第九話
「イーシャ。イーシャ……イーシャ?」
先程と同じようにドュリエス様は彼女の頬を優しく叩きましたが、今度は完全に意識を失い
正真正銘「気をやってしまった」イーシャさんは、その呼びかけに反応せず、
すぅすぅと可愛らしい寝息をたてるばかりです。
「イーシャってば……なんて満足そうな寝顔なのかしら。うふふ……」
「ですがドュリエス様、三度失神した後も『お願ぁい、もっとぉ』とおねだりするクロエのような子もおりますし、
イーシャ様もまだまだ満足していらっしゃらないかもしれませんわ」
「ナオミっ! もうボクのことは良いでしょっ!
そっそれよりっ、イーシャ様の拘束、もう解いて差し上げたらっ!?」
ごまかし気味に言うクロエさんですが、確かにそろそろ解放してあげないと
いかに丁寧に縛ってあるとはいえ、体の節々が痛くなってしまいます。
「はいはい、クロエちゃんの言う通りだねー」
「……アキ、馬鹿にしてる?」
「やだなあ、そんなわけないじゃない。馬鹿になんかしてないよ。愛してはいるけどねっ!」
「きっキミはすぐにそういう調子の良いことを……っ! ま、まあ、ボクもアキのこと、愛してるけど、さ……」
「ああん、もう、クロエちゃん好き好きぃっ!」
叫びながらアキさんがクロエさんを正面から抱きしめると、
お下げ侍女さんの大きなお胸にクロエさんの頭が埋まりました。
長い黒髪だけが外にあふれています。
「わぶ……っ! ちょ、ちょっと……っ!」
と、最初は驚いていたクロエさんでしたが、すぐに自分もアキさんの背中に腕を廻します。
体をぴったり合わせることで、二人の大きなお胸が二段重ねになり、なかなかの迫力です。
ナオミさんはそちらを見ないようにして、黙々とイーシャさんの拘束を外しています。
この人には目の毒ですものね。
それにしてもクロエさん、アキさんにぎゅっと抱き着いたまま、全然動きませんね。
……いえ、良く見ると腰がわずかに動いています。
小さく小さく、円を描いているようです。
それに、息がだんだんと荒くなってきています。
すぐにそれに気付いたアキさんは、クロエさんだけに聞こえるくらいの小声でささやきました。
「なあに? イキそうなの? あはは、本当に手を使わずにイケるんだね」
クロエさんは、熱を帯びた瞳でアキさんを見上げると、弱々しくうなずきます。
「うおっかわいっ……へへへ、あたしに抱きしめられただけでこんなに感じちゃうんだ。
いやらしい体で素敵だよ。それに、なんだかうれしい。
良いよクロエちゃん、このままイッちゃっても。しっかり見ててあげるからね」
クロエさんの体は、その言葉を待っていたかのようにきゅっとこわばり、動きを止めました。
背中に廻した指に力が入り、アキさんの肌に食い込みます。
大きなお胸の間からは、幼くも甘い溜息が漏れ出しました。
「ふぅー、はぁー…………」
そしてゆっくりと力が抜けていき、アキさんにもたれ掛かります。
豊満な谷間に沈み込んだクロエさんの頭をそっと抱きしめながら、
アキさんは彼女の艶やかな黒髪を愛おしそうにそっと指で梳かします。
クロエさんは、しばらくされるがままに髪をいじらせていましたが、
やがてアキさんのお胸に顔を埋めたまま、ぼそっとつぶやきました。
「……違うからね」
「ん? なあにクロエちゃん?」
「い、今のは、別にボクの体がやらしいからじゃ、ないんだからね……。
アキに、愛してるとか、好きとか言われて、抱きしめられたりしたから……
嬉しくて、胸の奥とかお腹の下の方がなんだかきゅうってなって、
それですごく気持ち良くなっちゃって……。そっ、それだけなんだからね……っ!」
アキさんは無言でクロエさんを押し倒しました。
「痛っ! ちょっ、アキっ!? なっ何を……っ!?」
「くくくクロエちゃんが悪いんだからねっ! このこのっ! この天然たらしっ娘がぁ!
