年末におけるテレビ局の視聴率(すうじ)争いは凄絶なものだ。  
格闘技や紅白に押され、バラエティー番組は軒並み苦戦を強いられる。  
そんな中、ある局がこのような企画を行った。  
 
『女子アナウンサー橋村祐子、デトックスの旅』  
 
デトックス、それは体内に溜まった毒を排出することだ。  
企画は国民的人気を誇るアナウンサーをそのデトックスに挑戦させるというのだ。  
美容やダイエットという言葉で若い女の興味を惹き、温泉シーンで男の視聴者を釣る。  
その試みは成功だった。企画内容を発表した時点からネット上で大反響が起こった。  
それも当然のこと。  
橋村祐子は今もっとも旬のアナウンサーだ。  
有名私立でミスキャンパスになり、鳴り物入りでアナウンサーデビューを果たした。  
まだ歳若いのにクールなキャラクターをしており、いかにも“強い女”な瞳に、  
男からは勿論女からも絶大な人気を誇っている。  
その彼女が温泉につかり、足裏マッサージをされ、さらには腸内洗浄まで行うというのだ。  
【ミス華大】橋村祐子アナに浣腸をぶち込むスレ その63【9頭身】  
閑古鳥の鳴いていた妄想スレッドは12月、一日で20スレを消費する勢いとなった。  
 
48時間に及ぶバラエディスペシャル中のたった4時間分、  
橋村祐子の生放送ドキュメンタリーに日本中の注目が集まっていた…と言っても過言ではない。  
 
 
ここに2つの裏情報を記そう。  
 
一つに、企画を言い渡された時、橋村はあまり乗り気ではなかったという。  
根っからのお嬢様気質である彼女は、企画を伝えた局関係者に紙コップを投げつけた。  
そしてジュースまみれになった男にさんざん罵声を浴びせたそうだ。  
だが局のお偉方からの指名では断りようもない。  
『これだから、バカな連中に人気が出ると厄介なのよ』  
彼女はそう吐き捨てて髪をかき上げたという。  
 
もう一つは、橋村の腸内洗浄を請け負ったクリニックの事だ。  
選ばれたのは若者向けの比較的新しいクリニックだった。  
さらに本番で洗浄を担当するのは若くて美しい女医との事である。  
マル秘の話になるがこの女医は、実は橋村の同級生であるらしい。  
さらには橋村に虐められていたという証言もある。  
後にネット上では、女医が虐められた仕返しにテレビ局に身体を売り、洗浄役を手に入れたのでは、  
という噂まで流れる事になる。  
 
ともかくも様々な期待の中、12月31日、問題の生放送は始まった。  
 
橋村祐子はテレビ局の会場から4人の芸人と共に出発し、足ツボマッサージや鍼治療を受けていく。  
治療のたび明らかに5人の血色が良くなっていくのがリアルタイムに見てとれ、  
ネットには「足ツボすげぇ!」といったコメントが多数見られた。  
色物と思われていた企画が、或いは健康番組の傑作となるのではないか。  
国民は息を呑んだ。  
そして放送開始から2時間弱、一向はついに腸内洗浄のクリニックに着く。  
 
クリニックは洒落た外装だった。  
オレンジ色のカーテンが陽光をやさしく取り入れ、木目も美しい檜の床が心を落ち着ける。  
「ようこそいらっしゃいました、皆さん」  
若い女医が挨拶する。芸人がそれぞれに挨拶を返す。  
橋村は、女医の顔に一瞬だけ驚きの表情をみせた。同級生だとすれば納得の反応だ。  
女医も一瞬だけ橋村に笑みを向けた。  
が、次の瞬間には両者共に女医・体験者の顔に戻る。そこにはプロ意識が見えた。  
 
いや、正確には女医にプロ意識があったかは定かではない。  
結果として彼女は、プロとしての仕事よりも学生時代の私怨を選んだからだ…。  
 
 
「では橋村様。こちらの台に、仰向けでお願いします」  
女医は橋村に施術台に乗るよう促した。  
橋村が仰向けに横たわると、彼女の腹部の辺りに薄緑のカーテンが引かれる。  
カーテンは試着室のように橋村の下半身を映像から切り離した。  
芸人達が残念がった素振りで笑いを取る。  
 
