしばし流れ、ついに泣きながら彼女は言った。いくぶん恍惚としながら。  
 「お願いですご主人様…………し、してください」  
 こいつはまだ何か勘違いしているな。  
 僕がどういう類のヘンタイか、わかってないようだ。  
 僕は自分のを取り出し、彼女を上から見据える。  
 息を荒くして彼女が自分からストッキングを脱ぎだした。その手が膝までくると僕はストップをかけた。  
 「そのまま、自分で脚を持って」  
 「はい……」  
 だいぶ躾が出来てきたようだ。  
 さすがに2回も焦らすと理性がぼやけるんだろう、ここで逃げ出すことも出来るというのに。  
 「毛が邪魔だな……自分で広げろ」  
 「!……ご主人様……勘弁してください……」  
 「堪忍、のほうがいいな。ほれ、さっさとしろ」  
 彼女は目をぎゅっとつぶり、小さくふるえる指でこわごわと自分の秘所に触れ、そこがぬるぬるになって  
いることに驚き手をひっこめたが、僕が黙ってじっとしていると観念したようにまた指をのばしてきた。  
 「自分でも見たことないんですから……見ないでくださいよ……」   
 バカなことを言うバカな女。ああ、悪くないな。もっと聞きたい。  
 自分のを手で支え、先っぽの割れた部分をじゅわっと濡れそぼるクリトリスに押し付ける。  
 クリを咥え込んだ様な形のまま、手でゆっくりと動かしていくと、あたたかくて尖った感触が先っぽに  
こりこりと伝わってきた。  
 
 「いきますぅもう……いっちゃいますご主人様ぁ……」  
 粘膜同士がこすれあい、ちゅぽちゅぽと間抜けな音がする。  
 「舌よりつるつるしてるだろうコレ」  
 僕の言葉には答えず彼女は顎まで仰け反りながらイクと小声で繰り返し言う。  
 感極まったようにひときわ高くあげられた声を聞き、健気にふくらんでくるクリトリスの感触を堪能し、  
しかしなお僕は動きをとめなかった。  
 「はぅぅっ……いっ?!……と、とめてくださいよぉ……!」  
 「これさぁ俺も疲れないしけっこう気持ちいいんだよな。ほら、手動バイブ」  
 添えた片手を小刻みに早く動かすと、クリが左右に細かく揺すられカリの皺に執拗に翻弄される。  
 「ああああっご主人様ぁ!」  
 回すように吸い付かせるようにクリトリスをなぶり倒す。  
 秘所を広げていた彼女の手に力が入らなくなってきたのか、クリが隠れようと奥へ逃げ込む。  
 僕は指を添えて毛を撫で上げ皮を剥き、クリトリスを大きく曝け出してからまた弄りだした。  
 彼女の興奮したような頬とこぼれおちる涎と、遠慮のないヨガリ声。なかなか良い。  
 「ご主人様ご主人様ゆるしてごしゅじんさまぁぁぁああ! とめてくださいやめ、やめてぇぇぇぇっ……!」  
 か細く叫びながらも身体を幾度も痙攣させ、クリから何度も送り込まれる絶頂に身悶え、喘ぎ、狂っていく。  
 「かんにんですぅぅっかんにんしてくだっ……はあああんんんっ!」  
 彼女から溢れ出す愛液が僕のモノを熱く伝って手を濡らし、床にポタポタ落ちていく。  
 「もういれてくださいぃっおねがいいれてぇっっ……」  
 若干ロレツがまわらなくなってきたような声音で彼女が泣き叫ぶ。  
 やはり勘違いをしているな。僕が入れて出したらそれで終わると彼女は思っている。はは。  
 「メイドに自分のモノをくれてやる主人がどこにいる」  
 彼女がこちらを必死に見てくるので、僕は薄く笑いかけると、彼女は怯えたように瞳を揺らした。  
 理解できない、とそう言いたそうだった。  
 だが答えは簡単だ、僕はただのクリフェチだ。  
 じわじわと可愛いクリトリスをなぶりながら、最終チェックに彼女の締まった足首をつかんで匂いをかぐ。  
 ?香水ではないのか……  
 僕はどうしたものかと考え、ふと思いつき、べとべとになった手とアレを拭き、しまう。  
 束の間の解放に、彼女は後ろに仰け反り激しい呼吸を泣き声とともに繰り返す。  
 「チェック終わりだ。香水の匂いはしなかった」  
 耳元、首筋、手首、脇、足首、セオリー通りの位置からは汗の匂い以外には何も感じられなかった。  
 「……ちぇっく……?」  
 どうしてこうなったかという経緯すら彼女の頭からは飛んでいってしまったのだろうか、それとも  
単なる口実と処理したか。  
 「そうだ。ご褒美やらんとな」  
 机の上で仰向けになっている彼女の脚を押さえつけ、顔を近づけると、尖り立つクリトリスをいきなり  
吸い上げた。  
 「んああっまたいぐぅぅうっっごしゅじんさまぁいぐぅううううっあああああ!」  
 何度も達して敏感になったクリトリスをじゅるじゅる吸われて、イカレたような声で彼女は喘ぐ。そのうち  
濁音が全部ラ行になって、なかなか面白い言葉で何か伝えようとしてくるが、意味がわからなかったので  
無視した。口の中に吸い込んだふくらみきったクリを舌で転がして丁寧に丁寧に芯を探り出す。  
 ころころとクリをもてあそび、皮におさまりきらないほど芯がいじめてくれと身をさらけ出したところで、  
その中心にきゅうっと吸いつき顔ごと動かしてクリをこねまわす。  
 暴れだす彼女の脚を無理やり押さえつけ容赦なくクリを吸い、押しつぶし、ぐちゅぐちゅと音を立てて  
唇で擦りあげた。  
 彼女の鳴き声はさっきからずっと、たぶん「ご主人様」だ。  
 ひどく聞き取りづらいが、その単語だけを何度も何度も叫んでいる。  
 まるでそうしていればいつか許されるとでも思っているかのように、甘く切実にすすり泣きしながら、  
終わらない絶頂に身悶えして、脚のつま先を痙攣させながら、祈るように繰り返す。  
 ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様…………  
 そこまでされるとさすがに僕でもたまらないものがある。  
 中指をねじ込んだ。  
 彼女が大きく腰をくねらせ悶え喘ぐのも構わず中の硬くふくらんだところをくっと押し上げると、  
彼女の悲鳴にまた悦楽の色が増す。  
 