そんなこと言われたらっ! あたしはもう……あたしはもう……っ!!」
「はいそこまで」
「よいしょっ」
暴走しかけたアキさんでしたが、ナオミさんとシーリオさんによってクロエさんから引きはがされてしまいました。
「ダメでしょうアキ。クロエの天然誘い受けが抗い難いのは分かるけど、今はイーシャ様の歓迎会なのよ」
右腕を抱えたナオミさんにたしなめられたアキさんは、侍女頭さんの肩にもたれ掛かって言いました。
「あはは、やだなあナオミさん、あたしはイーシャ様にもめろめろだよー」
そして、仕方ないなーという顔で、
「もちろんナオミさんにもめろめろだから、安心してね」
「わ、分かってますわよ……私だって、あなたの事……。ん、もう、本当に調子の良い子ね」
「えへへ」
「アキさんアキさん、私は?」
甘い雰囲気を醸し出し始めた二人に混ざろうと、アキさんの左腕を抱えたシーリオさんが尋ねましたが。
「……シーリオは、あたしを引っ張る時『よいしょ』って言ったから嫌い」
「そっ、そんな……っ! あ、あれは、別に、普通に掛け声と言うか……」
「ふうん、掛け声が必要な程、あたし重いんだ」
「ちっ違います! そうじゃなくって……。あ、そっ、そう!
アキさん、お胸の分があるじゃないですか! それですよ!
それを嫌がったりしたら、アキさんよりむちっとしていて背も高いのに、
お胸の分でアキさんより体重の軽いナオミさんに失礼でふごっ」
別にシーリオさんが語尾に特徴を付けようとしたわけではありません。
ナオミさんが彼女の鼻をつまんだのです。
「だっ、だおびはん!?」
「あらシーリオ。私達の体重なんて、いつ計ったのかしら?」
「はのっ、ほっ、ほえは、ほのっ、ぼっ、ぼくはんえ……っ!」
「目算? そう。あなたにそんな特技があったなんて、初めて知ったわ。
ではあなたの体重は、私やアキと比べてどうなのかしら。教えて下さらない?」
「あたしも知りたいなー。あ、それじゃあたしが計ってあげるよ! でも目算は出来ないから……」
アキさんはシーリオさんの両脇に腕を差し込んで、
「よっ、こら……しょーっ!」
気合い一発、鼻息も荒く持ち上げました。
「むむむ、これはかなりの大物……ずっしりと腕が痛い」
そりゃ、いくら小柄な少女とは言え、人一人持ち上げたら重いに決まってます。
「んなっ!? ちょっ、ちょっと! 何ですか今の掛け声は!? 私そんなに重くないですよーーっ!!」
顔(特に鼻)を真っ赤にしたシーリオさんは、持ち上げられたまま
足をばたつかせて抗議しましたが、二人とも聞く耳持ちません。
「いけないわシーリオ、そんなに暴れたら」
ナオミさんはシーリオさんを押さえるふりをして、おへその斜め下辺りに手を這わせてくすぐり始めました。
アキさんも、腋の下の指をわきわきとうごめかせています。
「にゃひゃひゃひゃひゃっ!! やっやめっやめれっ! やめれーっ!」
「ほらシーリオ、暴れてはいけないと言っているでしょう?」
「そうだよー。これじゃ、正確な重さがわからないよー」
「むっ無理ーっ! 無理ーっ! んひょひょひやぁーっ! ほあーーっ!」
「こら、いいかげんにしなさい!」
救いの声は、クロエさんでした。
アキさんの後で腕を組み、全裸で仁王立ちしています。
アキさんは、シーリオさんを下ろして振り返りました。
「あらクロエちゃん、淫乱ちゃんから真面目ちゃんに戻っちゃってる。おまた丸出しだけど」
