貴方を愛し続けた事だけが、私の生きてた証(あかし)。
だからもし手術が失敗して、私が死んでしまったとしても良いの。
お兄様が私を覚えててくれれば、私の愛がお兄様に在れば、私は、リオは、きっとそれだけで幸せだから。
「だからお兄様、この本を読ん……でぇっ!? イタタタタタタタッ!! おひーしゃま、ひたひぃ!! ひたひぃ〜っ!!!」
もっちり頬っぺを引っ張ってツネれば、面白いように伸びる伸びる。
「エロ小説は読まねって言った筈だぞ? それに、たかが目の手術で死ぬかよ」
白い建物の中、白い部屋の中、白い壁に囲まれて、白いベッドで横たわる、それよりも白い肌の妹。
言葉は明るく冗談混じりに、表情は微笑み心配しないでと、小刻みに震える手で俺の手首を握ってる。
明日の朝に行われる手術で、約0、7前後の視力を得ると教えられた。十五年間の真っ暗世界から0、7……凄い変化だろう。
きっと眩しくて、素晴らしくて、そして大変だ。今までは言葉だけで知っていた事や物を、これから長い時間を掛けて一致させて行かなきゃならないんだから。
「リオ、頑張るね? 見えるようになったら、お兄様を一番に見てあげるよ♪」
「ああ、そうだな」
片手は未だに震えたまま、もう片方はほんのり腫れた頬をさすって、明るく、明るく、微笑み続ける。
ハンデも苦しみも表に出さず、心配を掛けない様に、唯々微笑み続ける。
今までずっと、産まれてからずっと、微笑んで、微笑んで、声を殺して枕を濡らして来た。
授業の内容はテープに録音して、夜にはそれを擦り切れるまで再生して暗記し、視力は無くても身体機能を衰えさせない為に、毎日の筋トレとウォーキング。
楽しみは俺が読んで聞かせる小説だけで、それでも人前では愚痴の一つも言わない。
そんな妹を自慢に思って、尊敬して、意識して、それが恋心へ変わるのに時間は掛からなかった。
──お兄様、リオがこのまま死んだら、子供のままでお墓に入らなきゃならないの……それはイヤっ!!
だからっ、今夜だけで良いから……お兄様のおちんぽで、リオをオトナにして?
パジャマの胸元をはだけただけの、色気も無い安っぽい誘惑。それでも中二の俺はすぐに負け、貪(むさぼ)る様に妹を抱いた。
『フルフルフル子』〜フル子の光〜
目の前には病室のドア。すぐ横に取り付けられた777号室の札。間違いなく、このドアを開ければ、妹がベッドの上に居る。
結局、妹の願いも有り、手術には立ち会わずいつも通り学校へ行って来た。そして授業が終わり、ここまで直帰して、これから結果を覗く。
「すぅぅっ、はぁぁっ……ヨシっ!!」
ガチャッ。
俺は大きく深く呼吸をし、力強くドアノブを捻った。
白い部屋の中、白い包帯を目の位置でグルグルと巻かれた少女が、白いベッドに上体だけを起こして座っている。
白いパジャマを着て、楽しそうに詩を歌う。
貴方を愛し続けた事だけが、私の生きてた証。
もし私が死んでしまっても、この愛は貴方に残るわ。
きっとそれだけで幸せだから、貴方の愛は繋ぎ止めないの。
「っ……と、下手な歌でごめんなさい。お医者さんですか? 包帯を替えるんですか?」
妹は恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべ、ドアさえ閉めずに突っ立つ俺を、開けない瞳でジッと見てる。
その光景が神秘的に感じて、心地よい歌をもっと聞きたくて、邪魔をしたくなくて、静かに、後ろ手に、ドアを閉めた。
「どうしたんですか? お医者さんじゃないんですか? なんで、何も言ってくれないの?」
黙ってるから、喋らないから、もう一度リオの歌を聞かせてくれ。
俺はそう思っていても、思っただけじゃ相手には伝わらない。妹からしたら、目が見えない自分の部屋に不審者が入って来たのだから、不安にもなるだろう。
「くんくん……ふぇっ、お兄様!? おにいさま、だよね?」
それでも歌って欲しいから、俺の声は雑音にしかならないから沈黙を保つ。
妹も匂いで確認したんだし、安心して歌ってくれる。そんな想いも、結局は俺が思っただけ。
「お兄様っ、おにいさまっ、おにっ、ぃさまぁっ」
すぐさまベッドから降り、よたよたと両手を前に差し伸べて歩き出す。途中でよろめいて倒れても、匂いを辿りながら四つん這いで近づいて来る。
お兄様、と繰り返し、それだけを連呼して、まるで地獄へ垂らされた蜘蛛の糸をよじ登る様に、俺の足へと必死にすがり付く。
「ねぇ、お兄様なんでしょ? イジワルしないでっ、おにいっ……んむっ」
そして膝立ちになると、くんくんと匂いを嗅ぎながら俺の股間に顔をうずめ、唇でジッパーを挟んで下げ……
「おぉいっ!? ゴメンゴメン、俺だ、お兄ちゃんだってば! 離せほらっ!!」
ようとしたので、慌てて妹の腋下に手を回し、俺と同じ目線の高さまで身体を持ち上げた。
「ふ〜ん……ふふっ、嘘がヘタねハンザイシャさん♪ それとも、ごーかんまさん……かな? とにかく、貴方はお兄様じゃないわ。私の大好きなお兄様は、意地悪なんてしないもの」
リオは俺の頭から顔をペタペタと触りながら確かめ、しっかりと確かめて間違う。
もちろん整形なんてしてないし、風邪も引いてない。昨日会った時と、顔も、声も、変わってない。
それはコイツもわかってるだろうに、ニヤニヤしやがって、何を考えてるんだ?
