わからない。 わからない。 いくらかんがえても、わからない。
「う〜〜ん……」
「どうしたの麻衣ちゃん、悩み事?」
「……うん。 お兄ちゃんの事なんだけどね、」
「なになに? 乱暴者で殴られてるとか?」
「ううん。それはないよ。 ただね……」
「ただ?」
『お兄ちゃんてさ、なんで私にそんなに優しいの?』
『そりゃあ、お前が可愛い妹だからに決まってるだろ。』
『……妹、だから?』
『そうだよ。 まさに目に入れても痛くない、可愛い可愛い俺の一番大切な妹だからだよ。』
「へ〜 麻衣ちゃんのお兄ちゃんは優しいんだねぇ。」
「うん。
でもね、妹だから、お兄ちゃんだからって、そんなに優しくなるものなの?」
「あたしは弟いるからわかるよ。
下に弟とかいると、守ってやりたいな〜〜って気分になるもん。」
「ふ〜〜ん。 でも私のお母さんとお母さんのお兄ちゃんは仲悪いよ。」
「それはその…… ケースバイケースってやつよ。」
「どっちなの…?」
「う〜ん… でも基本的には弟とか妹って甘やかしたくなるものらしいから。
麻衣ちゃんも甘えるだけ甘えといたら?」
「そうなの?」
「そうよ。 いまのうちに甘えるだけ甘えた方がいいよ。」
「…………。」
甘える… 麻衣は、妹だから… お兄ちゃんに甘えた方がいいの……
「……あ、お兄ちゃん。おかえりなさい。」
「おうただいま。」
「……。」
「……。」
「……?」
「麻〜衣〜 なんか忘れてないか〜〜?」
「? なに?」
「お兄ちゃんに、おかえりのチュー。」
「……、んっ。」
ちゅっ んちゅ、〜〜〜〜〜〜、……………………
「ん〜〜、よし! 麻衣は可愛いなぁ! お兄ちゃんの言う事なんでも聞いて。」
「……いきなり、苦しいよ……」
「おおごめんよ麻衣〜〜」
ぎゅ〜〜〜〜〜
「……だから、苦しい……」
「ごめんな麻衣〜 お兄ちゃんは麻衣が愛しくてたまらないんだよ。
離れてるあいだの時間を埋めるぐらい、麻衣とくっついていたいんだよ。」
「……ご飯、食べよ。」
「おう、そうだな。 抱っこして行こうな。」
「……お兄ちゃん、」
「ん、なんだ?」
「……お兄ちゃんに食べさせてもらわなくても、麻衣は一人でちゃんと食べられるよ。」
「あ〜〜〜…… でもな、お兄ちゃんはこうやって
麻衣を膝の上に乗せながら ご飯を食べさせてあげるのが、
すごく幸せに感じるんだよ。」
「……。」
「ほら、あーんして。 今度はブロッコリーだよ〜〜」
「……あー、ん……」
「な、こうやって口移しで食べさせてたら好き嫌いも無くなっただろ?」
「……うん。」
「食事の後はマッサージだな。 さ、そこに横になって。」
「……。」
「あ、ふ… は…」
「今日もいっぱい麻衣は運動したんだろうからな〜〜
こうやってよ〜く筋肉をほぐしておかないとな〜〜
どうだ? 気持ちいいか?」
「う、ん…」
「そうかそうか〜〜 じゃあもっと揉みほぐしておこうな〜〜」
ぐにっ
「あふっ… そこ、強い……」
「こういうツボはな、少しぐらい強めの方が良い刺激になるんだぞ〜〜」
ぐにっ ぐにっ ぐりぐりぐり……
「あ、ぅん…! 強く、て…」
「ふぁ… ふにゃあ……」
「いい感じに汗かいたな。 じゃあ一緒にお風呂入ろう。」
「ん… ん… ん…」
「ココは女の子の一番大事な処だからな。 こうやってよーく洗っておかないとな。」
くちゅ、くちゅ、くちゅ
「あ、ふ、おに…」
「どうした麻衣? 痛かったか?」
「……痛いのは、あんまりないけど…… もっと、洗って、欲しい……」
「おおそうかそうか。 じゃあこういう汚れの溜まってるところは重点的にしないとな。」
くり、くりゅくりゅくりゅ
「ふ、ふぁああぁ……」
「お漏らししちゃあダメだぞ麻衣。 おしっこは湯船に入る前に全部出しておこうな〜〜」
「はぁ、ふ…」
「のぼせちゃったか? じゃあ早くベッドで横になろうな。」
「じゃあお兄ちゃんは戸締まりしてくるからな。」
……きゅっ
「ん? どうした麻衣?」
「……今日も、一緒に、寝てくれる…よね?」
「……当たり前だろ。 大好きな麻衣と離れて寝るなんて出来ないよ。」
「んっ んっ んっ ちゅっ……」
「今日の麻衣は何だか積極的だなぁ。 そんなに寂しかったのかい?」
「……妹は、お兄ちゃんに、いっぱい、甘えた方が、いいんで、しょ…?」
「……そうだぞ麻衣〜〜〜 可愛い妹の麻衣はお兄ちゃんにいっぱい甘えていいんだぞ〜〜」
「あ…あう、あん!」
「可愛い… 可愛いよ麻衣…」
「お、にい、ちゃ…」
「俺の、俺だけの、俺の為の……」
どぷっ びしゃびしゃっ
「はぁ、ふぅ、はぁ……」
「…………。」
やっぱり、わかんない。
お兄ちゃんは、なんでこんなにも優しいんだろう。
妹だから? でも普通のお兄ちゃんは、たぶんこんなことはしてない。
好きだから? 可愛いから? それでも……
……人間って、お父さんとお母さんから産まれるって……
たしか私のお父さんって、お兄ちゃんが小さいときに死んじゃったって……
なんか、ひっかかる。
お母さんに聞いてみたいけど、家には滅多に帰ってこないし……
それにこの頃、なんかお腹が気持ち悪くて、吐き気がする……
お兄ちゃんに言ったらすごく心配しちゃうから、まだ言えてないけど……
「麻衣…… 麻衣〜〜 好きだ〜〜〜 お兄ちゃんは麻衣が大好きだよ〜〜……」
大きな寝言を言うお兄ちゃんに、息苦しくなるほど抱きしめられた。
「……私も、だよ……」
…………だから、まあいいか…………
終わり