「おー、可愛い弟クン。今日はバレンタインだけどもらえるものはもらったのかな?」  
 
 帰ってくるなりのハイテンションかよ、姉ちゃん。  
「3つ……全部義理だけど」  
「おいおいおいおい、わたしに言わせりゃーキミがもらうのは義理チョコじゃないぜ。  
 
会社の上司なんかに『渡した方がいいのかなあ。めんどくせえ』って思いながら  
わたすのが義理チョコってもんさー。  
学生のキミが貰うのはみんなみんな好きで渡されるチョコだろー。友達として好き。  
先輩後輩として好き。恋人として好き。ね?」  
 一理ある。ような気がする。  
「訂正します。友達として好きでもらえた(のだろう)チョコが3つ」  
「よろしい。さて、ここで問題だー。このわたしがもってるこのチョコは。  
今からキミに渡すこのチョコは、一体どんな意味の『好き』が詰まったチョコでしょう?」  
 大袈裟な仕草でチョコを出しても格好良くないよ、姉ちゃん。  
「そりゃあ、弟して好きとか家族として好き、のチョコでしょ?」  
「んにゃ。半分正解。だから半分だけあげよー」  
 不正解ならくれないつもりだったのか?  
「目つぶって軽く口開けな。食べさせてあげるから」  
 恥ずかしい……けど、誰も見てないし言うこと聞かなかったらまたうるさいし。  
「はいそれでは口どけまろやかなチョコを召し上がれー」  
 直後。唇に触れたチョコとは違う柔らかい感触におどろいて目を開けると――  
そこに姉ちゃんの顔があった。  
「口どけ最高。半分こ。ごちそうさま」  
 言って、姉ちゃんはチョコのついた唇で笑った。  
 ……ところでさっきの問題、100%の正解はなんだったのだろう?  
 

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