早いもので、アミが人になってからもう一ヶ月が過ぎた。  
あの日は、翌日起きたら亀に戻ってるんじゃないか、という不安もあったけど、  
そんなことはなく、俺は今日も台所から漂ってくる味噌汁の香りで目が覚める。  
 
「…おはよ」  
「ああ、おはよう」  
 洗面所で顔を洗ったりヒゲを剃ったり、身嗜みを整えてから食卓につく。  
その辺はちゃんとするように、とアミに注意されたのだ。  
亀の頃から、アミに触っても手を洗わずに食事したりしていたのが気がかりだったとか。  
※亀はサルモネラ菌を持っているので、触ったらきちんと手を洗うべし。  
「じゃ、いただきます」  
「…めしあがれ」  
 朝食を抜くこともあった俺が規則正しい生活を送れるのは、この世話焼き女房のおかげだよ。  
女房って言っても、アミに戸籍があるはずもなく、正式な結婚はできないのが悩みなんだけどな。  
 
「やっぱり美味いな、アミの卵焼き」  
「…ありがと……」  
 アミの料理は今まで一ヶ月、全部もれなく美味かった。俺のお気に入りは卵焼き。  
野菜系が多めで、肉や油ものはやや少なめ。その辺りは亀だったからか。  
栄養バランスもよく考えられている。最近疲れが翌日まで残らないのはそのおかげだろう。  
そもそも、どうして料理ができるのかが疑問だったので聞いてみたら、  
「神様ができるようにしてくれた」らしい。……美味いから別にいいか。  
 
「さて、行くか」  
「……」  
 無言で曲がったネクタイを直してくれるアミ。本当に、よく気がつくよなあ。  
なんて思ってたら、  
「ん……」  
 目をつぶってこちらに顔を向けてくる。ちなみにここは玄関。  
そう、新婚バカップル特有の『行ってきますのキス』というヤツだ。  
「あいよ」  
 ちゅ。  
背中を屈めて、軽くついばむ程度に唇を重ねる。毎日のように要求されるので、もう慣れた。  
そのくせ、キスしてやると、求めた当人は頬をほんのり赤く染めるんだ。  
「それじゃ、行ってき」  
 そこで言葉が止まる。ぐい、と袖を引かれたから。  
振り返ってアミの方を見ると、耳まで真っ赤になって俯いたまま、  
「今日…あの……ね」  
 消え入りそうな小さな呟きだったが、その意味を理解して俺も顔が熱くなる。  
「…わかった、今日は急いで帰る」  
 こくり。  
今日の俺の仕事はかなり効率的なものになることを、ここに宣言しておこう。  
 
 
 
  ――ちょっと小話――  
 
 ところで、アミの年齢について考えてみたんだ。  
アミ自身も自分が何歳なのかわからないらしいから、推定してみた。  
亀だった頃なら、甲羅の年輪見ればわかったけど…見なかった俺が悪いですかそうですか。  
 アミは、俺が小学二年生(8歳)のときに釣ってきた。で今、俺は24歳。  
つまり、最低でも16歳は越えている。  
じゃあ、釣った時点で何歳だったのか、ということなんだが。  
屋台で釣ったときのだいたいの大きさ、と……それに対応した年齢は……  
 
結論:ほぼ確実に1歳、もしかすると2歳(推定)。  
 
 したがって、アミは17、8歳ということになった。  
…それからというもの、アミを抱く度、胸に若干妙なモヤモヤを感じる。  
6、7歳差…それくらい問題ないよな…? アミはむしろ大人っぽいもんな?  
そうそう、ミドリガメの寿命は20〜30歳らしい。17、8なら立派なおば(ry  
 
