「うおう! これは美味い!」  
お付のメイドが昨夜から何を作っていたかと思えば、コトコトとカレーを煮込んでいたようだ。  
 
「旦那様は良く煮込んだカレーがお好きですから。 辛くはありませんか?」  
にっこりと、してやったりという笑顔でメイドが喜ぶ。  
彼女は素直に喜んであげると、とても喜んでくれる。  
私が嬉しいことは彼女も嬉しいらしい。  
 
「後から熱くなってくる辛さだね。 煮込んだ旨味が先に味わえるから、食が進むよ。 これくらいの辛さがちょうどいいようだ」  
次から次へと口へ放り込む姿を見せつけながらカレーを楽しむ。  
ふと見ると、メイドの笑顔が妖しいものへと変わっているようだ?  
 
「カレーのスパイスは漢方薬と同じものが多いのですよ。 なかには滋養強壮に効くものもありまして……」  
頬を赤くしながらうっとりと微笑む。  
 
「この熱さは……カレーか? それとも……」  
「さあ? どうでしょうね。 あとで、試してご覧くださいませ」  
艶然とした笑みを浮かべてメイドが下がる。  
 
「お代わりもありますから、たんと召し上がってくださいませ」  
後姿からは顔がうかがえない。 しまった、またやられたようだ。  
熱くて眠れない夜に、お付のメイドを呼び出すことになる自分の姿が目に浮かんだ。  
 
 
翌朝  
 
 
「あら、どうしたの? 動きがぎこちないじゃない?」  
「え? ええ、ちょっと……」  
お付のメイドが他のメイドに声をかけられている。 理由はなんとなく判る。  
私も、パンツの中はヒリヒリとしているからだ。  
 
「旦那様、何かこう、変じゃありませんか? 痒いような、痛いような」  
「ああ、判らないかい? 昨日のカレーだよ。 二人とも、粘膜質をカレーの辛味成分でやられたらしい。 今度から気を付けような」  
口の中にカプサイシンでも残っていたのだろう。 おかげで、今日一日は下半身に違和感を持ったまま仕事をしなきゃならん。  
困ったものだ。  
 
「でも、旦那様。 痒い感じがするので、二人で擦りあったら好くなるのではないでしょうか? 今日はお昼にお仕事場に伺いますね。  
 可愛がってくださいまし」  
すれ違いざまに耳元でとんでもないことを言いやがる。 まったく、カレーの強壮成分のおかげで朝から大変なんだ。  
責任を取らせてやろうじゃないか。  
ニッコリと見送るメイド。  
ニヤリと見送られる主人。  
これはこれで、幸せな日常なんだろうなと、素直に喜ぶことにした。  
だって、私のメイドがあんなに喜んでいるのだから。  
 

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