あのころの僕らは親友だった、「性差」なんてものがなかった小学生時代
何をするにも僕らは一緒でサッカーやヒーローごっこ、鬼ごっこなんかにも二人でよく参加していた
かけっこでの勝負は、一進一退の戦いが続き結局、彼女の親の転勤離れ離れになるまでに勝負はつかなかった
七年前にこの町を離れる時、彼女とした約束を僕はまだ覚えている
「また引き分けだな」
「うん…」
「んだよ…しんきくせー顔すんなよ」
「うん…、でも」
親しんだ土地を離れる不安と彼女との別れの寂しさに泣きそうになりながらも何とか答えを返す僕
そんな僕を励ますように彼女は泣きそうな顔でも笑いながら告げる
「…、おれがんばってすげーはやくなってやる!」
「んでおまえとまた会ったときにびっくりさせてやるからな!」
「それまでに他の奴に負けたらしょーちしねーぞ!」
「うん…僕も負けないくらい速くなってみせる!」
「それまで誰にも負けない!」
「それでこそおれのライバルだ!」
そういって彼女と涙を流しながら交わした約束は僕の大切な思い出だ
「懐かしいなこの公園」
再び親の転勤で幼い頃すごした思い出の町に帰ってきた僕春崎昭(はるさき あきら)
引越しの後片付けもひと段落して、昔住んでいた家に再び戻ってきたような気分で町を散歩していると彼女とよく走り回った公園を見つけ公園の中の景色を見ながらつぶやいた
「本当に懐かしいなぁ…よくここであいつとかけっこしてたっけ」
思い出の景色と変らない事に懐かしさを感じて、彼女との勝負の後座っていたベンチに腰を下ろす
「もしかして春崎昭君?」
「へあ?」
聞きなれない声にフルネームを呼ばれ、驚いて振り向いた先には一人の少女がいた
背中まで伸びるストレートの黒髪、絶妙なバランスで整った顔立ち、少し胸は足りないけれどそれを補って有り余るプロポーション、清純という言葉が丸々当てはまるような雰囲気、10人に聞いたら10人が美しいと答えるであろう完全無欠の美少女だった
「やっぱり昭君だ」
微笑みながら僕を懐かしそうに話しかける美少女
しかし、僕にはこんな美少女の知り合いなんていない、残念ながら
「覚えてる? 私、川島 冬美(かわしま ふゆみ)小学生の頃一緒だった」
「冬美!? あの冬美なの!?」
幼かった頃約束をした冬美がこんな美少女になっていたなんて僕には信じられなかった
思い出の中の彼女は言葉は乱暴で、言葉より早く手が出るような子だったはず!こんな清純派美少女になるなんてありえない!
僕はにわかには信じがたい女の変りように唖然として言葉を失った