第二話  
 
 
 公女殿下にもたれかかるようにして、イーシャさんは王宮の広い廊下を進みます。  
 先程の愉快な二人組、ハイダリさんとミギュイさんのみならず、時折すれ違う他の衛士達にも  
当然イーシャさんの顔は知れ渡っていて、この紗を纏った、妙に色っぽい、様子のおかしい美少女が、  
あの鬼の副隊長だと気づいた人もいましたが、王宮に詰めるだけあってそこは心得たもの、  
気が付かない振りで膝を折り、『公女殿下とそのお連れの方』をお通しします。  
 まあ相手が相手だけに、下手に触れても大怪我しそうですしね。色々と。  
 
 あと、跪いたまましばらく立ち上がれない若い衛士も少なからずいましたが、  
今のイーシャさんの姿を見てしまっては仕方がありませんね。大目に見てあげましょう。  
「おい、ミギュイ、いつまで膝を着いている気だ」  
「お、お前もなハイダリ! ……しかし、シトリン殿……いったいどうしたんだ? 大事でなければよいが……」  
「ああ、イーシャちゃん、色っぽかったなぁ……今夜はお世話になります」  
「クズは黙ってろ」  
 
 当のイーシャさんはそれどころではありません。  
 紗は汗で肌に張り付き、引き締まった体の線が浮き上がってしまっています。  
 歯を食いしばって必死に衝動を押さえ込んではいますが、全身が敏感になっていて、  
張り付いた生地に肌を擦られるだけで、たまらない快楽が身を苛むのです。  
 特に、紗の上からでも形がくっきりと分かる程、はちきれんばかりに勃起した乳首は、  
一歩進む度、彼女を軽い絶頂へと導きます。  
 しかし、無理矢理発情させられた体はそんな中途半端な達し方では満足せず、  
より深い快楽を求め、さらにもどかしさを増していくのでした。  
「ふうーー…………ふうーー…………ふぐっ…………ううっんうぅーーっ!」  
 すでに目の焦点は合っておらず、とめどなく流れ出す涙や涎は顎を伝って胸元を濡らしています。  
 腰が自然にカクカクと揺れ、足の間から溢れ出たはしたない滴りは、太腿から膝、ふくらはぎを通って、  
床に点々と淫らな染みを付けていきます。  
 公女殿下は通りがかりの侍女を呼び止め、数人で手分けして  
その染みが乾いてしまわないうちに綺麗に拭き取るよう命じました。  
 それがまた、真面目なイーシャさんには非常に恥ずかしく、  
なのにその羞恥が、彼女の体の昏い焔にさらに油を注ぐのです。  
 殿下の私室までの数分間は、イーシャさんにとっては数時間にも感じられました。  
 なんとか堪えられたのは、ひとえに彼女の強い自制心のおかげです。  
 普通の女性なら、人目も憚らず狂ったように自らを慰めていたことでしょう。  
 
「お帰りなさいませドュリエス様。あら、そちらのお方は? お加減がすぐれないご様子ですが」  
 お部屋に到着すると、公女殿下お付きの侍女三人が出迎えました。  
「ええ。わたくしの寝台で横にして差し上げて」  
「かしこまりました。さ、こちらへ」  
 イーシャさんは二人の侍女に支えられ、部屋の奥へ通されます。  
 公女殿下は、残ったもう一人の侍女、十七、八歳位の、青味がかった灰色の髪を結い上げた少女に手伝わせ、  
堅苦しい礼装からゆったりとした部屋着に着替えます。  
「ドュリエス様、アキは一緒ではなかったのですか? あの子ってば、また勝手に  
ドュリエス様のお側を離れて……。後でたっぷりお仕置きしないといけませんわね」  
「ああ、違うのよ。あの子はわたくしの代わりに置いてきたの。お偉いさん達の出した結論を  
聞いて来てもらうためにね。どうせお父様もお母様も、重要なことはわたくしに教えて下さらないんだから」  
 アキ、と言うのは、どうやら先程腕輪を持たせた明るい茶髪おさげの侍女のことのようです。  
「左様でございましたか……」  
 灰髪の侍女さんは、何故だかちょっと残念そうな顔をしてます。  
「ところでドュリエス様、あのお方、もしかして王都守護隊のシトリン副隊長ではございませんか?」  
「そうよ。ナオミ、知っているの?」  
「もちろんですわ。王都では有名な方ですもの。侍女達の間でも、かなり人気がお有りなんですよ」  
「分かるわ。凛々しくて可愛らしい方ですものね」  
「今回シトリン様は刻印鑑定官として召喚されたと聞き及んでおりますが……一体何があったのですか?」  
 その侍女、ナオミさんに、公女殿下は一連の出来事をご説明なさいます。  
「ま、まあ……。ルーオレイス殿下に、そのようなお力が……。それで、あのような……」  
 ちらっと、お部屋の奥に目を遣るナオミさん。  
 そちらからは、先程からイーシャさんのあられもない喘ぎ声が聞こえてきます。  
「お可哀相に……」  
 ナオミさんは同情するように言いました。  
 が、その顔はどう見ても心配する人のそれではありません。  
 まるで、獲物を前に舌なめずりする猫のような――。  
 一方の公女殿下は、天使のような微笑みを浮かべています。  
「さあ、終わりましたわドュリエス様」  
「そう。ではわたくし達も彼女を介抱しにまいりましょう」  
 
