「あ〜あ、とうとうこの日が来ちゃったか」  
 純白の花嫁衣装に身を包んだミリアはそう言うと溜息を吐いた。  
 持ち主の気分はどうあれ、その紅色のロングヘアーに白いドレスは見事に調和していた。  
 「あらあら、溜息など付いたらせっかくの婚礼の儀式が台無しですよ」  
 「婚礼って言っても、あいつが相手じゃあね」  
 着付けを担当した侍女の言葉に、ミリアは肩をすくめる。  
 「何を言っているんですか、シルス様と一緒になれるなんて羨ましい限りですよ」  
 「何がよ。あんな泣き虫シル坊……」  
 「子爵閣下をそんな風に言えるとはミリア様ぐらいですね」  
 「……ちょっと散歩に行ってくるわ。外の空気を吸いたいもの」  
 苦笑する侍女にそう言うと、ミリアは部屋を後にした。  
 
ほとんどの土地が山岳地帯である領地に広がる光景は、決して風光明媚な物ではない。  
 (本当にいつ見てもつまらない風景ね)  
 周りを見渡せばあるのは、荒れ果てた山と荒野だけと言うありさまだ。  
 彼女の一族はこの国の中で弱小貴族の一門である。  
 最高で子爵の貴族位しかなく、王都にいる貴族達と比べればその財力も権力も微々たる物だ。  
 しかもお世辞にも豊かと言えない土地のため、農作物などの収穫は多くなく、国の端っこであるため交通の要所になる事もない。  
 食うに困る程貧しい訳でもないが、地位を求める大商人や軍人などには全く相手にされない虚しい一族、、、  
 別の土地からわざわざ嫁いでくる者も居ないため、必然的に結婚関係の相手は親戚筋になる。  
 「あー、何で相手があいつなのかな」  
 ミリアの頭に子供の頃からの幼馴染みの顔が浮かぶ。  
 年上のくせにいつもいつも彼女の影に隠れていた少年、、、  
 今は見違えたように逞しくなったが、その時の印象が強いせいかどうしても異性として見る事が出来ない。  
 (て言うかあいつ、未だに毛虫とかが苦手なのよね)  
 
ちなみに彼女はクモやナメクジでも平気で触る事が出来る。  
 昔はよくそれを持って幼馴染みを追いかけ回した物だ。  
 幼馴染みが十歳の時ちょっとした悪戯心で、誕生日プレゼントの中にクモとか毛虫を忍ばせて寝室に置いておいた。  
 しかしどういう訳か開ける前にそれが逃げ出し、翌朝幼馴染みが起きてみると全身クモと毛虫にたかられていたのだ。  
 (あの時は凄かったな)  
 幼馴染みは悲鳴を上げながら屋敷中を駆け回り、終いには背中をでっかいクモがはい回ったため、下の方を両方漏らしてしまったという凄惨さだ。  
 そしてその後、ミリアが犯人である事がばれて両親に物置に閉じ込められたのだが脱走、幼馴染みを連れ出し、その尻を叩いて無理矢理木登りをさせた。  
 しかし、高くて降りれなくなり、ミリアが下でしばらくはやし立てていると枝から落下。  
 十二針も縫う大けがをした。  
 そして怒り狂った両親に、ダンジョンに放り込まれそうになったのだ。  
 そんな関係を十数年以上続いているから、今更結婚相手として見ろなど無駄な相談である。  
 無関係な第三者がこの話を聞いたら、ミリアのためでなく、その幼馴染みのために結婚を破棄するように彼女を説得するかも知れない。  
 
 
「え?」  
 気付いた時には目的の場所に着いていた。  
 山岳地帯に出来た小さな林、入り組んだ場所にあるため、あまり人に知られておらずミリアの秘密の場所、、、  
 
 そう、それはいい。  
 
 問題はそこの芝生の上で横になっている異質な存在だ。  
 それは闇のように漆黒の髪をした、十歳ぐらいの子供だった。  
 極上のミルクの様な肌にスッと通った鼻梁はまるで現世ならぬ者の容姿、、、  
 寝ているのか、その胸は規則的に上下している。  
 そしてその服装も異常だった。  
 こんな田舎ではおろか、王都でもまず見られないであろう最上級の紅絹に、細かく繊細な銀の刺繍が施された礼服を着ている。  
 その服装からするに、おそらくこの子供は少年だと思われる。  
 
(……ひょっとして人間?)  
 ざっと見回して見るが獣人の特徴である耳や尻尾、毛が全くない。  
 
 プニプニ、、、  
 
 試しに頬に触ってみると、何とも心地よい感覚が返ってきた。  
 (柔らかい………)  
 白磁のような肌はまるでつきたての餅のように肌に吸い付いてきた。  
 しこりなど全くなく、押せばへこみ離せば元に戻ると言う感じだ。  
 「う、ん……」  
 少年の目蓋が震えた。  
 (起きるのかしら?)  
 ミリアの予想通り、少年が目を開く。  
 そして、、、  
 (………綺麗)  
 驚く程鮮やかなルビーアイ、、、、、  
 赤ではなく紅の瞳、、、  
 まるで人の物ではないような人外の輝きを、放つその色にミリアは見取れた。  
 
ガシッ、、、  
 
 「へ?」  
 気付いた時には腕を掴まれ、そのままひっくり返される。  
 「な、に」  
 口が言葉を紡ぐ前に少年の唇で塞がれた。  
 ミリアが目を見開いている間に、少年の舌は彼女の口内を舐め回し蹂躙する。  
 歯茎の裏、上顎、頬の内側、、、、  
 順々に舌が這っていく。  
 子供のような軽いキスではなく、ネットリとした大人のディープキス、、、、  
 そしてその手が花嫁衣装に掛かった。  
 (じょ、冗談じゃないわよ)  
 のし掛かる無礼者を突き放すため、ミリアは腕に力を込めた。  
 虎人の腕力は人間のそれを遙かに凌駕する。  
 幼子を引きはがすなど造作もない事だ。  
 しかし、、、、  
 (ビ、ビクともしない)  
 それなりに力を込めて腕を突き出したのだが、相手の方は小揺るぎもしなかった。  
 瞬間、少年の白くて優美な腕がヘビの鎌首のごとく素早くミリアの肩に延びる。  
 
こきゅ、、、  
 
 あまりにも軽い音と共に腕がだらりと落ちる。  
 肩を外された。  
 そう思った時には、すでに反対側の腕が落ちている。  
 両腕を無力化した少年は、まるで焦らすように花嫁衣装に手を掛けた。  
 そしてゆっくりと、しかし着実に複雑な花嫁衣装を解いていく。  
 無論、その間にもキスを忘れない。  
 上半身だけを露出させると、キスの標的は口から顎を伝い首筋に移った。  
 「あ、や……」  
 こそばゆいような感覚にミリアは首をすくめる。  
 そんな事はお構いなしに舌は露出した肩を通り胸に到達した。  
 「ひゃあっ!!」  
 豊かとは言い難いが、充分に張りのある乳房を舌が舐め上げ、ほっそりとした指が巧みに胸を嬲った。  
 体温を伴った唾液が塗りたくられ、指がピンク色の頂点をこねくり回す。  
 「う……や……」  
 ミリアの意志はともかく、少年の愛撫に対し体の反応は正直だった。  
 ピンク色の突起が顔を出し、肌が熱を持って赤く染まる。  
 
 ちゅう、、  
 
 「っ!!……」  
 突起に口付けされ、今まで感じた事のない感覚がミリアの体に走った。  
 自慰しかした事のない彼女には初めての感覚、、、、  
 しかし、それをゆっくり堪能する暇はミリアには与えられなかった。  
 
もぞりと片手がスカートの中に侵入してくる。  
 それが太ももに達して優しくなで上げる。  
 唾液で濡れた手が太ももをはい回り、ミリアは背筋を震わせた。  
 しばらく太ももで停滞していた手は再び移動を開始すると、やがてミリアの秘所に達した。  
 その指が下着の上から湿った部分を押し込む。  
 「きゃふっ」  
 まるで処女のお手本を示すような反応、、、  
 せめてもの抵抗にとミリアは少年を睨み付けた。  
 「なっ……」  
 白磁のような肌が紅潮して、その顔には泣きそうな程不安げな表情で揺れていた。  
 赤く染まった頬に黒髪が張り付いて潤んでいる瞳は、怖いぐらい艶っぽい。  
 (すご……)  
 自分が襲われている事も忘れる程、その姿は魅力的だった。  
 女どころか男でさえ、この少年のこんな表情を見たら理性などぶっ飛んで押し倒してしまうだろう。  
 ミリアもご多分漏れず、その表情に心臓が高鳴り息が荒くなった。  
 (……や、あたし興奮してるの?)  
 愕然とした。  
 襲われている相手の表情を見て興奮するなど、あり得るのだろうか、、、、  
 