この時点で、誰もがこの後の展開を急くあまり見過ごしたが、実は重大な情報が映り込んでいた。  
カーテンで仕切られたベッドの傍らに、かすかにパイプが見えている。  
表面がギザギザした太く透明なシリコンパイプ。  
腸内デトックスを知る物は、すぐに腸内洗浄に使うパイプだと気がつく。  
だが、それがカーテンで仕切った後もなお『カメラに映ってしまっている』。  
その意味を、この時はまだ誰も把握していなかった。  
 
「下のほう、失礼します」  
女医はカーテンの中から声をかけ、ベッドに仰向けになったアナウンサーの腰辺りに手をやる。  
カチャカチャという音はベルトを外す時のものだ。  
ベルトが外され、橋村のショートパンツがずり下げられる。  
その様が薄緑のカーテン越しにシルエットとなって映っていた。  
ネットではそれだけで騒ぎになった。  
ショートパンツが傍らに置かれれば、次の動きはショーツをずり下げられるものだ。  
橋村が少し膝を曲げ、その綺麗な脚を布の影が滑っていく。  
すっと足首からそれが抜き去られたとき、ネットでは多数の書き込みが行われた。  
 ――いいなあの女医、橋村アナのまんこ見てんのか。  
  ――あーあのパンツの匂い嗅ぎてぇ  
 ――朝から穿きっぱだぞ?しかも足ツボの時すげぇ叫んでたし、漏らしてるかもw  
そんな下劣な書き込みが。  
 
「それでは、まずは肛門のマッサージから行います」  
女医の声がし、シルエットがゴム手袋をはめる動きをした。  
「膝を立てて。力を抜いて」  
女医の言葉通りに橋村はMの字に膝を立てる。  
女医の指にローションが垂らされ、その指が橋村の脚の間を探る。  
「――っん!!」  
橋村が眉を顰め、カーテン外で白い喉を晒した。  
 ――お、今ケツに入ったなアレ。  
  ――祐子ちゃんツラそーw 確実に未使用だわ、アナル狂いとか言ってた奴ざまぁww  
書き込みと同調するように、外で見ている芸人達も問いかける。  
「え、ゆ祐子ちゃんもしかしてケツに指入れられてる?」  
「アホ!お前ホンマデリカシーないやっちゃな」  
そんな漫才じみた、しかし何かを誤魔化すような茶番が交わされる。  
橋村はいかにも芸能慣れした“少し困っています”な笑顔を保ちながらも、  
「んんぁ!!」  
シルエットが深く指を入れると生々しい声を上げた。  
それに対して十分な書き込みが予想されたが、その前に女医が追い討ちをかける。  
 
「ん〜〜、けっこう 溜まっちゃって ますねぇ。よくほぐさないと」  
 
橋村がカメラの前で目を剥いた。クールで売る彼女には滅多にない事だ。  
だがもはや問題はそれではない。  
 
 ――おいおいおいおい、すげぇ事言ってんそあのロリ顔女医wwww  
  ――溜まってるって言った?ねぇ今溜まってるって言ったー!!?  
 ――うわぁ言っちゃったな。生だぞこれ?wカットきかんぜ?ww  
  ――テレ富始まったなマジでw  
 
一気に怒涛の書き込みが始まった。  
芸人たちも唖然としているが、止めるわけでもない。  
それはそうだ、発言内容だけなら腸の様子を見る女医としておかしくはない。  
問題はそれを全国のお茶の間の前で、トップアナウンサー橋村祐子に対して言った事だ。  
「―――っ!!――――っっ!!!!!」  
橋村は顔を真っ赤にし、半身を起こしてカーテンの中を見つめた。  
だが仕方なく元の姿勢に戻る。それしかない。  
例えば同じ生放送で、腹の調子の悪いインタビュアーがインタビュー中に粗相をしたとしよう。  
彼女はどうすべきか。泣き喚く?不自然にカメラを止めさせる?  
否。プロに許される選択は、『何食わぬ顔で仕事を完遂する』、これだけだ。  
橋村祐子とて同じ、耐えるしかない。  
 
それからたっぷり5分は尻穴への指入れが続いただろうか。  
橋村は頭をベッドに擦り付けたまま長い黒髪を乱れさせ、白い喉を晒した。  
桜色のルージュを引いた唇は硬く閉じているが、喉から息の漏れるような声がする。  
カメラは忙しなく橋村の顔やカーテン内の様子を写しまわっている。  
 ――カメラの動きが人間臭すぎてワロタ  
  ――やべー俯瞰の橋村アナかわえぇぇ!!!  
 ――同意!今までアンチ橋村だったけど目覚めたわ!w  
  ――クールな顔してるけど今この瞬間にクソの詰まったケツほじられてるんだよなぁ。やべぇ射精るw  
 ――これ初夢じゃないよな…  
ネット上の書き込みは淡々と彼女の様子を語り合った。  
 
