「―――何やってんのご主人様?」  
翌日、セリスは未だに自室でへたり込む主の姿を見て怪訝な顔になった。  
とうの昔に麻薬の効果は切れているはずなのだが、  
「は、話が違うじゃない。全然痺れが取れないわよ」  
「え、そんなはずないけど」  
「実際そうなのよ!!」  
「う〜ん」  
セリスは可愛く小首を傾げて考える。  
薬の調合は完璧なはずだった。  
さすがのセリスも主にいい加減な物を飲ませる訳にも行かず、何度も組成を確認しているため、そうそう間違いが起こるはずもない。  
「……………あ」  
「何? 何なの?! 一体どうしたの?」  
あまりにも呆然としたセリスの表情に、ミリアは思いっきり不安になった。  
「よく考えたら、この麻薬って人間用だったんだよね。通りで効果が消えないはずだ。ご主人様って人じゃないもんね」  
「そ、それだとどうなるの?」  
「ま、効果は変わらないんだけどね。効き過ぎて困るってだけなんだよ。参ったねー」  
「『参ったねー』じゃない!! 速く元に戻してよ!!」  
泣きそうなミリアに対してあはははと笑って誤魔化す無責任な下僕であった。  
 
「まあまあ、下手したら心臓が止まってたんだから、少しは喜びなよ」  
全く持って嬉しくない慰めである。  
「げ、原因はあんたでしょう!?」  
「それはともかく、さっさと直さないとね」  
ミリアの言葉を軽く流して、セリスは手を伸ばした。  
「あれ、ご主人様、どこか悪いの?」  
「べ、別にどこも悪くないわよ」  
そうは言う物のミリアの様子はどこか違和感があった。  
一見すると普通だが体が震えて眉間に皺が寄っている。  
まるで何かに耐えるかのように―――  
セリスは口元に手を当てた。  
吊り上がった口端を隠すために―――  
「実はご主人様、その薬は情事の時に使う物なんだよね」  
「情事?」  
「つまり、セックスだね」  
「なっ!?」  
その言葉にミリアは耳まで真っ赤にする。  
 
「それでこの薬は、特殊なプレイをする時に使う物なんだよ。縄とかを使わずに相手の自由を奪うための物なんだ」  
「と、特殊なプレイって?」  
「拘束プレイ」  
どこか躊躇いがちに訪ねるミリアに、セリスはあっさり答えた。  
「拘束プレイって、あの」  
ミリアは、勿論その意味を知っている。  
ただでさえ耳年増な年頃の上、娯楽の乏しい田舎に置いて恋愛や性に関しては都会より進んでいる事が多いのだ。  
それどころかセリスに処女を奪われた影響で、他の娘から一歩リードしているぐらいである。  
「な、何でそんな薬を使ったのよ!?」  
「いやー、調合が簡単だから作ってみたんだけど、まさかこんな事態になるとは思っていなかったよ。これからは気を付けないとね」  
「そんなことはどうでもいいから、早く治してよっ!!」  
どこかせっぱ詰まったようなミリアに、セリスは肩をすくめた。  
 
「まあ、治すのは簡単だよ。僕の精液をご主人様の子宮の中に注げば良いんだから」  
「それって、もしかして―――」  
「うん、早い話がセックスすれば治るよ。元々、それように作られた薬だからね」  
苦笑するセリスにミリアは顔を真っ赤にする。  
「じょ、冗談じゃないわ!! 他の方法をないの!?」  
「それがイヤなら、後数時間ほっとけば治るよ。ま、情事をしたくないんなら待った方が良いね」  
「ちょ、すぐには治らないの?!」  
「……………ご主人様、どうしてそんなに急ぐ訳、何かあるの?」  
「な、何にもないわよ」  
そう言ってそっぽを向いてしまう。  
ミリアにも分かる程度の不審そうな顔を演じながら、セリスは笑いを噛み殺した。  
「それなら良いけど―――じゃ、僕は仕事があるから退散するね」  
「ま、待って」  
退出しようとした時に呼び止められ、セリスは不思議そうに首を傾げた。  
勿論演技で―――  
 
