姉は清々しい程いつもの姉だった。姉を見ているとつい先ほどまでお互い肌を触れ合い、
禁断の性行為をしていたことなんて、していた僕本人が忘れてしまいそうな程だった。
僕はその事件以降、姉のベッドに忍び込む事は無くなった。もちろん禁止されたわけではない。
ただ、これ以上行為を重ねるといつか自制が効かなくなりとりかえしのつかないこをとしでかして
しまうかもしれない気がしたからだ。僕は姉が好きだ。だからこそ今の関係、つまり
姉と弟という関係を壊したくなかった。
僕は一定の距離を置く事にした。近親相姦というものは生物学的にも道徳的にもタブーなものなのだ。
少し間違えば家族の関係は一気に狂うだろう。
もう今までのことは全て夢だった。僕は過去の行為の一切を忘れようと努力した。
そうして時が流れた。僕は中学に入学し、卒業した。そして高校に進学した。
それまでにもちろん恋もした。姉だってそうだ。姉が高校生だった頃は何度か彼氏の
話を聞かされたものだった。言っている事は愚痴のはずが、凄く嬉しそうだったのが
印象的だった。だが、携帯で男と喋る姉はどこか着繕い、平気で罵詈雑言を吐く
いつもの気が強い姉ではなかった。
その様子を見ながら僕は、男の前ではこうも女は化けるものなのかと感心すら覚えた。
僕が高校に進学すると同時に姉は高校の彼氏と別れ某お嬢様女子大へと進学した。
姉が女子大に行くとは以外だった。詳しい理由は知らない。
そんなお互い一年生だったある夏休みの日の夜。
僕は姉が作った飯を食いながらテレビを見ていた。姉は隣に座っている。
父は全国を飛び回る職人で殆ど家に帰ってこなかった。母はバリバリのキャリアウーマンで
帰りが遅いことや家をしばらく開けることがままあった。
少し年の離れた長女は既に成人して自立し、男の所に住み着きもう数ヶ月顔を見ていなかった。
姉と二人きりの食卓。うちではそれは極ありふれた風景だった。
テレビ画面に映るのは子供だましのような馬鹿みたいな心霊写真。
身の毛のよだつような低い声のアナウンサーが解説していた。写真より声が怖い。
だがなかなか心霊写真というものは面白い。昔は本気で怖がったものだが・・・
ボーっと見ているとふと姉がぽつりと言った。
「今日、友達から聞いたんだけどね、その子霊感が強くてたまに見えたりするんだって。」
「何がさ」
「霊。部屋で一人勉強してると、ふと変な気配がして後ろを振り向くと
部屋の端に人が見えるんだって。」
「ふーん」僕を怖がらそうとしているのだろうか。昔から幽霊やお化けの話を
無理やり聞かされ随分苛められたものだ。またそんな手を使おうというのだろうか。
残念ながらそんな歳じゃない。
「んで?それが?」
「知らない人間の幽霊が部屋に居るんだよ?この部屋にも多分いるよ。」
姉は辺りを見回した。なんか余裕こいてるつもりだった僕まで気になってきて
周りを見渡す。テレビの音量が小さいのでやけに壁掛け時計の秒針の音が大きく感じた。
「怖くない?」姉はふざけた顔をしていなかった。本当に怖いのだろうか。信じられない。
「べ、別に。そそそそそんなもん居るわけないだろ。何何??怖いの?www」
「別にそういう訳じゃないけど・・・」以後姉は押し黙ってしまった。
昔から姉には苦手なものが二つあった。地震と雷だ。その二つのどちらかが発生すると
姉はすぐに飛んできて半ベソで僕のところに来るのだった。
静まった後、僕がそれを馬鹿にすると手加減なしで顔面を引っ叩かれ足で腹を蹴飛ばされ
母に泣き付くことがよくあった。雷や地震は唯一、僕が姉より優位に立てるときだった。
大学生になった未だに怖いらしく、平常心を装いながら何だかんだで僕のところに来る。
それはそれで可愛らしいところなのかもしれない。
そんな姉でも幽霊とかには強かった。むしろ僕がどちらかというとそういう話は苦手だった。
なのにこの日の姉はどうしたのだろう。
こんな姉は初めてだった。
その日の夜、僕は部活で疲れていたので10時には自室のベッドに入りテレビを眺めていた。
眠いはずだが妙に姉の話が気になって、部屋の隅に何か気配がする気がして寝付けなかった。
そんな時。
コンコン・・・突然ノックの音がした。
僕は驚き飛び起きた。