5分間気丈に耐え続けた橋村は、何度か膝を開いたり閉じたりした末、ある瞬間、  
「うあ!!」  
突然に口を開いて叫んだ。イッた、イッたとネットは騒がれたが、恐らくそうではない。  
そんな単純なものではない、未体験の者には想像もできない何らかの分岐点を超えたのだろう。  
その反応を待っていたように、女医の影は尻穴から指を抜いた。  
これを何度もスロー&拡大で見返したファンによれば、ここで糸を引いているのが確認できるそうだ。  
 
「では、いよいよ腸内洗浄へと移ります」  
カーテンから女医が声をかける。見守る者の空気が張り詰める。  
「腸内洗浄は2つの工程を経ます。細いエネマパイプで腸内に人肌ほどの熱さの湯を注ぎ、  
 次に太いパイプで溶かした排泄物を吸引するのです。  
 …今回、橋村様には一リットル程度の量を体験して頂きます」  
女医は言いながら、細いパイプを橋村の股の間に差し込む。  
続いて、どこかでごぽりと音がする。  
「ほら、入っていきますよ」  
女医の声をバックに、カメラが再び橋村の顔を映した。  
橋村は少し頬を赤らめているものの、なお毅然とした顔を崩さない。  
あえて言えば、ルージュの左下部分が涎を垂らしたように滲んでいるぐらいか。  
 
「き、気分はどや?祐子ちゃん」  
ベテラン芸人が少し上ずったような声で問いかける。  
橋村は一瞬きつい目つきをしたが、芸能界の大先輩を前に自制する。  
「ええ、と…生暖かいですね…それからすごくお腹の奥まで入ってきます。  
 私のお腹ってこんなに広かったんだなと、少し驚きです」  
橋村は落ち着いた聞き取りやすい声で語る。  
 ――お、この話し方はやっぱ橋村だ、そっくりさんじゃなくて……orz  
  ――暖かくて奥までって、まるで中田氏コメントだな。これは永久保存版だww  
 ――祐子タン……そんなこと実況しなくていいよ……  
  ――つか注入長くね?一リットルはとっくに超えてるよな…  
 ――俺も一リットルではないと思った。つかあの童顔女医、明らか嫉妬でやってんだろ死ね  
  ――落ち着け、普通の施術に見えなくもないだろ。詳しくないけど  
 
注入は淡々と続いたく。その間、女医の手はポンプを押さえる仕草を見せながら、時折妖しく蠢いた。  
それに必ず呼応するわけではないが、橋村も反応を示す。  
 ――お、おい、俺の見間違いなら言ってくれ。  
    女医の手さ、明らか マ ン コ 触 っ て る よ な ?  
  ――だから、カーテン越しで決め付けんなって。テレビでんなことするか。  
 ――便乗でいいかな。今の反応、女として言わせて貰えばクリ触られた以外に無いと思った。  
  ――誰か浣腸に慣れてる奴、あの橋村の反応の是非について教えてくれ。  
 ――俺の嫁がケツ穴に続いて処女穴まで犯されちゃったお  
 
このシーンは様々に物議を醸した。私見を述べれば、私も彼女は秘部を弄られていた、と思う。  
それも相当にとろけている秘部を、だ。  
断っておくが根拠はない。彼女を私の今まで触れ合ってきた女性と同じだと仮定し、その表情から分析したに過ぎない。  
だが空中に放られたまま焦点を結ばない瞳というのは、苦悶に満ちた浣腸の最中には通常ありえないと思うのだ。  
 
「ちょっと我慢してくださいねー、便を出やすくするマッサージしますからね」  
女医はたっぷりと注入した後、細いパイプを抜いて言った。  
カーテン越しでは橋村の腹がどれほど膨れているかは判別できない。  
第一、橋村祐子の腹部は非常に細い。多少膨れたとしてもその辺りの女並みになるだけだろう。  
しかし相当量のぬるま湯が注がれているのは間違いない。  
女医はその下腹に手をかける。  
「解りますか?ここがS字結腸。少し上が下行結腸、少し下が直腸です。  
 こういう形になっていて……うん、便が溜まっているのはここですね。  
 ここを重点的にマッサージします。さぁ、深呼吸して」  
女医は到って真面目に言葉を紡ぐ。その本物らしさが今までの怪しい行動をさらに灰色にする。  
治療か?陵辱か?  
だがいずれにせよ、橋村はそれに従うしかない。  
どんな気分だろう。  
全国への生放送でカメラに囲まれ、下半身には何も纏わず、M字に足をひらげている。  
アナルを執拗に指で嬲られたあと、大量に浣腸され、その排泄を堪えたままプロフェッショナルに腸を揉まれる。  
 