「どうしたの、ご主人様?」  
「そ、その、もう一つの方法試してみてもいいかなって―――」  
「ご主人様、本当にどうしたの? いつもなら絶対イヤって言うくせに」  
セリスの非常に不審そうな視線の演技は正に絶技であった。  
相手に不信感を認識させながら、真の目的は隠したまま視線を合わすのは、単純な人間にはとても行えない技術である。  
「た、単なる気まぐれよ。他の理由なんて無いんだから――」  
「えー、だけどなあ。僕って清廉潔白だから、そう言ういい加減な事はしたくないんだよね」  
「あんた、毎晩やってるでしょうが!!」  
彼女の叫びの通り、セリスは半ば強引に毎夜ミリアと体を重ねていた。  
毎回毎回言葉では拒絶するのだが、気付いた時にはセリスのテクニックですっかり快楽に酔わされ、翌朝まで体を貪られるのだ。  
「それは対価、仮にも魔王を下僕にしてるんだからそれぐらい我慢しなよ。第一ご主人様だってそれなりに楽しんでるじゃないか」  
「あ、あれは――」  
頬を染めて言い訳を言おうとしたミリアをセリスは黙らせた。  
自分の唇で―――  
 
舌を差し入れてミリアの口内をゆっくりと味わっていく。  
歯を磨いていないミリアの口の中は微かにクッキーと紅茶の味がしたが構わずそれも味わう。  
何度も体を重ねてそれなりの反応を返すようになったミリアだが、その舌使いはまだまだ稚拙で何とも微笑ましい。  
セリスの舌はミリアのように速く動かず、ゆっくりと緩慢にそしてネットリとミリアの口内を弄ぶ。  
歯茎の裏、舌の付け根、頬肉をある時は突き、ある時は舐め、ある時は素早く擦る。  
反撃に転じようとするミリアの舌を翻弄して、快感を感じるポイントを的確に付いていく。  
口を塞いでいるので息づかいは分からないが、荒い鼻息はそれが息苦しさだけではない事を濡れた鳶色の瞳が証明していた。  
キスのせいでただでさえ薬で弛緩している体から力が抜け、ミリアはセリスの胸にもたれかかるような体勢になる。  
「ご主人様の唾液って美味しい」  
天使のような美少年であるセリスが美味そうに唇の周りに付いたミリアの唾液を指に絡めて舐め取る姿は、それだけで女性の欲情を掻き立てる程扇情的だ。  
しかもその唾液が自分の唾液であればミリアでなくともどきどきするだろう。  
しかし、その一瞬後には悪魔のような邪悪な笑顔を浮かべている。  
「ふふ、ご主人様ってすぐ顔に出るね。そんなにキスが良かったの?」  
「……………」  
「赤くなちゃって可愛い」  
耳元でそう囁いてやるとミリアの顔が更に赤くなる。  
ミリアの服装はジーンズにシャツという動きやすい格好をしているので、セリスはシャツをまくり上げその胸を露出させた。  
相変わらずそこはスレンダーであったが、セリスが焦らすように爪先を円を描くように動かす。  
「ひゃ」  
痛むようなむず痒いような微妙な感触にミリアは身をすくめる。  
次第に速度を速め、それにつられてミリアの性感も上がっていく。  
 
「うくっ」  
いつもの事だがミリアは行為の途中、声を押し殺そうとする。  
声を上げるのが恥ずかしいのもあるが、ほとんど意地で人を玩具にするセリスに抵抗しているのだ。  
そう言う態度がセリスを喜ばすともしらずに――  
「ご主人様、気持ちよかったら声出してね。そっちの方が愉しいし」  
「だ、誰が声なんて―――」  
わざわざミリアの羞恥心を煽って頑なにさせるのも毎回の事だが、ミリアは未だにセリスの真意に気付いていない。  
「ふ〜ん、残念だなー」  
そう言いつつ、ミリアの首筋を甘噛みする  
びくっと体が震えるが声は出さない。  
ゆっくり、丹念にすぐにイってしまわないように舌を這わせ、歯で擦り、指で唾液を塗りたくって愛撫した。  
「い…………あう………うく………」  
体に力を入れて抵抗するが、そうすると神経が余計に過敏になって快感が伝わりやすくなる。  
快感をある程度積み重ねると、セリスは腕で胸を揉みほぐしミリアの体を抱きかかえた。  
決して大きいとは言えないが、ハリのある胸をセリスは口にくわえる。  
そこもゆっくりじっくり愛撫すると、乳房を舐めて、乳倫に吸い付く度にミリアは小さく反応する。  
端から見ていると赤子が母のミルクをねだっているような感じだが、そのような純粋無垢な行為ではない。  
「ひゃうっ、そこは」  
ミリアは必死に口をつぐんでいるが漏れ出す声は止まらない。  
「あれーご主人様、声出さないんじゃなかったの?」  
セリスが意地悪そうにそう言うとミリアは慌てて口を閉じた。  
そんな主の様子に苦笑しながら、彼はジーンズを降ろす。  
 