「だから、俺だっ……」
「証拠を見せてっ!!」
溜め息に続いて出てきた言葉を、即座に遮って上塗りする。その意図さえ理解不可能で、思考を読み取る事さえできそうにない。
ただ眉尻をつり上げ、口を三日月の形に拡げて笑う、イタズラっ子の表情がそこに在るだけで。
妹を床に降ろすと再び膝立ちになり、俺を見えない瞳で見上げて微笑む。
「そう、お兄様はとってもキチクなの。卑猥なセリフを実の妹に言わせて喜ぶ変態なのよ♪ だから、ねっ? 貴方が本物のお兄様なら、リオに命令してみせて?」
最初から最後まで捏造した言葉で楽しそうにからかい、上着の裾を引っ張って早くと催促する。
何なんだよ急に!? ってか、俺から命令した事なんて一回も無いぞ? みんな買って来た小説かお手伝いさんに教わった言葉だろうがっ!!
「ばーか、手術したばかっなのにフザケんな。ベッドまで抱っこしてやるから、大人しく寝てろ、なっ?」
だから俺も再び妹を持ち上げようとして、
パシッ。
それを無造作に払い退けられる。
「っ……やっぱり貴方は偽者なんだ? ハンザイシャなんだ? ごーかんまなんだ? どうせリオが目の見えない事を利用して、レイプしようとしてるんでしょ? そうは行かないわっ!!」
そして両手を自らの胸前へ移し、パジャマのボタンが掛けられている隙間に指を差し入れると、一息で左右に引き裂いた。
「おいっ、何をやってんだよお前は!?」
ブチブチとボタンが部屋中に弾け飛び、代わりに下から覗くのは、重量感たっぷりのバストを覆うスポーツブラ。
そこに押し込められている膨らみは明らかにサイズ違いで、プリントされてる文字は何倍にも引き伸ばされ、乳輪や乳首の形まで浮き出て、パツンパツンで今にも破れてしまいそう。
「確かめるのよ、本当にお兄様かどうか。だから逃げれないように……ふふっ、助けてって大声で叫ぶわ」
だけど色気なんて感じない、真逆だ。俺と妹が同じ言語で話しているなら、妹は間違いなく俺を脅迫しているのだから。
間違いなく俺だと気づいてて、本気で脅そうとしてる。この状況を濁そうとしたら、戸惑わずに悲鳴をあげるだろう。
ああ、嗚呼、頬に冷たい汗が一筋垂れる。心拍速度もフルスロットルで振り切り、胸が、痛い。
「貴方が強姦魔なら、私の口を塞いでレイプすればいい……そして大声なんて出せなくなるまで、はあぁぁっ……メチャクチャに、犯してしまうの♪」
俺はただ、赤みが差す妹の顔を見下しながら立ち尽くすだけ。
手際よくベルトの留め具を外され、ズボンもトランクスも膝までズリ下ろされ、瞬く間に言い訳できない状況を作られてしまう。
もう遅い、もう手遅れ、誰かに見られてしまったなら、目の見えない妹を性欲の捌け口(はけぐち)にする兄にしか見えない。
「貴方がお兄様なら、いつもみたいにイラマチオしていいよ? それともフェラチオがいい? リオ、おクチいっぱい拡げてがんばるから。お兄様のおちんぽペロペロして気持ち良くするからっ」
クチャ……
リオはアーンと口の中を見せ付けるように拡げ、唇の間に透明な唾液の糸を架けて、顔をペニスの前に移動させる。
手は俺の背中に回して組み、後は俺が腰を突き出すだけ。それだけで下半身はトロけさせられ、心地よく精液を搾り取って貰える……そう思ったら、全部フッ切れた。
病院だとか、患者だとか、妹だとか、その辺り。
今、大事なのは、痛いくらいに勃起したペニスを、
「フェラ……してくれ。エッチな言葉で、俺を興奮させながらさ」
「はい、お兄様」
一刻も早くリオの口で解消する事。
「ん、ん、んっ、んっ、んっ……」
ズチュ、ズチュ、ヌチュッ! ジュプ! ジュプ! ジュプ! ジュプ!!