私なら脳が焼き焦がれるほどに恥じながら、悪意の指使いの中であえなく射精してしまうだろう。  
声もあげまくってしまうだろうし、情けなくて泣いてしまうかもしれない。  
そう考えた時、橋村祐子の凄さがわかる。  
彼女は血の通う人間らしく羞恥に頬を染めながらも、顔は高価な人形の如くに崩さない。  
マッサージされる腹からは雷轟の如き音が漏れ聞こえる。恥も概観もなく叫んで漏らしたい感覚に囚われる頃だ。  
だが、彼女は真っ直ぐに撮影を受け止めていた。  
その気高さはまるで天女。  
今の彼女を人間たらしめるのは、頬の赤みと、シーツを強く握り締める手のひらだけだ。  
 
 ――すげえ…、何かもうどんなスカAVも猿芝居に思えるリアルさだ  
  ――腹の音やばい。アイドルはうんこしないよとか言ってられん。  
 ――シーツを握る手が全てを物語ってるな……。  
  ――レイプされてる時も多分こんな感じなんだろうな。惚れ直すわ  
 ――脱糞シーンマダー?  
 
観衆の見入る中、女医がふと手を止め、太いパイプを手に取った。  
「もう限界みたいですから、排出の段階に入りますね」  
女医は淡々と告げるが、その響きは橋村が少し漏らしてしまった事を匂わせていた。  
カメラが橋村の顔を映すと、彼女は口を開いて息を弾ませていた。  
 
太いパイプが股座に差し込まれ、いよいよ排出が始まる。  
またごぽりと音がし、しばらくの後、私達は言葉をなくす事になる。  
 
変化にはすぐに気付いた。が、それが何を意味するのかを受け入れるのに時間が掛かった。  
覚えておいでだろうか。橋村が台に横になった時、向こうに太いシリコンパイプが見えていた、と書いたのを。  
その太いパイプは、湯で溶かした排泄物を吸引するパイプだった。  
すなわちそこを流れる茶色いものは、便である。誰の?橋村祐子の、便。  
 
  ――おおおぉいいいい!!!!!出したのモロに映ってんじゃねーかよ!!  
 ――え、え?マジ、やっぱり?あれうんこなの!?うわあああ、映すなってぇ!!  
  ――うわああこれヤバイぞー、テレビ史上前代未聞クラスだわ。アナウンサーの糞が生放送www  
 ――録画余裕でした。つかこれで橋村アナ完全に人生終了だな  
  ――同じ女として可哀想すぎるっていうか、ディレクター何してんの?あの女医何なの!?  
 ――全国の祐子ファンざまぁぁwwwこれからはゆうこじゃくてうんこアナなwwwwwww  
  ――ひどいよな、もうマジで女として終わりだ。  
 ――局が悪いな、こんな企画立てた時点でこうなる危険性は十分あったのに。局に殺されたよ橋村女史は  
 
暴発。今までグレーゾーンに対し抑えられていた意見が、この瞬間に怒涛の如く溢れた。  
ネットの海は阿鼻叫喚に包まれた。  
思い出すと私は今でも居たたまれない気持ちになる。  
場の空気に気付き、どこか呆けたような顔で反対側を振り向いた橋村を。  
どんな顔をしていたのだろう。カメラも流石に追わなかったので想像に任せるしかない。  
 
橋村は向こうを向いたまま、自らの腸から排泄された汚物が流れていくのを見つめていた。  
もはや振り向けないのだろう。  
シリコンパイプの中では波打つように汚液が流れ、時折固形物が混じった。  
 
  ――すげぇ、またでかい塊きたな。女子アナって意外に出すんだな。  
 ――この前にデトックスとか言って色んなもん食わされてたしな。そりゃお通じもいいわ。  
  ――ガチで年越しそば吐いた…もういいって…  
   ――やめろ、お前ら見るんじゃねえ俺の、俺の初恋の祐子おねーさんがっ……!!  
 ――このコ縛り上げて下痢便漏らさせるのが夢だったけど、叶ったwww  
  ――祐子ちゃん何か言ってェ〜お茶の間でうんこ出して御免なさいってマッパで土下座してェ〜〜♪  
 
