「うっわ……すっげー」  
「うそ。これ、食わえちゃうの?」  
「な、すげーだろ。アニキの部屋にいっぱいあるんだぜ、こういうの。ほら、こっちも」  
 昼下がり。カーテンを閉め切った薄暗い部屋に、小学生くらいの少年が三人。彼らが輪になってのぞき込んでいるのは、  
『月刊にゃんこ 鬼畜版』やら、『大人の通信簿』などとタイトルのついた雑誌や写真集の類だ。彼らの年齢にはいささか不  
相応なものだが、ある意味健全な行為だといえなくもない。  
「なあ、これ借りられねえ?」  
「むりむり。それどころか、アニキが帰ってくるまでに戻しとかないとばれちまうよ」  
「そっか。それじゃ無理だよな」  
「お前エロすぎ」  
「いーじゃんよ。それより、ガッコの女子とかも、やっぱこういうふうになってるのかな」  
「綾瀬とか、早川とか?」  
「げー。早川キモイじゃんよ」  
「いや、だから言ったんだけどな」  
「うえ。想像しちまったよ。気色悪ぅー」  
「バーカ」  
 そんな二人のやりとりを、春日葵はなんとなく離れて聞いていた。雑誌のページをめくりながら、物思いに沈み込む。  
(和葉も、こんな感じなのかな……?)  
 頭に浮かんだのは、一人の少女だった。小さい頃からよく一緒に遊んでいて、たぶんほかの友人たちの誰よりもお互いを  
知っているのではないかと思う。そんな、今まで同性のように接してきた彼女にも、こういう一面はあるのだろうか。ちょっと、  
想像できない。彼女に異性を感じることなど、今までになかったことだ。  
(なんか、来ない方がよかったかな)  
 異性の体への耐えようのない興味と、もっとも身近な『異性』である親友とのギャップが、どうにも居心地の悪いものとして  
胸にわだかまっている。そんな悶々とした気分を抱きつつも、葵は次のページを開いた。  
 
 
「でね、そのときにしずくちゃんがさ」  
 部屋は全体的に暖色の装飾でまとめられている。ベッドの枕元にはあふれそうなほどのぬいぐるみが飾られており、その中に埋もれるようにして、  
いつか自分がプレゼントした目覚まし時計がおいてある。ベッドに寝ころんで顔を何気なくシーツに埋めてみると、ほのかに汗とポプリの匂いがする。  
自分の部屋のようになじんだその部屋も、視点が違えば全く別のもののように見えてくる。葵は落ち着かない気分で彼女の話を聞き流していた。  
「それで……って、あおい、聞いてる?」  
「へ? あ、いや。ごめん、もう一回」  
「聞いてなかったの? ひっどいなー、もう」  
 そう言って、ふにふにとした、やわらかそうな頬をぷくーっと膨らませる和葉。すこし視線を移すと、白い首筋とそれに続く薄く浮き出た鎖骨が視線を  
釘付けにする。ブラウスに包まれた胸元は、まだふくらんではいないのだろうか。抱きすくめれば折れてしまいそうな細い腰に、チェックのスカートから  
のびる、ニーソックスに包まれたすらりとした脚は、自分のものとは違う部品のように思えてならない。  
「? どしたの、あおい」  
 はっと我に返る。自分は、今日はずっとこんな調子だ。我知らず詰めていた息を吐いて、何とか平静を装って取り繕う。  
「い、いや。なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ」  
「へんなのー」  
 言って、和葉はふいっとそっぽを向いてしまう。  
 葵は小さくため息をついて、視線を落とした。自分より一回り小さい和葉の身体。どうしても、それに触ってみたいという欲求を抑えられそうにない。少  
しだけならば、触っても大丈夫だろうか。そっと、不自然でないように手を伸ばして……  
「きゃっ。くすぐったいよ」  
 腰に少し指先を触れさせただけで、和葉はぴくりと反応してきた。  
「あ……ゴミ、ついてたよ」  
「どこ? もうとれた?」  
「うん。もう大丈夫」  
 
 胸をなで下ろす。なにをやっているのだ。これでは、自分は変態ではないか。軽く後悔をしつつも、指先に残るかすかな感触を味わう――やわらかかった。  
だめだ、我慢できそうにない。だが、どうやれば自然に触れられるのだろうか。  
「ねえねえ。なにかゲームしない?」  
 ゲームソフトをいくつか手にして、和葉が上目遣いに問いかけてくる。物思いを続けながら、葵は彼女に応えた。  
「あ、うん。なにする?」  
「えと……これ。『れみんぐす』」  
 ふと思いつく。これは、使えるかもしれない。  
「あ、ねぇ。罰ゲーム、ありにしない?」  
「ん? いーよ」  
「よし。それじゃ早速」  
 無造作に肯定する和葉を横目にみて、葵は小さく口元で笑った。  
 