 公女殿下の、六、七人は一緒に寝られそうな、広い天蓋付きの寝台。  
 そこに横たわる所までが、イーシャさんの限界でした。  
 そばにいるのが四人の女性のみ、しかも目の前にいるのはその内の二人だけなので  
気が緩んでしまったのかもしれません。  
 とうとう彼女は、自らを慰め始めてしまいました。  
「んーーっ! くぅぅ……ふはっ……あっ、あっ、ああっ!」  
 左手で寝台の敷き布を掴み、右手で、まだ幼い女の部分をまさぐります。  
 突然始まった彼女の痴態に、侍女二人は驚き、思わず凝視してしまいます。  
「いやぁっ! みっ、見ないでっ! 見ないでぇっ! あっ、あっ、ふあぁっ!」  
 
 しかし、何度も言うようですが、イーシャさんは生まれてから十四年間、ずっと生真面目に生きて来たのです。  
 思春期を迎えて体が疼くことがあっても、自慰などせず、武術の稽古で発散してきたような人なのです。  
 そんな彼女ですから指の動きはとても拙く、いかに強制的に欲情させられていようとも  
その体が満足出来るほどの深い絶頂に自らを導くことなど、出来ようはずもありません。  
 浅い絶頂を何度も何度も繰り返し、次第に上り詰めたままの感覚が続くようになっても、  
あともう一息と言う高みになかなかたどり着けず、まるで寸前までの焦らし責めを  
延々と受け続けているような状態です。  
「ふうぅ……ふーー……うあぁ……もうやぁ……もうやだぁ……ひうぅっ! ふあああ……っ!」  
 もう、気が狂いそうでした。  
 
 と、そこへ、着替えを終えられた公女殿下が、ナオミさんを伴ってお見えになりました。  
 イーシャさんの様子を興味深げに眺めている二人の侍女に、ナオミさんが指示を出します。  
「シーリオ、お水を汲んで来てちょうだい。クロエ、あなたはお風呂の準備をしておいて」  
 肩までの銀髪の、シーリオと呼ばれた少し気の弱そうな侍女は  
「はっ、はいっ」  
 と慌てたように返事をして、とてとてと寝室の外へと走り去ります。  
 もう一人の侍女クロエさんも、黙って頷くと、腰まで伸びた烏の濡れ羽色を翻して  
シーリオさんの後に続いて出て行きます。  
 二人を見送ると、ナオミさんは結い上げた髪をほどきます。  
 背中までの青灰色の髪が、ふわりと流れ落ちました。  
 
 一方公女殿下は、寝台で苦しそうに喘ぐイーシャさんの隣に横になりました。  
「んああっ、あっ、でっ殿下……っ! み、見ないで下さい……っ!」  
「まあ、今更ですわよ。わたくしの寝台をこんなに濡らして」  
「ふあぁ、も、申し訳ありません……くふぅ……っ!」  
「ふふふ、気にする必要はありませんわ。それよりシトリン様、ご自分で飛べずにお辛いのでしょう?  
わたくしがお手伝いして差し上げましてよ」  
 公女殿下はそう言って、イーシャさんの右耳に舌を這わせ、右手の指の爪で首筋をなぞりました。  
「ふっ、ひ……っ!」  
 そして胸、お腹、さらにその下へと、指をゆっくり進めて行きます。  
 が、イーシャさんの足は自分の右手と紗を挟み込んだまま、ぴったりと閉じられてしまっています。  
「ふふ、怖がることはありませんわ。さあ、わたくしに身を任せて、足を開いて下さいませ」  
 しかしイーシャさんは弱々しくと首を振るばかりで、いっこうに足を開く気配はありません。  
「……仕方ありませんわねぇ。ナオミ」  
 公女殿下に促されたナオミさんは寝台の上に乗り、イーシャさんの両膝を掴んでぐぐっと開きました。  
 そして閉じられないよう、その間に腰を下ろします。  
「ああ……いやぁ……」  
 普段なら、ナオミさんではイーシャさんの力には敵わなかったでしょうが、  
今のイーシャさんはほとんど力が入らず、抵抗は不可能でした。  
 