「毎度思うんだけどさ、もう少し色気のある物を履いた方がいいよ」  
「よ、余計なお世話ひゃああああああああああっっ!!」  
純白の下着に手を這わせ、敏感な所を布越しに擦るとミリアは呆気なく声を上げた。  
「駄目だなあ、そんなに声出したらみんなに聞こえちゃうよ」  
そう呟きながら尿道の入口をノックする。  
「そ、そこは駄目!!」  
「何で?」  
必死で止めようとするミリアにセリスは無邪気に首を傾げる。  
「何でってそれは―――」  
そこまで言ってミリアは口をつぐむ。  
「よく分からないけど、ともかくやるからね」  
「止めろって言ってるでぐうっ!?」  
尿道を抉るような指の動きにミリアの眉間に皺が寄って、脂汗が流れる。  
「ご主人様ー、あまり力を入れると痛いだけだよ。ほーら、リラックス、リラックス」  
まるで赤子を宥めるかのように脇腹を優しくさする。  
「ひうっ、駄目」  
「もう、強情だね」  
必死になるミリアにセリスは諦めたように指を離した。  
しかし彼女が安堵の息を付こうとした瞬間、セリスが指をその秘所に突き込んだ。  
「みゃあうっ!? い、いきなり、ひゃう」  
油断した所に一気に突き込まれたため、かなり深くまで指が入り込み、その指がミリアの胎内を擦った。  
「ご主人様って、ここが弱いんだよね」  
セリスがミリアの急所の周りをゆっくりこする。  
入口からおおよそ指一本分の長さ、腹側の膣壁がミリアの急所の一つだった。  
と、突然、セリスの指先がミリアの急所を一気に擦りあげる。  
「ひゃああああああ!? やあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」  
「ご主人様、いっぱい気持ちよくなってね♪」  
罪のない笑顔でセリスは急所を擦り続ける。  
「やぁっ、擦っちゃ駄目え、しょこは駄目なの!!」  
「嘘ばっかり、気持ちいいくせに」  
あまりの快楽に舌がもつれ頭を振りたくるミリアに耳を貸さず、セリスは容赦なく指を動かす。  
「やああああああああああっっっ!!」  
擦られた刺激が快感に変換され脳髄を叩き、ミリアは絶叫する。  
自由になる首から上を振り乱して、快感から逃れようとするが、ミリアの行動パターンを熟知しているセリスにとってはかえって逆効果だった。  
腰を離され仰向けに倒れる所を、指を曲げられて膣に引っ掛けられる。  
実質、ミリアの急所を指が抉る形になった。  
「引っ掛けちゃだめぇぇぇぇぇぇえぇええええぇぇぇぇ…え?」  
絶頂に達しようとした寸前、セリスの指が止まる。  
同時に倒れ込むようになったミリアを優しく抱き留めた。  
「ど、どうして止めちゃうのよ?」  
うっかり口を滑らせてくれた主にセリスはにんまり口を歪めた。  
「あれ、ご主人様止めろって言わなかったけ?」  
「だ、だって、あんなのずるいわよ」  
相手の揚げ足を取らないと気が済まない召使いの言葉に、ミリアは恨めしそうな視線を向ける。  
「これだけ濡れてれば充分入るね」  
濡れそぼったミリアの秘所にセリスは指を這わす。  
「ちょ、ちょっと待って」  
急ぎ自分の物を突き入れようとするセリスにミリアは待ったを掛けた。  
「何、ひょっとして今更イヤになったの?」  
「そ、そうじゃないけど、その――――ちょっと待ってくれない?」  
「………………ご主人様」  
「え、えと、別にイヤになった訳じゃなくて、そのあの、やっぱりもう少し待って」  
非常に不機嫌な顔をする召使いにミリアは慌てて弁明する。  
「…………ま、いいけどね――少しだけなら」  
「え、あ、本当!?」  
普段なら絶対渋るはずの申し出を、セリスはあっさり了承した。  
当然というか何というか、その唇が歪んでいることにミリアは気付いていない。  
 
数分後  
「で、もう良い訳?」  
「ええと、うん――もういいわ」  
セリスの言葉ににミリアは頷いた。  
さっきまで火照っていた体はだいぶ収まってきている。  
これなら大丈夫だろう。  
「じゃ、いくよ」  
そう言うとセリスは自分の物をミリアの中に突き入れた。  
「あう」  
何度やっても慣れることのないこの瞬間、  
決して不快ではない、それどころか快感を伴う出来事でありながらミリアはこの行為が大嫌いだった。  
「あ〜、ご主人様凄い嬉しそうな顔してる。そんなに気持ちいいの?」  
毎回ムードなんぞ時の彼方に置き忘れた召使いの言葉が、ミリアの神経を逆なでするからだ。  
「き、気持ち良くなんてないわひゃうっ!?」  
「えー、本当?」  
胸の先を舌先で転がしながらセリスは嬲るように言う。  
「ば、馬鹿、そこは――」  
一旦、静まったはずの身体の火照りが再び再燃する。  
しかし、セリスは構わず繋がったままミリアを抱き寄せた。  
身長差があるのでミリアの胸のあたりに顔を押し付けることとなり、セリスはそのあたりに重点的に舌を這わせながら腰を動かすのだ。  
「あひゅ、そんな、いっぺんには駄目―――」  
大きな刺激を中心に複数の小さな刺激がミリアの体を走る。  
そして徐々にしかし確実に、その体には快楽が積み上がっていく。  
と、唐突にセリスの腕の動きが止まった。  
それに連動するように腰の動きも止まる。  
「え、どうして―――」  
困惑するミリアは、自分の胸元あたりにあるセリスの顔を見た途端絶句した。  
天使のようなセリスの容貌、そのまま天使のような笑みを浮かべている。  
「ご主人様―――」  
「な、何?」  
非常にイヤな予感がしてミリアは反射的に後退ろうとした。  
もちろん、薬のせいで実際には全く動けなかったが――  
「覚悟してね」  
言葉と同時にセリスの手が動き出す。  
「ちょ、何考えてひゃいぃぃぃぃぃぃぃっっ!?」  
先程までゆったりしていた愛撫が突然激しい物になる。  
乱暴に胸を揉み砕き、肌に歯を立てる。  
しかし、ともすれば苦痛になるだけのそれが、全て快楽に昇華されているのだからセリスのテクニックはかなりの物だ。  
「あひゅ、ひゃひゅ、ひょっととめて」  
下火になったはずの全身の快楽が油でも注がれたように一気に燃え上がる。  
(な、何これ、か、体が熱い)  
セリスに触れられてもいないはずの部分まで熱を持ち、体中が火照ってくる。  
「ひゃあ、セリスわひゃしなにかひぇん」  
当然である。  
先程までのセリスの愛撫は言わば無自覚のうちに焦らしていたような物なのだ。  
ゆっくり、少しずつ確実に快楽をため込み一気に爆発させる。  
その威力は普通の交わりなどより遙かに激しく、相手を一段上の絶頂へ叩き上げるのだ。  
「ちょ、っと、セリ、ス、待って」  
「聞こえない〜聞こえない〜」  
途切れ途切れのミリアの制止をセリスはさっぱり綺麗に無視した。  
全身の快楽が一斉に吹き上がり、もはやミリア自身には自分がどういう状態なのか理解できない。  
しかし体中から伝えられる快楽のノイズの中、ミリアに一つだけ分かることがあった。  
 