                   ◆  
 
「だあぁ、負けたー」  
 勝負はものの数分でついた。コントローラを放り出してひっくり返る和葉に、葵は嬉々として告げる。  
「よーし。罰ゲームは和葉だよ」  
「あうう。少しは手加減してくれてもいいのに」  
 よいしょ、と起きあがり、こちらを見つめてくる和葉。その姿に決心が揺らぎかけるが、小さくかぶりを振って、気を  
取り直し、言う。  
「それじゃあ……和葉、横になってよ」  
「えと、こう?」  
 疑問符を浮かべつつも、和葉は素直にこてん、と仰向けになる。彼女の両足を脇に抱えて、葵はそのまま立ち上  
がった。  
「なになに? 恥ずかしいよ」  
「あれ、和葉はこれ知らない?」  
 
 和葉の股間に足をあてがい、すこし押しつけるようにして、足をふるふると振るわせる。  
「やっ、くすぐったい」  
「そう? まだまだ強くなるよ」  
「あっ、だめだめ。なんかむずむずするよぉ」  
 彼女の言葉を無視し、足を振るわせる力を強くしていく。ひくり、と和葉が身体を震わせて身を起こそうとするが、抱  
えている脚を持ち上げるようにして重心を移し、抗えなくする。  
「やあぁ。そんな、意地悪しちゃやだよ……」  
「だめだよ。罰ゲームなんだから」  
「うう。痛くしちゃやだからね?」  
 言いつつも、和葉は顔を紅潮させる。葵は足を上下にさするようにして、少女の割れ目を刺激する。二重の布越しに、  
彼女の体温がじんわりと伝わってくる。  
「うくぅっ。それ、なんか変だよ……」  
「ん? ここのこと?」  
「だっ……めぇ、だって…ば……」  
 少女の声に応えて、下着が張り付く幼い割れ目をつま先でこじ開けるように突き立てる。切なそうに吐息を漏らす彼女  
の様子を見て、緩急をつけ、振動を続ける。  
「和葉、もしかして気持ちいいの?」  
「そっ、そんなこと…あうぅっ…な、ないよ」  
「そう。それならいいんだけど。まさかね」  
「う、うん」  
 言われて、和葉はびくりと肩を振るわせた。葵が意地悪く笑みを作ると、恥ずかしそうに視線を伏せて顔を真っ赤にする。  
「ねえ、もう…やめよ?」  
「どうして?」  
「だって、なんか……変な感じするし……」  
「へえ? どんな?」  
「ひぐぅ! そ、それ…だめ……」  
「痛いの?」  
「そうじゃ…ないけど」  
「それなら大丈夫でしょ? ほら、まだ強くなるよ」  
 じん、としめった感触のする割れ目を、踵でこじる。和葉は腰をくねらせて逃れようとするが、そのまま踵で踏みつけると、  
釘付けにされたように動けなくなる。  
 
「気持ちいいんでしょ? 和葉」  
「ち、ちが……ひゃうぅ…」  
「じゃあこんなことされても平気なはずだよね」  
 割れ目の上部をつま先で激しく摩擦してやると、和葉は悲鳴にも似た喘ぎを漏らし、唇  
を噛んでまなじりにためた涙を一筋流した。  
「あおい……今日、変だよ……もうやめて…よ……」  
「変なのは和葉だよ。こんなことされて気持ちよくなってる」  
「そんな…こと…あっ…ない」  
「じゃあなんでこんなにびちょびちょになってるの? ここ」  
 言って、和葉にも聞こえるように、ぐちゃぐちゃと音を立ててやると、少女は顔を手で覆って、  
はらはらと流れる涙を隠そうとする。  
「だめぇ…だめ……もう、らめ…らよぉ」  
「ろれつもまわんなくなっちゃったの? 和葉は大好きなんだね、これ」  
「ち、ちがぁ…ふ……よぉっ」  
「それじゃ和葉のために思いっきり強くしてあげるから、いっぱい気持ちよくなってね?」  
「や、やぁ…らめ……やめて…やあぁぁぁぁっ!」  
 少女の股間を一度思い切り踏みつけて、そのまま小刻みに蹴るように足を動かしていく。  
小さな身体を暴れさせるようにしてその刺激に耐える和葉を、無理矢理床に押しつけて身動き  
をとれなくしてやる。  
「いいよ。片づけてあげるから、漏らしちゃいなよ」  
「ひゃ、いやぁぁ…らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」  
 和葉は、身体を引きつらせて勢いよく失禁してしまった。ぐったりと力の抜けた彼女の身体を  
解放して、葵は小さく息をついた。  
 
                   ◆  
 
「あおい、なんか今日はすごくエロかった」  
 和葉は床にぺたんと腰を下ろしてこちらを恨みがましく睨め付けている。その仕草をなんとなくほほえましく感じながら、葵は彼女の言葉をあしらっていた。  
「そう…かな。あはは」  
「あははじゃないよっ! すっごい恥ずかしかったよ!」  
「ごめん。ちょっと調子乗りすぎたよ」  
葵は視線を伏せて、声を曇らせる。確かに、やりすぎだったかもしれない。  
「でも……ちょっとだけ…気持ちよかった……かな……」  
もごもごと続ける和葉。聞き取れず、葵は和葉に聞き返した。  
「へ? なに?」  
「う、うるさい! バカ! あおいにもやり返してやるから!」  
「え、あ、ちょっと。待ってよ。ちょ、うああああっ」  
 
 
――fin  
 
 

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