 ぴちゃ、  
 
 「ひゃあああああああああああああああああああっっっ!!」  
 今までで一番の快感がミリアの体を貫いた。  
 折れてしまいそうな程背筋を仰け反らせ尻尾をピーンと伸ばして逆立てると、金魚のように口をパクパクさせる。  
 ミリアの反応にはそれほど頓着せず、少年の頭がスカートをたくし上げ、その下に隠されていた純白の布に舌を這わせている。  
 「や、だめ……」  
 足を閉じて防ごうとするが、両足を掴まれ逆にM字に足を開かれてしまい、濡れた秘所と尻尾の生え際が少年に丸見えになる。  
 「や、止めなさひうっ!!」  
 その屈辱的な格好に多少冷静さを取り戻したのも一瞬、すぐにまた次の快楽がやってくる。  
 少年の愛撫は決して激しくない、しかし的確な場所を的確な判断で責めていく技術は熟練の物を感じさせた。  
 少年の舌が肌と下着の間にねじ込まれる。  
 「ひぅ、あうぅ」  
 下着に押さえられ舌がミリアの秘所を刺激する。  
 そして大きくなっていたクリトスを器用に剥く。  
 「ひふっ……それダメ」  
 少年の舌がそれに反応したように激しく動く。  
 「やあああああああああああっ!!………」  
 嬌声と悲鳴を織り交ぜたような音程で叫び、先程よりさらに背筋を仰け反らせてミリアは達した。  
 一瞬の硬直の後四肢をだらりと弛緩させ、その体が大地に落ちる  
 
だが、少年は再びミリアの股間に顔を埋める。  
 最初湿り気を帯びていただけのそこは、少年の唾液とミリアの愛液で今はどろどろに濡れそぼっていた。  
 再び念入りに舌を這わした後、少年はそこから顔を離し今度は小指を亀裂に押し込む。  
 くちゅくちゅと卑猥な音と共に指が出し入れされる。  
 「あは……はう……はぁぁう」  
 落ち着いたはずの快感が再び燃えたぎり、ミリアは甘い声を上げる。  
 (あたし感じちゃってる)  
 頭の冷静な部分がそう囁くが、ミリアの他の部分は全て少年の愛撫を求めていた。  
 胸を嬲られ乳首が立ち、指を出し入れされれば愛液がこぼれ落ちる。  
 と、唐突に指の動きが変化する。  
 それまで出し入れするだけだった物が、中の壁面に指の腹で擦り付けるような物になった。  
 「そ、そんなの駄目ぇ……」  
 反射的に身を引くミリアだが少年の腕が腰をがっちり抱え込んでしまう。  
 ミリアの中で少年の指が好き勝手に暴れ回り、そこからさらに大量の愛液が流れ出てくる。  
 (……また、イッちゃう。……襲われてるのにイッちゃう)  
 徐々に高まる快感の中、そんな心の声が囁かれるがすぐにかき消えてしまう。  
 そして後一押しで達するであろう瞬間、指が抜かれた。  
 「え……何で」  
 怪訝な顔をしたミリアだが、そこに新しく当てられた感触に顔を引きつらせる。  
 
「だ、駄目……それだけはああああああああああああああ!!」  
 一瞬の躊躇いもなく少年は自らの物をミリアの中に押し込んだ。  
 いくら濡れていイク寸前だったとは言え、処女のミリアにとってはその感覚は耐えがたい物だった。  
 閉じていた入り口を無理矢理押し広げられ、中を掻き回される感覚は女にしか分からない物だ。  
 そしてその後襲ってきた生皮を剥ぐような痛み。  
 「やあああああああああああああああ!! 痛いっ!! 痛い!!」  
 叫ぶミリアなどお構いなしに、少年は腰を動く。  
 その度にミリアに痛みが走り、頭の中に火花が散ったがそれは長くは続かなかった。  
 元来、それを受け入れる器官である以上、対抗策は用意されている。  
 「痛い!! 痛いっ………え?」  
 首を振り回し痛みに耐えていたミリアだが、その感覚から急速に痛みが引いていった。  
 そして代わりに熱い感覚が体を満たしていく。  
 「ぅうん、うぁああああああああん」  
 痛みが快楽に、悲鳴が嬌声に変わるのにそれほどの時間はいらなかった。  
 少年の腰使いは巧みにミリアの中を刺激し、絶頂の高見まで引き上げていく。  
 突き出し、こねくり回し、擦りつけられる度に、ミリアは甘い喘ぎ声を上げた。  
 (イッちゃう……犯されているのにイッちゃう)  
 自らが分泌する愛液の水音と喘ぎを聞きながら、ミリアは着実に快楽への階段を上っていった。  
 