「●●?(僕の名前)もう寝た?」
姉だ。こんな時間に何の用だ。
「まだだけど。何?」
姉はゆっくりとドアを開けた。部屋の明かりは消してあるので光源はテレビのみで薄暗かった。
だが寝巻き姿の姉がそこに立っているのは確認できた。
ノースリーブにショーパン。姉の部屋着or寝巻きだ。
「●●?あの・・・ね・・・その・・・」
「な、何だよ気持ちわるいなぁw」
いつもずばずば喋る姉がこうモゴモゴしていると妙に気持ち悪い。
もしかして何か企んでいるのだろうか。薄暗くてよく表情が見えないがもしかすると
手になにか得体の知れないものを隠し持っているのかもしれない。僕は警戒した。
「何?もう俺は寝るつもりなんだけど。明日でいいなら明日にしてくれ。」
僕は関わらないようにしようとした。ろくな予感がしない。
暑苦しい布団を深く被り、テレビを消した。
ガチャン・・・ゆっくりとドアを閉める音がした。
お、すんなり引くか。
「なぁ。一緒に寝よ。」
「ははははははぁ!?」
僕は飛び起き姉の方をみた。薄暗くてよく見えないが姉は僕の目の前にいた。
「○○ちゃん(姉は幼い頃の癖で僕と話すとき自分を自分の名前の略称で呼んでいた)
今日の夕方幽霊の話をしてたでしょ?」
「うん・・・」
僕には姉の真意が掴めずにいた。何を考えているのか。この暑苦しい夜に姉は
このシングルベッドで寝るというのか。
「なんかね、あの話が気になって寝れないのよ・・・」
姉は妙に恥かしそうに言った。表情を見た瞬間僕の心臓が跳ねた。
「いい?」
僕は目を逸らした。何故か恥かしくてたまらない。
「か、勝手にしろよ。」
僕は布団を被り、ベッドの端、つまり壁側に寄り、姉に背中を向けて寝転がった。
すると姉がゆっくりとベッドに入ってきた。
狭いので体が触れ合う。髪からプンとシャンプーの香りがした。姉の女の香りがした。
数年前のあの記憶が甦る。姉と重ねた行為。僕が姉を犯したあの日が鮮明に。
不本意にも股間はいきりたっていた。
「昔よく私のベッドで寝てた時は私の胸の辺りに●●の顔があったのに・・・今は
肩しか見えないね。大きくなったんだね。」
毎日会ってるだろ。何が言いたい。何を考えているのか全くつかめない。
もしかして姉もあの日のこをと思い出したのか?
姉はあの時どんな気持ちだったのだろう。そして今、僕をどう思っているのだろう。
いやそれ以前に今までどんな気持ちで暮らしてきたのだろう。
いつも一緒に暮らしているはずなのに、何も僕は知らなかった。
姉は僕の肩に手をのせて体を密着させてきた。柔らかい二つの肉塊が背中に触れる。
何だ・・・姉は僕にまた4年前のように抱けというのか。
僕は思わず体を姉の方に向けた。同時に二人の顔が向き合う
姉の吐いた息のかすかな匂いが鼻腔に触れる。その瞬間、姉は僕の頭に手を回し
唇を奪った。僕は驚き目を見開いた。とっさに口を閉じた。
姉は口でそれをこじ開けようとした。ぼくはすぐに許してしまった。
激しく交わる唇。唾液。舌。息。全てを本能が向かうままに貪る。
そして姉の体に手を回す。
一瞬、姉の体の華奢さと柔らかさに驚いた。いつも圧倒され続けて僕。
知らないうちに僕は姉を追い越していた。
髪、肩、背中、尻、太もも。全てを触れる。
しかしそれはあまり愉快ではないのか、姉は僕の腕を強引に掴み、下半身に滑り込ませた。
僕は夢中で割れ目を探り出した。昔と違い毛が生えていた。激しく擦る。すぐに雫だった。
「お姉ちゃん、入れたい・・・入れたい・・・入れたいよ・・・」
口が交わった状態のまま超えにならない声で僕は訴えた。股間は既にはちきれんばかりに膨れていた。
我慢できずに僕は姉に覆い被さった。しかし今度はそのままひっくり返され姉が上にかぶさった。
二人の体が壁にぶつかり安っぽい作りのベッドがギシギシ揺れた。
スッと姉は体を起こし、僕の下半身に腰を下ろした状態になった。
行為がやっとここで一時中断された。
姉は僕の顔を見ている。顔は暗くてはっきり見えないがクスリと笑う気配がした。
僕は思わず顔を背けた。一瞬僅かに戻った理性がこの状況を分析しはじめた。
僕はこのまま姉に挿入することになるのだろうか。そうなればどうなる。
僕はまた姉を犯す。今姉を犯したら以後どうなる?