クロエさんは即座に足を閉じました。
……ま、いまさらという感じもします。
「うっ、うるさいよアキ! まったく、キミやシーリオはともかく、ナオミまで何やってるのさ」
「おほほ」
「え、わ、私、被害者なんだけど……」
シーリオさんのつぶやきは無視されました。
「ドュリエス様をお待たせしちゃダメじゃないか。早くイーシャ様を寝台までお運びしよう」
見ると、拘束を外されたイーシャさんは、気絶したまま手足をだらしなく伸ばし、
半開きの口からよだれを垂らしながら椅子にもたれ掛かっています。
一方ドュリエス様は、例の大きな寝台にしどけなく横たわって、皆を眺めて微笑んでいました。
もちろん、寝台の敷布その他は全て綺麗なものと交換済みです。
「あら、いそがなくて良いのよ。あなた達を見ているだけで笑えるもの。まるで道化ね。
令名高きドゥカーノの娘に仕える侍女とはとても思えないわ。おほほほほ!」
ドュリエス様、結構きつい事をおっしゃってますが、別に本当に怒ってらっしゃるわけではありません。
嗜虐趣味あふれる公女殿下は、こういう言葉を使うとぞくぞくするのです。
しかし侍女さん達は慣れたもので、
「まあドュリエス様、あんまりですわ」
「いやあ、申し訳ありません」
「ごめんなさい、ドュリエス様」
等と言いながら、イーシャさんの体を四人でそっと持ち上げ、寝台に運ぶのでした。
ちなみにクロエさんの反応は、ため息一つです。
ドュリエス様はちょっと物足りません。
あまり真に受けられても困りますが、少しは悔しそうな、あるいは悲しそうな顔をしてほしいのです。
そこに優しく手を差し延べて、
「ごめんなさい、あなた達があまりに可愛いので、つい意地悪なことを言ってしまったわ。
安心して。あなた達は、わたくしの……大事な子達よ」
とかなんとか言って、自分で傷付けた相手に優しくして喜ばせ、悦に入りたいのです。
この人もなかなかにダメな人ですね。
ドュリエス様は、わざとらしくうなだれてみせます。
「ふう……。わたくし、なんだかさみしいわ」
そして、ちょうど寝台に横たえられたイーシャさんに正面から抱きつくと、
「でもいいの、今のわたくしにはこの子がいるもの! 新鮮な反応を想像するだけで、この胸が高鳴るわ!
ふふふ……イーシャ、これからたくさんたくさんいじめてあげるからね」
「いやあ、さっきまでも散々いじめてると思いますけどねー」
アキさんが突っ込みますが、ドュリエス様は反論します。
「あら、アキったら分かってないのね。体をいじめてあげるのと、心をいじめてあげるのとでは、
全然違うのよ。どちらもいじめて、救って、そしてイーシャは身も心もわたくしのものになるのっ!」
「はあ……まあ、何となく分かりますけどねー」
「ドュリエス様、本当に嫌がることはなさいませんし、イーシャ様も幸せです」
と、アキさん、シーリオさん。
クロエさんは、もう一度ため息を吐きました。
「それにしても」
話をそらしたのは、寝台に上がったナオミさんです。
イーシャさんの背中にお胸をぺたっと(そこ! 擬音を気にしてはいけませんよ!)くっつけ、
「イーシャ様、ここまで中イキ無しとは驚きですわ」
「あら、そういえばそうね。初めての子を相手にするのは久しぶりだから、慎重になりすぎたかしら」
「処女を破らないように気をつけて、お大事の奥も責めて差し上げるべきだったかもしれませんわね」