「!? や、セ、リス、ほんと、うに、とめて、でちゃう」  
「う〜ん、何が?」  
「そ、それはあひゃうっ!?」  
「何でも良いけどさ、もうすぐイっちゃうよ」  
セリスの言葉通り、ミリアの体は後一歩で絶頂に達するところまで追いつめられていた。  
もはや、背に腹は代えられないと彼女は叫ぶ。  
「お、おしっこ、トイレに行かせてっ!!」  
昨日より身動きが取れないミリアは当然というか何というか人体の定期的な排泄欲を感じており、その尿意が限界近くなっていた。  
「こ、このままだと出ちゃう!!」  
「出せば」  
「………………へ?」  
即答を返されたミリアは、全身を駆け上る快楽さえも一瞬忘れた。  
「別に出せばいいよ。僕は気にしないから」  
「ば、冗談は止めて――」  
しかし、セリスの言葉は冗談ではなかった。  
ミリアの急所を一気に擦り上げる。  
「わひゅうっっ」  
「ほらほら、ここが気持ちいいんでしょう」  
セリスが動くたびにミリアの体が快楽に一歩近づく。  
「ば、馬鹿、駄目だっていってるでしょうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!」  
怒鳴るのとほぼ同時にセリスはミリアの急所を突き上げた。  
その一瞬後、ミリアは絶頂に達する。  
「ひぃ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」  
情けない悲鳴とともにミリアの体が硬直した。  
そして、  
シャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!  
尿道口から黄金色の水が勢いよく飛び出す。。  
「あ、あ、あ…………ヤ、ヤダ出ちゃう」  
言葉では拒否しながらも絶頂と排泄の快感が織り混ざり、ミリアの顔に至福の表情が浮かぶ。  
十数秒の排泄の後、ミリアの体が弛緩した。  
「うふふ、どう気持ちよかったでしょう?」  
服が汚れるのに構わずセリスはミリアを抱き寄せた。  
「ば、馬鹿ー、なんて事するのよっ!!」  
薄笑いを浮かべるセリスに対し、ミリアは半泣き状態だ。  
まあ、一日に五回ほどくびり殺したいと思う相手であっても、排尿の瞬間を見られるのは耐えられた物ではない。  
「あ、何、ひょっとして恥ずかしすぎて泣いてるの?」  
うつむいてしまったミリアにセリスは、にこやかに微笑んだ。  
「ご主人様さ、意外に気持ちよかったでしょう? いった時あんなに気持ちよさそうな顔してたんだから―――「嫌い」うぇ?」  
ミリアの呟きにセリスが変な奇声を上げる。  
 
「どうせ、あんたはあたしのことをオモチャぐらいにしか思ってないんでしょう。大嫌いよ」  
彼女はは涙に濡れた目で頬を膨らませてそっぽを向く。  
その表情はその全てを持ってして、『私は拗ねています』と主張していた。  
(うわ、子供みたいな拗ね方だな)  
何というかそう言う態度に出られると、もっと虐めたくなってしまう。  
しかし、これ以上やったら本気で嫌われそうなのでセリスは強靱な自制心で、それを押さえ込む。  
「誤解だよ。僕がいつご主人様をオモチャ扱いしたのさ。よく考えてみて―――」  
悲しげな声音で嘆願するセリスをミリアが彼を一瞥、数秒黙考してみる。  
睡眠中に尻尾を巨大ねずみ取りで挟まれたり、コーヒーにマタタビを煎れられたり、泳げないことを知っていて川に蹴り落とされたり、ミミズで満たされた落とし穴に落とされたり、顔に落書きされたり――――  
「――――――やっぱり、オモチャ扱いしてるでしょう」  
「あ、良く分かったね。意外な感じ」  
セリスの言葉にミリアの視線がさらに険悪になる。  
「……………」  
「まあ、冗談は置いておくとして、確かに僕はご主人様をオモチャだと思っているよ。だけどね――」  
セリスはミリアの体を床に横たえると顔の位置をそろえた。  
「僕はご主人様のことが大好きなんだよ」  
「なっ!?」  
真摯な紅の瞳の告白にミリアが絶句する。  
「ななななななななななななななっ、何言ってんのよ?!」  
「あーあ、そんなに慌てないでよ」  
慌てふためくミリアの耳元でセリスはささやく。  
「大体、好きでもない相手とこんな事する訳無いでしょう?」  
言いながらセリスはミリアにのし掛かと、そのままミリアの下半身に体を滑り込ませた。  
そしてミリアの股間に顔を埋め、躊躇いなくそこに舌を這わせる。  
「した後は、綺麗にしないとね〜」  
「や、ちょ、やめてよ」  
たった今、排泄を終えたばかりのそこに舌を這わせられるなど、女性として耐えられる物ではない。  
「ご主人様が好きだから、僕はこんな事するんだよ。誰にだってやる訳じゃないんだから」  
「ふひゃあっ!?」  
濡れそぼったそこに唇を触れさせ、音を立てながら尿道に残った物をすする。  
「どう、こういうのも気持ちいいでしょう」  
汚物を舐められている背徳感と、普段生意気な少年がそのような事をしていると言うシチュエーションがミリアの快楽を刺激した。  
「うぅ」  
「ほら、また濡れてきた」  
セリスがミリアの眼前に突きつけた指の間には、快楽の証である透明な液体が糸を引いている。  
その指が再び中に突き込まれると、ミリアの秘裂からさらに蜜が流れてきた。  
そのままセリスはミリアの中に自分の物を進入させる。  
「ひゃぅんっ!!」  
お世辞にも丁寧とは言い難いやり方ではあったが、なぜか最初の時より快楽が多かった。  
 