いつバレても可笑しくない。
この部屋への進入を防いでいるのは、鍵さえ掛けれない薄い扉一枚で、恐らく響き渡る水音を外に漏らしてしまってる。
バレるから静かにシてくれと言っても、リオの被虐心に火を点けてしまったのか逆効果。
ん、ん、と短音を発しながらノドの奥まで使って深くペニスを咥え込み、顔を激しく前後させて挿入感を煽って来る。
「リオの、おクチはぁっ、んちゅっ、ちゅぷっ……おにぃひゃまとしか、チューしましぇん……ちゅぱちゅ♪ ぢゅるっ、んはあぁぁっ……お兄様のおちんぽしか、ペロペロしません」
熱く糸を引いて誘う唾液に満たされた口内。鈴口から根元まで往復されるディープスロート。
ずちゅ〜〜〜〜〜っ、
先っぽまで引き抜かれ、
ぢゅぷぷぷぷぶっ!!
一番深くに差し込まされる。
常に水気(みずけ)を帯びてる唇は、前後する度にイヤらしくカリ首へと引っ掛かり、
ザラザラとした表面の長い舌は、裏スジを這いつつも、変則的に竿の部分へと巻き付いて締め上げる。
頬肉は柔らかく、もにゅもにゅとペニスを咀嚼しているかのような感覚で責め立て、食道のヒダは先端に密着して撫で回するのも忘れない。
「んぢゅ、んぢゅっ!! ちうっ、ちゅっ、ふんん……ふあっ、はぁっ、このおちんぽがリオのダンナさまだって、リオの体に教えて欲しいの。
このぉ、太くて固いお肉の棒がぁ、リオのご主人さまだって……わからせて欲しいのぉっ!!」
だけどリオは名残惜しそうに途中で口を離すと、バンザイをして両手を頭上に掲げた。
これがどう言う事なのか一瞬で理解し、俺はリオの手首を掴む。もうここまで射精感を高められたら、引き返すなんてできない。
「苦しいかもしれないけど、我慢しろよ? ふぅぅっ、ふっ!!」
ゴツンと行き止まりにぶつかるまで、今度はこっちからペニスを突き挿れる。
手加減なんてせずに荒々しく、妹の口を性器に見立てて、思いっきり出し入れを繰り返す。
「んっ、ぅぅ、んにゅ、んぢゅぢゅ、ぁふぁっ、おにぃ、さっ」
腰を引き、打ち付け、
ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ……
快楽を求めて行く。息苦しそうな妹の呼吸は気にもせず、ひたすらに食道まで小突き回して口を犯し尽くす。
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、リオ、リオ、リオっ!!」
突く度に揺れる長い髪も、耳まで赤くしてる白い肌も、プリプリの唇もっ! 弾力の有る胸も、可愛らしいヘソも、ムチムチの太股も、全部、ゼンブ、ぜんぶっ! ぜんぶ俺のだっ!!
限界は近い。奥底から登り詰めるような快楽。後少しピストンすれば放出できるだろう。
「んっ、もちゅっ♪ ぢゅっ、ぢゅるっ、くちゅ、んんっ、ちゅぷちゅぷ」
じゅっぷ、じゅっぷ、じゅぷじゅぷジュプジュプジュプ!!
全神経を下半身に持って行かれ、精液を直接リオの胃に注ぎ込む事しか考えられない。
「ぐっ、ぐぅっ、ふっ、だすぞ? だすぞリオっ!? クチに中出しするからなっ!!?」
ペニスが小刻みに震え始め、それを敏感に悟ったリオは、腰の打ち付けに合わせて一層に激しく顔を前後させる。
ジュボ! ジュボ! ジュボ! ジュボ! ジュボ! ジュボ!
自分の苦しさが増すのも構わず、ペニスに肉厚な舌を絡み付かせ、頬まですぼませて強烈に吸い付く。
もう限界だっ!! もう、もうっ!!
「があぁああああああ!! イッ、くっ……つあぁっ」
ビュルビュルッ!!! ドクンドクンドクン、びゅくびゅくビュクビュクビュク……
「んむぅうううう!!? ん、んっ、んっ、ぅあ、ぁ、ぁ、んぐっ、んくんく……ぢゅぱっ、んはあぁぁっ♪♪ ぁはあぁ、こんなにいっぱい、オナカにっ、はいらないよぉ♪♪」
長い長い射精が終わり、ペニスをズルリと引っこ抜く。
俺は荒い呼吸のままリオの手を解放し、フラフラと後ろへ倒れて壁に寄り掛かった。
「はぁっ、はぁっ、っ、はあぁぁっ……」
「ああっ♪ お兄様のアクメ汁が、まだリオの中でばちゃばちゃ泡立ってアバれてるの。このままだと、子宮までたどり着いちゃうんじゃないかな? ついちゃえば……いいのにね?」
酷い事をした自覚は有る。だけど、リオは俺を責めない。それどころか、幸せそうに腹部を撫でてる。
やっぱり、リオは俺が好きなんだ。俺だってリオが好きなんだから両思いまで確定。
でも……それでも、リオが包帯を取った時、リオの目が視力を手に入れた時、「お兄様ってカッコ悪い」。そう言われる妄想が頭を離れない。
今はただ、ぺたぺたと俺の形を確かめて寄り添う、妹のぬくもりを噛み締めるだけ。
『みえるフル子』に続く。