排出が延々と続く中、コメントは次第に橋村を低俗と見るものに変わっていった。  
輪姦、強姦、イラマチオ、枕営業、女の恥、肉奴隷……そんな罵倒が飛び交った。  
カメラの映す現場の中、ある若手芸人の携帯が鳴る。  
彼は慌てるあまり撮影中にも関わらず電話に出てしまう。  
『TV見てっぞー、最ッ高だなオイ!  
 っつかお前さぁ、そこ居んだろ?だったらぁ、犯せよ!!犯せよその糞タレビッチよ!!  
 黒髪掴んでよ、イラマチオ!澄ました顔歪めて泣いてゲロ吐くまでやってやれ!』  
若手芸人の連れらしい。ガラの悪い大声で叫び散らす。  
若手芸人はすぐに携帯を切ったが、会話はすべてマイクに拾われている。  
橋村の肩が震えていた。  
 
「ん〜大方排出は終わりです、ご苦労様。  
 ただちょっとまだ腸に残ってるので、器具を使ってかきだしますね」  
女医はカーテンの外の事など知らないと言わんばかりに語り、金属音をさせた。  
 ――あれ何の音だ?ハサミ?  
  ――多分だけど、あの影は肛門鏡。肛門広げるやつ。  
 ――うへ、あの女医マジ役得だな。うんこアナの腸覗けるとかいいなぁ。  
  ――もうさ、隠す必要とかなくね?wカーテン破って、ついでにうんこの服も破ってまえw  
 ――その方がいっそ清清しいな。どーせならクソまみれのケツ犯して泣かしてほしいww  
 
完全に下に見るコメントの中、肛門鏡は橋村の脚の間に捻じ込まれる。  
冷たいのだろうか、橋村がびくんと反応した。  
キリ、キリと肛門鏡の開く音がする。  
「おー、まだまだ結構ありますねぇ。では、いきますよ」  
女医はどこか嬉しそうに告げ、細い棒のような物を取り出すとやはり脚の間に沈ませる。  
そこから女医の手が数回蠢いた時、橋村が声を上げた。  
そしてパイプの方を向いていた上体を仰向けに戻す。アイシャドウの黒い涙が頬に伝った。  
嘆きさえも薄汚れているかのようだ。  
芸人やカメラマンはうろたえながらただ顔を見合わせる。  
 
「お〜出る出る、いっっぱい出てきますよ〜〜」  
女医はあやすように言いながら棒をかき回す。  
「ああ…」  
橋村が歯を食い縛る。  
「ああああっ!!」  
口が大きく開き、白い首が天を仰ぐ。  
シーツを掴んでいた細い手は目を押さえ、それ以降は口を目いっぱいに開いて声を上げ続けた。  
 
 ――おー、やっぱケツが感じるんだな。すげぇ声w  
  ――やっぱアナだけあって綺麗な歯並びしてんなー。まぁもうフェラぐらいにしか使えないけど  
 ――必死で橋村アナのレイプコラとか作ってたのが懐かしいわ。まさか公式でアナルレイプとかな…  
  ――これが数時間前まで日本最高の女だったんだよな……、やっぱ人間なんてちっぽけだわ。  
 ――全くだな。アナウンサーも所詮肉と汁でできた牝だって証明されたわけだ。  
  ――テレ富士さん聞こえる〜?来年はスッチーでお願いしまーすw  
 ――にしてもあああ、あああってうるせーなこの女。セックスする価値もないわ。  
  ――女医さま、その使い終わった棒は俺に下さい。もちろん橋村祐子の下痢便つきでwwww  
 ――なぁこれドコ?俺マジで乱入して犯してくるわ。  
  ――あはは、今の見た?腰ビクーン!ってwおしりでイかないでほしいよww  
 ――腰つきすんごい気持ちよさそーなんだけど、やらしすぎ。やっぱアナって身体売ってんだね。  
 