「僕はまだ、イッてないんだよね」  
ミリアの胸を味わいながら、セリスは呟いた。  
「だけど、今度はいけそうだよ」  
情緒と言う行為はセリスにとって肉体的快楽を楽しむと言うより、精神的娯楽という要素強い。  
相手の表情や仕草などを観察するのが本来の目的であり、快楽は二の次なのだ。  
当然、それは相手に好意を持っている事が前提となり、嫌いな相手と肌を合わせる事などありえない。  
無論の事、快楽的絶頂という物は存在するが―――  
「ねぇ、ご主人様、僕の事本当に嫌いなの?」  
憂いを乗せたその言葉に、ミリアの体がびくりと震えた。  
まるで甘えるかのようにセリスがミリアの腹に頭を乗せると、絹のような流れる黒髪がその肌をくすぐる。  
「ねぇ、ご主人様」  
「べ、別に嫌いじゃないわよ」  
媚びるような甘い声で呟かれると、どうしても拒絶できない。  
「嬉しい」  
邪悪なる本性とは裏腹に、その声はどこまでも無垢だった。  
「か、勘違いしないでよ。別に好きって訳じゃないんだからっ!!」  
「それで十分だよ」  
ミリアの表情や仕草を堪能するにはそこまで言ってくれれば十分である。  
セリスが腰を動かす。  
同時に十本の指がミリアの体を這い回り、胸を揉み、腰をさすり、二の腕を擦って、脇の下をくすぐる。  
(何でこんなに上手なのよ!!)  
決して激しくない動きでありながら、ゆっくりと相手を気遣った愛撫は先程と違い心地よい快感を引き出していく。  
口を閉じようとしても喘ぎ声が漏れ、快楽を堪えようとも体がひとりでに反応する。  
「イキそうなんだね」  
主の様子を敏感に察する召使いとは優秀といえようが、今の場合のミリアにとっては羞恥を逆撫でするロクデナシである。  
「我慢しなくていいよ。僕も一緒にいくから」  
言われなくとも、もはやミリアに我慢など出来なかった。  
セリスが本気になれば、経験のない小娘を手玉に取る事など容易い事だ。  
抵抗など出来ないし、したとしても意味がない。  
途轍もなく悔しい事であるが、精神とは逆に体の方はセリスの行為を欲している。  
そして限界の時が来た。  
 