「まあいいわ。今日はもう疲れてしまったし。そのうち、もっと素敵な雰囲気を演出して、
わたくしがこの子を優しく貫いてあげるわ。ふふふふふふ……」
ドュリエス様は、イーシャさんの頭を撫でながら妖しく微笑みます。
すると、イーシャさんは小さく身じろぎして、寝言をつぶやきました。
「ああん……おじ様ぁ……やめてぇ……これ以上……たら……んじゃうぅ……もうらめぇ……」
瞬間、全員に衝撃が走りました。
「おっ、おっ、おじ様!? 何!? 誰!? 男!? イーシャに、男!?」
ばっと身を起こし、信じられないという表情で叫ぶドュリエス様。
その手を、同じく身を起こしたナオミさんが握りしめます。
「おおお落ち着いて下さいドュリエス様!! 『おじ様』だからといって男とは限りませんわっ!」
「いやー普通は男だと思うなー」
「落ち着くのはナオミの方」
アキさんとクロエさんが突っ込みました。
ドュリエス様とナオミさんが先に錯乱してしまったので、他の三人は割と冷静でいられたのです。
三人は、イーシャさんの寝顔を眺めながら寝台に上がります。
「イーシャ様、その、男性経験があるのかな……?」
「いやあ、あの反応はどう見ても初めてだったけどねぇ」
「だよねぇ」
「それにイーシャ様、男を知った女の匂いじゃなかったですよ」
「わかるんかい」
クロエさん、アキさん、シーリオさんが話していると、イーシャさんが寝言の続きを口に出しました。
「ダメぇ……おじ様ぁ……生かして捕えよとの命ですぅ……殺してはだめですぅ……」
――全くもって艶っぽい話ではありませんでした。
今度は別の意味で全員固まります。
「イーシャ様……なかなか厳しい世界に生きてらっしゃいますのね……」
「あ、そうか。『おじ様』って、モーリオン卿の事だ」
アキさんがぽんと手を叩きました。
「モーリオン卿……ですか?」
「あ、シーリオは知らない? クエインス・エイン・モーリオン卿。
イーシャ様の遠縁にあたる方で、イーシャ様のお師匠様だよ。
それはそれは、めちゃくちゃお強かったらしいよ」
「へー。そんな方がいらっしゃったんですね。私、知りませんでした」
「いやあ、実を言うとあたしもそんなに詳しくは知らないんだけどね。
『シトリン様を愛でる会』にいた時に小耳にはさんだくらいでさ。事件は覚えているんだけど」
「……事件、ですか?」
「うん、それがねぇ……」
「失踪なされたんだよ」
答えたのはクロエさんでした。
「あれはもう四年も前になるかな。王都で天覧武術大会が開催されたんだ。
モーリオン卿もご出場されて、騎士団長アモティ様との注目の一戦を予定してたんだけど、
当日になって姿が見えなくなってね。結局会場に姿を現すどころか、
今に至るまでその行方は杳として知れないんだ。
捜索隊も組まれたらしいけど、未だ手掛かりも見つけられないとか」
「……そんな事があったんだ。四年前かあ。その頃、私王都にいなかったから……。
じゃあ、当時王都にいた方達には有名な話なんですね」
「うん、まあそうなんだけどさー。クロエちゃん、当時七歳でしょ? 覚えてるにしてもなんでそんな詳しいの」
「ボク、年齢詐称してるから」
「ほぉう」
「……ごめん、嘘だよ、悪かったよ……アキにそんな目で見られるとすごく傷付くからやめて」
「どういう意味よ」
「言葉どおりの意味だよ。本当は、ほら、ボク、父についていつも図書館にいたでしょう?