橋村は全ての官能を見られ、全ての反応をなじられた。  
そして最後のトドメはもたらされる。  
 
「そこまでだ!やめろ!!」  
突如、局ディレクターやプロデューサーがクリニックになだれ込んだ。  
会場から走ってきたのか息を切らしている。抗議の電話が殺到したためだろう。  
「終わりだ、終わり!」  
ディレクターは気が動転しているのか、橋村の元へ駆け寄って薄緑のカーテンを剥ぎ取った。  
それは橋村の下半身をカメラから護る唯一のものだったのに。  
場が凍りついた。  
映ったのは、M字型の長い脚と器具でめいっぱいに広げられた直腸。  
そしてその直腸を抉る棒と、その下方に翳された洗面器。  
洗面器には茶色い半固体と黄色い液に分離した下痢便が撒き散らされていた。  
「あらあら。」  
女医が驚いたように棒を引きずり出す。  
すると、栓を抜かれたように下痢便が流れ落ち、ど、ど、と鈍い音で洗面器に受けられる。  
場が唖然とした後、映すなというプロデューサーの怒号でカメラが床を向いた。  
 
放送はそれで終わり、急遽環境映像が流される中での年明けとなった。  
 
 
これは新年早々の大ニュースとなり、視聴者には三者三様の反応が見られた。  
最高のAVだと嬉々とする者、憧れが壊されたと嘆く者、何というものを見せるのかと憤怒する者。  
この事件はあまりに衝撃的であったため、警察は情報を伏せるほうに動いた。  
ゆえに確実にこうなったと述べる事は難しいが、信憑性の高い話をいくつか挙げよう。  
まず、例の番組の最高視聴率は60%だという。  
ネットでの告知や電話などでたちまち情報が広まった為だ。  
子供が居るからとチャンネルを変えた家も多い事を考えれば、これは驚異的と言う他ない。  
次に、裁判の結果、局上層部の人間複数が解雇となった。  
しかしあの女医は明らかな違法行為がないためお咎めなし。  
罰もなくイジメの復讐を果たせ、さぞかしほくそ笑んでいることだろう。  
ではそのいじめっ子で、日本最高のクールな女と呼ばれた橋村祐子はどうなったか?  
 
……わからない。  
少なくともアナウンサーを続けてはいないし、どこかで入院してもいない。  
しかし今日、私は気になる話を耳にした。  
だからこそこうして、もう何年も前の事件を今さらに語っているのだ。  
 
ネタをくれたのは医師の息子だった。  
彼は上流階級のみが利用できる最高級レストランで橋村祐子を見かけたという。  
私は詳しくないが、最高級のレストランは雰囲気が異常であるらしい。  
話はおろかナイフやフォークのかちんとなる音さえご法度で、完全な静寂の中料理を口にするそうだ。  
そんな場所に橋村はいた。ドレスを身につけて場に相応しい気品で。  
しかし彼女の絹の手袋をした腕は細かく震え、皿にカチカチと音を立てては周囲の視線を浴びていたらしい。  
顔色は真っ青で、腰も落ち着かない。  
 
そんな橋村を一人の男がテーブルの向かいから見つめていたそうだ。  
聞けば事件に関わったテレ富士の影のドンという。  
裏の世界では好色で有名であり、業界を追放された美女や美少女、果ては美しい男アイドルさえも匿っているという。  
彼の趣向は極端にアナルに偏っている。  
あまりに美しすぎるアイドルは疎まれ干される事がしばしばあるが、それらは全て彼に匿われ、  
毎日毎夜あらゆる方法で尻穴責めを受け続け、ついには声も愛液も枯れ果てた廃人となって別の愛好家に渡されるらしい。  
彼は飼った女を業界の不要物と呼ばわり、それを使い捨てる行為を業界のデトックスと表した。  
橋村が一緒にいたのはそんな男だ。  
 
橋村はドレスのまま滝のような汗を流すばかりで食事に手をつけず、  
やがて小さく声を上げたまま無作法にもテーブルに肘をつき、前傾で腰を浮かせて震えたそうだ。  
恐らくは浣腸を仕込まれ、オムツの中にでも排便させられていたのだろうとネタ元の男は言った。  
橋村はその後、食事の邪魔をした罰として資産家向けのキチガイめいたショーに参加させられ、  
背もたれのあるロデオマシンで延々と尻穴を責められたらしい。  
大股を開いて機械に跨らされ、菊門が捲りあがるほどに穿たれ、丸見えの割れ目から潮を噴いて叫び通した。  
だが彼女の声が枯れ果てる前に、彼女を譲ってほしいという奇特な者が現れた。  
それがネタ元の男だ。  
彼は今、なおも最高級の肢体を保つ橋村祐子を拘束し、人に言えない実験を繰り返しているらしい。  
 
良ければ施設に来ますか。ちょうど昨日、乳房が2倍の大きさになったんですよ。  
彼はにこやかに言った。  
 
 
            
                            終わり  
 

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