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁっん!!」  
主の到達に数瞬遅れてセリスも達する。  
小さな体の中のどこに、これだけの量が入っていたのか疑わしくなるほどの物がミリアの中を満たす。  
「ふあぁぁぁん、、、」  
熱を持った液体に満たされ、体から力が抜ける。  
「そんなに気持ちよかった? 凄い幸せそうな顔してるけど」  
セリスの言葉通り、ミリアの顔は涙や涎で大変な事になっていた。  
何というか顔の筋肉が全て緩んでしまったような感じになっている。  
「み、見るな、馬鹿」  
緩んだ頬を必死に引き締めようとするが上手くいかない。  
卑怯だと思う。  
下腹の暖かさが凄く気持ちよくて、全然イヤじゃない。  
普段人を玩具にするくせに、こう言う時だけこんなに心地よいのは絶対に反則である。  
「さてと、薬が切れるまで後何回出来るかな」  
「………………………………え?」  
さりげなく呟かれた言葉にミリアの表情が固まる。  
「―――――ちょ、ちょっと一回すれば薬の効果が消えるんでしょう!?」  
呆然とした状態から数瞬で脱却したミリアにセリスはにっこり微笑んだ。  
「ああ、あれ嘘だよ」  
「…………………………………………………………………………………嘘?」  
即返答された内容が脳に染みこむまで、数秒の時間を必要した。  
「うん、ご主人様とセックスするための方便だよ。トイレを我慢してるのは初めから分かっていたからね。放尿プレイもやってみたかったし―――」  
「って、知ってたの?! あたしがトイレを我慢してる事!?」  
「あれだけ挙動不審なら誰でも気付くよ」  
当然とばかりにセリスは苦笑する。  
「ばれてないと思って必死で誤魔化すだもん、面白すぎて笑いを堪えるのに苦労したよ」  
ミリアの体が震える。  
もちろん怒りで―――  
「ご主人様、もう少し嘘の練習をしないと、政治はハッタリと狂言の世界なんだから、そんなんだとやっていけないよ」  
「馬鹿!! 最低!! 変態!!」  
召使いの心の底からの忠告に対し、ミリアは罵声で応えた。  
「ひどいな。僕はご主人様のためを思って言っているのに――――」  
「うるさい!! 大体、あんたあたしの事が好きなんでしょう!? もっと大切にしなさいよ!!」  
「好きだよ。ご主人様の困った表情や怒った表情が」  
「………………………………………………え?」  
「なんて言うかな。こう、子犬に意地悪して、その必死でささやかな抵抗を楽しんで悦に入る? そんな感じなんだよね」  
薄く染まった頬に手を当てて恥ずかしげに身を捩るセリスの姿は、とても可憐であったがミリアにとってはなんの救いにもならない。  
「ご主人様って凄く単純だからね。僕のお気に入りの玩具だよ」  
純真無垢な瞳で語るセリスに、ミリアの脳内温度が急上昇する。  
「チビ!! サディスト!! ゲス野郎!! ご主人様をなんだと思っているのよ!?」  
「さっき言ったでしょう? 玩具だって、ご主人様ったら、お・馬・鹿・さ・ん♪」  
「クソ野郎!! 一発殴らせろっ!!」  
ヒートアップする主とは対照的に、セリスは冷ややかな冷笑を向ける。。  
「そんなに悪口ばかり言って、ご主人様ったら、自分の立場をよく考えてみてよ」  
「ひゃあっ!?」  
達したばかりの敏感な部分をさすられミリアは情けない悲鳴を上げる。  
「後数時間は動けないんだから、もう少し言葉遣いには気を付けた方が良いよ」  
言いつつ、セリスの指がミリアの肌を撫でる。  
「な、何する気?」  
大方の………というか九十九パーセントの予想は付くが、わずかな希望にすがって聞いてみるミリアに、セリスは天使の微笑のままのし掛かった。  
「分かってるくせに♪」  
そう言いながら指の関節をならす。  
「さーて、制限時間内に何回出来るかな」  
「ちょ、冗談止めて。あたしイったばかりで―――」  
「大丈夫、大丈夫、気持ちの良さは保証するよ。まあ、失神ぐらいはすると思うけどそこら辺は根性でがんばってね」  
その日、ミリアの悲鳴がセリスの部屋に響いた。  
 