  ――閑話休題――  
 
「亀沼(きぬま)、お前最近料理の盛り付けが上達してるよな」  
 食堂で弁当(アミ製)を食べていると、天岡(あまおか)さんにそんなことを言われた。  
俺は以前からごくたまーにではあるが弁当を作ってきていて、その見た目は確かに悪かった。  
アミは綺麗に詰めてるが、それほど派手な弁当じゃないせいか、俺の自作と思われてるようだ。  
「いや、これは俺じゃなくて彼女が作ってくれてるんスよ」  
 幸い、他人をイジったりネタを言い触らしたりする人ではないので、正直にバラす。  
天岡さんは、俺より2歳年上の先輩。机が近いこともあり、ちょくちょく話をする。  
それに、たしか妻子持ちだったはずだ。ちょっとその辺の話を聞いてみたい。  
「そうなのか……よかったな」  
 案の定あっさりした答えが返ってきたが、一瞬遠い目をしたように見えた。  
そういえば天岡さんは以前、重箱入りのやたら派手な弁当を持ってきたことがあったらしい。  
今では普通だけど、そんな物を持たせるなんて、この人の奥さんはどんな人なんだか。  
「あー、弁当と言えば天岡さんは「やめろ、その話は」  
 俺の言葉に素早く反応し、途中で遮る。そんなに追求されたくないことなのか…  
「いや、その話じゃなくて。天岡さんの奥さんについて聞いてみたいんスけど」  
 
 すると天岡さんは、弁当をつついていた箸の動きをピタリと止めた。  
というより、天岡さん自体の動きが、凍りついたように止まっている。  
「…なんかマズいこと聞きました?」  
「あー、いや……アイツはなぁ……」  
 バツが悪そうにポリポリと頬をかき、俺から目を逸らした。  
照れてるのとは違う、と思う。まあ、それほど感情を表に出す人でもないけど。  
なんか話しづらそうだし、こっちから話を振ってみるか。  
「どんな人なんスか? イイ家のお嬢様だとかって噂も…」  
「そんなわけ無いだろう」  
「箱入りのご令嬢だからあんな弁当を……え?」  
「アイツは令嬢なんかからは最も遠い人種だぞ。はっきり言えば馬鹿だ」  
「…バカって…天岡さんがそういう人を奥さんに選ぶとは思えないんスけど」  
 この人なら、甲斐甲斐しく家を守ってくれる…そう、アミみたいな人を選びそうなのに。  
「俺が選んだんじゃない、アイツが俺の所に転がり込んできたんだ。  
 その後はなし崩し式でいつの間にやら……ハァ」  
 奥さんとは小さい頃からいつも一緒で、大学生のときに家に押しかけてきたらしい。  
天岡さん曰く、「猫のように気まぐれで、アホみたいに能天気」な人だそうだ。  
「…そろそろ戻る」  
 一通り話すと、天岡さんは早々に昼食を終えて行ってしまった。  
俺も仕事に戻ろう。さっさと終わらせて早く帰らなきゃな。  
 
 
「上がります! お疲れ様でしたっ!」  
 午後6時を少し過ぎた頃。俺は仕事を切り上げ、ものすごい勢いで会社を後にした。  
課長が書類片手に何か言おうとしたけど、ダッシュで逃走。今日は残業なんかできません。  
なにせ、今日はこれから夫婦の営みが待っているんだ。それも、アミからのお誘い。  
 アミは無口だけど、自分の意思ははっきり示す。気分が乗らないときは絶対にさせてくれない。  
俺も無理させてまでヤりたくないし、毎日するほど盛ってないから別にいいんだけども。  
でも、今日は違う。さっきも言ったように、アミは意思をはっきり示す。  
しないと言ったら絶対しない。逆に、すると言ったら…?  
 
  * * * *  
 
「はあぁ……ひろしぃ…んっ…」  
――こうなる。  
 風呂上がりに全裸で待ち構えられて、襲いかからずにいられるはずもない。  
自分から求めたときのアミは、ちょっと不自然なくらい積極的だ。  
まるで、繋がってないと俺がどこかへ行ってしまうとでも言うかのように。  
今も、舌を絡めあっているというよりは、俺の舌がアミに絡め取られている。  
「ん…っ……む…」  
「………ん…」  
 ああ、幸せそうな顔しやがってコイツは。俺はいい加減、息が苦しいよ。  
ぴちゃぴちゃ、と舌が絡み合う水音だけが部屋に響く。  
 