そこの女性司書の一人がモーリオン卿にお熱でさ、毎日仕事の合間に事件に関する話を聞かされたんだ」
実は父子家庭のクロエさん。
幼い頃は毎日、お父さんの仕事場である王立図書館で本を読んで過ごしていたのです。
ちなみに当時、
「図書館にやたら可愛い幼女がいる!」
と一部ダメな人達の間で話題になったのですが、その話はいずれまた。
「そんな訳で、噂話の範囲でならかなり覚えてるよ。
モーリオン卿が臆したとか、闇討ちにされたとか、他国の陰謀に巻き込まれたとか」
「……『臆した』と『闇討ち』は有り得ません、クロエ。あの人は、理不尽なほど圧倒的に強かったのですから」
その反論は、ドュリエス様の胸元から聞こえました。
「あら、イーシャ。目が覚めたのね」
「はい……ドュリエス様……」
目を覚ましたイーシャさんは、ドュリエス様にぎゅっと抱き着きました。
ドュリエス様も、再び抱きしめ返します。
「ああ……ドュリエス様……こうして抱き合えて、私は幸せです……」
「うふふ。もちろんわたくしもよ、イーシャ」
「……本当……ですか?」
「あら、わたくしを疑うの?」
「いえ……その……でしたら、もうさっきみたいなのはお止め下さい」
「さっき?」
「体の自由を奪って、一方的に、その……愛していただく事です。
愛されて、幸せを感じている時、その相手を抱きしめられないのは、もどかしくて、つらかったです……。
私も、ドュリエス様を腕の中に感じたかったです……」
イーシャさんはドュリエス様を抱く腕に、さらに力を加えます。
「……イーシャ、少し苦しいわ」
「あっ、もっ申し訳ありません……」
「いいのよ。イーシャに痛くされるの、わたくし、嫌いじゃないみたい。んっ……癖になりそう……」
「ドュリエス様……」
「ねえ、もっと強く抱きしめて頂戴。わたくしを、もっと強く感じて頂戴」
「はい……」
イーシャさんは言われるまま、ドュリエス様を締め上げます。
「あぐぅ……っ! ああっ、痛いわっ! もっとっ! もっとよっ!」
「はっはいっ!」
イーシャさんの腕の中で、ドュリエス様の体がみしみしと軋みをあげます。
「ひぐあぁっ!! いっ、痛いっ! 痛いっ! ぎゃうぅっ! すごいぃっ! もっとぉっ! もっと痛くしてぇっ!」
「だっ、ダメですっ! これ以上強くしたら、骨が折れてしまいますっ!」
「良いのっ! 折ってっ! 殺してっ! イーシャぁっ!」
「良い訳ないわーーっ!!」
突っ込んだのは、やはりというか何と言うか、クロエさんでした。
彼女が手にした枕でばふんばふんと叩くと、抱き合う二人は我に返ったようにそっと離れました。
「おっ、おほほっ、あ、安心してクロエ。わたくし、本気で殺されたい訳じゃないわ」
「私だって、ドュリエス様を傷付けたりするものですか。
職業柄、傷を負わす事なく痛みを与える方法は知っているんです」
クロエさんは大きくため息を吐きました。
今日何度目でしょうね?
「はーー…………まあ、ほどほどに。あまり飛ばされるとボク達、ついて行けなくなるから……。
そんなことより、お風呂に入ってしまおう、ドュリエス様。そろそろちょうど良い温度まで下がっているはず」
「そうね。皆いやらしい体液まみれで、体中から淫らな匂いを発しているものね。
特に、イーシャはこちらが恥ずかしくなる程匂うわ」
「素晴らしいです」
シーリオさんがうっとりした顔でくんくんと鼻を鳴らします。
「やっ……そ、そんな……っ! それは、皆が……」
「では、侍女たる私達が、イーシャ様のお体を隅々までお清めいたしますわ」
「へっへっへー、イーシャ様、あたし達に任せてくださいねー」
「私達、毎日ドュリエス様のお体を洗ってますから、慣れてるんです」
ナオミさん、アキさん、シーリオさんの言葉に、しかしイーシャさんは少し怯えた表情を見せました。
先程のような激しい快楽責めを、お風呂場でまた施されるのではないかと恐れたのです。
ま、そりゃ恐れますよね。
そんなイーシャさんに、クロエさんが言います。
「大丈夫、イーシャ様。ちゃんと優しく、丁寧に洗うから」
「クロエ……あなたがそう言うのなら……。わかりました。お願いしますね」
彼女の言葉で少し安心したようです。
イーシャさん、短い間に侍女さん達それぞれの人となりを把握したようですね。
「むー……何か釈然としないけど、まあいいや。
じゃ、あたし達は先にお風呂場に行って準備してますんで、ドュリエス様とイーシャ様はゆっくり来てくださいね!」
と言うアキさんを先頭に、侍女さん達は寝室から続きの間のその向こうのお風呂場へと向かって行きました。
残された二人は、寝台の上でどちらからともなく見つめ合うと、そっと抱き合いました。
「んっ……ふふ、それではしばらくこうしていちゃいちゃしてから行きましょうね」
「はい、ドュリエス様……」
続く