【対オーク戦in闘技場】
「姉さんっ……!」
「大丈夫、私の後ろに……」この姉妹は絶望的な状況に立たされている。
円形の建物の観客席には下卑た野次を飛ばす男達が大半を占め、姉妹が無様な目に合うのを待ち構えている。
闘技場、姉妹の目の前には3匹のオークが姉妹を捕らえようと。
身に付けた粗末な腰布からはその人間よりも遥かに大きな肉棒がはみ出している。
妹はその恐ろしさに立つことが出来なくなり、姉はその妹を守ろうと短剣を構えた。
「来るなら請い、化物ども!」
「助けて、母様、助けて……」
妹は姉妹達の母親の写真が入ったロケットに向かい一心不乱に祈る。
ぐおおおお、とオーク達が吼え、姉の動きがすくむ。
その隙を逃がさないとばかりにオークが姉に向かって走り出し、短剣を容易く弾き飛ばした。
「ああっ……!」
振りほどこうとするがその強靭な力から逃れられず、完全に捕まってしまう。
「母様の祈りギロチン!」
すると妹が座ったままの姿勢で跳躍、
そのまま高速回転して見事な向かって右側に立っていたオークに回し蹴り、
誰の目にも映らぬ程鋭く、速く繰り出された妹の右足は刃と化し、オークの首と身体を切り離したが首は落ちずに身体の上に残る。
「母様の祈りスラッシュ!」
続けて既に生きてはいないオークの肩を踏み台にして再跳躍、
頭より高く跳び、オークの正中線を真っ直ぐなぞるようにして踵落とし。
「母様の祈りスマッシュ!」平手を突き出す事により妹の掌より放たれし衝撃波は、
人間の身体一つ容易にくぐり抜け、オークの腹へと、その臓物を、骨を染み渡ってゆく。
妹がその脚力を以て定位置に辿り着き座り込んだときには、
オークの内一匹の首が落ち、一匹の身体が裂け、一匹の腹が破裂し、
人間の眼窩、耳、鼻孔、口からは血が吹き出し、絶命に至った。
大番狂わせによる重苦しい沈黙の中、妹は呟くのであった。
「持ってて良かった、母様(三人目)の御写真」