「ぷは…アミ、いいか?」  
 こくり。  
覆いかぶさって、改めてその体を眺める。  
元々亀だったからか、髪と眉、睫毛くらいしか毛がない。ゆで卵のようにつるつるの肌だ。  
着痩せするのか、胸はやや大きめ…だと思う。そのきれいなお椀型の先端はもう勃っていた。  
「アミ…乳首、勃ってる」  
「あう……」  
 言ってみると、耳まで赤くなってもじもじする。うんうん、やっぱり可愛いな。  
まず、左の膨らみをやわやわとほぐすように揉んでやる。  
右手は体を支えるのに使っているので、右の乳房は舌で外側からなぞっていく。  
アミの胸は弾力があって、手にもっちりと吸い付いてくる。  
擬音で表すなら、『もにゅ』って感じだろうか。  
「っ、ふ……ん、っっ」  
 アミは胸や腹など、前は甲羅に覆われていただろう胴体がかなり敏感だ。  
それなりの大きさはあるにも関わらず、胸をいじるとすぐに反応が返ってくる。  
口からは小さな声が漏れたけど、それじゃあ俺は満足しない。  
それまであえて避けていた薄桃色の頂点を、指でつつき、つまみ、擦る。  
同時に、右のそれを唇でねぶり、舌で嘗め、吸い付く。  
「あっ、や、あああっ…!」  
 アミは声のボリュームを上げ、俺の攻勢から逃れようと全身をよじる。  
 
 なので、手も口も離して攻撃を中断してやった。  
「あ、うぁ……え……?」  
「どうした?」  
 素知らぬ顔…は多分できてない。引き攣って変な顔になってると思う。  
「う、うぅ……」  
 アミの瞳の中に、羞恥と情欲とが混じり合っているのがはっきりと見て取れた。  
と、手が自然と胸を掴む。  
うん、やっぱ無理。俺はSにはなりきれないわ。  
「はう……あ、んんっ…」  
 乳房への愛撫を再開する。乳首はもう、これ以上ないくらい張り詰めていた。  
あんまり張ると痛い、って話をどこかで聞いたような気がするので、やさしめに。  
 
 だいぶ盛り上がってきたところで、手をゆっくりと下へ持っていく。  
ただし、その行き先は秘所ではなく、お腹から腰にかけての辺り。  
その辺の柔らかな手触りが俺は大好きだ。  
柔らかいって言っても、下腹のぜい肉とかそういうのじゃない。  
むしろアミの腰まわりは、くびれが美しい曲線を描いている。  
「アミの体って、柔らかいよな」  
「んんっ……」  
 表面をなぞるよう指を這わせると、ぶるぶるっと震える。  
実際の所はただ撫でたりつついたりしてるだけだけど、胴が敏感なアミには充分な刺激なようだ。  
 
 そうこうしている内に、アミの腰が浮いてきているのに気付く。  
喘ぎに合わせてビクビクと動くのを見て、思わず手を伸ばした。  
そこは、もうぐっしょりと濡れていた。ちなみに、ここにも毛は生えてない。  
「もう濡れてるな…」  
「〜ッ!」  
 恥ずかしさのあまりの行動なんだろう、アミは顔を両手で覆い隠した。  
その姿は、あまりにも扇情的で。  
ああ、お前はどこまで俺を興奮させれば気が済むんだ。  
 
「足、開くぞ」  
 足側にまわってそう言うと、顔を隠したままでいやいやと首を振る。  
もちろん閉じた足に力はなく、簡単に開く。いやよいやよも何とやら…ってか。  
そして、既に蜜をとろりと垂らしたそこが露になる。  
同時に、鱗に覆われた尻尾も見えてくる。もう見慣れてしまった、亀だった証。  
ただ、『お約束』通りとはいかず、性感帯ではない。表面が鱗のせいで感覚が鈍いらしい。  
「もうぐちゃぐちゃだな…」  
「んぅ……はあぁ……」  
 軽く指でなぞるだけで、蜜は糸を引き、アミも甘い吐息を漏らす。  
「アミはエッチだよな、こんなに溢れ出させて」  
「あっ、ん……い、いじわる…」  
 にちゃにちゃ、わざと音がたつように弄りながら、ちょっといぢめてみた。  
「これだけ濡れてれば…っと」  
 入り口を左手でほぐしつつ、右の中指をゆっくりとアミの中に挿れていく。  
膣壁を擦るように指を動かすと、アミの腰が一段と高く跳ね上がった。  
指の隙間からは留まることなく蜜が溢れ、尻尾を伝ってシーツに落ちる。  
「っああ…あ、あ、あぅ…」  
「アミはここ弱いんだよな」  
 俺はそう言って指を曲げ、お腹側の壁を擦りあげてやった。  
「ひぃっ、ああーーーーっ!」  
 アミはたまらず両手を顔から離し、体をくねらせて何とか快感を逃がそうとする。  
長く艶やかな黒髪を振り乱して悶えるその姿に、俺の興奮はますます高まった。  
「アミ、気持ちいいか?」  
「あ、あ、あ…も、もう、ひっ…やめっ、あああ」  
「いいぞ、イっちゃって」  
 指の動きを激しくしようとすると、アミの手が下りてきて俺の腕を掴んだ。  
目で抜いてと訴えかけられて、いったん指を引き抜く。  
「はぁ…はぁ……い、一緒にぃ…」  
 アミは俺の腕を離すと、震える手で自分の割れ目を開いた。  
 
