「………」「…………」
「何ですかあなたは」「そう言われましても」
「新種の犬かなんかですか」「強いて言うなら淫獣です」
「何類何科何目ですか」「それはちょっと……」
「見た感じ背骨あるみたいじゃないですか」「あることにはありますけど」
「じゃあ何類ですか」「あまり考えたことがありませんね」
「表面は体毛、羽毛の類に覆われていませんね」「すべすべしてます」
「でも鱗じゃないようですね」「そうですね」
「両生類のように全身が粘液塗れじゃありませんね」「そうですね」
「となるとあなたは深海魚と同じ様に進化したことになります」「なんと」
「体がある一部分に特化して進化したのです」「至極納得いたしました」
「それでどうして私の部屋の中にいるのでしょうか」「それが本題でした」
「万が一のために保健所と歯医者の番号は覚えています」「その保健所にはメ…女性は働いていますか」
「生身で民家に押し入ったゴリラを殴り倒した女性の人なら」「後生ですから保健所には連絡しないでください」
「実はここまで嘘です、保健所には連絡しません」「ああよかった、それは何故ですか」
「とある特撮に心打たれたので」「それは何があったのですか」
「ビル並みに大きい怪獣がいました」「ありがちですね」
「いきなり人間が攻撃します」「ありがちですね」
「この時点で私は怪獣に感情移入します」「そうですか」
「まあ、そういうことです。」「ありがとうございます、今は何をしているのですか」
「会社で独り寂しく仕事をしていました」「ああ」
「終わって帰り道、ふらりと誰もいない公園に赴きました」「なんと」
「そして部屋にたどり着いたらあなたがいたわけです」「とてもとてもニアミスでした」
「今から引っ越しの用意を始めるので」「なんですと」
「やや忙しいです。そういうわけで」「手伝います。よいしょ」
「あら、箪笥を軽々と」「生まれつき力持ちなんです」
「非常にありがたいです。お菓子ぐらいも出せませんが」「いま少し心が傷つきました」
「あ、引越し屋さんが来ました」「しまった、これではあなたが汗ばまない」
>バケモノダー
「次の引越し屋さんは三日後に来るそうです」「なんというか、すいませんでした」