少年の動きが一気に加速する。  
 「あひゃあああああああああああ、駄目、そんなに激しくしたら駄目!!」  
 両手が動かないため、腰を動かすしか快楽の逃がし方がないのだが、その方法はさらなる刺激を発生させてしまった。  
 「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!! あっ、あはっ……イッちゃう、イッちゃぅぅぅぅぅぅぅ!!」  
 ミリアが絶頂に達する瞬間、少年の物が一際大きく膨らみミリアの中にその熱い物を放った。  
 「熱いぃぃぃぃぃぃぃ!! やけちゃう、やけちゃうぅぅぅぅぅぅっ!!」  
熱を持った体より熱いそれは、まるで五臓六腑に染み渡るように体中に最高の快楽を与えた。  
 「ああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」  
 獣のような絶叫と共に両足と尻尾をピーンと張りつめ、涙と涎を垂らしながら、ミリアは今までにない程の絶頂を迎える。  
 (ああ、あたし…犯されて…イッちゃったんだ)  
 心の隅で囁く声を最後に、ミリアの意識は暗転した。  
 
 
「う……ん」  
「……起きたのか?」  
ミリアが目を開けた時、眼前には見慣れた顔があった。  
「……シルス?」  
「ああ、俺だ」  
 シルスと呼ばれた少年はミリアの手を握った。  
丁度、子供と大人の成長過程居るような少年だ。  
癖の付いた髪に黒目で顔つきは整ってはいるが、どことなく軽そうな感じがする。  
虎人の特徴の耳が髪の中で動いていた。  
辺りを見回すとそこはミリアの部屋だった。  
「あたし…一体」  
「それは……」  
 シルスが言い淀むのとほぼ同時にミリアの頭に、今までの記憶が呼び起こされた。  
唇を奪われ、肩を外され、犯された事、、、、、  
「……あたし、犯されたのね」  
「っ!?」  
まさかミリアの口から切り出されると思っていなかったのか、シルスは目を見開く。  
「いや、それは……」  
「…別にいいわよ。どうせいつかは無くなる物なんだから………そうよ。こんなこと大したこと……無いわよ……」  
弱々しくもハッキリと言葉を紡ぐ。  
その瞳から涙がこぼれ始めた。  
 
「あ、あれ何でかな……涙が止まらない」  
困ったようにミリアがは苦笑する。  
いくら気丈に振る舞っても、ミリアはまだ少女に過ぎない。  
ましてや犯され処女を散らされたという事実は、彼女の心に深い傷を刻んだ。  
そんなミリアをシルスは無言で抱きしめた。  
「ふぇ…ひぐ…うぐ」  
震えとミリアの体温がシルスの身体にも伝わってきた。  
シルスはそんなミリアの背中を優しくさする。  
どれぐらいそうしていただろう。  
やがて落ち着いたのか、ミリアが自分から身体を離した。  
「ありがとう」  
「いや、遠慮しなくていい」  
二人の間に沈黙が落ちた。  
それは数秒だったかも知れないし、数分だったかも知れない。  
「ミリ「ねえ、あの子はどこなの?」……え?」  
言葉を遮られて、聞かれた問いの意味が一瞬シルスには分からなかった。  
「あたしを犯したあの子に会わせてくれない?」  
「何を言って……」  
「聞きたいの。どうしてあんな事をしたのか」  
その鳶色の瞳には決然とした光が宿っていた。  
 
「あいつは地下牢に閉じ込めてあるんだ」  
湿った空気のする岩肌の廊下、、、  
両側には鉄格子が嵌められた牢屋があり、二人はその一番奥に向かっていた。  
一番奥の牢屋以外は空で、それがこの領地の平和さを物語っていた。  
「なあ、別に会わなくても……人が獣人を犯したら問答無用で死刑だろ」  
「……でも会ってみたいの」  
「………」  
シルスは口をつぐんだ。  
それからしばらく沈黙が続いて、二人は一番奥の牢屋にたどり着いた。  
鉄格子で遮られた向こう側に少年が繋がれている。  
意識はないのか、その頭はは力なく落ちていた。  
 
「おい、起きろ!!」  
シルスが鉄格子を蹴り付けるが少年は身じろぎ一つしない。  
「おい!! 聞いているのか!!」  
その声に少年が顔を上げる。  
半開きになった紅い瞳がシルスを見て、その後周りを見回した。  
そして再び頭が下がる。  
「貴様、馬鹿にしているのか!!」  
「何だよ……うるさいな」  
怒鳴り声に返ってきたのは、鈴が鳴るような声音で呟かれた気怠げな言葉だった。  
「どうせ夢なんでしょう。ったく、寝直すんだからいちいち起こさないでよ」  
「自分の状況が分かっているのか!! これは現実だ!!」  
その言葉に少年は再び顔を上げて周りを見回す。  
「………何でこんな所に?」  
全く分からないとばかりに少年は首を傾げる。  
「ちょ、どういう事よ!!」  
「お姉ちゃん誰?」  
いきなり詰め寄ってきたミリアに少年は眉を潜める。  
「誰って、あなた………」  
「よせ、どうせ嘘を付いているに決まっている」  
ミリアを押し止めてシルスが前に出た。  
 
「まあ、シラを切ってもどうせ明日には処刑される」  
「は? 全然納得がいかないんだけど」  
「納得いかなくても、これがこの国の法律だ」  
「………今時どこの独裁政権だよ? それは」  
呆れ果てたとばかりに少年が溜息を吐いた。  
牢屋で安眠していた事と言い、自分を捕らえた者が目の前にいるというのにこの少年の神経の太さは並ではないだろう。  
「……お前らの世界ではどうか知らないが、こちらに落ちてきた以上お前ら人間には俺達の法律に従って貰う」  
「落ちてきた?」  
「お前達の世界からこの世界に来る事だ」  
「…………なんかお兄ちゃんの話聞いてると、ここが異世界のように聞こえるんだけど?」  
「お前達にしてみれば、そうかもしれんな」  
「…………ひょっとして、あのせいかな?」  
シルスの言葉に少年は数秒何かを思案したようだが、やがて顔を上げた。  
「まあいいや、それはおいとくとして、結局僕は何の罪で捕まってるの?」  
「それは自分が一番よく知っているだろう?」  
「いや……て言うかたった今起きたばかりで、何もやった記憶がないんだけど」  
瞬間、牢屋が揺れた。  
 
「……いい加減にしろよ。何なら今すぐぶっ殺してやってもいいんだぞ」  
壁に叩き付けた拳を戻しながら、シルスが低い声で凄む。  
「何か凄い怒っているようだけど、本当に知らないんだよ」  
人間どころか、並の虎人でも竦み上がるであろうその迫力に、少年は生あくびを噛み殺した。  
つくづく神経の図太い少年だが、シルスはそんなことに関心などしなかった。  
「貴様!!」  
「止めてよ、服が伸びちゃう」  
襟首を掴まれても少年はそんな事を言っている。  
「お前、自分がどれだけ酷い事やってるのか分からないのか!?」  
「だからそう言ってるじゃないか、記憶に全然無いって……根本的な疑問にも答えないで話が進む訳無いよ。それとも何? もしかして実は無実の罪で投獄しているから言えないの?」  
「そんな訳ないだろう!!」  
「だったら証明してよ。今すぐに」  
「それは………」  
シルスがミリアに視線を向ける。  
ミリアは一瞬身を固くしたが、やがて覚悟を決めたように頷いた。  
「………獣人に対する強姦罪だ」  
「へぇ、一体誰を?」  
「………彼女だ」  
そう言ってミリアの方を向く。  
「…………」  
その身体の上を少年の視線が舐めるように這ったため、ミリアは反射的に胸元を隠した。  
そして、、、  
 
「……へっ」  
一言、  
しかし万言の意味を込められたそれは、男であるシルスはともかく女であるミリアには完全に理解できた。  
「な、何よ!? その態度は!!」  
「子供なんかに興味はないね。僕はもっとムッチリしたのが好みなんだよ」  
ぷち、、、  
「このクソ餓鬼!!」  
ちなみにミリアの体型は良く言えばスレンダー、悪く言えば凹凸の少ない形である。  
それを自覚している故、ミリアはキレた。  
「おい、待て!! 落ち着け!!」  
先程までの怯えたような態度はどこへやら、今ではシルスが押さえつけなければいけないような状態だ。  
「ちょっと離しなさいよ!! 泣き虫シル坊のくせに!!」  
もみ合う二人に少年は冷笑を向ける。  
「まあ、こんな湿っぽい所に居るのは僕の趣味じゃないんだ。逃げさせて貰うよ」  
カチリと言う金属音と共に少年を拘束していた手錠が外れる。  
「それじゃあ、バイバイ!!」  
ほぼ同時に少年の姿が牢屋から消える。  
 

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