 情欲に染まった目でそんな風におねだりされて、我慢できる雄がいるか? いや、いない。  
俺は再びアミに覆いかぶさると、いきり立ったモノを秘裂にあてがった。  
「いくぞ…」  
「……ん、来て…」  
 すっかりほぐれきった秘所は、俺を根本までつるりと飲み込んだ。  
――アミの中はちょうど良い締め付けで、奥へ導くかのようにうねって、暖かくて。  
「ふあ、あぁぁあぁ…」  
「アミ…動くぞ…」  
 愛液をとろとろと溢れさせるそこから、ゆっくりと自身を抜く。  
その途中、まわりを包みこむ肉襞が逃がさないとばかりに絡み付いてくる。  
正直、気を緩めればすぐに出してしまいそうな程に気持ちいい。  
全部出るかどうかまで引きずり出したら、直ぐさま今来た道を引き返す。  
「はああぁぁぁ…」  
 角度を変え、壁に擦りつけてやると、アミは震えながら恍惚の表情で息を吐いた。  
その背中に手をまわして抱き起こし、対面座位にすると、  
すぐにアミの両腕が首にまわされ、繋がったまま抱きしめあう形になる。  
「あんっ…洋ぃ……深、いぃっ…」  
 この体勢だと、ちょうどアミの最奥を俺の先端が小突く。  
結合部からは愛液が溢れ続け、下腹部をビショビショに濡らしていく。  
腰を揺らして子宮口を刺激してやると、俺を包む襞がさらに激しく蠢いた。  
「ア、アミっ…、すご、イイっ」  
「あっ、あ、あ、洋っ、ひろしいっ!」  
 アミが普段からは想像できない大きな声で俺の名前を呼ぶ。  
普段無口なのは、その声を聞くと俺が発情してしまうからだ、そうに違いない。  
そんな考えが浮かぶほどに、その嬌声は俺を昂らせる。  
もっとアミの声が聞きたい、もっと乱れさせたい。  
そう思うと腰の動きは速まり、それに伴って膣壁もより強く締め付けてきた。  
腰が離れる度に、下腹部の愛液がいくつもの糸を引き、ぱちゅぱちゅと音をたてる。  
「っあ、アミ、俺、もう…っ!」  
「ん…っ、来てっ、洋のっ、あうっ」  
 最後に、アミを思いきり抱きしめて引き寄せ、腰を密着させた。  
「く、うっ」  
「あっ、あ、あはぁぁっ…あ、熱いぃぃ…」  
 白い奔流が、アミの中へと流れ込んでいく。  
俺の先端から熱いものが飛び出す度に、腕の中で柔らかな体が小刻みに震える。  
その顔には、目をとろけさせ、だらしなく口を開けた、淫らな悦びの表情が浮かんでいた。  
 
  * * * *  
 
「…じゃ、行ってくる」  
 体が重い。腰が痛い。昨日は結局、何回やったのか覚えてない。  
それでもいつもの時間に目が覚める。身体がそういう風になってしまっているから。  
「疲れてる…?」  
「んー…少し怠いけど、大丈夫」  
 ずっと一緒にいるから、アミは俺の様子からだいたいの調子を読み取ってくれる。  
夜の生活が原因で体調崩すなんてことになったら、旦那の面目丸つぶれだ。  
この程度だったら、ちょっと時間が経てばほっといても自然に治るだろう。  
「じゃあ……今日は、私が上」  
 
え?  
今 な ん て 言 っ た ?  
ギギギ、という音がしそうな動きで首を動かし、視線をアミへと向ける。  
「…いってらっしゃい」  
 笑顔で手を振ってくるアミ。  
あー…これは有無を言わさぬパターンだ。もう今日も搾られることは確定。  
どうやら、明日も黄色い太陽を拝むことになりそうだ。  
 
<続く>  
 

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