 指先をこりこり膨らんだところにこすりつけ、中から上から両方でクリトリスを丸ごとめちゃくちゃにする。  
 舌で押し潰して捏ね上げながら2本にふやした指で中のふくらみを勢いよくこすりあげると、潮が飛び散り  
床に落ちる。  
 感度の良さに満足しながらなおも虐め続けると、彼女はまた潮を吹き、身体全体を有り得ない力で硬直させ、  
僕の指を痛いぐらいに締めつける。  
 限界か……もう少し遊んでいたかったが仕方ないな。これ以上はお仕置きになってしまう。  
 僕は名残惜しくて動きをとめた後もクリトリスに深く吸いついて口の中でくゆらせ続けた。  
 かすかな刺激にも彼女はビクンと大きく身体を跳ねさせ、中に入れたままの指をぎりぎりと締め上げた。  
 ふと、失神でもしたのか、もう何の言葉も発することが出来ずに呼吸だけを荒くしてぐったりしていく。  
 最後にじっくりと慈しむようにクリを吸い上げてから、僕は彼女から離れた。  
 そうしてからやっと気づいた。初めに嗅いだものと同じ匂いがやはり彼女から漂っていた。  
 僕は彼女の乱れたスカートと白エプロンだけを何事も無かったかのように整えながら、これがフェロモンと  
いうやつなのかと、ぼんやり思った。  
 
 
 一番古株の使用人だけを執務室に呼び、後始末を頼んだ。  
 「面接の時は躾が行き届いているやつを選んでくれよ」  
 気心の知れた僕より年上のその青年は、作業の手をとめ少しだけ微笑むと、細い目でこちらを見た。  
 「あなたのご趣味に合う者をいつも採用しております」  
 僕は小さく肩をすくめてみせると、アリサのやわらかい髪の毛を一度だけ撫でた。  
 アリサはそれだけで目を覚まし、僕の顔を見ると、夢の続きのように惚けた声でつぶやいた。   
 「ごしゅじんさま……」  
 ──今度は僕の名前を呼ばせてみようか……  
 そんな僕達のほうを見ないように背を向ける若き使用人に苦笑しながら、そっとアリサを抱き寄せて、乱れた  
前髪からのぞく小さな額に口付けた。  
 キスをねだるように目を閉じるアリサにデコピンし、調子に乗るなと言いつけると、  
 「はい!」  
 と瞳を輝かせて彼女は言った。出会ったときと同じく、場違いなほど元気よく。  
 僕はまた苦笑いをしてアリサの頭をポンポンとなで、唇にキスをした。  
 
 
      end.  
 
 

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