姉はまた体を屈み、僕の唇を吸った。僕のそれが姉の尻の肉に触れている。
「っぷ・・・お、ぷ・・・お、お姉ちゃん・・・」
僕は無理やり声を出そうとする。姉は一旦口を離してくれた。
息が切れる。
「こ、こんなのよくないよ・・・」
このまま行為を続ければもう僕は二度と姉と普通に接することが出来なくなるかもしれない。
いや、既にもうここで中断したとしても多分今までのようには無理かもしれない。
昔とは違う。僕も男だ。こんなことしてしまったらもう姉を女としてみてしまう。
性欲の対象ではなく愛する異性としてみてしまえそうなのだ。
それは決して踏み越えてはいけない線だ。絶対に許されないのだ。
愛だから好きだからなどというヌルい事を抜かして済まされる話ではない。僕達は血が繋がっているのだ。
絶対に駄目なのだ。
僕には僕の生活がある。姉には姉の生活がある。
今のこの行為がもしも発展すればもう全てが狂ってしまうかもしれない。それは果たしてお互いのためになるのか?
絶対にならない。僕は姉が好きだ。生意気かもしれない。僕は姉に彼氏を作り、普通の生活をして欲しい。
「・・・やりたくないの?」姉は尋ねた。
「・・・」やりたくない・・・というのは本心じゃない。
姉はまた僕の唇を奪おうとした。
「こんなの・・・おかしいよ・・・」僕は体を起こした。
「どいて」そして姉をどかし、僕は座り服を着た。姉もパンツを履いた。
「・・・」言葉が出ない。
何か言葉を発しようとした直後、姉は立ち上がり、そのまま部屋を出てしまった。
これがお互いのためなのだ。ぼくは自分にそう言い聞かせた。
以降、僕は姉を避けた。気まずい雰囲気がお互いを支配した。
本当に辛い。家に帰るのが嫌だった時だってある。
姉もバイトや遊びで忙しいというのもあったが、明らかに口数が減った。
反面、心のどこかでまた姉を抱きたいという欲求があるのも事実だった。
姉は大学を卒業した。(短期学部なので2年)
そして関西に本社のある某メーカーに就職した。
姉は自立し、実家を離れた。
僕はその翌年、京都の大学に合格し、実家を出た。
そして入学して二年目に差し掛かる頃。
春ごろだっただろうか。もうその頃にはギクシャクした関係は無くなりつつあった。
というよりそもそも会うことすらあまり無かったといった方が正確だ。
金曜日の深夜、アパートの自室でパソコンを開き同人誌を落として一人ハァハァしていた時だ。
突然玄関のチャイムが鳴った。僕はティンコを仕舞いズボンを履いて出た。
酔っ払ったスーツの女がそこに居た。姉だ。
「な・・・なにしてるのそんなとこで・・・」たぶん半年ぶりくらいに会う姉だった。
「今日四条(京都の繁華街)で会社の飲みがあったからその帰り・・・」
姉は僕に許可も取らずにずかずかと部屋に入ってきた。
ぼくはとっさにパソコンの液晶画面の電源を落とした。
「ち、ちょっと横になっていい?」
「いいけど、なんで自分京都にいるの?」
「京都の営業所に来たのよ・・・てかちょっと黙って・・・」
むっときたが、とりあえずこの酒臭い女に水をやった。
「ありがとう、気が利くな」
「んで、どうすんの今日。」
「帰れると思う?」
「彼氏さんに電話するわ。」僕は姉の鞄から携帯を探り出し電話をかけようとした。
姉には当時既に彼氏が居た。僕と違っていい男だ。
「馬鹿、やめて。」姉は携帯をひったくった。
この後すぐに姉はうとうとしだしたので結局この日は姉は僕の部屋で一泊することになった。
姉はベッド、僕はソファー。寝る場所はもちろん別だ。
翌朝土曜日昼前。僕が目を覚ますと何かゴソゴソと物音がした。
なんだと思ったら姉が掃除をしていた。姉はすごく綺麗好きだった。
たぶん汚い部屋をみたら我慢できなくなったのかもしれない。
「勝手に掃除するなよ・・・」僕は眠い目をこすりつつ洗面台に向かいながら言った。
「こんな汚い部屋、女の子も呼べないでしょ。ありがとうぐらい言ったら?」
姉は雑巾で窓のサッシを拭きながら言った。
普通、他人に掃除をしてもらうと、仕舞っておいたものが別の所に仕舞われ
訳が分からなくなると言う事がよくあるが、姉は片付け上手なのかそういうことは無かった。
姉は週末、たまに僕の部屋に来るようになった。手作りのケーキを持ってきてくれたり、
夕飯を奢ってくれたりすることがよくあった。損得勘定で考えると得なことが多い。
なので僕は姉を歓迎した。一人暮らしでは話し相手が増えるのはいいことだし。