 
「そうよっ!! あのクソ野郎、あたしをさんざん玩具にして!!」  
過去の回想を思い出させた書類を引きちぎり、ミリアは地面に叩き付けた。  
結局あの後、薬の効果が消えるまでセリスはミリアの体で遊びまくったのだ。  
何度懇願しても愛撫を止めず、失神を数回繰り返してようやくミリアが解放された時には、冗談ではなく本気で足腰が立たなくなっていた。  
それ以来、たまに食事やお茶に訳の分からない薬などを入れられるようになったのだ。  
対抗するために四日ぐらい絶食した事があるが、最終的に食欲に屈してしまい超強力な媚薬入りの食事を食べさせられた事もあった。  
その時は弱みに付け込まれ、かなり恥ずかしい事までさせられたりもしたのだ。  
あの一件以外、ミリアはほとんどやけで毎食ちゃんと食べるようにしている。  
「あの腐れ召使い、いつかあいつにも毒を盛ってやるんだから、そしてうふふふふふ―――」  
微かに頬を染めて身勝手な未来像にほくそ笑むミリアに、しかしながら世の中は無情だった。  
「何やってるの? そんな気持ち悪い笑い声上げて―――」  
背後から掛けられた声にミリアの肩がびくっと震える。  
「セ、セリス、何でここに!? 説明会に行ったんじゃないの」  
「ちょうどシルスお兄ちゃんが帰ってきたから、そっちに任せたんだよ。それよりご主人様―――あまり、仕事がはかどっていないようだけど?」  
横目で未だそびえ立つ書類の山を眺めるセリスに、ミリアはたじろいだ。  
「い、今の話聞いてた?」  
「? なんの事―――」  
「な、なんでもないの、全然全くあんたには関係ないから」  
きょとんとするとセリスに、ミリアは首が取れるほどの勢いで否定した。  
「? まあいいけど、少し休憩しようか、時間はタップリあるからね」  
そう言いながらセリスはお茶の準備を始めた。  
「はい、どうぞ」  
「あ、ありがとう」  
先程までの事があったので、ミリアの笑顔は微妙に引きつっていた。  
「だけど、何であんな不気味な笑い声を上げてたの? ついに頭の中身が腐り始めたのか心配なんだけど」  
「そ、そんな分けないでしょう。ちょっと、含み笑いの練習をしてただけよ」  
「何で?」  
「な、何でって、今週の週間『乙女の祈り』で含み笑いをすれば運勢が急上昇って書いてあったのよ!!」  
ちなみに、乙女の祈りとは世界中の投稿者からコラムや広告、記事を募集して、その中から厳選された物を乗せている雑誌である。  
大陸夢想と名高い猫の国のリナ将軍の護身術教室や、さらに同じく猫の国の猫ヒゲ薬局の通販などが載せられている。  
たまに訳の怪しげな薬や機械の通販などが乗ったりする事もあり、結構いかがわしい部分もあるのだが大陸中で売れに売れている雑誌だ。  
その中の占いのお部屋は大陸中の占い師や魔法使い達の中から選ばれた占いが数種類載っており、的中率が五割以上と言う事で人気の記事である。  
基本的に投稿者は女性のみで、男性の投稿は受け付けていない。  
逆に投稿者が男のみの『紳士のたしなみ』と言う雑誌もある。  
その雑誌の今週の溜息と言うコラムでは、見るだけで気が重くなるような日々の疲れを綴った文章が載っていたりし、その投稿者の中には、『虎国の胃潰瘍S』や『猫姫Mの召使い』と言ったペンネームの人物達がマニアの間で大人気になっている。  
「――そんな占いあったっけ?」  
「あ、あったのよ。イワシの骨で占うイワシ占いで、どんな形で骨が取り出せるか占う占いよ!! 某イワシ姫だってこれで毎日の運勢を占っているらしいのよ!!」  
首をかしげるセリスにミリアは一気にまくし立てて押し込む。  
「……………………」  
「あ、このクッキー美味しいわね!! もう何枚でも食べられたちゃうわ!!」  
ジト目の召使いにミリアは話題を逸らすため、紅茶をガブガブ飲んでクッキーをばりばり貪り喰らう。  
乙女という光景からはほど遠い物だ。  
「…………ご主人様、体の方は大丈夫?」  
「え、何――」  
セリスの質問とほぼ同時にミリアは倒れた。  
 
「な、これってまさふあぁぁぁぁぁぁんっ!!」  
動かそうと身を捩った瞬間、全身が火を噴いたように火照ってくる。  
「いやー、相変わらずご主人様を引っかけるの面白いな。そんな事じゃ僕に毒なんて盛れないよ」  
朗らかに笑うセリスにミリアの顔が引きつる。  
「き、聞いてたの、あたしを騙したわね!!」  
「お互い様でしょう。ご主人様」  
どこか嘲笑的なセリスの失笑にミリアの顔は興奮以外で赤くなる。  
「卑怯者!! 下劣!! ケダモノ!! 淫魔!!」  
ミリアの罵倒にセリスの笑顔がさらに深くなる。  
「ご主人様、何度も言うけどこう言う時は自分の立場を考えた方が良いよ」  
「うひゃあっ!!」  
セリスの指が触れただけでミリアの背筋に、飛び上がるほどの快感が流れる。  
「今度の薬は結構自信作なんだよ。感度は倍加されるけど、イキにくいようになっちゃうから、たっぷり焦らすことが出来るんだよ」  
にっこり笑ってセリスはミリアを押し倒す。  
「ひ、ひやゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」  
その日、荒野に誰にも聞かれる事のないミリアの悲鳴が響いた。  
 
 
 
 
【了】  
 

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