 公女殿下は、まだぎこちなくもはしたない動きを続けるイーシャさんの右手をそっと外し、  
代わりに自らの右手をその部分に押し当てます。  
 そして人差し指と薬指で紗の上から両端をくっと押し込むと、中指で巧みに愛撫なさいました。  
「ああーーっ! ひあーーっ!」  
 自分でするのとは桁違いの刺激に、イーシャさんは叫ぶように喘ぎます。  
「あらあら、おさねがこんなに膨れ上がってますわ。ここが良いのね? いつもここでするの?」  
「ふひぃぃっ! しまっ、しませんっ! しないのぉっ! ふあぁっ! ああっ! はっ初めてなんですぅっ!」  
「まあ、見た目に違わず純情なのね。初めてがわたくしでよろしいのかしら? やはりご自分でなさる?」  
 ぴたっと動きを止め、指を離す公女殿下。  
「ああっ、やあぁっ……やめないでっ……やめないでください……っ!」  
 イーシャさんの腰は無意識に突き上がり、はしたなく公女殿下の指を追いかけます。  
「わたくしでいいのね?」  
「はいぃ……で、殿下がっ、殿下がいいですぅ!」  
「まあ、嬉しいわ。それでは遠慮なく乱れさせて差し上げますわね」  
 再び中指でそこを苛め始める公女殿下。  
 こしこしこしこし…………と激しく擦り上げ、自己主張する敏感な突起に容赦ない責めを加えます。  
「ああーっ! あひいっ! こ、これ、これすごいですぅっ! やあっ! も、もお、がっ我慢できないですぅっ!」  
「我慢しなくてよろしいのよ」  
「んーーっ! あっ、ああっ、変になりますっ! 変になっちゃいますっ! 殿下ぁ……こ、怖い……っ!」  
「変になっても大丈夫ですわ、わたくしが側にいてあげますからね」  
 公女殿下は空いてる左手でイーシャさんの頭をそっと抱き寄せます。  
「ああっ……殿下ぁっ……殿下ぁっ! あっ、ふああっ、ああああああああーーーっ!!」  
 イーシャさんは一際大きな喘ぎ声を上げると、公女殿下にぎゅっと抱き着き、足指を丸め、  
膝をぴんと伸ばして、がくがくと身を震わせました。  
 淫らなお潮がぷしゃっと噴き出し、紗を通り越して公女殿下の右手を濡らします。  
 そして、くたぁ……と力が抜けていきました。  
 どうやら、待ち望んでいた絶頂が訪れたようですね。  
 
「はーー…………はーー…………はーー…………」  
「どうかしら、刻印の力はもう消えて?」  
「は……はい……どうやら、そのようです……。お、おかげさまで……」  
「それは重畳ね。それで、初めての愛の営みはどうだったかしら? 満足出来て?」  
「あ、そ、それは、その…………はい」  
 その問いに、恥ずかしそうに目を背けつつも、こくんと小さく頷くイーシャさん。  
「ふふふ、良いわ、あなた。とっても可愛いわ」  
 公女殿下はイーシャさんのこめかみ辺りに軽く口づけます。  
「……で、殿下……あの……んむうっ!?」  
 何か言いかけたイーシャさんの唇を、公女殿下はご自分の唇でふさぎ、さえぎりました。  
「んっ……んう……」  
 初めのうちはただ軽く唇同士を重ね合わせ、次第にゆっくりと擦り合わせ、  
それから唇で唇をめくるように広げると、そのまま強く押し付け、内側の粘膜も優しく味わいます。  
 その動きに、イーシャさんは背筋に先程の激しい快楽とはまた違った甘い疼痛を、  
それから胸の奥にちくりと、小さく温かい針が刺さったような痛みを感じるのでした。  
 公女殿下が唇を離すと、舌を入れていないにもかかわらず、唾液の糸が細く一本、二人を繋ぎました。  
「ふぅ……。ふふふ、わたくしのことは名前で呼んで頂戴。親しい者は、皆そうするわ」  
「ドュ……ドュリエス……様……?」  
「うふふ、そうよ」  
「あの、そっ、それでは……私のことも、どうかイーシャとお呼び下さい……」  
「分かったわ、イーシャ」  
「ドュリエス様……」  
「イーシャ……」  
「ドュリエス様……」  
 見つめ合ったままお互いを呼び、くすくすと笑い合う二人。  
 イーシャさんの顔は、すっかり恋する乙女のそれになっています。もうドュリエス様に完落ちですね。  
 しかし、いくら初めて愛の手ほどきを受けたとは言え、無理矢理発情させられた状態での相手、  
しかも同性に惚れてしまうなんて、この少女騎士さんはどれだけ免疫が無いんですかね。ああ、皆無でしたね。  
 悪い男に騙される前にドュリエス様に篭絡されてしまって、むしろ良かったのかもしれません……多分。  
 
 
 続く  
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル