「性の六時間かぁ……」
「……う、えっ?」
「24日の21時から25日の3時までって、1年間で最もエッチする人が多い時間帯なんだって。それで『性の6時間』」
「あ、うん……なんかすごいね……」
「でも、今年は25日の方が多そう。明日土曜じゃない。ね?」
「……うん……」
「世のカップルは元気だねー。年末で仕事忙しいだろうに」
「まぁ、うん……そうだね」
「それを思うとあたしたち、すごく健全だよね。とっくに成人済みなのに」
「……」
「ご飯食べて、お茶して、こうしてベンチ座ってイルミネーション見てる」
「……ごめん」
「違うの、不満じゃないの、すごく幸せだよ。健全すぎるけど」
「……」
「手つないでくれるのも嬉しいよ」
「……」
「でもね」
「うん」
「ちょっと不安になる」
「……」
「別に絶対しなきゃいけないものじゃないのはわかってるよ。何もしなくても、本当にどきどきするし幸せな気持ちになるよ。
でも、あたしのこと興味ないのかなぁとか、したくないのかなぁとか、なんか」
「……」
「ちょっとへこむ」
「それは……」
「あたしはしたいよ、触ってほしいし触りたい」
「……」
「だめかなぁ……?」
「……」
「……」
「……」
「ごめん、祐太郎困らせた」
「や、あのさ」
「ごめん」
「そうじゃなくて、雪ちゃん悪くないから。あのさ、情けない話してもいい?」
「え?」
「俺ね、雪ちゃんのことほんと好きなの。長い事好きだったわけだし」
「……」
「……だってさ、付き合いだしたの11月の終わりだったでしょ」
「うん」
「クリスマス意識してたから付き合い始めたんだって思われたら、……って怖かった」
「……」
「イベントのために付き合うような男とも思われたくないし、大事にしたいって考えてたし、そしたら……うん、手、出せませんでした」
「……」
「あー……絶対今顔赤い」
「……なんだ、あたしに興味ないわけじゃなかったんだ」
「そんなわけないでしょうが。ありすぎて大変なんだよ」
「女として見られてないんだろうなーとか考えてた」
「今日すげえ可愛いって思ってんのに、そんなわけないから」
「うん、可愛いって言って欲しくて頑張った」
「……ほんとに可愛い」
「ありがと。そっかぁ。うん。……えへへー」
「可愛いから、いろいろしたくなって大変になるの」
「今も?」
「……今も」
「……あのね」
「うん」
「もう25日も終わるけど、明日仕事ないよね?」
「ないよ。雪ちゃんもないんでしょ?」
「じゃあさ、その、……いろいろしよ」
「……いいの?」
「さっきからそう言ってる」
「ごめん、今なんか緊張してきたかも」
「……ひとつだけ言っておくけど」
「うん」
「えっと……別にそういう人間じゃないから」
「そういう?」
「あの、確かにエッチ嫌いじゃないし、誘っちゃったけど、祐太郎だからこうなだけで、別に普段そうじゃなくて」
「あー、それは俺も同じだから」
「……」
「好きな子じゃないといろいろしたくならない」
「……うん。私もいろいろしたい」
「あ、もういっこ」
「うん?」
「特別感のない下着でごめんね」
「……うん……」
「でも、一応上下は揃っ…んぅ……ふ、ぁ…」
「…………もう黙って」