僕のご主人様は、24歳の天才魔術師……。
町にアトリエを持っていて、ちまたの人たちからは
「生粋の魔女」と言われてる……。
「ただいま。帰ったよ」
バタン、と扉が閉まる音がして、僕は、ゆっくりと彼女の方へ向かう。
そしてご主人様自身の脱いだローブを自分が手に取り、
玄関の近くにある洋服掛けに爪で切り裂かないように丁寧に掛ける、
その、小さな布きれのようなローブをみると、本当にご主人様と自分の体の大きさの差が
しみじみ解ってしまうのが……悲しかった。
「……ごめんね、また……遅くなっちゃった」
僕の首に抱きつこうと思っていそうだったので、
ゆっくりと跪くと、ご主人様は首に抱きついてきて、
僕のふかふかとした首に頬ずりしてきた。
「寂しかったよね……レム……」
「大丈夫ですよ、マスター」
僕はそういって、その大きな手をご主人様の頬に当てる……。
僕は……人じゃない
僕は、頭が獅子、体が虎人と熊、尾が猫で、
カラスの羽根を持ってる、キメラという生き物で。
ご主人様が始めて「作った」生き物だった。
他人から見ての第一印象は『強そうで獰猛で凶暴な獣』だろうが……
死にそうなだった猫人の少年の心を埋め込んだ結果、
今の性格で落ち着いている。
「さぁ……夕御飯ができていますから……」
と、そこにある、テーブルと椅子達に視線をやる。
けれど、ご主人様はあまり嬉しそうな顔をしない……。
毎日、彼女が好きな物を選んで作るのに……。
いつもなら、
「今日はアリナちゃんが実験で失敗しちゃって……室長がカエルになっちゃったの」
とか、
「セリエナちゃんったら、私に恋愛相談なんてしてきちゃうのよ?」
とか、毎日魔導研究所についてのことを話してくれるのに、
今日に限って、一言も何もしゃべらないのだ。
「あの……今日は……」
と、僕は言いかけた、一瞬ご主人様の視線がこちらへ来る、
でも、僕はその先は言えなかった。
そんな沈黙のまま、シチューが半分ぐらい減ってきた時のことだ。
「……あのさ」
「はい……」
「やっぱり、エルフは、人に近い姿の人としか、愛せないのかな?」
……スルーしたい話題だ、その話は、もう、何十回されたことか。
ご主人様は、端から見れば、変態……とでも言うのだろうか、
いや、別に同性愛とかSM好きそういう物ではない、のだ
どうして、そう、ご主人様は、僕を愛して居るんだろう
僕は、ペットだ、ぶっちゃけいえば、そこらの犬と変わらない。
ただ、魔導生物で、そこらの動物より頭が良くて、
会話ができる、ただそれだけの、召使いであり、奴隷であるのに……。
「……ご主人様……」
僕は彼女にさわることができなかった……。
極力、さわりたくなかった……。彼女とは同等ではない、
むしろ、ひどい扱いをしてくれないだけ、ありがたいのに。
僕のことを思い切り心配してくれて、
愛情を注いでくれて……でも。
同じではないのだ、立場は向こうの方が上でなければならないのだ。
ぼんやり、どうフォローして慰めようかと、
僕のあまり賢くない頭の中でくるくると回転させていた。
……そうしているうちに、ご主人様の食事は終わり…。
戸棚の中から、少し大きなビーカーを用意し、更に空の小瓶を取り出して、
それを持って行く。
「持ってきました」
と、言って、ご主人様に知らせると、ご主人様はゆっくり頷いた。
僕は股を広げて膝立ちをして、背をそらした状態(うまく言い表せないな……)になると
ゆっくりと、股間についている布きれを下ろす……。
僕の股間に人の形の、でも、更にそれを巨大に凶悪にしたモノがくっついている。
虎人のものだそうだ……。
まだだらりとしているそれにご主人様はちいさな手をつく
「ほら……私が出してあげるから……じっとしなさい」
そういって、ご主人様はゆっくりと優しくしごきだした。
はじめは慣れなのだろうか……全く何も感じなかったが
段々とそれは硬度と大きさを増してくる。
たまなくなったのか、ご主人様は、その太い根に、舌を出して舐めだした。
僕から見ると小さいなめらかな舌が、ヌメヌメと這っていく。
「グゥ……ぁぁっ……ぅ……ぐぅ……」
天へと向かってそそり立つその肉棒を、ご主人様は必死に舐め……
それは透明な液体を沸き立たせ始めた。
「んむ……ん……ふろい……れるの……ひんほ……」
ドキドキしている僕の心臓……そして無意識に動いてしまう熊の片腕は、
ご主人様の頭へと動く。逃がさないように。
……30%しか残っていない理性の大半が罪悪感に包まれる。
が、70%はこの女を逃がさないようにするにはどうしたらよいか……と
其れしか考えられなくなってしまっている。
「……早く……いっはい……らふの……んっ」
ご主人様の舌はやがて亀頭に向かっていて、
割れ目に入り込んでくる……。
その切なそうなご主人様の顔をみて、ナニカがこみ上げてきた。
「う……ぉ……ォオォオオオオオオオオっ」
ドブッ!ゴボッ……ドビュルッ……
黄ばんだ白い色をした液体が、ご主人様の顔……いや、上半身を汚す。
更に、それはしたたり落ちて、地面に広がる。
僕とご主人様は、一瞬ぼーっと、そのまま動けなくなっていた……。
数秒して……。
「……っ……ご、ごめんなさいっ……」
僕は耐えられなくなって、自分の舌を、ご主人様の方へ向けようとした……。
自分の体液を舐めることは汚いことだが……でも
「まって!舐めないでっ!」
ご主人様ははっ、として顔を引き締め、僕の目を見る。
そうすると、ゆっくりと僕のだしたその液体をすくい取り、
瓶の中へと詰めていく。
僕のような生き物のこの液体は、加工用途に適しているらしく
魔法薬の原料として重宝されるという。
さらに僕らは元々獣であるから、性欲は強く、何度も採取できる訳で、
僕のような使い魔を飼っている人たちの日課は、まずこの処理らしい。
しかし、他の人たちはこんなに気持ちよくはやらない。
前、ご主人様の友達が来たときに言ったのだ
「……金になるっていってもさー。やっぱあんな化け物のち○こを絞るのってやだよね。」
と、こっちをみて言ったのだ。
けれど、うちのご主人様ときたら、何時も顔を赤らめる
まるで、交尾の時の雄と雌のように。
ある程度瓶に詰めると、ご主人様はあらかじめ準備しておいたタオルを取り出し、
僕のそれを優しく拭いていく。
怒濤は収まらないけど、少しは我慢しなきゃいけない。
「……ありがとう、本当は、やだよね……こんな事」
落ち着いた、というか落ち込んだご主人様の声
「いえ……慣れっこですから、それに、こういう事は我慢できませんから」
と僕は返事をする。
別に発情期というわけではないのだが、定期的に出さないと気が狂う。
どこか人間じみている、というのだろう、このことを。
てきぱきと周りをきれいにすると、ご主人様はバケツの中にそのタオルを放り込む。
そして、僕の唇にキスをした。
「……スキだよ……レム」
「……」
おかしいよ……だって、僕は魔獣、キメラだもの……。
こんな変な魔術師が、僕のご主人様である。